肝臓がんとは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/19

肝臓がんとは?原因、症状、治療法について解説

肝臓がんとは

肝臓は体内最大の臓器で、重さは成人で1kg以上あります。肝臓の主な役割として、門脈から流入した血液に含まれる栄養を代謝して体に必要な成分に変えることや脂肪の消化を助ける胆汁をつくること、代謝の際に生じた物質や摂取したアルコールなどの有害物質を解毒し排出することです。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症や癌があっても初期には自覚症状がほとんどありません。

肝癌は、原発性と転移性の2つに分けられます。成人にみられる原発性肝癌の約90%は、肝細胞癌が占めるといわれています。 また肝細胞がんは、男性の方が女性より多いことがわかっています。また、肝臓は血流が豊富ですので、他臓器の癌(特に大腸癌など)が最も転移しやすい臓器の1つであり、転移性肝癌の頻度が最も多いです。


  

肝臓がんの原因

今回は原発性肝癌のうち、肝細胞癌について説明します。

日本の肝細胞癌の最大の原因はC型肝炎であり、約60%を占めます。約15%のB型肝炎を含め、日本ではその約9割弱が肝炎を引き起こす肝炎ウイルスの感染によるものです。他にも肝癌の危険因子として、多量の飲酒・肝炎や肝硬変・喫煙・男性・加齢があります。
また、肝炎が進行すると、肝硬変という肝臓の病気になることがあります。 肝癌の患者さんの約60%は、この肝硬変の状態といわれています。

  

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肝臓がんの症状

肝癌になっても自覚症状は少ないといわれていますが、肝癌の方は、肝炎や肝硬変といった肝臓の病気をわずらっている人が多く、これらの病気による症状を自覚することがあります。
一般的に、慢性的に肝炎をわずらっている慢性肝炎の患者さんから、肝硬変、肝癌へと進行するといわれています。
 

①肝炎の症状

体がだるい・食欲不振・吐き気・黄疸(白目部分や肌の色が黄色くなる)
 

②肝硬変の症状

疲れやすい・お腹の痛みや張り・出血傾向・浮腫・食道静脈瘤・脾腫・手掌紅斑・太鼓ばち指・腹水・肝性脳症
 

③肝癌の症状

肝癌自体の症状は少ないが肝炎や肝硬変の症状が出る・発熱・お腹の上部の痛み・肝腫大・肝萎縮
 
肝がん末期では、肝臓の機能が障害されることで著しい体重減少や黄疸、腹水、全身のかゆみ、むくみ、疲労感のほか、腹痛や下痢などの多彩な症状が見られるようになります。
さらに、肝臓特有の有害物質を解毒する作用が低下することで、脳の神経が有害物質によって障害される「肝性脳症」と呼ばれる症状が出現することもあります。
肝性脳症をひきおこすと認知症のような状態になったり、昏睡状態に陥ってそのまま命を落としたりすることもあります。

  

肝臓がんの検査方法

検査方法は腫瘍マーカー、超音波検査、造影MRI、造影CTがあります。
 

・診察

診察時に、肝炎や肝硬変などの病気をわずらっていないか肝炎ウイルスに感染したことはないか、また肝癌の自覚症状はほとんどありませんが、同時にわずらっている肝臓の病気の症状があれば、お腹の張り具合や、お腹を押したときの痛みの程度なども確認します。 黄疸の症状は、肌よりも症状が現れやすい白目の部分などを調べます。
 

・超音波検査

耳では聞きとれない音波をからだにあて、体内の臓器、肝癌の有無・性状、腹水のたまり具合などを調べます。
 

・造影MRI

磁場と電波を用いて、体内の状態をさまざまな方向から鮮明に画像化し、肝癌の状態を調べます。より詳しく調べるために、造影剤を血管に注射したあと、MRIで撮影し肝臓の血流状態をみるダイナミックMRIという検査もあります。
 

・造影CT

エックス線で撮影した映像をコンピュータが計算して、人体を輪切りにした状態を画像化し、 肝がんの状態を調べる検査です。
よりくわしく調べるために、造影剤を血管に注射したあと、CTで撮影し肝臓の血流状態をみるダイナミックCTという検査もあります。
 

