大腸がんとは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/11

大腸がんとは?原因、症状、治療法について解説

大腸がんとは

大腸とは全長1.6m太さ5〜8cmの管で盲腸・結腸・直腸から構成されています。その中でも結腸は上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸の4つの部位に分けることができます。
大腸は主な働きとして「小腸で消化・吸収された残渣物の消化・吸収」と「蠕動運動(腸内容物を直腸へ運ぶ)」、「分節運動(消化・吸収促進の為の食物と消化酵素の混和)」を行っています。この部位の表面粘膜から発生する悪性腫瘍を「大腸癌」といいます。
大腸癌は「腺癌(分泌腺組織に由来する上皮性の悪性腫瘍)」と「扁平上皮癌(扁平上皮という薄くて平らな上皮から発生する上皮性の悪性腫瘍)」の2種に分けられ、主に腺癌である事が多いです。中には大腸ポリープが癌化するケースもあります。
  
発生部位としては直腸とS状結腸に発生する事が多く、癌罹患率では男女計で見ると1位、癌死亡率では男女計で見ると2位に値するほど身近に発生しうる癌です。そのため予防・悪化防止の為の検査や、適切な治療が必要となります。

  

大腸がんの原因

大腸癌の発生には生活習慣との関わりが深いとされています。その中でも食事との関係が特に指摘されており、野菜類から摂取される「食物繊維」は大腸癌のリスクに予防的であるとされていますが、肉類から摂取される「動物性脂肪」は大腸癌の発生を促進するといわれています。
近年の日本における食事の欧米化により食事は「高脂肪摂取、低繊維食」の傾向にあるため大腸癌の大きな一因として考えられています。しかしそれだけではなく、喫煙による発癌物質の摂取や肥満(運動不足)による腸の活動低下、便通過時間の遷延等も癌の発生の一因としてあげられていることや遺伝的な要因から家族の病歴との関わりもあるとされていることから、原因は多数あるとされています。
 

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大腸がんの症状

初期は無症状であるため自覚症状がない場合が多いです。便潜血陽性の反応が出ることはあるが発見は遅れることが多く、腫瘍が大きくなるにつれて症状が出現します。また大腸の右側(盲腸〜横行結腸)と左側(横行結腸〜直腸)で腸管内腔の広さが違うため、初期症状が異なります。
  

右側結腸▶︎特に盲腸〜上行結腸は内腔が広いため、腫瘍のサイズが大きくなるまで腸管狭窄を起こしません。そのため、軽度の腹痛や便秘などが初期症状となります。癌からの出血によってしだいに貧血や体重減少がおこり、腫瘤を触知するようになります。
  
左側結腸▶︎下行結腸〜直腸は内腔が狭いため、狭窄症状を起こしやすいです。水分が吸収され便も固くなっている為、便秘が起こりやすくそれに伴って腸蠕動運動の低下や腹部膨満感、腹痛の症状も起こりやすいです。また、狭い内腔に腫瘍がある事から腫瘍からの出血が便に混じって出てくるため、血便や下血の症状も起こる場合も多いです。
腫瘍によって腸閉塞を起こした場合は腹痛に加え、排便の停止、嘔気・嘔吐の症状もみられ、嘔吐に伴った脱水症状(脈拍の増加、血圧の低下、末梢血管の収縮等)など全身状態の悪化へと繋がります。  
  

大腸がんの検査方法

①便潜血検査

便が腸管内を移動する際に、腫瘍がある場合には腫瘍に擦れて目に見えない程度の微量の出血が便に付着します。
  
2日分の排便を採取し、便に混じったその血液の有無を調べる検査。 
※この検査で陽性反応が見られた場合に精密検査が推奨されている  

②直腸指診

肛門から一番近い位置にある直腸の診察。
肛門から指を挿入して、届く範囲の中で腫瘤を疑うような膨らみや硬いものが触れないかや血液の付着がないかを調べる検査。

  

③注腸造影検査

肛門から管を挿入し、空気とバリウム(造影剤)を注入してレントゲン写真を撮影する検査です。癌の形やサイズ、腸管内腔の通過状態を調べることができます。
検査中は大腸粘膜表面へ造影剤を全体的に付着させるために医師の指示に従って体を傾けたり、回転させる等の動作や肛門から注入された空気が逃げて大腸がしぼんでしまわないよう「おなら」を我慢する必要があります。
通常痛みはあまりないとされていますが、空気注入時の腹部膨満感等は検査の影響で現れます。大腸内視鏡検査が腸の癒着や腫瘍の影響で受けられない場合の代替方法となることが多いです。

  

④大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査はスコープ(カメラ)を肛門から挿入し、直腸から盲腸まで大腸内視鏡粘膜全体の観察を行い病変の有無を調べる検査です。粘膜を直接観察できる為、色調の変化や粘膜面の変化を捉えることができます。
長いスコープが挿入される事や腸内を綺麗に観察するための前処置(下剤の内服)は身体的負担がかかる面もありますが、悪性が疑わしい病変やポリープが見られた場合には、その場で生検検査(組織の一部を採取し病理検査へ出す検査)を実施することが可能であり、小さなポリープや病変を見つけられるため早期発見に繋がるといったメリットが大きいです。便潜血陽性反応が出た場合第1選択となる検査です。

