食後の眠気、血糖値スパイクが原因かも?医師が原因と対策を解説!

  • クリニックブログ
2025/01/21

食後の眠気、血糖値スパイクが原因かも?医師が原因と対策を解説!

 

 

昼食後の眠気に悩まされていませんか?実は、この食後の眠気には血糖値スパイクが関係している可能性があります。
 
多くの人が経験する「食後のウトウト」ですが、中には「仕事中なのに眠くて仕方ない」、「会議に集中できない」といった経験をされている方も多いのではないでしょうか。
 
本記事では、医師監修のもと、食後の眠気と血糖値スパイクの関係性や、眠気に悩む方へ向けた具体的な対策をご紹介します。毎日の食事の順番を変えるだけで、あなたも食後の眠気から解放されるかもしれません。食事や運動の工夫で、より快適な午後を過ごすためのヒントが見つかるはずです。

 
 

食後の眠気が起こる理由とは何か

食後の眠気は、誰もが経験する一般的な現象です。しかし、その発生メカニズムには主に2つの要因が関係しています。1つは消化のために体内で起こる生理的な変化、もう1つは血糖値の変動による影響です。
 
これらの要因を理解することで、効果的な対策を立てることができます。それでは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
 

【食後の眠気はなぜ起こるのか】消化に関する原因

食事を摂ると、胃や小腸などの消化器官が食べ物を分解して栄養素を吸収するために、多くのエネルギーを必要とします。この過程で、体内の血液が消化器官に集中することになります。その結果、他の部位、特に脳への血液供給が一時的に減少し、脳への酸素や栄養素の供給も低下します。
 
これは体が食べ物の消化に、優先的にリソースを割り当てている状態といえます。また、食後は副交感神経が優位になり、身体がリラックスモードに入ることで、さらに眠気を感じやすくなります。これは生理的な反応であり、通常は自然な現象として捉えることができます。
 

【食後の眠気はなぜ起こるのか】血糖値の影響

食事により体内に取り込まれた炭水化物は、消化されてブドウ糖として血液中に吸収されます。これにより血糖値が上昇し、それに応じて膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。健康な人の場合、この血糖値の上昇と下降は緩やかに進みますが、時として急激な変動が起こることがあります。
 
特に炭水化物を多く含む食事を摂取した場合、血糖値が急激に上昇し、その後インスリンの働きによって急激に低下する「血糖値スパイク」という現象が起こることがあります。
 
この急激な血糖値の変動が、強い眠気やだるさを引き起こす原因となります。また、血糖値が高い状態が続くと、覚醒を促す「オレキシン」というホルモンの分泌が抑制され、さらに眠気を感じやすくなります。
 
 

眠気を引き起こす血糖値スパイクとは何か

食後の強い眠気の原因として注目されているのが「血糖値スパイク」です。この現象は健康診断では見つかりにくく、自覚症状も少ないため気づきにくい特徴があります。
 
しかし、放置すると様々な健康問題を引き起こす可能性があります。血糖値スパイクとは具体的にどのような状態なのか、なぜ起こるのか、そして体にどのような影響を及ぼすのか、詳しく見ていきましょう。
 

血糖値スパイクとは

血糖値スパイクとは、食事の前後で血糖値が急激に上昇し、その後急激に低下する状態を指します。血液中のブドウ糖濃度である血糖値は、健康な人の場合70~100mg/dlの範囲でコントロールされており、食事による変動も緩やかです。
 
しかし、血糖値スパイクが起きると、この変動が急激になり、グラフで見ると尖った「とげ(スパイク)」のような形になることから、この名称がついています。
 
通常の健康診断では空腹時の血糖値しか測定しないため、血糖値スパイクの有無を判断することは困難です。そのため、食後の強い眠気や疲労感といった症状に気づくことが、発見の重要な手がかりとなります。
 

血糖値スパイクが起こる仕組み

血糖値スパイクは、食事で摂取した炭水化物が消化されてブドウ糖として血液中に取り込まれる際に起こります。通常、血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を適切にコントロールします。
 
