
スリランカ(Srilanka)
国スリランカ(Srilanka)

スリランカへの渡航に備えた予防接種
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項目 | 説明 |
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地域概要 | インド洋の真珠とも言われる緑豊かな熱帯の島で、面積は北海道の約8割です。 紅茶の生産が盛んで、主要産業は農業と繊維業です。 1975年にイギリスから独立後、26年間にわたってスリランカ反政府武装勢力タミル・イーラム解放の虎(LTTE)と政府との国内紛争が続きました。 公用語はシンハラ語とタミル語ですが、両民族間をつなぐ言葉(連結語=link language)として英語が使われています。「スリランカ」とは、シンハラ語で「光輝く島」という意味です。 |
医療情報 | コロンボやキャンディなど都市部の私立病院には専門医が集められ、インターベンション治療や心臓外科、腎臓移植など比較的大きな外科手術も行われています。しかし、緊急・不可避的な急性虫垂炎や骨折・外傷等の緊急手術ならやむを得ないものの、それ以外の待機手術は、後述の理由で日本で行うことをお勧めします。
一部の私立医療機関で医師を選べば、日本に近い水準の医療を受けられます。ただし、評判の高い専門医の予約は取りづらく、地位・技術・人気によりその診察料金が異なり、ときに高額になる可能性もあり、さらに私立医療機関では、入院時に、傷病名と重症度に応じた保証金(デポジット)を求められますので、十分な額の支払い保証のある旅行保険への加入するようにしてください。地方(大都市以外)では私立医療機関であってもその医療レベルは概して高くありません。 |
気候 | スリランカはインド洋上に浮かぶセイロン島にあり、面積は九州の1.7倍、北海道の約8割に相当します。島北部は平坦で、中央〜南部には2,000メートル級の山が連なり、1,000メートルを越える高原があります。年間を通じて大きな寒暖の差はなく、ほぼ全土が熱帯性気候に属します。事実上の首都コロンボは北緯6度、西部州に属しスリランカ南西岸の湿潤地帯に位置します。平均気温28度、湿度87%、日中最高気温32度前後、最低気温25度前後で日本の夏が一年中続いていると考えていいでしょう。4〜6月、10〜11月の2回の雨期があり、年間降水量は2,000ミリを越えます。 |
宗教 | 仏教徒、ヒンドゥ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒など |
文化 | 8つもの世界遺産(2010年12月現在)を有する国。ブッダの歯を祀っているといわれる「仏歯寺」がある古都「キャンディ」、コロニアル風の建物が立ち並ぶ港町「ゴール(ガッラ)」、かつては仏教都市として栄え多くの遺跡が残る「ポロンナルワ」など、どの世界遺産も見ごたえたっぷりです。 また香辛料を多く使ったスパイシーな名物グルメや優しい甘さのスイーツなど美味しい食べ物がたくさんあります。 |
気をつけたい感染症 | A型肝炎、B型肝炎、破傷風、腸チフス、日本脳炎、黄熱病、ポリオ |
推奨する予防接種 | 黄熱病、ポリオワクチン 成人:、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、腸チフス、日本脳炎(可能なら以下も考慮して下さい。百日咳、ジフテリア、麻しん、風しん、おたふく風邪、水痘) 小児:日本の定期予防接種以外は成人に準じます。以下のワクチンは日本で接種を済ませてくることをお勧めします。BCG、DTP(ジフテリア・百日咳・破傷風)+ポリオ(4種混合)、Hib、肺炎球菌、日本脳炎、B型肝炎 |
気をつけたい病気
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病名 | 説明 |
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デング熱 | デング熱は、日中に活動するネッタイシマカなどのヤブカにより媒介されるデングウイルスによる熱帯感染症で、スリランカでは毎年平均6万人が感染し、約100人が死亡し、在留邦人や邦人旅行者の間でも毎年発生があります。雨期に蚊の発生に応じて、患者数も増え、通常6〜8月、11〜1月の年2回のピークがあります。数年ごとに大流行し2017年には患者18万6千、死者410名となり、2019年は6月からピークが下がらず11月〜2020年1月にかけ再流行の兆しを見せましたが、2020年2月以降は過去最低の患者数です。
一過性熱性疾患の症状から始まり、頭痛、関節痛や、時に目の奥の痛みなどを起こし、発症3~4日後に発疹が出現、通常は1週間~10日ほどで軽快します。重症化するとデング出血熱となり死亡する場合もあるので、血小板数の減少や尿などを頻回に診る必要があります。特に昨今のCovid-19蔓延により、これら熱性疾患との鑑別が難しく、PCR検査結果を見ないと治療が始まらないなど、治療が遅れるケースがあり、問題となっています。 |
