
腹部の違和感、ストレス?病気?原因を探る
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腹部の違和感、ストレス?病気?原因を探る
「なんとなくお腹が痛い」「お腹が重くて気持ち悪い」など、腹部の違和感は誰もが経験する身近な症状です。多くの場合、食べ過ぎやストレスなど一時的な原因で起こりますが、重大な疾患のサインであることも少なくありません。特に症状が長引いたり、徐々に悪化したりする場合は注意が必要です。
腹部には様々な臓器があり、違和感のある場所によって原因となる病気も異なってきます。また、消化器系以外の疾患が原因となることもあります。
この記事では、腹部の違和感が起こる原因や考えられる疾患、注意すべき症状について詳しく解説します。
気になる腹部の違和感、何が原因?
腹部の違和感は日常生活で誰もが経験する症状の一つです。暴飲暴食やストレス、生活習慣の乱れなど、一時的な原因が一般的です。薬の副作用や喫煙習慣、不規則な生活、睡眠不足などが原因となることもあります。
しかし、このような一過性の要因だけではなく、消化器系の疾患が隠れているケースもあります。特に症状が長引いたり、徐々に悪化したりする場合は注意が必要です。違和感以外にも吐き気や嘔吐、食欲不振などの症状を伴う場合は、何らかの疾患が進行している可能性も考えられます。
腹部の部位別症状と考えられる疾患
腹部の痛みや違和感は、症状がある部位を把握することで、問題のある臓器をある程度絞り込むことが可能です。また、痛みの場所だけでなく、その性質や持続時間、随伴症状なども、原因を特定する重要な手がかりとなります。
みぞおちの痛み
みぞおち周辺の痛みや違和感は、様々な消化器疾患が原因となることがあります。一般的な疾患は下記の通りです。
- ●逆流性食道炎:呑酸を伴う痛みが特徴
- ●急性胃炎:吐き気や嘔吐などの症状が同時に現れることが多い
- ●胃潰瘍:食後に痛みが強くなる
- ●十二指腸潰瘍:空腹時に痛みを感じやすい傾向がある
そのほかにも、右下腹部の痛みで知られる虫垂炎でも、初期症状としてみぞおちの痛みが現れることがあります。また、急性膵炎の場合は、みぞおちだけでなく、左側、背中、肩にかけて痛みが広がることもあります。進行した胃がんでも、みぞおちの痛みが症状として現れる可能性があるため、長引く痛みは要注意です。
右上腹部の痛み
右上腹部の痛みの原因として、主に胆のうに関連する疾患が考えられます。
胆石症や胆のう炎、胆管炎などの場合、激しい痛みが特徴で、背中や右肩にまで痛みが放散することがあります。これは胆のうの炎症や結石により、胆汁の流れが妨げられることで起こります。
胆のう関連以外では、下記の疾患が考えられます。
- ●十二指腸潰瘍
- ●大腸憩室炎
- ●腎盂腎炎
一つの部位の痛みでも複数の疾患の可能性が考えられるため、痛みの性質や随伴症状の確認が必要です。なお、胆のう疾患の場合は、発熱や黄疸を伴うこともあります。
右下腹部の痛み
右下腹部の痛みで注意すべき疾患は虫垂炎です。しかし、この部位の痛みは必ずしも虫垂炎だけが原因ではありません。憩室炎や急性腸炎などの消化器疾患、泌尿器系の疾患である尿路結石や、婦人科系の疾患である子宮内膜症なども、右下腹部の痛みの原因となることがあります。
虫垂炎の場合、初期はみぞおちや臍の周りに痛みが現れ、その後右下腹部へと痛みが移動していくという、特徴的な経過をたどります。さらに、痛みに加えて発熱や吐き気、食欲不振などの症状も現れることがあります。これらの症状が急激に悪化する場合は、早急に医療機関に受診しましょう。
下腹部の痛み
下腹部には小腸や大腸、S状結腸から直腸といった消化管のほか、子宮や膀胱、前立腺などの臓器が存在しています。そのため、下腹部の痛みは消化器系、泌尿器系、婦人科系など、さまざまな臓器に関連する疾患が考えられます。
- 疾患の例
