マレーシア(Malaysia)

 
マレーシア(Malaysia)

マレーシアへの渡航に備えた予防接種

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項目 説明
地域概要 マレーシアは、東南アジアに位置する立憲君主制の国で、人口は約3、200万人、国土の面積は九州・沖縄を除いた日本の面積とほぼ同じ約33万平方メートルです。

首都クアラルンプールは「KL(ケーエル)」の愛称で呼ばれ、積極的な外資の導入によりここ15年ほどで近代化を果たしました。クアラルンプールのシンボル「ペトロナス・ツインタワー」は、右側の「タワー1」を日本企業が建設したことでも有名です。これらの近代建築群は、マレーシア発展のシンボルとして親しまれています。
医療情報 医療機関は比較的充実しており、大きな私立病院であれば設備も十分に整っているため特に問題なく受診できます。こうした病院の多くでは海外旅行傷害保険があればキャッシュレスで受診できます。

ほとんどの医師は英語を話し、日本人スタッフや日本語での診療が可能な医師が勤務している私立病院もあります。このような医療機関は一般に高額なので、海外旅行傷害保険に加入しておくことをお勧めします。
気候 マレーシアの年間平均気温は26~27℃で、マレー半島のほぼ中央に位置する高原地帯は一年を通じて常春の気候です。

マレー半島東部やボルネオ島では、11月~3月が雨季で、西部では3月~4月初旬、10月~11月が雨季ですが、東部ほど雨は多くないようです。雨の後は気温が下がり、過ごしやすくなります。
宗教 イスラム教、仏教、ヒンズー教、キリスト教など
文化 マレーシアは多民族国家であり、言語、宗教、食事、生活習慣など多様な文化が複雑に交わりマレーシアならではの独自の文化を持ちます。

多民族・多宗教である背景から食文化にも特徴があり、イスラム教徒は豚やアルコールを口にしない一方、インド系のヒンドゥー教徒は牛を食べることが禁じられています。
気をつけたい感染症 A型肝炎、腸炎ビブリオ、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、デング熱、チクングニア熱
推奨する予防接種 A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎
特にA・B型肝炎、破傷風のワクチン接種をお勧めします。腸チフスの発生もみられますので、ワクチン接種を検討しても良いでしょう。また、サラワク州への渡航に際しては日本脳炎ワクチン及び狂犬病ワクチンの接種も検討すると良いでしょう。
小児の渡航者は、日本で定期予防接種として定められたワクチンを接種しておくことが必要です。また、任意接種とされているもののうち、おたふく風邪、A型肝炎等の接種も勧められます。当地でも接種可能ですが、渡航前にトラベルクリニック等を受診し、接種計画をたてることをお勧めいたします。

気をつけたい病気

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病名 説明
急性胃腸炎 細菌・ウイルスによるものが多く、腹痛・下痢(時により発熱や嘔吐)といった症状が起こります。毒性の強い細菌に感染しない限りは、脱水症状にならないように適宜水分を補給し、菌を出してしまえば改善しますので、必要以上に神経質になる必要はありません。

細菌性の下痢では、下痢止めを使いすぎると、かえって腸内で毒性の強い菌が増え、症状を悪化させることがありますので、注意が必要です。なお、衰弱が著しい場合や、何日も下痢や発熱が続く場合などは、医師に相談してください。多くは、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、コレラ菌、赤痢菌、ノロウイルス、アメーバ赤痢などが原因となります。

生ものや加熱不十分な食品、都市部以外で衛生的では無い水道水、ストリートフードの摂取はなるべく避けるようにしましょう。このほか旅行での疲労、暴飲暴食、慣れない食べ物が原因で起こる下痢などもあります。
デング熱・チクングニア熱 蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ。主に日中に活動する)に媒介されるウイルス性感染症です。都市部でも多く発生しており、蚊が発生しやすい雨季に患者も増加します。虫除け、蚊取り線香などを使用し、身を守ってください。

デング熱は、発熱・頭痛・筋肉痛・発疹といった症状がみられますが、一部は重症化し、血小板の低下、時にデング出血熱に移行して死亡する人もいます。

チクングニア熱は発熱と関節痛が必発し、筋肉痛、リンパ節腫脹などがみられることもあります。デング熱・チクングニア熱にはワクチンや直接有効な治療薬は存在せず、安静と対症療法を行います。
ジカウイルス感染症 南米の他、アジア地域でも発生が増加しており、マレーシア国内でも流行地域への渡航歴の無い患者の発生が報告されています。デング熱と同じ蚊がウイルスを媒介しますので、防蚊対策が重要です。

また、母胎から胎児への感染(母子感染)、輸血や性交渉による感染リスクも指摘されています。こうしたリスクを考慮し、流行地域に滞在中は、症状の有無にかかわらず、性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えるようご注意ください。

