日本人のがんに関する統計・検査について
■主な出典・引用元
- 公益財団法人がん研究振興財団 発表データ
https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2023.pdf - 日本人の食事摂取基準(2020 年版)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf - 健康日本21(第二次)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html
がんについて
現在の日本において、2人に1人は一生のうち何らかのがんに罹患すると言われています。
・死亡数(2021年)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
総数 |
肺 76,212 |
大腸 52,418 |
胃 41,624 |
膵臓 38,579 |
肝臓 24,102 |
男性 |
肺 53,278 |
大腸 28,080 |
胃 27,196 |
膵臓 19,334 |
肝臓 15,913 |
女性 |
大腸 24,338 |
肺 22,934 |
膵臓 19,245 |
乳房 14,803 |
胃 14,428 |
・罹患数(2019年)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
総数 |
大腸 155,625 |
肺 124,319 |
胃 27,196 |
乳房 97,142 |
前立腺 94,478 |
男性 |
前立腺 94,478 |
大腸 87,872 |
胃 85,325 |
肺 84,325 |
肝臓 25,339 |
女性 |
乳房 97,142 |
大腸 67,753 |
肺 42,221 |
胃 38,994 |
子宮 28,579 |
がんの全体的な統計
① がんの罹患率
がんと診断される人は年々男女とも増加傾向にあり、2019年の1年間で新たにがんと診断された人は、999,075例でその内、男性が566,460例、女性が432,607例です。
罹患率(人口10万あたり)は男性が922.4、女性が668.1です。女性より男性の方が罹患率が高く、その中でも、口腔、咽頭、食道、肝臓、喉頭、肺、膀胱、腎臓は罹患率が女性の2倍以上になっています。
② がんの種類
がんは、発生した細胞の種類によって、がんや肉腫、造血器腫瘍(血液がん)に分類(表1)されています。主ながんの種類についてまとめている記事を一覧(表2)にしています。
表1
表は横にスクロールします
分類 | 発生する細胞 | がんの例 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|
固形 がん |
がん | 体の表面や臓器の粘膜を覆っている細胞 | 肝細胞がん、前立腺がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、乳がん、肺がんなど | ◯転移 ◯浸潤 ◯かたまりで増殖 |
肉腫 | 筋肉や骨を作る細胞 | 粘液線維肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫など | ◯転移 ◯浸潤 ◯かたまりで増殖 |
|
血液のがん | 白血球やリンパ球などの血管、骨髄、リンパ節内にある細胞 | 悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫など | ◯悪性リンパ腫はかたまりで増殖し、リンパ節が腫れることがある かたまりで増殖しない |
表2
③ がんによる死亡率
がんによる死亡数は、2021年の確定数で約38万1,505人と言われています。男性が22万2,467人、女性が15万9,038人となっており、その中でも最も死亡数が多い部位は、男性が肺で24%、女性が大腸で16%を占めています。
日本での2021年度のがんによる死亡率(人口10万人あたり)は、男性が372.7、女性が252.1となっています。部位別で見ても多くの部位で女性より男性の方が死亡率が高く、口腔、咽頭、食道、胃、肝臓、喉頭、肺、膀胱においては死亡率が男性の方が2倍以上高くなっています。
がんのリスクファクター