- ●消化器系:急性腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸がんなど
- ●泌尿器系:膀胱炎、尿路結石、前立腺炎など
- ●婦人科系:子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣嚢腫など
下腹部の痛みは様々な疾患の可能性を考慮する必要があり、特に緊急性の高い疾患を見逃さないために、早めの受診が推奨されます。
下腹部の痛みについてはこちら
左下腹部の痛み
左下腹部の痛みや違和感の原因には様々な疾患が考えられますが、消化器系では腸閉塞や憩室炎、潰瘍性大腸炎、大腸がんなどが代表的な疾患です。これらの疾患は、腸管の炎症や腫瘍による圧迫などにより痛みを引き起こします。また、急性腸炎による痛みもこの部位に現れることがあります。
消化器系以外の疾患では、子宮付属器炎(卵管炎、卵巣炎)や子宮内膜症といった婦人科疾患、尿路結石などの泌尿器系疾患でも、左下腹部に痛みが現れることがあります。
左下腹部の痛み・違和感の原因は複数の臓器が考えられるため、痛みの性質や随伴症状を慎重に確認する必要があります。
臍部の痛み
臍部(おへその周り)の痛みは、様々な疾患が原因の可能性があり、原因によって痛みの性質や強さが異なります。時には命に関わる緊急性の高い疾患のサインとなることもあります。
疾患 | 症状 | 特徴 |
---|---|---|
・比較的軽度な痛みが持続 ・吐き気や食欲不振を伴うことが多い |
食事との関連性がある場合もある | |
・突然の激しい痛みが特徴 ・背中側にも痛みが放散する ・冷や汗を伴うこともある |
緊急性が非常に高い疾患 | |
・じわじわと痛みが増強 ・背中から左側にかけて痛みが広がる |
食事で痛みが悪化することがある |
そのほかにも、胃潰瘍や胃炎、腸閉塞、クローン病なども、臍部の痛みを引き起こすことがあります。
腹部全体の痛み
腹部全体に広がる痛みは、その強さによって原因となる疾患が異なってきます。
軽度な痛みの場合、過敏性腸症候群や腸管癒着症などが考えられます。これらの疾患は慢性的な経過をたどることが多いのが特徴です。一方、激しい痛みが突然現れる場合は、腸閉塞や消化管穿孔、腸間膜動脈血栓症などの緊急性の高い疾患の可能性があります。また、子宮外妊娠が破裂した場合も、腹部全体に強い痛みが広がることがあります。
これまでに経験したことがないような強い痛みや急激に悪化する痛みの場合は、生命に関わる可能性もあるため、早急に医療機関へ受診する必要があります。
胃の不快感
胃の不快感の代表的な症状が「吐き気」と「胃もたれ」です。食べ過ぎや飲み過ぎによる一時的なものから、消化器系の疾患によるものまで、その原因は多岐にわたります。その原因を特定するためには、症状の詳しい観察が欠かせません。
吐き気
吐き気は胃酸の過剰分泌による一過性のものから、重大な疾患の症状まで、様々な原因で起こります。上部消化管の疾患では、逆流性食道炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシアなどが原因となることがあります。また、腸閉塞などの下部消化管の問題でも吐き気が現れることがあります。
消化器系以外でも、片頭痛や脳腫瘍、もやもや病などの脳疾患でも吐き気を伴うことがあります。特に脳腫瘍による脳圧上昇では、特徴的な症状に持続的な吐き気があります。
また、便秘症や大腸がんが進行した状態でも吐き気が現れることがあります。
胃もたれ
胃もたれは、食事が胃に長く残っているような感覚や、胃が重たく感じる状態です。胃の粘膜の炎症や機能低下が原因となることが多く、逆流性食道炎や食道アカラシア、胃炎、胃潰瘍などの上部消化管疾患で現れることがあります。
また、器質的な異常が見つからない機能性ディスペプシアでも、胃もたれは主要な症状の一つです。進行した胃がんでも胃もたれが症状として現れることがあり、特に持続する胃もたれは注意が必要です。