⑤CT・MRI検査

大腸CT検査は肛門からガスを注入し腸管を膨らませた状態で撮影を行う検査で、X線を使用して画像の描出を行うため、大腸の内側まで詳細に病変の有無を調べることができます。
※X線を使用するため妊婦は検査不可
 
大腸MRI検査は磁気を使用して、腹部臓器の断層を撮影を行う検査。特に骨盤内を詳しく調べることが可能です。
CT・MRI共に腫瘍が見つかった場合に詳細な組織検査をすることは不可能ですが、大腸癌の腫瘍だけでなく周辺臓器への転移の有無など全身状態の評価に非常に有効な検査です。
術前検査などで用いられることが多い。

⑥PET検査

PET検査は、癌細胞のブドウ糖を正常細胞よりも非常に吸収しやすいといった性質を有効活用した検査で、FDGというブドウ糖によく似た薬剤を静脈注射にて体内に流し込み、その分布を画像にする検査。CT検査・MRI検査と同様に全身状態の評価に有効な検査であり、他の検査で転移等の診断が難しいとされる場合に行われることがある。
CT検査と組み合わせたPET-CT検査ではより詳細に全身状態の評価を行うことが出来る。
※糖の分布を利用するため既往に糖尿病がある方や高血糖の方には向かない

  

⑦腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーは癌細胞があることによって反応を起こした正常細胞が発生する特徴的なタンパク質を調べる検査。癌の確定診断に繋がる検査ではなく、がん診断の補助や治療後の経過を見るときに有用とされている。腫瘍マーカーだけでは癌の進行具合は判断できず、癌があっても数値が高くでないといった場合もあるため、その他の画像検査との結果と合わせて診断がされる。

  

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大腸がんの治療方法

大腸癌の病期や深達度によって選択される治療方法は異なってきます。

【大腸癌病期】

  • ステージ0
  • ▶︎がんが大腸粘膜内に留まっている
  • ステージ1
  • ▶︎がんが固有筋層までに留まっている
  • ステージ2
  • ▶︎がんが漿膜下層を超えて浸潤する
  • ステージ3
  • ▶︎がんの深さに関わらず、リンパ節への転移を認める
  • ステージ4
  • ▶︎がんの深さやリンパ節転移に関わらず、他臓器への転移を認める、または腹膜播種がある

  

【深達度】

早期癌
(1)粘膜内に留まっている
(2)粘膜下層に浸潤
  
進行癌
(1)固有筋層に浸潤
(2)固有筋層を超えて浸潤
(3)漿膜を超えて浸潤
(4)隣接臓器へ浸潤
  

①内視鏡治療

※内視鏡治療の適応として、病変が粘膜下層に留まっていることが条件とされる
 

(1)ポリペクトミー

有茎型といわれる盛り上がった形の病変に適応されます。スネアと呼ばれる細いワイヤーで茎の部分を締め付けて焼き切る治療方法です。
 

(2)EMR(内視鏡的粘膜切除術)

病変が粘膜層に留まっているが有茎型のように隆起しておらずなだからな場合に適応とされます。粘膜下層へ生理食塩水を注入し病変部位が持ち上がるように隆起させ、スネアで締め付けて焼き切る治療方法です。
 

(3)ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

2cm近くのサイズの早期癌は粘膜切除の治療方法では病変の取り残しによる再発起きてしまう可能性があることから、2cm近いサイズの病変でEMRでの切除が難しい場合や病変が陥没している場合に適応とされます。
切除する病変の周囲にマーキングを行い、粘膜下層へ生理食塩水など薬剤を注入して病変部位を持ち上げます。浮かせた部位をマーキングに沿って切開し、専用のナイフで剥離を行う治療方法です。
 

  

②外科的治療

手術
※粘膜下層より下へ浸潤している場合は外科的治療の適応となる
※腫瘍の位置によって切除する腸管の範囲が異なってきます
▶︎回盲部切除、右半結腸切除、横行結腸切除、S状結腸切除など
  

(1)腹腔鏡手術

腹部に5ヶ所程度の小さな創をつくり、二酸化炭素にて腹腔内を膨らませ、腹腔鏡という内視鏡機器を使用しながら腫瘍切除の手術を行います。開腹手術に比べて術後の創部痛は少ないが、手術自体に時間を要します。
 

(2)開腹手術

腹部を大きく切開して腫瘍摘出を行う手術です。患部を直接見ながら進められる為、手術時間も短く、術中の出血などトラブルにも素早く対応する事が可能です。しかし腹腔鏡手術とは反対に創が大きい為、術後の疼痛がつよく身体的負担が大きい面や腸管が空気に触れる分、術後の腸管麻痺など合併症が起きやすくなる可能性があります。
 
外科的治療の場合、腸管の長さや術式によっては腸管同士を再度繋ぐことが難しく人工肛門増設の適応になる場合もあります。

  

大腸がんの予防方法

食事の欧米化が原因とされているため、バランスの良い食事(食物繊維やカルシウムの摂取)を心がけることや禁煙、適度な運動を行うことでの肥満予防など日常生活の行動が、癌予防へと繋がっていきます。日頃からの健康意識が大切です。また定期的な癌健診の受診も早期発見のきっかけとなるため、便潜血検査など精密検査に繋がる検査を積極的に行うことが推奨されます。

  

まとめ

大腸癌は早期治療を行えば治癒する疾患であるため、早期発見に繋がるがん検診を受けるなど日頃から予防に努めることが健康への第一歩となるため積極的な受診をしましょう。

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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