
食後の腹痛は病気?原因と治し方
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食後の腹痛は病気?原因と治し方
食後に腹痛が起きると、せっかくの食事も楽しめなくなってしまいます。食後の腹痛には、一時的な胃もたれから機能性ディスペプシアや慢性膵炎といった深刻な病気まで、様々な原因が潜んでいる可能性があります。早期発見・早期治療が重要な症状もあるため、適切な対処法を知ることが大切です。
この記事では、食後の腹痛の主な原因や考えられる病気、家庭での対処法、そして医療機関を受診すべき状況について詳しく解説します。
食後の腹痛の原因とは
食事の後に起こる腹痛は、場所や痛み方によって原因が異なります。みぞおちが痛む場合は胃の病気、下腹部が痛む場合は腸の病気が疑われます。
また、食べた直後に痛むのか、しばらくしてから痛むのかも重要な判断材料となります。発症のタイミングや痛みの特徴を把握することで、適切な対処法を見つけることができます。
さらに、食事内容との関連性を観察することで、原因となる食材や食べ方の傾向が見えてくることもあります。日々の食事記録をつけることも、原因特定の助けとなります。
腹痛の種類と特徴
みぞおちの痛みは胃の働きの低下が原因となることが多く、食べ過ぎや早食いで起こります。一方、脂っこい食事やアルコールの後に上腹部が痛む場合は、膵臓の病気である可能性があり、背中の痛みを伴うこともあります。
下腹部の痛みでは、便通の異常と一緒に起こることが特徴的です。痛みの性質も重要で、鈍い痛みか鋭い痛みか、持続的か断続的かによって原因が異なってきます。
また、食事以外の要因として、ストレスや生活リズムの乱れも腹痛を引き起こす大きな要因となっています。
痛みの部位と関連する臓器
上腹部の痛みは、胃や十二指腸、膵臓の問題を示唆します。特にみぞおちの痛みが食後すぐに起こる場合は胃の機能障害、時間をおいて起こる場合は十二指腸の異常が考えられます。
腸の問題では、おへその周りや下腹部全体が痛むことが多く、排便により症状が和らぐ傾向にあります。また、右上腹部の痛みは胆のうの問題、左上腹部の痛みは脾臓の問題を示唆することがあります。
女性の場合は、下腹部の痛みが婦人科系の疾患によって引き起こされることもあるため、注意が必要です。
考えられる病気と症状
食後の腹痛は様々な病気のサインとなり得ます。症状の持続期間や随伴症状によって、適切な治療方針が異なってきます。
医師による適切な診断と治療が必要となる場合もあるため、自身の症状をしっかりと把握しておくことが重要です。特に、症状が長引く場合や、日常生活に支障をきたす程度の痛みがある場合は、早めの受診が推奨されます。
症状の記録をつけることで、医師への正確な情報提供が可能となり、より適切な診断につながります。
胃の病気(胃炎、胃潰瘍など)
慢性胃炎では胃痛や胸やけ、胃の重い感じといった症状が現れます。ピロリ菌感染が主な原因となり、放置すると胃潰瘍に進行する可能性があります。
胃潰瘍になると、食後30分から1時間後に痛みが生じ、体の中心よりやや左側が痛むという特徴があります。吐き気や食欲不振を伴うこともあります。
胃酸の過剰分泌も症状を悪化させる要因となるため、就寝前の食事を避けるなど、生活習慣の改善も重要です。
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腸の病気(過敏性腸症候群、腸炎など)
過敏性腸症候群では食後に腹痛が起こり、便秘と下痢を繰り返すことが特徴です。排便により症状が一時的に改善することが多く見られます。
感染性腸炎の場合は、急性の症状として腹痛のほか、発熱や吐き気、下痢などが現れます。ウイルスや細菌、寄生虫が原因となります。
腸の病気は食事内容との関連が強く、特定の食材で症状が悪化することがあるため、食事記録をつけることが症状改善の助けとなります。
その他の消化器系の病気
早期慢性膵炎では食後の上腹部から背部にかけての持続的な痛みが特徴です。通常の検査では異常が見られにくいため、超音波内視鏡による詳しい検査が必要となります。
機能性ディスペプシアでは、食事の途中で満腹感を感じ、みぞおち付近の痛みや胃もたれ感が現れます。症状は食事との関連が強く、ストレスによって悪化することも特徴です。
