膀胱がんとは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/06/29

膀胱がんとは?原因、症状、治療法について解説

膀胱がんとは

膀胱とは骨盤の中にある臓器です。腎臓で作られた尿は、腎杯、腎盂、尿管を通って一時的に「膀胱」に貯められて、ある程度の量になったら尿道を通って身体の外に排出されています。

膀胱がんとは、膀胱に発生するがんの総称です。
腫瘍とは、身体の中で異常に増えた細胞のかたまりのことを言います。腫瘍の中には、一つの場所で大きくなる「良性腫瘍」と、周りを壊しながら滲み出るように広がり(浸潤)、身体の中で別の場所に飛び移って新しいかたまりをつくる(転移)などの特徴を持った「悪性腫瘍」があります。
膀胱、腎盂、尿管は尿路上皮という粘膜に覆われており、膀胱がんのほとんどが尿路上皮にできる上皮細胞がんと言われています。がんが膀胱の周囲にどれくらい広がっているか(深達度)で筋層非浸潤性がん、筋層浸潤性がん、転移性がんに分類されます。

  

膀胱がんの症状は

膀胱がんの主な症状は血尿です。血尿には、尿の色が黄色ではなく赤や茶色など目視でわかる血尿(肉眼的血尿)と、顕微鏡でわかる血尿(顕微鏡的血尿)があります。膀胱がんによる血尿には、発熱や痛みなどの自覚症状が見られないことが特徴です。不快な症状が無く、血尿が出たり、出なかったりするため、受診をしない間に進行してしまう場合もあります。
膀胱炎や尿路結石、前立腺肥大などでも似たような症状が出てくることもあるため、血尿が出た場合や、健康診断で尿潜血の所見があった場合は、はやめに泌尿器科を受診し医師に相談することをおすすめします。
血尿の他には、頻尿や排尿時の痛みなどの症状があります。がんが進行してくると、尿の出しづらさや転移により、背中や腰などの体の部位が痛む、体がむくむなどの症状も出てくることがあります。

 

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膀胱がんの原因は

膀胱がんのリスク因子として様々な要因がありますが、喫煙者は非喫煙者の4倍膀胱がんになりやすいと言われており、最も身近な危険因子です。その他には職業性曝露による発がん、膀胱内の慢性的な炎症、医薬品などの医学的要因などがあります。男性は女性の約4倍の発症率となっており、40歳以上で発症する場合が多いと言われています。

  

膀胱がんの検査方法と診断

膀胱がんの主な症状は血尿のため、まずは尿を詳しく調べる検査が必要となります。

1.尿一般検査

PSA検査とは採血をしてPSAの値を測定する血液検査です。
PSAとは前立腺特異抗原( prostate specific antigen)と呼ばれ前立腺液に含まれるタンパク質の一種です。PSAは健常者でもわずかに血液中に存在しますが、がんや炎症により前立腺が壊れるとPSAが血液中に増加していきます。これにより、PSA値を測定することで前立腺がんの可能性が調べられます。PSAの基準値は一般的に0〜4ng/mlです。PSA値は前立腺がん以外に、良性疾患の前立腺肥大症、前立腺炎でも高い値が出ることがあります。


  

2.尿細胞診検査

尿の中に悪性のがん細胞がないかを調べる検査です。尿細胞診で悪性のがん細胞が認められた場合はさらに詳しい検査を行います。

  

3.超音波検査

体の表面に超音波の出る機会を当てて、体の中からはねかえってくる超音波を画像として映し出して、膀胱に腫瘤があるのかを調べます。体の表面から機会を当てるだけの検査のため、痛みや苦痛は少ない検査です。
当院では、尿検査やCT検査、腹部超音波検査を受けることができます。検査でがんが疑われる場合は、より詳しく調べられる医療機関を紹介しています。


  

4.膀胱鏡検査(膀胱内内視鏡)

細い管になっている内視鏡(カメラ)を尿道から入れて、膀胱内の腫瘤の有無、場所、大きさ、数、形などを調べる検査です。
膀胱がんが疑われる場合には、医師の判断の元、診断や治療方針を決定するために必ず行う検査です。

  

5.(造影)CT検査

CT検査は、放射線を体の周りから当てて、体の断面を画像として映し出す検査です。造影CT検査は、造影剤を点滴で体の中に流し入れ、造影剤の流れ方を見ることでより詳しく臓器や血管を調べる事ができます。
膀胱がんの場合、膀胱だけでなく腎盂や尿管など膀胱以外の尿路にもがんが発生している場合があるため、CT検査で確認します。また、全身のCT検査を行うことで転移がないかも確認することができます。

  

6.MRI検査

MRI検査は、磁気を使って体の中を映し出す検査です。
CT検査と同じく他の臓器へのがんの転移や、どのくらいがんが広がっているかを確認することができます。

  

7.骨シンチグラフィ検査

がんが骨に転移しているかどうかを調べる検査です。がんがあるとその部分に集まる性質のある薬剤を体に注射して調べます。

  

8.TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)

尿道から膀胱内に内視鏡(カメラ)を入れて、がんの部位を電気メスで切除する検査兼手術のことです。
切除した部位を顕微鏡で調べることでがんがどのくらい深くまで広がっているか(深達度)や正常な細胞とどれくらい異なっているのか(異型度)などを調べることができます。がんが膀胱の筋肉まで広がっていない場合は、この検査をがんを取り除く手術とすることがあります。

  

膀胱がんの治療方法

治療法は、がんの進行度(ステージ)など様々なことから医師が検討します。

膀胱内注入療法(抗がん剤、BCG)

先程検査でも紹介したTURBTのあとに、再発を防ぐために行われることが多いです。尿道からカテーテルという細い管を使って膀胱の中に薬剤を注入します。

  

手術療法

膀胱全摘除術

内視鏡では切除しきれない場合、膀胱や尿管、尿道、女性器や男性器を切除し、骨盤内のリンパ節を摘出します。膀胱がなくなるため、膀胱の代わりとなる排尿路をつくる手術も必要となります。

  

放射線治療

がんに放射線をあてて治療する方法です。膀胱を残したい場合や手術が困難な場合に行うことがあります。
その他薬物療法、免疫療法などがあります。

  

  

まとめ

膀胱がんの主な症状は血尿です。発熱や痛みなどが伴わない場合が多く、血尿が出たり、出なかったりすることで放置してしまい、発見が遅れてしまうこともあります。がんの種類によっては進行が早く、膀胱だけなくリンパ節や肝臓、肺、骨など他の臓器にも転移する恐れもあります。
たまに血尿が出るなどの自覚症状がある方や、健康診断の結果で尿潜血が陽性だった方は念のため医療機関を受診することをおすすめします。当院でも尿検査や、血液検査、超音波検査やCT検査を受けることができますので、ご心配な方は一度ご相談ください。

 

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MYメディカルクリニック顧問 北村 唯一医師

監修:MYメディカルクリニック 顧問

北村 唯一 Dr. Sasakura Wataru

略歴

  • 1973年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 1998年 東京大学医学部附属病院泌尿器科 教授
  • 2006年 財団法人 性の健康医学財団 理事
  • 2008年 東京大学 名誉教授
  • 2008年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 院長
  • 2011年 財団法人 性の健康医学財団 理事長
  • 2013年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 名誉院長
  • 2014年 自靖会親水クリニック 院長
  • 2014年 光靖会北村記念クリニック 名誉院長
  • 2018年 医療法人社団裕志会 理事長
  • 2022年 医療法人社団MYメディカル 顧問

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