サウジアラビア(Saudi Arabia)

 
サウジアラビア(Saudi Arabia)

サウジアラビアへの渡航に備えた予防接種

表は横にスクロールします

項目 説明
地域概要 サウジアラビアは,アラビア語で「サウード(家)によるアラブ(の王国)」という意味を持つ君主制の王国であり,メッカとマディーナというイスラム教の2大聖地を擁する,イスラム世界の中心的存在です。国土はアラビア半島の約80%を占めています。総面積は215万平方キロメートルで日本の約6倍です。地形は多様で西の紅海側よりティハマ海岸平野、サラワット山脈、ジャザン・ナジラン等の渓谷地帯、ナジド平原、東部海岸平原と続いて東のペルシャ湾に至ります。国土の中央を北回帰線が通り亜熱帯高圧帯の影響を受けています。
医療情報 主要都市には高水準の医療施設がありますが、医師により診療レベルの差が大きいため注意が必要です。中小都市では簡素な病院しかなく重症の場合は移送が必要となる場合があります。病院によっては金曜日、土曜日は休診であったり診療時間が短縮されていたりする場合があります。礼拝時間は診療を休止する場合があります。イスラム暦のラマダン月(断食月)は、受診時間が通常と大きく変わる場合があります。
緊急時を除いては予約をお勧めします。多くの施設では待合室は男女別になっています。私立病院ではアラビア語よりも英語の使用が一般的です。支払いは基本的に全額先払いで、入院する場合はデポジットを求められることがあります。医薬品は一般薬、処方薬とも比較的容易に入手可能ですが、抗生剤などは医師の処方箋が必要です。都市部には多数の薬局があり、欧米系の医薬品も取り扱っています。
気候 ほとんどの地域が高温な砂漠気候に該当し降水は冬と春にわずかにあるのみです。南西部山岳地域には夏に多雨となるステップ気候に該当する場所もあります。湿度は西部海岸地域、東部海岸平野、南西部山岳地域は年間を通じて多湿で、内陸に向かうにつれて乾燥するようになります。
中央部の標高約600メートルに位置する首都リヤドの気温は冬が9℃(最低気温の平均)~20℃(最高気温の平均)、夏が29℃~37℃、乾燥が強く平均湿度は26%、年間降水量は93ミリです。紅海に面する第二の都市ジッダは冬が23℃~29℃、夏が27℃~38℃、湿度は高く平均60%、年間降水量は61ミリです。南西部山岳地域の標高約2,200メートルに位置する高原都市アブバでは冬が13℃~27℃、夏が17℃~34℃、平均湿度は63%、年間降水量は218ミリとなっています。
宗教 イスラム教
文化 サウジアラビアは、メッカとマディーナの二大聖地を抱え、イスラム教国の中でも特に厳しくその戒律を守っている国です。1日に5回、礼拝の時間があり、その前後の時間帯は商店やレストランなどが閉店します。病院の診療も影響を受ける場合があり注意が必要です。アルコールと豚肉は戒律のために禁止されています。舞踊・音楽・芸術等に対する考え方も日本とは大きく異なりこれらを楽しむ機会は大きく制限されています。女性は,他人の男性の前では頭髪から足先までを黒衣(アバヤ)で覆うことなどが知られています。
外国人女性の行動・服装に対する制約は近年緩和されてきていますが肌の露出は可能な限り避けた方が無難です。
気をつけたい感染症 細菌性赤痢やA型肝炎、腸チフス、サルモネラ、カンピロバクター感染症、コレラ、アメーバ赤痢、ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)、ポリオ、クリミア・コンゴ出血熱
推奨する予防接種 A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、ポリオ
2015年の水道水品質調査ではリヤド中央部のサンプルのうち88%で米国基準を満たし飲用に適すると判断されましたが残り12%では細菌の混入が検出されました。
食品は生ものを避け加熱したものを食べる等の通常の注意で十分な場合がほとんどですが、僻地などでは衛生管理不十分な井戸水等を使用している場合がありますので注意して下さい。

