子宮頸がんとは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/13

子宮頸がんとは?原因、症状、治療法について解説

子宮頸がんとは

子宮頸がんとは、子宮頸部にできるがんのことです。大部分の子宮頸がんは、子宮頸部上皮内腫瘍や上皮内腺がんという、がんになる前の状態を経てからがんになります。腟に近い側にできた場合には、婦人科での観察や検査がしやすいため発見されやすくなりますが、より奥の部分にできると、発見が難しいこともあります。また、早期に発見すれば比較的治療しやすく予後の良いがんですが、進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要です。 
 
子宮頸がんは、進行すると骨盤の中のリンパ節に転移したり、子宮頸部の周りの組織に広がったり、子宮から離れた肺などの臓器に転移したりすることがあります。 
子宮頸がんは、顕微鏡下でのがん組織の見え方によって、いくつかの組織型に分類されます。
 
扁平上皮がんには、 CIN(子宮頸部頸部上皮内腫瘍)と呼ばれるがんになる前の状態が存在します。CINには3つの段階があり、CIN1、CIN2、CIN3と進みます。CIN3は扁平上皮がんの前がん病変とされています。腺がんの前がん病変はAIS(上皮内腺がん)といいます。前がん病変(CIN3またはAIS)があることが分かった場合には、治療を行います。また、CIN1、CIN2の場合には、引き続き定期的に検査を行って進行していないか確かめます。


 

子宮頸がんの原因は

子宮頚がんの約95%はHPVの感染が原因でおこると言われています。HPVとはヒトパピローマウイルスのことです。HPVは皮膚や粘膜に感染するありふれたウイルスで、感染経路は主に性交渉となりますが、口や手を介しただけの接触でも感染するため、通常の性感染症、性交渉の経験がある方の60~90%が感染するとも言われています。
  
ほかの感染症に比べ予防が難しく、感染しても90%の人は免疫で排除されますが、中にはそのまま子宮頸部にとどまり、長い間ウイルスが排除されずに感染したままでいることによって子宮頸がんが発生すると言われています。

子宮頸がんについての詳しい記事はこちら

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子宮頸がんの症状は

がんになる前の状態であるCINやAISの時期には症状がなく、おりものの異常や出血、痛みもありません。 
しかし、子宮頸がんが進行すると、月経時以外や性交時の出血、においを伴う濃い茶色や膿うみのようなおりもの、水っぽいおりものや粘液がたくさん出るなどの症状がみられることがあります。
 
がんが子宮の外に広がると、多量の出血、骨盤や下腹部・腰の痛み、尿や便に血が混じる、下肢のむくみなどの症状が出ることもあります。

  

子宮頸がんの検査方法

子宮頸部細胞診

腟鏡という器械を用いて子宮腟部を観察し、ブラシを用いて子宮腟部、頸管の表面の細胞を採取します。この方法は、「子宮頸部異形成」とよばれる子宮頸がんの前がん病変、および子宮頸がんの早期発見をすることが目的です。
また子宮頸部異形成、子宮頸がんの原因となるHPVの有無を調べることも可能です。HPVの有無を調べることでハイリスクHPVの持続感染の状態・一過性感染の状態まで検出されるため、早い段階で子宮頸部異形成を発見できる、より感度の高い検査手法です。
 
細胞診検査でASC-USと診断されることがあります。これは細胞に変化があって、異形成(HPV感染)も否定しきれないが単なる炎症だけかもしれない、という微妙なグレーゾーンのことを指します。ASC-USと診断された場合は、HPVの感染がないかの検査をします。細胞診検査と同様、子宮頸部の細胞を採取する検査です。 
 
その結果HPVの感染が認められた場合は、さらにコルポスコピーという検査を行い、異形成の段階を調べます。コルポスコピー検査とは腟鏡をつけ、薄めた酢酸を子宮頸部に塗ります。病気の部分があれば色が変色し、広がりや進み具合を観察することができます。観察した後、異常があると思われる場所から組織を採取します。採取した場所の組織を調べることで異常の有無、異常の進み具合がわかります。異常と思われる場所が無い場合は、観察だけで終了することもあります。 
 
異常がなければ、1〜2年に1回検査をするのが推奨されています。異形成などの病変が発見された場合は、進行の程度を確認するために半年や3ヶ月に1回程度の定期的な検査が必要です。

  

子宮頸がんの治療方法

がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。子宮頸がんでは、治療開始前に病期を決定する進行期分類を用いていて、Ⅰ期〜Ⅳ期に分けられ、早期から進行するにつれて数字が大きくなります。 
前がん病変(CIN3またはAIS)や初期の子宮頸がんでは、まず子宮頸部円錐切除術などで組織診を行い、その結果に基づいて治療方針を決めていくことが一般的です。
 
がんの浸潤が5㎜を超えるものや子宮頸部を超えて広がっているものは放射線治療と、放射線治療と薬物療法を同時に行う同時化学放射線療法が治療の中心となります。さらに、がんが膀胱粘膜、直腸粘膜に浸潤している又は、小骨盤腔を超えて広がるものでは薬物療法が治療の中心となります。 