しかし、インスリンの分泌量が減少したり、分泌のタイミングが遅れたりすると、血糖値が急激に上昇してしまいます。
 
その後、上昇した血糖値を下げようとして大量のインスリンが分泌され、今度は血糖値が急激に低下します。この上昇と低下の急激な変動が、血糖値スパイクの特徴的なパターンです。この現象は、食べ過ぎや早食い、また空腹状態が長く続いた後の食事でも起こりやすくなります。
 

血糖値スパイクが引き起こす体への影響

血糖値スパイクは、短期的にも長期的にも体に様々な悪影響を及ぼします。短期的には、急激な血糖値の変動により、強い眠気やだるさ、集中力の低下といった症状が現れます。特に食後すぐに眠くなったり、寝たくなったりする症状が特徴的です。
 
長期的には、血糖値の急激な変動が血管にダメージを与え、動脈硬化を促進する可能性があります。また、繰り返し血糖値スパイクが起こると、膵臓の機能が低下し、インスリンの分泌量や分泌タイミングに影響を与えることで、将来的な糖尿病のリスクを高める可能性があります。
 
さらに、自律神経系のバランスを乱し、様々な体調不良を引き起こす原因にもなります。
 
 

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血糖値スパイク対策にもなる!食後の眠気を防ぐための対策

食後の眠気を防ぐためには、血糖値の急激な変動を抑える生活習慣の改善が重要です。具体的には、食事、運動、睡眠の3つの観点からアプローチすることで、効果的に対策することができます。ここでは、実践しやすい具体的な方法をご紹介していきます。
 

食後の眠気を防ぐ食事対策

食後の眠気を防ぐ最も重要なポイントは、日々の食事習慣の改善です。特に食事の内容や食べ方を工夫することで、血糖値の急激な変動を防ぎ、眠気の予防につながります。以下の6つのポイントを意識して、毎日の食事を見直してみましょう。
 

朝食を摂る

朝食を抜くことは、血糖値スパイクを引き起こす大きな要因となります。空腹時間が長くなると、体内のブドウ糖が不足し、血糖値が低い状態が続きます。その状態で昼食を摂ると、血糖値が急激に上昇し、血糖値スパイクを引き起こしやすくなります。
 
その結果、午後の強い眠気やだるさを感じることになるのです。また、朝食を抜くと脳のエネルギー不足により、集中力の低下やイライラの原因になります。朝食は血糖値の安定だけでなく、脳を活性化し、やる気を起こすためにも重要な役割を果たしています。
 

食事は野菜を中心に!野菜から食べる

食事の際は、野菜から食べ始めることを心がけましょう。野菜に含まれる食物繊維には、糖質の消化吸収をゆっくりにする効果があり、食後の血糖値の急激な上昇を抑制します。主食を摂る約15分前に野菜を食べることで、最も効果的に血糖値の上昇を抑えることができます。
 

 
また、先に野菜を食べることで早めに満腹感を得られ、自然と食事量を抑えることができます。これにより、糖分の摂取量も適切にコントロールすることができます。外食時でも、まずはサラダやお浸しなどの野菜類から食べる習慣をつけましょう。
 

炭水化物摂取量を注意する

炭水化物は体や脳を動かすために必要なエネルギー源ですが、摂り過ぎは血糖値の急激な上昇を招きます。特に丼物や麺類、麺とご飯のセット物は炭水化物が多くなりがちです。これらを中心とした食事は、血糖値スパイクのリスクを高めます。
 
余分な炭水化物は体内で中性脂肪に変換され、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積されます。さらに、脂肪が肝臓や骨格筋に蓄積されると、インスリンの働きを妨げるインスリン抵抗性を引き起こす可能性があります。バランスの良い食事を心がけ、タンパク質や副菜、汁物などをバランスよく組み合わせることが重要です。
 

甘いお菓子や清涼飲料水の接種を控える

甘いお菓子や清涼飲料水に含まれる糖質は、消化酵素による分解を必要とせず、そのまま腸から吸収されて直接血液中に入ります。そのため、インスリンが関与する前に血糖値を急激に上昇させてしまいます。特に冷たい飲み物は甘さの感覚を鈍らせるため、実際には多量の糖質を含んでいることがあります。
 
スポーツ後やお風呂上がりのスポーツドリンクの習慣的な摂取は、知らず知らずのうちに大量の糖質を摂取することになります。水分補給は水や麦茶など、糖質を含まない飲み物を選ぶように心がけましょう。
 