① 遺伝的要因
がんの遺伝については存在しますが、要因としての全体に占める割合は非常に低くなっています。遺伝性腫瘍といわれるがんの遺伝は、大腸がん、乳がん、卵巣がん、骨軟部肉腫、皮膚がんなどで見られますが、がんと遺伝について解明されていないことが多いため、極端に心配する必要はありません。
② 喫煙
たばこの煙の中には約5,300種類の化学物質が含まれており、その内約70種類の発がん性物質も含まれています。その有害物質が肺に届き、血液を通じて各臓器へ運ばれることでDNAを傷つけることなどしてがんになります。
がんで死亡する人のうち、男性約30%、女性約5%が喫煙が原因で死亡する研究結果も出ています。また喫煙歴が長い、1日の喫煙本数が多い人ほどがんになりやすい傾向があり、がんだけでなく心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳卒中、狭心症などの原因にもなります。
③ 飲酒
飲酒は口腔、咽頭、喉頭、食道、大腸、肝臓、乳房などのがんにかかるリスクが上がるといわれています。がんになる原因は、飲酒によって体内に取り込まれたエタノールがアセトアルデヒドに代謝されることでがんに発展します。
また、飲酒することで免疫機能が低下するとともに、食事が偏り栄養不足につながることや喫煙者が飲酒すると食道やがん全体の交互作用が高まり発症するリスクが高くなることもわかっています。
④ 食事・栄養
食事によって確実にがんになるという物は少ないですが、「塩分の取りすぎ」「野菜や果物を摂取しない」「熱すぎる飲み物や食べ物をよく接種する」などはがんの原因になることが明らかになっています。摂りすぎるとがんリスクを上昇させる食品として、牛・豚・羊などの赤肉、加工肉は大腸がんのリスクを確実に上昇させると判定されています。
その他、塩分濃度の高い食品や塩蔵食品も胃がんリスクを上昇させる可能性が大きいと報告されております。これは高濃度の塩分が胃の粘液を破壊し、炎症やピロリ菌の持続感染が起こることにより発症リスクが高まると言われています。
- リスクを下げるもの
-
- ◯食物繊維を多く含む食品【大腸がん】
- リスクを上げるもの
-
- ◯飲酒【口腔がん、咽頭がん、食道がん、大腸がん、乳がん、喉頭がん】
- ◯飲料水のヒ素【肺がん】
- ◯βカロテンを含むサプリメントの過剰摂取【肺がん(喫煙者)】
- ◯加工肉・赤肉【大腸がん】
- ◯アフラトキシン「肝臓がん】
⑤ 感染
日本人ががんを発症する原因として多く挙げられるのが、「感染」です。
感染による原因が約20%を占めていると推測されており、HPVによる子宮頸がんやピロリ菌による胃がん、B型・C型肝炎ウイルスによる肝臓がんなど様々なものがあります。
感染の仕方は感染体による直接的な作用、慢性的な炎症により絵師などで発症する間接的な作用などがあります。
⑥ 製剤
ホルモン剤や抗ホルモン剤には、一部のがんリスクを上昇させる作用があります。
- ・エストロゲン療法(閉経後:子宮体がん・卵巣がん・乳がん)
- ・エストロゲン・プロゲストーゲン合剤の経口避妊薬(肝がん、乳がん、子宮頸がん)
- ・エストロゲン・プロゲストーゲン合剤療法(閉経後:乳がん、子宮体がん)
- ・抗エストロゲン薬として乳がんの治療に用いられているタモキシフェン(子宮体がん)
⑦ 体型
人それぞれの体型によって、がんリスクが上がることがわかっています。
- 肥満・・・食道・膵臓・肝臓・大腸・乳房(閉経後)・子宮体部・腎臓のがん
- 成人後の体重増加・・・乳房(閉経後)のがん
- 高身長・・・大腸・乳房・卵巣のがん
また、痩せすぎでもがんリスクが上がる可能性があり、栄養不足による免疫機能低下や抗酸化物質不足によるものと考えられています。
がん検査
当院でできるがん検査の詳細
表は横にスクロールします
検査項目 | 検査内容 | 料金(税込) | ||
---|---|---|---|---|
腫瘍マーカー | 食道がん【採血】 | CEA、SCC抗原、シフラ(3種類) | ¥8,800 | |
胃がん・大腸がん【採血】 | CEA、CA19-9(2種類) | ¥5,500 | ||
膵がん・胆道がん【採血】 | CA19-9 、DUPAN-2、Span-1,エラスターゼ1(4種類) | ¥11,000 | ||
