お腹の張り、放置は危険?膨満感の原因と対策を解説
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お腹の張り、放置は危険?膨満感の原因と対策を解説
お腹が張って苦しい、食後にお腹がはって辛い…。そんな不快な膨満感に悩まされている方は多いのではないでしょうか。実は、この「お腹の張り」という症状は、単なる食べ過ぎだけでなく、過敏性腸症候群や腸閉塞など、深刻な病気のサインかもしれません。
本記事では、お腹の張りの主な原因から考えられる病気、そして日常生活での改善方法まで、専門医の監修のもと詳しく解説します。この記事を読めば、自分の症状が要注意なものかどうかの判断基準や、適切な対処法がわかるようになります。不快な膨満感から解放されて、快適な毎日を送りましょう。
お腹が張る原因とは?病気と改善方法を詳しく解説
お腹の張りには様々な原因があり、適切な対処が必要な症状です。「なんとなくお腹が張る」と感じている方も多いのではないでしょうか。以下で、お腹の張りの定義から、考えられる原因、改善方法まで詳しく解説していきます。
お腹が張るとはどういう意味か?
お腹が張る症状は、医学的には「腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)」と呼ばれています。この症状には主に2種類あり、1つは「お腹が張って苦しい」「お腹が重い」「お腹がゴロゴロする」といった消化管にガスが溜まることで生じるもの、もう1つは「胃が重苦しい」「胃に不快感がある」など胃の運動機能が低下して起こる胃部膨満感です。
また、腸内細菌のバランスが乱れたり、無意識のうちに空気を飲み込んでしまう「呑気症」によってガスが発生し、お腹が張ったりすることもあります。症状は人によって異なり、「お腹が張って苦しい」「おならの回数が増えた」「下腹部だけぽっこりしている」など、様々な形で現れます。
重要なのは、このような症状が長期間続く場合や他の症状を伴う場合、何らかの疾患が隠れている可能性があるということです。そのため、継続的な症状がある場合は、医療機関での検査を受けることが推奨されます。
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お腹が張る主な理由
お腹の張りには、日常生活における様々な要因が関係しています。食事の取り方から運動習慣まで、生活習慣が大きく影響する症状です。以下で、主な原因について詳しく見ていきましょう。
食べ方による影響
多くの人は、食事中や会話中に無意識のうちに空気を飲み込んでいます。特に早食いの習慣がある方や、一度に大量の食事を摂取する方は、食べ物と一緒に空気を飲み込みやすい傾向にあります。
また、食事中の会話も空気を飲み込む原因となります。このように飲み込んだ空気は胃に溜まり、お腹の張りやげっぷの増加につながります。炭酸飲料の過剰摂取も同様の症状を引き起こす可能性があります。
便秘が原因の場合
便秘になると、本来体外へ排出されるべき便が腸内に滞留することで、お腹が張る原因となります。腸内に便が溜まることで腸の動きが悪くなり、ガスも排出されにくくなります。
その結果、おならの回数が増加したり、お腹の張りが悪化したりします。さらに、腸内の悪玉菌が増えることでガスの産生も増加し、症状が悪化する悪循環に陥ることがあります。
肉類やにんにくの食べ過ぎ
肉類を過剰に摂取すると、小腸での消化が追いつかず、大腸内で残渣が分解されることになります。
特に、肉に含まれるタンパク質が腸内の悪玉菌(ウェルシュ菌など)によって分解される際に、アンモニアや硫化水素、二酸化硫黄などの物質が発生し、臭いの強いガスが産生されます。にんにくなどの食材も同様に、強い臭いのガスを発生させる原因となります。
運動不足による影響
運動不足は腸の動き(蠕動運動)を鈍らせる大きな要因となります。特にデスクワークが多い方は、腸の動きが低下しやすく、その結果としてお腹にガスが溜まりやすくなります。
適度な運動は腸の蠕動運動を促進し、ガスの排出を助けます。1日30分程度の軽いウォーキングでも効果があり、お腹周りのストレッチと組み合わせることで、より効果的にガスの排出を促すことができます。