チクングニヤ熱 | デング熱と同じ種類の蚊によって媒介されるチクングニヤ熱は、チクングニアウイルスによる熱帯感染症で、毎年スリランカ全土で発生しています。スリランカでは、2006〜2008年にアウトブレイクがおこっており、この時日本にも数例のスリランカからの輸入症例がありました。2018年でも2,000人ほどの患者が発生し、高齢者などが中心でした。 潜伏期間は通常3〜7日で、不顕性感染も多いものの、チクングニヤ熱を発症すると39度を越える間欠性の悪寒を伴う高熱と全身の関節痛が見られ、多くに発疹が見られます。その他、全身倦怠、頭痛、筋肉痛、リンパ節腫脹などを呈し、ときに血小板減少などによる出血傾向や悪心・嘔吐などをきたし、脳炎や劇症肝炎をおこすこともあります。ほとんどの症状は3〜10日で消失しますが関節炎は数週間から数か月持続することがあります。発症3〜6日の患者のウイルス量は多く、この患者を吸血した蚊を媒介して家族内などで流行する可能性があります。治療は対症治療しかなく、やはり防蚊対策が重要になります。 |
日本脳炎 | 豚などの動物の体内で増殖した日本脳炎ウイルスが、その豚を刺したコガタアカイエカなどがヒトを刺すことで感染します。症状が現れない不顕性感染が殆どですが、発症する場合6〜16日間の潜伏期の後、高熱、頭痛、嘔吐などで始まり、光過敏、意識障害、痙攣などの脳炎症状を生じることがあります。発症した場合の致死率は20〜40%、生存者の45〜70%に精神症状などの後遺症が残ってしまうといわれています。渡航前に、ワクチン接種を推奨します。 |
マラリア | 年間100例程度のインド等からの輸入例が発生しており、マラリアを媒介するハマダラカは完全に駆逐されているとは言えません。輸入例と言っても、デング熱やチクングニア熱と同様、発症患者を吸血した蚊を媒介して家族内等で伝染することもありますので、夜間も同様に蚊対策を怠らないようにして下さい。 |
ジカ熱 | 発熱、頭痛、関節痛、結膜充血、皮疹が3〜12日間程度持続しますが、デング熱より軽症で入院が必要なことは稀です。有効な治療はなく、対症療法のみです。性交渉で感染者の体液から、また輸血での感染も報告されています。 |
レプトスピラ症 | 細菌による急性熱性疾患であり、ネズミ等の保菌動物の尿に汚染された水との接触による皮膚から(経皮)と、汚染された水や食物の飲食による口から(経口)の2つの感染経路をとります。感冒様症状のみで軽快する軽症型から、黄疸、出血、腎障害を伴う重症型(ワイル病)まで多彩な症状を示します。5〜14日間の潜伏期を経て、発熱、悪寒、頭痛、筋痛、腹痛、結膜充血などが生じ、第4〜6病日に黄疸が出現したり、出血傾向も増強することがあります。こうした重症時に早期に適切な治療を行わないと、死亡率は20〜30%です。 スリランカでは毎年約5,000例の発症があり、雨季や洪水が発生したときなどに数週間遅れて流行します。特に2020年は過去10年で最も発生数が多い年でした。予防としては、不用意に水たまりや池などに入らないことにつきます。 |
狂犬病 | スリランカ国内での狂犬病患者は毎年約30名。発症まで潜伏期が早くて1週間、通常1か月程度、中には3か月以上の場合もあり、発症すれば死に至ります。しかし、それまでにワクチン接種することで発症を防ぐことができます。 コロンボ市内にも相当数の野良犬がみられ、犬以外にも猫や家畜(牛、ヤギ)、野生動物(リス、ウサギ、猿、マングース、コウモリなど)にも注意が必要です。 |
腸チフス | チフス菌による飲水や食物からの経口感染症であり、腹痛、発熱、関節痛、頭痛、咽頭炎、鼻出血などから始まり、39度を超える高熱が続き、徐脈、バラ疹、脾腫、下痢(水様便)、血便を生じます。重症化し、腸出血、腸穿孔を起こすこともあります。患者や保菌者の便や尿が感染源となります。 1回のワクチン接種で約3年間有効です。 |
A型肝炎 | 都市部でも地方でも、水や食物を介しての集団発生が報告されています。当国では、寿司・刺身などを食する機会があるので注意を要する病気です。抗体のない方は予防接種をお考え下さい。 スリランカでもHAVRIX(GSK)など1回接種で10年以上抗体が維持される輸入ワクチンが入手可能ですので、当地での接種をお考えになってもいいでしょう。 |
B型肝炎 | 性行為・輸血等、血液・体液を介して感染します。一般に節度ある日常生活を送っていれば感染リスクは低いですが、当国のB型肝炎ウイルスキャリアは相当数に上ると推定されています。
偶発的な感染機会が否定できず、感染すると稀ながら劇症化することなどを考慮し、抗体のない方は予防接種をお考え下さい。 |
結核 | スリランカでは年間9,000〜10,000人の新規患者が発生し、この半数は痰に結核菌が認められる排菌者、約300人が結核で死亡しています。都市部に患者が多く、患者の2割はコロンボで発生しています。 |
主な出典・引用元
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