これらの病気は早期発見が重要であり、継続的な症状がある場合は専門医への相談が推奨されます。
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危険な症状のサイン
動けないほどの強い腹痛や、急激に痛みが増す場合は要注意です。6時間以上続く腹痛も、重大な病気のサインとなる可能性があります。
胸痛、胸やけ、吐き気、嘔吐、下痢、血便、発熱、意識低下などを伴う場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。場合によっては救急車の利用も検討しましょう。
特に高齢者や基礎疾患がある方は、症状が重症化しやすいため、早めの受診が重要です。
家庭でできる腹痛の治し方
食後の腹痛に対して、まず自宅でできる対処法があります。ただし、症状が改善しない場合や悪化する場合は、医療機関の受診を検討する必要があります。日常的な予防と対策を知っておくことで、腹痛の発生リスクを下げることができます。
食事の改善方法
食事は一度に多く摂取せず、ゆっくりと時間をかけて食べることが大切です。脂っこい食事やアルコール、刺激物は控えめにします。
特に過敏性腸症候群の方は、高FODMAP食品を避け、低FODMAP食品を選ぶことで症状の改善が期待できます。また、食事の時間を規則正しく保つことも重要です。
生活習慣の見直し
規則正しい生活リズムを保ち、十分な睡眠を取ることが腹痛予防につながります。適度な運動は腸の動きを整え、便秘予防にも効果的です。また、食後すぐに横になることは避け、食後は30分程度軽い運動や散歩をすることで、消化を促進することができます。
市販薬の選び方
胃の症状には胃酸の分泌を抑える薬や、消化管の運動を助ける薬が効果的です。ただし、感染性の腸炎が疑われる場合は、下痢止めの使用は避けるべきです。
市販薬を選ぶ際は、症状に合わせて薬剤師に相談することが推奨されます。自己判断での服用は避けましょう。
ストレス管理法
ストレスは腹痛を引き起こす大きな要因となります。瞑想やヨガなどのリラックス法を取り入れ、ストレス解消を心がけましょう。
趣味の時間を確保したり、十分な休息を取ったりすることで、心身のバランスを整えることができます。必要に応じて、抗不安薬などの処方を医師に相談することも検討できます。
医療機関の受診について
食後の腹痛が継続する場合や、通常と異なる痛みを感じる場合は、医療機関の受診を検討する必要があります。適切な診断と治療により、QOL(生活の質)の低下を防ぎ、重篤な疾患の進行を食い止めることができます。
受診の目安
数日や週をまたいで腹痛が続く場合は、受診が推奨されます。また、いつもと違う痛みを感じたり、発熱や嘔吐、血便などの症状を伴ったりする場合は、早めの受診が必要です。胸痛や意識の低下を伴う場合は、救急車の要請も検討しましょう。
受診する診療科
食後の腹痛は主に消化器内科や内科で診察を受けることができます。女性の場合は、婦人科系の疾患の可能性もあるため、婦人科の受診も選択肢となります。症状が複雑な場合は、まず総合診療科を受診し、適切な診療科へ案内してもらうことも有効です。
検査の種類
診断には血液検査、胃カメラ検査、大腸カメラ検査、腹部超音波検査などが用いられます。胃カメラ検査では食道、胃、十二指腸の状態を直接観察でき、必要に応じて生検も可能です。早期慢性膵炎の診断には、超音波内視鏡による詳細な検査が必要となる場合もあります。
医師に伝えるポイント
受診時には、いつから症状が始まったのか、どのような食事の後に痛みが出るのか、痛みの性質や部位はどうかなど、具体的に説明することが重要です。また、普段の生活習慣や服用している薬、過去の病歴なども、診断の重要な手がかりとなります。
まとめ
食後の腹痛は生活に大きな影響を与える症状です。その原因は様々であり、単なる一時的な症状から深刻な病気のサインまで幅広く存在します。症状が継続する場合は、専門医による適切な診断と治療が必要不可欠です。
まずは食生活の改善や生活習慣の見直しから始め、改善が見られない場合は早めに医療機関を受診することが賢明です。適切な対処により、快適な食生活を取り戻すことができます。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師