おならが増える疾患が隠れている場合も
お腹の張りやおならの増加は、時として深刻な疾患のサインである可能性があります。慢性胃炎や過敏性腸症候群では、腸内にガスが溜まりやすくなり、おならの回数が増加することがあります。
さらに、大腸がんが進行した場合にも、腸内での便の通過が妨げられることで便秘が悪化し、おならの回数が増加する可能性があります。そのため、これらの症状が継続する場合は、医療機関での検査を受けることが推奨されます。
お腹の張りを引き起こす疾患のチェックポイント
お腹の張りは、単なる一時的な症状ではなく、様々な疾患のサインである可能性があります。早期発見・早期治療のために、どのような疾患が関連しているのか、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
過敏性腸症候群とお腹の張り
過敏性腸症候群は、ストレスや情緒不安定などの精神的要因が原因で発症することが多い消化器疾患です。腸の蠕動運動に異常が起こり、腹痛を伴う下痢や便秘が長期間続くのが特徴です。お腹の症状以外にも、めまい、頭痛、吐き気、肩こりなどの全身症状を伴うことがあります。
主な症状として、下痢と便秘の繰り返し、3日以上続く腹痛や不快感、排便による腹痛の改善、排便後の残便感などがあります。これらの症状が3つ以上当てはまる場合は、過敏性腸症候群の可能性を疑う必要があります。
呑気症(どんきしょう)とお腹の張り
呑気症は、空気嚥下症とも呼ばれ、無意識のうちに空気を大量に飲み込んでしまう状態を指します。現代の日本では8人に1人が呑気症に悩んでいるとされています。主な原因は早食いや緊張によって唾を頻繁に飲み込む習慣があることです。
症状として、お腹の張りやげっぷの増加、おならの回数の増加が特徴的です。食事の際に必要以上の空気を飲み込むことで、胃に空気が溜まり、不快さや痛みを感じることがあります。精神的なストレスも大きな要因となります。
大腸がんとお腹の張り
大腸がんは早期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると様々な症状が現れます。運動不足、脂っこい食事の過剰摂取、飲酒、喫煙、野菜摂取不足などの生活習慣が発症に関与するとされています。
がんが大きくなると、便やガスの排出が妨げられ、お腹が張りやすくなります。同時に、腹痛、食欲不振、下痢と便秘の繰り返し、血便、便が細くなるなどの症状も現れることがあります。特に40歳以上で定期的な大腸がん検診を受けていない方は注意が必要です。
急性胃腸炎がもたらすお腹の張り
急性胃腸炎は、細菌やウイルスの感染、薬の副作用などによって胃腸の粘膜に急激な炎症が起こる疾患です。主な症状として、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などがありますが、人によっては膨満感や発熱、食欲不振といった症状も現れます。
炎症により消化管の機能が低下し、食べ物の消化や腸の運動が滞ることで、お腹の張りを感じやすくなります。脱水を防ぐための水分補給が重要で、症状が重い場合は点滴による治療が必要となることもあります。
慢性胃炎がもたらすお腹の張り
慢性胃炎は、胃の粘膜が慢性的に炎症を起こしている状態で、原因の約80%がピロリ菌感染によるものとされています。腹部の張りやおならの増加、げっぷなどの症状に加え、胃痛、吐き気、胸焼けなども現れます。
放置すると胃潰瘍や胃がんに進展するリスクがあるため、早期の治療が重要です。
腸閉塞がもたらすお腹の張り
腸閉塞(イレウス)は、何らかの原因で腸の内容物が詰まり、肛門側へ移動できなくなる重篤な状態です。手術後の癒着、大腸がん、寄生虫、胆石などが原因となり、激しい腹痛、便秘、嘔吐、お腹の張り、発熱などの症状が現れます。
小腸が拡張することで内部に腸液が溜まり、強い腹部膨満感を引き起こします。緊急手術が必要となることもある深刻な疾患のため、早期の医療機関受診が必要です。
腸閉塞についてはこちら
逆流性食道炎がもたらすお腹の張り