肝臓がん【採血】 | AFP、PIVKA-Ⅱ(2種類) | ¥5,500 | ||
肺がん【採血】 | CEA、シフラ、NSE(3種類) | ¥8,800 | ||
前立腺がん【採血】 | 高感度PSA(1種類) | ¥3,300 | ||
乳がん【採血】 | CEA、CA15-3、BCA225(3種類) | ¥8,800 | ||
卵巣がん【採血】 | CA125、CEA、CA19-9(3種類) | ¥8,800 | ||
子宮がん【採血】 | CEA、CA125、SCC抗原(3種類) | ¥8,800 | ||
リスクスクリーニング | ※1 アミノインデックスAIRS® 【採血】 (午前中受診のみ追加可能) |
「がん」と「糖尿病」のリスクスクリーニング検査になります。 |
¥33,000 | |
消化器 | ヘリコバクターピロリ抗体検査【採血】 |
血液検査でピロリ菌感染の有無を調べる検査です。 |
¥2,200 |
がんの予防とスクリーニング
① 禁煙
1. たばこを吸わない
たなこを吸う人は吸わない人に比べ、がんにかかるリスクが約1.5倍高まることがわかっているため、禁煙することをおすすめします。
2. 他人が吸っているたばこの煙を避ける
受動喫煙でもがんにかかるリスクが高くなるため、喫煙所などは避けるようにしましょう。
② お酒を控える
1日あたりに接種する平均アルコール量が、純エタノール量換算で23g未満の人と比べ、46g以上の人は40%程度、69g以上で60%程度がんを発症するリスクが高まることがわかっています。
また、飲酒は肝細胞、食道、大腸がんと関連があり、男性よりも女性の方が飲酒の影響を受けやすいかつ、少ない量でもがんを発症するリスクが上昇するという結果もあります。
そのため飲酒する際は下記目安におさめるよう心がけましょう。
③ 食生活の見直し
1. 塩分を抑える
塩蔵食品や塩分濃度の高い食品などを日常的に摂る人は、胃がんのリスクが高まるといわれています。塩分量を抑えることで高血圧や循環器疾患のリスクも低下するといわれているため、減塩を心がけましょう。
2. 野菜や果物をとる
野菜や果物を積極的に摂ることで、食道がんや胃がん、肺がんのリスクが低くなることが期待できます。その他にも、脳卒中や心筋梗塞などの生活習慣病の予防にも繋がるため、可能な限り毎日摂取するようにしましょう。
3. 熱い飲み物や熱い食べ物は冷まして食べる
熱いものをそのまま食べたりすると、食道の病気リスクを上げるという報告があります。食べる際は少し冷まして食べたり飲むようにしましょう。
④ 運動を行う
活発的に体を動かすことでがん全体の発生リスクが低減するといわれています。
厚生労働省では、「健康づくりのための身体活動基準2013」の中で、18歳から64歳の人について、『歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと』、『息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分行うこと』を推奨しています。
同様に65歳以上の高齢者は、『強度を問わず、身体活動を毎日40分行うこと』を推奨しています。すべての世代に共通で、『現在の身体活動量を少しでも増やすこと』『運動習慣をもつようにすること』が推奨されています。
⑤ 適正な体重を保つ
男女でがんリスクが低減されるBMI値があり、男性は21.0~26.9、女性は21.0~24.9です。 太り過ぎも痩せ過ぎも死亡リスクが高まることがわかっているので、適正なBMI値を維持できるよう体重管理しましょう。
⑥ 感染予防
地域の保健所や医療機関で、一度は肝炎ウイルスの検査を受けましょう。感染している場合は専門医に相談し、特にC型肝炎の場合は積極的に治療を受けましょう。
- ●機会があればピロリ菌の検査を受けましょう。定期的に胃がんの検診を受けるとともに、除菌については利益と不利益を考えた上で主治医と相談して決めましょう。
- ●肝炎ウイルスやピロリ菌に感染している場合は、肝細胞がんや胃がんに関係の深い生活習慣に注意しましょう。
- ●子宮頸がんの検診を定期的に受け、該当する年齢の人は子宮頸がんワクチンの定期接種を受けましょう。
- ●これらの感染について心配なことは、医療機関やがん相談支援センターに相談しましょう。