ドカ食いや早食いをやめてゆっくり食べる

一気に大量の食事を摂ることや早食いは、血糖値の急激な上昇を招きます。その結果、大量のインスリンが分泌され、血糖値が急激に低下して強い眠気を引き起こします。食事は一口一口よく噛んで、ゆっくりと時間をかけて食べることが重要です。
 
食事開始から満腹感を感じるまでには20分以上かかります。早食いをすると、満腹中枢が働く前に必要以上の食事を摂取してしまう可能性があります。一口ごとに箸を置く、しっかり会話を楽しむなど、食事時間を十分に確保することを心がけましょう。
 

腹八分目を意識して食事を摂る

食事量を腹八分目に抑えることで、カロリーの摂り過ぎを防ぎ、血糖値の上昇を抑えることができます。満腹感を感じるまでには時間がかかるため、ゆっくりと食事を楽しみながら、適量で止められるよう意識することが大切です。
 
過食は血糖値の急激な上昇を招くだけでなく、消化器官への負担も大きくなります。これにより、より多くの血液が消化に使われ、脳への血流が減少して眠気を強める原因となります。食事の量を適度に抑えることで、食後の眠気を軽減できます。
 

食後の眠気を防ぐ運動対策

食後の運動は、血糖値の急上昇を防ぎ、眠気を予防する効果があります。ただし、激しい運動は逆効果となる可能性があるため、軽い運動から始めることが重要です。以下では、効果的な運動方法をご紹介します。
 

有酸素運動で眠気予防

食後30分~1時間以内の軽い運動は、血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。特に15分程度のウォーキングは、取り込まれたブドウ糖を効率的にエネルギーとして消費し、血糖値の急上昇を抑えることができます。デスクワークが中心の方は、職場内の階段や廊下を利用して積極的に体を動かすことをおすすめします。
 
継続的な有酸素運動は、血糖値のコントロールだけでなく、全身の健康維持にも効果的です。まずは短時間から始めて、徐々に運動習慣を身につけていくことが大切です。
 

筋トレで眠気予防

腹筋やダンベル体操、スクワットなどの筋力トレーニングも、血糖値の管理に効果的です。筋肉量が増えることで、糖の消費量が増加し、血糖値の安定につながります。休憩時間や空き時間を利用して、簡単なトレーニングを行うことをおすすめします。
 

 
ただし、急に強い運動を始めると逆効果になる可能性があるため、徐々に強度を上げていくことが重要です。無理のない範囲で継続的に行うことで、効果を実感できるでしょう。
 

質の高い睡眠を摂る

良質な睡眠は血糖値スパイクの予防に重要な役割を果たします。定期的な運動は睡眠の質の向上にも効果があります。毎朝同じ時間に日光を浴びる、就寝時間を一定にする、就寝直前のスマートフォンやパソコンの使用を控えるなどの習慣づけが大切です。
 
また、快適な睡眠環境を整えることも重要です。適切な室温や湿度の管理、快適な寝具の選択なども、良質な睡眠を得るためのポイントとなります。
 

食後の眠気が改善しない場合は病院の受診も検討を

生活習慣の改善を試みても食後の強い眠気が続く場合は、糖尿病などの病気の可能性も考えられます。特に血糖値スパイクが継続すると、インスリンの分泌機能に影響を与え、将来的な健康リスクとなる可能性があります。
 
症状が改善しない場合は、医療機関での検査を検討しましょう。特に75g経口ブドウ糖負荷試験などの詳しい検査を受けることで、より正確な状態の把握が可能となります。早期発見・早期対応が、健康維持の重要なポイントとなります。
 
 

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まとめ

食後の眠気は、多くの場合、血糖値スパイクが原因となっています。これを予防するためには、食事、運動、睡眠の3つの観点からの総合的なアプローチが効果的です。特に食事については、食べる順番や量、スピードに注意を払い、野菜を中心としたバランスの良い食事を心がけることが重要です。
 
また、適度な運動習慣や質の高い睡眠も、血糖値の安定に役立ちます。これらの対策を日常生活に取り入れることで、食後の眠気を軽減し、より活力のある毎日を送ることができるでしょう。ただし、改善が見られない場合は、医療機関への受診を検討することをお勧めします。
 
 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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