逆流性食道炎は、胃の内容物が食道へと逆流することで食道粘膜に炎症が起きる疾患です。主な症状は胸焼けや呑酸(すっぱいげっぷ)ですが、人によっては膨満感も感じます。
以前は高齢者に多い疾患でしたが、近年は食事の欧米化に伴い若い世代でも増加傾向にあります。再発しやすく、進行すると食道がんのリスクが高まるため、適切な治療と再発予防が重要です。
機能性ディスペプシアとお腹の張り
機能性ディスペプシアは、胃の不快感、みぞおちの痛み、膨満感、早期満腹感などの症状があるにもかかわらず、胃カメラ検査では異常が見つからない状態を指します。消化管の働きの障害や粘膜の知覚過敏が原因とされています。
食後のお腹の張りが特徴的で、げっぷやガスの増加、吐き気なども伴うことがあります。症状は人によって異なり、ストレスや過労が症状を悪化させる要因となることがあります。
お腹の張りを和らげる方法
お腹の張りに悩まされている方のために、日常生活で実践できる改善方法をご紹介します。ただし、症状が継続する場合は医療機関への受診も検討しましょう。
便秘の改善や便秘になりにくい生活習慣を取り入れる
便秘は腸内にガスを溜める原因となるため、積極的な改善が必要です。便秘対策として、「便意を我慢しない」「水分をこまめに摂る」「食物繊維を積極的に摂る」などを心がけましょう。
食物繊維が豊富な豆類やイモ類に加え、腸内環境を整えるヨーグルトや乳酸飲料も効果的です。オリゴ糖を含むきな粉、はちみつ、インゲン、バナナ、納豆なども便通改善に役立ちます。
バランスの良い食事と規則正しい食事を心がける
暴飲暴食を避け、栄養バランスの良い食事を3食きちんと摂ることが重要です。食事の際は時間をかけてよく噛み、一口の量を控えめにすることで、空気の飲み込みを防ぐことができます。
また、食事中の会話も必要以上の空気を飲み込む原因となるため、注意が必要です。消化の良い食材を選び、規則正しい時間に腹八分目を心がけましょう。
過食や飲酒を控える
過食は急性胃腸炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、便秘などの原因となり得るため、控えめにする必要があります。特に肉類やニンニクなどの食品は臭いが強く、過剰摂取するとおならの臭いが強くなりやすいとされています。
また、アルコールや炭酸飲料も控えめにし、胃腸への負担を軽減することが大切です。
適度な運動やマッサージなどを取り入れる
運動やマッサージは腸の蠕動運動を促進し、ガスの排出を助けます。特に運動不足の方やデスクワークが多い方は、腸の動きが鈍くなりやすいため、意識的に体を動かすことが重要です。
1日30分程度の軽いウォーキングから始めるのがおすすめです。また、お腹を温める半身浴も効果的で、腸管の血行を改善し、腸の運動を活発にする効果があります。
ストレスをためすぎない生活を心がける
ストレスは消化管をはじめ、身体のあらゆる部分に悪影響を与えます。特に過敏性腸症候群や呑気症などの症状を悪化させる要因となります。
休日は趣味や旅行、スポーツなどを楽しんで、心身をリフレッシュさせることが大切です。リラックスできる時間を作り、ストレス解消を心がけましょう。
気になるお腹の張りは病院の受診も検討しましょう
お腹の張りが続く場合や、他の気になる症状がある場合は、消化器内科の受診を検討しましょう。特に激しい腹痛や息苦しさを伴う場合、急に強い張りを感じるようになった場合は、早急な医療機関の受診が必要です。
また、体のむくみや尿量の減少、繰り返し起こる腹痛、食欲不振などの症状がある場合も、早めの受診をお勧めします。
腹痛についてはこちら
まとめ
お腹の張りは、生活習慣の見直しで改善できる場合もあれば、隠れた疾患が原因であることもあります。便秘の予防やバランスの良い食事、適度な運動、ストレスケアを意識することで、腸内環境を整え、症状の軽減を目指しましょう。
また、症状が続く場合や悪化する場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。健康的な生活を送りながら、お腹の張りを予防・改善していきましょう。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師