胃もたれには、鈍い痛みやむかつきなどの不快感を伴うことも多く、これらの症状が続く場合は、医療機関で診察してもらいましょう。
膨満感
膨満感は胃が張っている感覚や、腹部全体が膨らんでいるように感じる症状です。胃の場合、胃炎や胃潰瘍、機能性ディスペプシアなどが原因となることがあります。げっぷが出そうで出ない、という症状を伴うこともあります。
そのほかにも膨満感の原因には下記の疾患が考えられます。
- ●呑気症(空気嚥下症)
- ●下痢や便秘
- ●腸閉塞
- ●腹水貯留
- ●大腸がん
膨満感が長期間続く場合や他の症状を伴う場合は、何らかの疾患が隠れている可能性があります。さらに、急激な膨満感の悪化は、腸閉塞などの緊急性の高い疾患の可能性もあるため、注意が必要です。
下痢
下痢は、水分量の多い便が一日に3回以上排出される状態です。腸管での水分吸収が不十分な場合や、腸管から過剰に水分が分泌されることで発生します。感染性腸炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、慢性膵炎、クローン病、大腸がんなど、様々な疾患で下痢症状が現れることがあります。
下痢が長く続くと、体内の水分や電解質のバランスが崩れる危険性があるため、特に高齢者や子どもは注意が必要です。また、血便や発熱を伴う場合や症状が慢性化している場合は、医療機関での精密検査をしてもらいましょう。
便秘
便秘は、排便回数の減少だけでなく、便の硬さや排便時の困難さなどの症状も含みます。多くが、腹痛や膨満感、残便感といった不快な症状を伴います。
原因となる疾患は、大腸がんやクローン病、虚血性腸炎、膠原病などです。また、過敏性腸症候群の便秘型や、薬剤性の便秘症などでも同様の症状が現れることがあります。便秘が続くことで痔などの合併症を引き起こすことがあり、これがさらに症状を悪化させる原因となります。
慢性的な便秘は生活の質を著しく低下させるだけでなく、重大な疾患のサインである可能性もあるため、原因の特定が必要です。
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腹部に違和感があるときの検査
医療機関では、まず症状の詳しい確認から始まります。痛みや違和感の場所、性質、持続時間、随伴症状などを丁寧に聞き取り、必要な検査を実施していきます。
一般的な検査は血液検査、尿検査、X線検査などで、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や腹部超音波検査などが行われることがあります。特に内視鏡検査は消化管の状態を直接観察できるため、炎症や潰瘍、腫瘍などの病変を詳しく調べることができます。状況に応じて、腹部CTやMRIなどの画像検査も実施します。
これらの検査結果を総合的に判断することで、より正確な診断が可能となります。
軽視は禁物!重大な疾患の可能性も
腹部の違和感は一時的なものである場合が多いものの、重大な疾患の初期症状である可能性もあります。特に、急激な痛みや持続する違和感、ほかの症状を伴う場合は注意が必要です。早期発見・早期治療が予後を大きく左右する疾患も多く、日常的な症状だからと軽視せず、気になる症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
まとめ
腹部の違和感は、日常的に誰もが経験する症状ですが、重大な疾患のサインである可能性も潜んでいます。その場所や性質によって原因となる病気は大きく異なり、時には緊急性の高い対応が必要となることもあります。違和感を覚えたら、症状をよく観察し持続時間や随伴症状にも注意を払いましょう。
早期発見・早期治療が可能な疾患も多く、医療機関での適切な検査と診断を受けることで、重篤な状態を防ぐことができます。気になる症状があれば、自己判断せずに専門医に相談することが大切です。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師