・腫瘍マーカー

血液検査によって、癌が発生すると血液中に増える特有な物質の量を調べる検査です。この物質は腫瘍マーカーと呼ばれ、癌の存在や状態を知る目安のひとつとなります。
肝細胞癌の補助診断に有用な腫瘍マーカーとして、AFP、PIVKA-Ⅱ、AFP-3分画が推奨されています。小肝細胞癌の診断においては2種類以上の腫瘍マーカーを測定することを推奨されています。
  

肝臓がんの治療方法

 

・手術療法

肝癌を含む部分を切り取る肝切除術は、からだへの負担は大きいですが、肝癌を確実に取り除くことができる点で優れています。
肝切除術ができるかどうかや手術方法については、肝臓や癌の状態や、患者さんが手術に耐えられるかということなどから、総合的に判断されます。また、肝機能が悪く積極的な治療ができない場合は肝移植が行われることがあります。
 

・局所療法

超音波で肝癌の位置を確認しながら、注射器や電極がついて高周波を発生させる針を刺して行う治療です。
 

・肝動脈塞栓療法/肝動脈化学塞栓療法

肝癌では、肝臓のはたらきが弱っているために手術ができないことも多く、塞栓療法を行うことがあります。 肝臓は、肝動脈と門脈という血管から栄養や酸素を取り入れています。
癌細胞は、門脈からの栄養や酸素をほとんど受け取れないため、肝動脈に抗がん剤やゼラチ ンなどの薬液を注入して血流を止める ことで、がん細胞を死滅させる治療です。
一方、正常な肝細胞は、血流を止めても門脈の血流が保たれています。そのためダメージが少なくてすみます。
 

・抗がん剤を用いた治療

肝癌の治療 肝癌の細胞を破壊したり、進行を止める抗がん剤を用いた治療です。
抗がん剤を肝がんとその周囲にねらいを定めて投与する次のような方法と、点滴や服用によって全身に投与する方法があります。
 

・緩和ケア

癌を切り取る手術が難しいとき、またほかの臓器や全身に癌が広がっているときには、体に負担のかかる手術や抗がん剤による治療ではなく、患者さんの生活の質を重視した治療を行います。
激しい痛みは患者さんの生活の質を大きく低下させてしまいます。そのため痛みをコントロールすることはとても大切です。
痛み止めとして、医療用麻薬や鎮痛剤が使われます。痛みがなくなることで、良い睡眠や食事ができるなど生活の質を高める効果があることが分かっています。

  

肝臓がんの予防方法

肝癌を予防するためには、多量の飲酒や喫煙といった、 肝癌の危険因子となる生活習慣を改善しなければなりません。
もし肝炎や肝硬変をわずらっていれば、肝癌に進行しないよう、定期的な診察や治療を受けましょう。 肝臓は免疫力に必要な物質をつくるなど、からだにとって 重要な役割を担っています。

ワクチン:肝炎ウイルスの感染予防が重要です。A型肝炎ワクチンやB型肝炎ワクチンがあり、感染のおそれがある場合に予防投与ができます。C型肝炎については、現在有効な予防薬はありません。
抗ウイルス薬によるインターフェロン療法(C型肝炎に罹患している場合):肝癌の予防抗ウイルス薬のひとつであるインターフェロンを用い、肝癌の危険因子とされるB型およびC型肝炎ウイルスを攻撃し、肝炎や肝硬変(かんこうへん)を治療することで、肝癌への移行を予防する治療です。
特に、C型肝炎ウイルスによる肝がんになることを、効果的に予防するといわれています。 しかし、だるい、発熱、関節痛、抑うつ状態、血球の減少などの副作用が現れることがあり、治療の初期には入院が必要です。
また、治療費が高いといった問題もあるので、医師と十分に話し合うことが大切です。

  

まとめ

肝機能の低下や脂肪肝、ウイルス性肝炎を放っておくと、気づいたときには肝癌になっている可能性があります。肝癌はワクチンや生活習慣の改善で肝癌を発症するリスクを低下させることができます。
ですので、定期的な検査とその結果をチェックすることが大切となります。MYメディカルクリニックでは健康診断を実施しております。また、肝臓について気になる点がございましたら、お気軽に当院外来にご相談ください。

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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