前立腺がんとは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/06/28

前立腺がんとは?原因、症状、治療法について解説

前立腺がんとは

前立腺は男性特有の臓器です。3〜4センチのクリの実のような形状で、膀胱の下に位置し尿道をとり囲んでます。この前立腺に生じる悪性腫瘍が前立腺がんです。前立腺がんは前立腺の辺縁領域に発生することが多く腫瘍が大きくなるまでは尿路閉塞が起こらないため、早期では無症状です。男性ホルモン依存性に増殖する性質を持つため、50歳以上の男性に好発します。前立腺がんの発症はもともと欧米人に多いですが、近年日本でも前立腺がんの罹患率が年々増加しており、2019年には罹患率1位となりました。
この背景には健診でのPSA検査の普及により早期に前立腺がんが見つかる人が増えたとも考えられます。前立腺がんは他のがんと比べると比較的進行が遅いため生存率は高めです。発症する年齢も高いことから生存時には発見されず死後に前立腺がんが見される事もあります。

  

前立腺がんの症状は

前立腺がんは前立腺の辺縁領域に発生することが多いため、早期には無症状のことが多いです。進行するにつれ尿道・膀胱・尿管など周囲臓器へ浸潤していくため排尿困難、残尿感、排尿時の痛み、血尿、夜間頻尿などの症状が出てきます。前立腺肥大症と似た症状がみられる為、鑑別が必要です。
さらに進行していくとリンパ節・骨・肺・肝臓など他臓器に転移していきます。転移骨部の疼痛、腰痛、骨折、全身骨転移による貧血、播種性血管内凝固、脊髄麻痺などの症状が出てきます。前立腺がんとは気付かず、骨転移による腰や背中の痛みなどで整形外科を受診し前立腺がんが見つかることもあります。

 

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前立腺がんの原因は

前立腺がんの原因には加齢、ホルモン、食生活、人種、遺伝など様々な要因が関与してると考えられています。前立腺がんは男性ホルモンの影響により増殖するとも言われており、加齢によりホルモンバランスが崩れるため、50歳以上の男性で前立腺がんの発症が高くなります。食生活の欧米化により動物性脂肪を摂取する機会が多くなり、タンパク質や砂糖を多く摂ることが、がんの発生に関与しているとも言われてます。前立腺がんが欧米人に多いのは食生活が原因と推測されます。

前立腺がん発症リスクを下げる食べ物として特に大豆が良いとされています。大豆に含まれるイソフラボンはエストロゲンと同様の働きをするため、前立腺がんを抑制すると言われています。また、遺伝的な要因も関与してるとされており、親や兄弟に前立腺がんの人が居ると発症する率が高くなると言われています。家族に1人のがん患者が居た場合2.5倍発症率が上昇するとも言われています。

  

前立腺がんの検査方法と診断

前立腺がんを疑う場合は、PSA検査(前立腺腫瘍マーカー検査)・直腸診検査・経直腸検査エコーをおこないます。この検査で前立腺がんが疑われる場合は前立腺生検をして確定診断をおこないます。診断がついたらMRI検査、CT検査、骨シンチグラフィー検査などの画像診断で、がんの浸潤度や転移の有無などを調べていきます。

1.PSA検査(前立腺腫瘍マーカー検査)

PSA検査とは採血をしてPSAの値を測定する血液検査です。
PSAとは前立腺特異抗原( prostate specific antigen)と呼ばれ前立腺液に含まれるタンパク質の一種です。PSAは健常者でもわずかに血液中に存在しますが、がんや炎症により前立腺が壊れるとPSAが血液中に増加していきます。これにより、PSA値を測定することで前立腺がんの可能性が調べられます。PSAの基準値は一般的に0〜4ng/mlです。PSA値は前立腺がん以外に、良性疾患の前立腺肥大症、前立腺炎でも高い値が出ることがあります。


  

2.直腸診(触診)

直腸診とは医師が肛門から指を直腸に入れて、肛門から約5㎝の位置にある前立腺の状態を直腸の壁ごしに確認する検査です。前立腺の大きさ、左右差、硬さ、弾性、表面の凸凹、触れた時の痛みの有無などで前立腺の状態を調べます。主に前立腺肥大症との鑑別に有用です。前立腺の奥深くにあるがんや小さながんは触知不能の為、直腸診で異常無かったとしてもがんは否定出来ません。

  

3.経直腸エコー

経直腸エコーとは超音波を発する器具(プローブ)を肛門から挿入して得られる超音波画像を見ながら前立腺の状態を調べる検査です。前立腺の大きさ、内部の状態、がんの浸潤度の確認に用いられます。

  

4.前立腺生検

前立腺生検とは肛門から超音波プローブで前立腺の状態を確認しながらがんの疑われる部位に生検針を刺し10ヵ所以上組織を採取して、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる検査です。

  

5.画像診断

画像診断にはMRI検査、CT検査、骨シンチグラフィー検査があり、前立腺がんの浸潤度、転移の有無などを調べる為に必要に応じて行います。


  

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前立腺がんの治療方法

治療方法はがんの進行度、リスク分類、PSA値、患者の年齢などを考慮して治療方針を決定します。進行度に応じて監視療法、温存治療(フォーカルセラピー)、治療療法、放射線療法、ホルモン療法、化学療法などを行います。がんが前立腺内にとどまっている場合の限局がんでは監視療法、温存治療、手術療法、放射線療法、ホルモン療法を主に行います。がんが前立腺の被膜を破って浸潤している場合の局所浸潤がんでは放射線療法、ホルモン療法を行います。がんが前立腺周囲の臓器に転移してる場合の転移がんではホルモン療法、化学療法を行います。

  

前立腺がんの予防方法

前立腺がん発症の原因として食生活があげられる為、食生活の改善を心がけることでがん予防にもなると言えます。前立腺がんに限らず、がん予防として禁酒・節酒・食生活・身体活動・適正体重の維持・感染症予防の6つの生活習慣改善があげられます。これらの生活習慣を改善することでがんリスクを半減させることが可能です。ひとつずつ改善できるように心がけていきましょう。
  

まとめ

前立腺がんは早期では症状が出なく早期発見が難しい為、50歳以降は毎年健診でPSA検査をすることをおすすめしております。進行した場合の症状としては、前立腺肥大症の症状とよく似てるため鑑別が必要です。また、男性型脱毛症(AGA)や前立腺肥大症の治療で5a還元酵素阻害薬やステロイド性抗アンドロゲン薬を服用してる場合はPSA値が50%程度に低下する為、診断に注意が必要です。
前立腺がんは他のがんと比較して生存率が高く比較的予後が良いがんですが、進行すると他の臓器に転移し生存率も低くなるため早期発見することは重要です。食生活では動物性脂肪を多く摂取することを気をつけ、豆類、穀物、緑黄色野菜などを積極的に摂取し前立腺がん発生リスクを下げるよう心がけましょう。

 

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MYメディカルクリニック顧問 北村 唯一医師

監修:MYメディカルクリニック 顧問

北村 唯一 Dr. Sasakura Wataru

略歴

  • 1973年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 1998年 東京大学医学部附属病院泌尿器科 教授
  • 2006年 財団法人 性の健康医学財団 理事
  • 2008年 東京大学 名誉教授
  • 2008年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 院長
  • 2011年 財団法人 性の健康医学財団 理事長
  • 2013年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 名誉院長
  • 2014年 自靖会親水クリニック 院長
  • 2014年 光靖会北村記念クリニック 名誉院長
  • 2018年 医療法人社団裕志会 理事長
  • 2022年 医療法人社団MYメディカル 顧問

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