気をつけたい病気

表は横にスクロールします

病名 説明
髄膜炎菌性髄膜炎 髄膜炎菌によって起こる髄膜炎です。ヒトからヒトへと飛沫感染します。潜伏期間は2~10日です。症状は発熱、頭痛、意識レベルの低下等です。治療は抗菌薬を用いますが、適切な治療を行った場合でも死亡率は10~40%とされています。
かつては巡礼者が集まるメッカやメディナで流行が発生していましたが、2001年の大流行以降に採られるようになった予防接種や予防的抗生物質内服の対策が奏功し、2012年以降の年間報告数は10名以下にとどまっています。
中東呼吸器症候群(MERS: Middle East Respiratory Syndrome) 2012年に発見された新種のコロナウイルスMERS-Covによって引き起こされる感染症です。ヒトコブラクダとの濃厚接触が感染リスクとされていますが、家族間や医療機関などで飛沫感染や接触感染によるとみられる限定的なヒトヒト感染も報告されています。無症状例から急性呼吸窮迫症候群をきたす重症例まであります。
実用化されたワクチンや特効薬はなく、罹患した場合は対症療法を行います。ヒトコブラクダなどの動物との接触を避ける、未殺菌ラクダ乳等の加熱不十分な食品は避けてください。
熱帯熱マラリア マラリア原虫に感染したハマダラ蚊に刺されることにより感染します。症状は発熱、意識障害、呼吸障害などで適切に治療を行わないと死に至ることがあります。抗マラリア薬で治療します。
インフルエンザ 人口の多いリヤドやジェッダでの報告が多くなっています。潜伏期は1~3日で発熱、頭痛、関節痛などの症状が突発し咳、鼻汁などの上気道炎症状が続きます。幼児などでは脳症を発症する場合があります。
治療は抗ウイルス薬や解熱剤を用います。
ウイルス性肝炎 感染経路はウイルスにより異なり、汚染された食品や水による経口感染や医療事故、性行為、母子間での血液感染などです。急性肝炎の場合は発熱、全身倦怠感、黄疸等が多いですが劇症化し死亡することもあります。
慢性化して、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行する場合があります。渡航前に予防ワクチン接種を推奨します。
感染性下痢症、腸チフスなどの経口感染症 サルモネラ、赤痢菌、赤痢アメーバなどによる感染性下痢症が発生しています。多くは汚染された食品や水からの経口感染です。発熱、腹痛、下痢、粘血便等の症状を起こします。腸チフス、パラチフスはそれぞれチフス菌とパラチフス菌により発症します。潜伏期間は2週間前後で高熱が主症状で下痢は必ずしも起こしません。適切に治療しない場合は腸穿孔を起こす場合があります。抗生物質で治療します。
呼吸器疾患や心疾患 当国の原因物質は重油燃焼物、砂塵、産業によるもの、交通渋滞によるものとされています。暴露により呼吸器や新血管系への悪影響が懸念されています。心肺の持病を持つ方、高齢者、小児は影響を受けやすいとされています。
動物咬傷 動物の唾液から狂犬病ウイルスに感染する可能性があります。狂犬病は発病すると治療方法はなく悲惨な神経症状を示してほぼ100%が死亡します。確認された動物はイヌ、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、キツネ、ネコ、オオカミ、サル、イワダヌキでした。砂漠や山岳には多くの種類の毒蛇が生息しており被害が報告されています。
その他の人獣感染症、昆虫等が媒介する感染症 2000年にはアフリカ以外では初めてリフトバレー熱が流行し166名が死亡しました。ネッタイシマカやヒトスジシマカによるデング熱、サシチョウバエによるリーシュマニア症、ヒゼンダニによる疥癬症などが毎年報告されています。
その他 死因統計で3位以下は脳卒中、慢性腎臓病、肺炎、アルツハイマー病と続いて7位は騒乱とテロとなっています。
最新の情勢に確認し紛争地域には絶対に近寄らないようにしてください。