食事の後に下腹部がポッコリしやすい人は「胃下垂」かも

  • クリニックブログ
2024/04/30

食事の後に下腹部がポッコリしやすい人は「胃下垂」かも

「食事の後に下腹部がポッコリと膨らむと胃下垂だ」という話や「胃下垂の人はたくさん食べても太らない」という話を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、胃下垂の場合どのような症状が表れるのか、胃下垂で生じる不都合などについてはご存じない方が多いようです。
 
今回は、胃下垂の症状や治療法などについてご説明します。

 

胃下垂と胃アトニー

胃下垂は、胃の状態を指す言葉であり、胃下垂自体は病気ではありません。しかし、胃の働きが弱まる胃アトニーになると、さまざまな症状が表れ、治療が必要となります。

胃下垂とは

胃下垂とは、胃が正常な位置よりも下に垂れ下がってしまった状態を指します。胃下垂は、お腹の内側にかかる圧力が低い痩せた体形の人や腹部の脂肪が少ない人によく見られます。胃下垂になると、さまざまな症状が出る場合もあれば、全く症状を感じない人もいます。そのため、胃下垂になったからと言って必ず治療が必要になるわけではありません。
 

胃アトニー

胃アトニーとは、胃壁の筋肉がたるみ、胃の動きが弱まった状態です。胃下垂の人は、胃アトニーを併発していることが多いです。

 
 

胃下垂・胃アトニーの症状

胃が正常な位置よりも下にある胃下垂の状態だけでは、自覚症状はほとんどありません。しかし、胃アトニーを併発すると、胃の働きが低下するため次のような症状が見られます。
 

  • ● 食後に胃がもたれる
  • ● げっぷが増える
  • ● 胃がむかむかする
  • ● 食欲が出ない
  • ● 膨満感がある
  • ● 胃痛がする
  • ● 食後に下腹部が膨れる
  • ● 吐き気がある

 
また、胃下垂になると胃が下に下がるため、本来は胃で膨らみがあるはずのみぞおち近くがへこみ、へその周りや下腹部が膨らんで見えることがあります。

 
 

胃下垂の原因

胃下垂は、腹圧の低下や腹部脂肪の不足などが原因で胃が垂れ下がると考えられており、痩せ型の女性に多く見られる症状です。また、次のような特徴がある方も胃下垂になりやすいと言われています。
 

  • ● 出産経験が多い女性
  • ● 腹部の手術を受けた経験のある方
  • ● ダイエットなどで急に体重が減少した場合
  • ● 暴飲暴食の習慣がある
  • ● 食べ物をしっかり噛まず、食事のスピードが速い
  • ● 辛いものや脂っこいものをよく食べる
  • ● 食事の時間が不規則で夜中に食事をとることが多い
  • ● 仕事やプライベートで、ストレスや不安を感じることが多い
  • ● 姿勢が悪く、猫背気味である

 
胃に負担がかかる食生活をしている人、ストレスや不安などで胃の動きが弱まっている人も、消化不良を起こしやすくなり、胃下垂や胃アトニーのリスクを招く可能性があります。また、食生活だけでなく、猫背で姿勢が悪い人や腹筋・背筋が弱い人も上半身を支えきれないために胃が下がる恐れがあります。

 
 

胃下垂の検査

胃下垂は、バリウムによる上部消化管X線検査で確認できます。胃の出口に近い場所にある胃角部が骨盤上部の腸骨よりも下がっている場合に、胃下垂と診断されることが一般的です。
 
上部消化管X線検査とは、バリウムという造影剤と胃を観察しやすくするための発泡剤を飲み、胃壁にバリウムを付着させて、身体を色々な向きに動かし、さまざまな方向から胃を撮影するというものです。バリウム検査は、健康診断でも胃がん検診として実施されるケースが多く、健康診断で胃下垂を指摘されることも少なくありません。
 
また、胃下垂の程度や胃の粘膜の状態などを確認するため、胃内視鏡検査(胃カメラ検査)も行われるケースが多くなっています。

 
 

胃下垂の治療法

胃下垂であっても、何も症状が出ていない場合には治療の必要はありません。胃下垂で胃アトニーを併発している場合は、胃がんや胃潰瘍など、他の疾患が無いことを検査で確認したうえで、次のような治療法が用いられます。

食生活の見直し

胃への負担が大きい食事をしている場合には、暴飲暴食をさけ、脂っこいものや刺激の強いものを控えて、バランスの良い食事をとるようにします。また、夜遅くの食事も胃の負担が大きくなるため、規則正しい生活を心がけましょう。ストレスも胃腸の働きを低下させるため、精神的にリラックスすることも大切です。
 

食事の回数を増やし、1回の摂取量を減らす

一度に大量の食事をとると、消化が進まずに胃もたれや膨満感などの症状が強くなる場合があります。軽めの食事を複数回に分けて摂取すると、胃への負担を抑えることができ、胃もたれやむかつきなどを軽減できます。
 

適度な運動をする

胃下垂は胃壁の筋肉が緩み、正常な位置よりも下に垂れ下がってしまった状態です。しかし、胃を支える腹筋や背筋などを鍛えれば、胃を支えることができ、胃が垂れ下がるのを防ぐことができます。
 

薬物療法を受ける

胃を正常な位置に戻す薬はありません。しかし、胃下垂や胃アトニーによって胃痛や胃もたれなどを感じている場合には、胃酸を中和する薬や胃の運動機能を高める薬などを処方することで、症状を和らげることができます。また、ストレスによって胃の機能が低下している場合には、抗不安薬などが有効なケースもあり、問診等によって胃下垂の原因を追究し、それぞれの症状や状況に合わせた薬が処方されます。
 
また、ピロリ菌の感染が原因で胃もたれやむかつきなどの症状が見られる場合もあります。ピロリ菌の感染が疑われる場合には、ピロリ菌の検査を受けましょう。ピロリ菌の除菌療法によって症状が改善される可能性があります。


 
 

まとめ

胃下垂とは、胃が正常な位置よりも下に垂れ下がった状態を言います。胃下垂自体は病気ではなく、症状が何も現れない場合は治療も要りません。しかし、胃下垂によって胃の機能が低下し、胃もたれやむかつき、膨満感、食欲不振などの症状が見られる場合には、治療が必要です。
 
胃下垂による胃アトニーの治療には、多くの場合、暴飲暴食をさけてバランスの良い食事を複数回に分けて摂取する食事療法や、胃を支える腹筋を鍛える運動療法などが用いられます。また、食事療法や運動療法で改善が見られない場合には、症状に合わせた薬を服用する薬物療法が用いられるケースもあります。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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