①手術

(1)円錐切除術

子宮頸部の一部を円錐状に切除し、病理組織学的に病変の広がりを詳しく調べます。CIN3に対しては、病変を完全に取り切る治療として行います。子宮の多くの部分を残すことができますが、その後の妊娠や出産に影響が出る場合もあります。
   

(2)単純子宮全摘出術

子宮頸部の周りの組織は取らずに、子宮だけを切除します。円錐切除を行い、切除した面にCIN3があった場合や、診断がAISまたはごく早期のがんだった場合に行います。開腹手術、腟から切除する腟式手術、腹腔鏡下手術のいずれかで行います。子宮を摘出するため、妊娠することはできなくなりますが、性交渉は可能です。
   

(3)準広汎こうはん子宮全摘出術

がんを取り残さないように、単純子宮全摘出術よりも少し広めに子宮を切除する方法です。子宮と一緒に、子宮を支えている基靱帯などの子宮頸部の周りの組織の一部と、腟の一部を切除します。膀胱の神経の大部分を温存することができるため、尿が出にくくなるといった術後の排尿のトラブルはほとんど起こりません。子宮を摘出するため、妊娠することはできなくなりますが、性交渉は可能です。
   

(4)広汎子宮全摘出術

がんを完全に取り切るために、準広汎子宮全摘出術よりもさらに子宮を広く切除する方法です。子宮と一緒に、子宮の周りの組織や腟を大きく切除します。また、骨盤内のリンパ節も一緒に切除するリンパ節郭清を行います。がんを完全に取り切ることができる可能性は高くなりますが、リンパ浮腫、排尿のトラブル、性生活への影響などが起こることもあります。卵巣を切除するかどうかは、年齢や組織型、病期なども考慮して決めます。
   

(5)広汎子宮頸部摘出術

妊娠するための力を保つために、子宮体部と卵巣を残し、それ以外は広汎子宮全摘出術と同じ範囲を切除します。通常であれば広汎子宮全摘出術が必要な病期の場合で、妊娠の希望があるかつ妊娠可能な年齢のときに検討します。主な手術方法として、開腹手術と腟から切除する腟式手術があります。本来取るべき子宮体部と卵巣を残すため、明らかなリンパ節転移がないなどの一定の基準を満たしている必要があります。
   

②放射線治療

放射線治療は手術、薬物療法などと並んで、がんに対する主な治療法の1つです。細胞内のDNAを直接傷つける高エネルギーのX線やガンマ線などの放射線を、がんに照射し治療するものです。
子宮頸がんの放射線治療には、骨盤の外から放射線を照射する外部照射と、子宮や腟に放射線を出す器具を入れて直接子宮頸部のがんに照射する腔内照射、また、放射線を出す物質をがん組織やその周辺組織内に直接挿入して行う組織内照射があります。
子宮頸がんでは、ほとんどの病期で放射線治療を行うことができますが、比較的進行したがんの場合には、治療の効果を高めるために、細胞障害性抗がん薬とともに放射線治療を行う化学放射線療法も検討されます。
   

子宮頸がんの予防方法

HPVには180種類以上の遺伝子型が見つかっているため、その全てに対応するワクチンを作るのは困難ですが、子宮頸がんになりやすいHPVの型は既に研究でわかっています。現在国内で承認されているワクチンには最もリスクの高い16型と18型を予防する2価の「サーバリックス」、それに加え尖圭コンジローマの原因となる6型、11型を含む4価の「ガーダシル」、更に最近では31型、33型、45型、52型、58型も含む9価の「シルガード9」及び、シルガード9と同様ですが国内未承認の「ガーダシル9」が発売されました。  
当院ではシルガード9とガーダシル9を取り扱っております。
 
現在日本で公費助成となっているのは2価と4価のワクチンのみです。海外では子宮頸がんの原因として16型、18型で7割以上と多くを占めるのに対し、日本では16型、18型は6割未満であり、それ以外の遺伝子型が占める割合が高くなっています。そのため9価のワクチンでは実に日本での子宮頸がんの原因となるHPVの約90%をカバーできることになります。
 
但し、一度感染したHPVを排除する効果はワクチンにはないため、初めて性交渉をする前に接種することが最も有効的と言われています。もちろん新たな感染は予防できるため、過去に性交渉の経験がある方でも有効です。そして、男性にとってもパートナーの子宮頸がんを予防する上で、ワクチン接種を行うことは重要であると考えます(男性自身にも尖圭コンジローマやその他HPV関連のがんを予防するメリットもあります)。  

HPVワクチン・シルガード9について

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まとめ

子宮頸がんとは性交渉の経験のある方の誰もが罹患する可能性のあるがんです。その95%はHPV感染により引き起こされます。がんになる状態の前は症状がほとんどなく、また早期発見できれば治療は難しくありませんが、進行すると治療が難しい疾患であるため、早い段階で異常を発見できるよう定期的な検査が必要です。予防にはHPVワクチンが有用で約90%をカバーできるといわれています。

 

  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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