食道狭窄とは?症状・原因・治療法を解説

  • クリニックブログ
2025/01/24

食道狭窄とは?症状・原因・治療法を解説

食事をしているときに、食べ物が食道につかえる感覚を覚えたことはないでしょうか。このような症状が続く場合、食道狭窄症の可能性があるかもしれません。食道狭窄症は、食べ物を胃まで運ぶ通り道である食道の一部が狭くなってしまう病気です。この病気は生まれつきのものから、様々な原因で後天的に発症するものまでさまざまな種類があります。
 
食道狭窄症になると、食事が思うように摂れなくなり、体重が減少するなどの問題が起きる可能性があります。早期発見と適切な対応によって、症状の改善が見込める病気でもあります。この記事では、食道狭窄症の原因や症状、検査方法、治療法について詳しく解説します。

 
 

食道狭窄とは

食道狭窄症は、食道の一部が狭くなることで、食べ物や飲み物が胃まで通りにくくなる状態を指します。
 
通常の食道には、入口部分や気管と交差する部分、胃との境目など、生理的に多少狭くなっている箇所がいくつかありますが、これらの部分で食べ物が詰まることはほとんどありません。これは、食道が食べ物を送り込むための波打つような運動(蠕動運動)を行っているためです。
 
しかし、何らかの原因で食道の一部が異常に狭くなると、この運動だけでは食べ物をスムーズに運べなくなってしまうことを、食道狭窄といいます。
 
 

食道狭窄の原因

食道狭窄症の原因は、大きく分けて先天性と後天性、そして神経性の3つに分類されます。先天性は生まれつき食道に異常がある状態を指し、後天性は生活習慣や疾患によって発症する場合を指します。神経性は、神経の機能異常によって引き起こされるものです。
 
それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
 

先天性食道狭窄の原因

先天性食道狭窄症は、2万5千人から5万人に1人程度の割合で発症する珍しい病気です。胎児の発育過程で食道の形成に異常が生じることで発症します。
 
主な原因として3つのタイプがあります。
 

  • ●気管原基迷入型:胎児の発育時に食道内に気管の軟骨が入り込んでしまう。全体の約半数を占める。
  • ●筋性繊維肥厚型:食道を形成する筋肉の一部が必要以上に厚くなってしまう
  • ●膜様狭窄型:食道内に余分な粘膜の膜ができてしまう。3つの中では最も発症数が少ないタイプ

 

後天性食道狭窄の原因

後天性食道狭窄は、様々な要因によって発症します。最も一般的なのは、胃酸が食道に逆流することで起こる逆流性食道炎です。この状態が長く続くと、食道の粘膜に炎症や傷が生じ、その治癒過程で瘢痕が形成されて狭窄することがあります。
 
 

 逆流性食道炎についてはこちら

詳しくはこちら

 
食道がんによる狭窄も後天性の重要な原因の一つです。がんの腫瘍が食道の内腔を塞ぐように大きくなることで、通過障害が起こります。その他、食道手術後の瘢痕による狭窄や、放射線治療後の組織の変化による狭窄なども、後天性の原因として知られています。
 
また、食道の運動を制御する迷走神経の機能に異常が生じることで発症し食道狭窄の症状が出る、食道アカラシアという疾患もあります。
 

神経性食道狭窄症の原因

神経性食道狭窄症(ヒステリー球)は心理的ストレスが主な原因となって発症する症状です。喉に何かが詰まっているような感覚や圧迫感を感じますが、実際には食道に物理的な異常は見られません。
 
不安障害や抑うつ状態、慢性的なストレスによって自律神経のバランスが崩れ、食道の感覚神経に異常な信号が送られることで症状が現れると考えられています。
 
 

食道狭窄の症状

 

 
最も特徴的な症状は、食べ物を飲み込む際の違和感や詰まり感です。この症状は狭窄の程度によって異なりますが、特に固形物を食べるときに強く感じられます。食事の際にむせることも多く、食べ物を飲み込んだ後に胸の痛みを感じることもあります。症状が進行すると、食事量が減少し、結果として体重が減っていくことも珍しくありません。
 
先天性の場合は、赤ちゃんの時期からミルクの飲みが悪く、すぐに吐き戻してしまうような症状が現れることがあります。一方、軽度な狭窄の場合は、離乳食を始めてから初めて症状に気付くこともあります。
 