また、流行地域から帰国した男女は、症状の有無にかかわらず、最低6か月間、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えるようにしてください。なお、性行為による感染は、男性から女性パートナーのみならず、女性から男性パートナーへの感染例も報告されています。

ジカウイルスに感染してから発症するまでの期間(潜伏期間)は2~12日であり、主に2~7日で、およそ2割の人に発症すると言われています。発症すると軽度の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、斑丘疹、疲労感、倦怠感などを呈しますが、一般的にデング熱やチクングニア熱より軽症と言われています。

妊娠中又は妊娠予定の女性が感染すると、母子感染によって胎児に小頭症等の先天性障害を来す可能性が指摘されています。現在、ジカウイルス感染症には有効なワクチンや特異的な治療法はなく、対症療法が行われます。

ジカウイルス感染症が流行している地域で蚊に刺された後に発熱が続く、または発疹が出るなど、ジカウイルス感染症を疑う症状が現れた場合には、医療機関への受診をお勧めします。
日本脳炎 都市部で感染することは少ないものの、1年を通して散発的に発生しています。特に、サラワク州では、10月~12月を中心に患者が多く発生しています。

日本脳炎は発症した場合その20~40%が死に至ります(突然の高熱、頭痛、嘔吐や意識障害)。流行地域を訪れる場合は予防接種をお勧めします。
マラリア 都市部で感染することはまずありませんが、半島内陸部、特に森林地帯では現在も発生しています(ボルネオ島のサバ州やサラワク州の森林地帯の限られた地域、半島内陸部など)。

マラリア原虫に感染している蚊(ハマダラカ。夜間に活動する)に刺されることで感染します。マラリアにもいくつかの種類がありますが、その中でも重症度が高い熱帯熱マラリアについて述べますと、潜伏期間(感染しているが症状がまだ出ていない期間)が約1~2週間(ほとんどが1ヶ月以内に症状が出ます)あり、突然の高熱がおこります。

治療はメフロキン、アーテスネイトなどの抗マラリア薬を使用します。治療開始が遅れると脳や腎臓への影響が出てしまい、死亡する危険性があります。通常の観光旅行や都市部での滞在では感染の危険性はまずありませんが、トレッキングツアーやエコツアーなどの自然と触れ合うタイプの旅行の場合には虫除け対策をしっかりと実施してください。
狂犬病 マレーシアでは、2017年以降、国内の一部の地域(東マレーシアに位置するサラワク州)で感染が確認されており、感染例のほぼ全例で死亡が報告されています。犬に限らず野生動物には不用意に接触しないようにしてください。

万が一接触し感染の恐れがある場合には、速やかに医療機関を受診して適切な処置を受けてください。狂犬病は発症するとほぼ100%死亡する疾患です。犬などに噛まれた場合、必ず当日中に病院を受診し、ワクチンの接種などについて相談してください。
レプトスピラ症・類鼻疽(るいびそ) 都市部でのリスクはあまり高くありませんが、熱帯地域では、カヤックなど水に関連するレクリエーションでレプトスピラ症にかかることがあります。2000年には、ボルネオ島での冒険レースに参加した旅行者が集団感染したとの報告がありました。

また、類鼻疽(るいびそ)のリスク地域でもあるので、川で泳いだり、特に雨季に土に触ったりしないようにしましょう。 レプトスピラ症は2日~3週間の症状のない期間のあと、頭痛、発熱、悪寒、筋肉痛、吐き気、下痢や腹痛などが現れたり、皮疹が現れることがあります。重症になると体が黄色くなり(黄疸)、多臓器の機能が障害される、ワイル病と呼ばれる症状を呈することがあり、この場合、最悪死に至ることがあります。抗生物質で治療します。

類鼻疽は数時間~21日間の症状のない期間のあと、発熱を主とする様々な症状が現れ、早い場合発病してから48時間程度で死亡します。何年も経過した後、突然皮膚が化膿したり、重い肺炎を起こしたりすることもあります。抗生物質の投与を主とする集中治療が行われます。
ポリオ マレーシアでは、2000年にポリオ根絶を宣言していましたが、2019年12月、東マレーシアに位置するサバ州において、27年振りとなるポリオ感染者が確認され、現在までにサバ州で4例が報告されています。

マレーシア政府によるポリオ予防接種キャンペーンや環境調査等の措置が執られているものの、現在、特効薬などの確実な治療法はないため、サバ州へ渡航予定の方は、追加の予防接種を検討してください。
その他の感染症 腸チフス(チフス菌がついた飲食物から感染。発熱だけが症状のこともあります)、A型肝炎・B型肝炎といった病気も東南アジアでは一般的に見られています。

A型肝炎は食べ物から、そしてB型肝炎は血液・体液から感染しますが、いずれも倦怠感・発熱・黄疸といった症状が出ます。

腸チフス・A・B型肝炎については、予防接種がありますので長期滞在される場合は、接種しておくことをお勧めします。(都市部の私立病院・クリニックなどで接種できます。)