 

検査と診断方法

食道狭窄症の診断には、複数の検査方法を組み合わせることで、より正確な状態の把握が可能になります。医師は患者の症状や状態に応じて、必要な検査を選択していきます。主な検査方法について、それぞれの特徴を見ていきましょう。
 

内視鏡検査

内視鏡検査は、食道狭窄症の診断において中心的な検査です。口から細い管状のカメラを挿入し、食道内部を直接観察することができます。この検査では、狭窄の場所や程度、粘膜の状態を詳しく確認できるだけでなく、必要に応じて組織の一部を採取(生検)することも可能です。
 
 

 食道の粘膜に関連する記事はこちら

詳しくはこちら

 
特に、食道がんが疑われる場合には、生検による確定診断が欠かせません。また、治療後の経過観察にも内視鏡検査が用いられ、瘢痕の状態や狭窄の改善具合を確認することができます。
 

食道造影検査

食道造影検査は、バリウムなどの造影剤を飲んで行う検査方法です。造影剤が食道を通過する様子をエックス線で撮影することで、狭窄の位置や程度を確認することができます。
 
この検査の特徴は、食道の動きをリアルタイムで観察できることです。造影剤が食道内をどのように流れていくか、狭窄部分でどの程度停滞するのかを動的に評価できます。また、食道の形状や長さなども正確に把握することが可能で、治療方針を決める上で重要な情報を得ることができます。
 

レントゲン検査

 

 
レントゲン検査は、胸部全体の状態を確認するために行われます。この検査では、食道の周囲にある臓器の状態も同時に観察することができます。特に、食道狭窄の原因が他の臓器からの圧迫である場合、その原因となっている構造物を特定するのに役立ちます。
 
また、食道がんが疑われる場合には、がんの進行度や周囲への広がりを評価する目的で、CT検査と組み合わせて実施されることがあります。さらに、食道裂孔ヘルニアの有無を確認することもでき、総合的な診断に役立つ情報を得ることができます。
 

食道内圧検査

食道内圧検査は、主に食道アカラシアの診断に用いられる特殊な検査方法です。
 
正常な状態では、食道は食べ物を胃に送り込むために波打つような動き(蠕動運動)を行い、同時に胃との境目にある括約筋が緩むことで、スムーズに食べ物が胃に到達します。しかし、食道アカラシアでは、この蠕動運動が十分に行われず、また括約筋も適切なタイミングで緩まなくなります。
 
食道内圧検査では、食道の蠕動運動や、食道と胃の境目にある括約筋の圧力を測定することができます。ただし、実施できる医療機関が限られているため、多くの場合は内視鏡検査や造影検査の結果から診断が進められます。
 
 

食道狭窄の治療法

食道狭窄症の治療は、原因や症状の程度によって異なります。先天性の場合、多くはバルーン拡張術という治療法が選択されます。この方法では、狭くなっている部分にバルーンを入れて膨らませ、少しずつ広げていきます。
 
一方、後天性の場合は、原因となっている病気の治療が優先されます。逆流性食道炎が原因の場合は、胃酸の分泌を抑える薬物療法が行われます。食道アカラシアでは、薬物治療やバルーン拡張術、場合によっては手術が必要になることもあります。食道がんによる狭窄の場合は、がんそのものの治療が必要になりますが、治療後に狭窄が残る場合は、ステントと呼ばれる筒状の器具を入れて食道を広げることもあります。
 
 

まとめ

食道狭窄症は、様々な原因で食道が狭くなり、食事に支障をきたす病気です。生まれつきのものから、後天的に発症するもの、神経の機能異常によるものまで、原因は多岐にわたります。早期発見と原因に応じた治療が大切で、多くの場合は症状の改善が期待できます。
 
食事の際に食べ物がつかえる感覚が続く場合は、まずは医療機関を受診しましょう。適切な検査と診断を受けることで、症状・状況に合わせた治療法を選択することができます。治療法は日々進歩しており、患者の生活の質を改善するための様々な選択肢が用意されています。
 
 

 食道狭窄症に関連する記事はこちら

詳しくはこちら

 
 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
一覧に戻る