
リンゴ病(伝染性紅斑)とは?症状や感染経路、予防対策を解説
- クリニックブログ
リンゴ病(伝染性紅斑)とは?症状や感染経路、予防対策を解説
リンゴ病は、子どもがよくかかる感染症の一つとして知られていますが、症状や対処法について不安を感じている方も多いのではないでしょうか。特に、保育園や幼稚園などの集団生活の場で流行しやすく、感染力も強いため、早めの対策が重要です。また、妊婦さんにとっては胎児への影響が心配な感染症でもあります。
この記事では、リンゴ病の基本的な知識から、具体的な予防方法、感染時の対応まで、保護者の方が知っておくべき情報を分かりやすく解説します。正しい知識を身につけ、適切な予防と対策を行うことで、リンゴ病から大切な家族を守ることができます。安心して子育てを続けるために、ぜひ参考にしてください。
「リンゴ病(伝染性紅斑)」とはどんな感染症なのか?
リンゴ病は、ヒトパルボウイルスB19によって引き起こされる感染症です。両頬が赤くなることから、一般的に「リンゴ病」と呼ばれていますが、医学的には「伝染性紅斑」といいます。この病気は主に幼児期から学童期の子どもたちの間で見られ、春から夏にかけて流行する傾向があります。
原因は?
リンゴ病の原因となるヒトパルボウイルスB19は、人の赤血球を作る細胞に感染するという特徴を持っています。体の中に入ったウイルスは、主に骨髄にある血液を作る細胞に感染して増えていきます。このウイルスは人にしか感染せず、他の動物には感染しません。
免疫力が正常な場合は自然に治癒することが一般的です。このウイルスは分裂して増える細胞を好んで感染する性質があり、そのため赤血球を作る骨髄の細胞や、胎児の細胞などに感染しやすい傾向があります。また、このウイルスは外部環境に強く、一般的な消毒薬での不活化が難しいという特徴があります。
症状の特徴
リンゴ病の症状は、感染から約4~14日の潜伏期間を経て現れ始めます。
最初に、微熱や咳、鼻水といった風邪に似た症状が現れることがあります。その後、両頬に境界がはっきりした赤い発疹が出現し、まるで頬を叩かれたような外観となります。この特徴的な発疹に続いて、手足や体幹部にレース状または網目状の発疹が広がっていきます。
これらの発疹は通常1週間程度で自然に消失しますが、暑さや運動によって一時的に再び現れることもあります。発疹にかゆみを伴うことがありますが、痛みはほとんどありません。
感染経路
リンゴ病の感染経路には、主に飛沫感染と接触感染の2つがあります。
- ●飛沫感染:感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことで感染する
- ●接触感染:ウイルスが付着した手や物に触れた後、その手で口や鼻を触ることで感染する
発疹が出現する約1週間前の風邪のような症状がある時期が最も感染力が強く、この時期に知らず知らずのうちに周囲に感染を広げてしまう恐れがあります。一方、特徴的な発疹が現れた時期には、すでに感染力はほとんど消失しています。
流行について
リンゴ病は、およそ4~5年周期で大きな流行を繰り返す傾向があります。特に春から夏にかけての時期に流行することが多く、7月上旬頃がピークとなることが一般的です。
しかし、流行の規模が小さい年には、明確な季節性が見られないこともあります。感染者の年齢層としては5~9歳での発生が最も多く、次いで0~4歳に多く見られます。また、成人での感染も珍しくなく、特に医療従事者などの集団感染事例も報告されています。
<参考>NIID国立感染症研究所:伝染性紅斑とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/443-5th-disease.html
リンゴ病の検査・治療方法
リンゴ病の診断は、主に特徴的な発疹の症状から行われます。医療機関では、頬の紅斑などから診断されることが一般的ですが、確定診断が必要な場合は血液検査を実施します。血液検査では、ヒトパルボウイルスB19に対する特異的なIgM抗体を調べることで、感染の有無を確認します。
治療に関しては、特別な治療薬はなく、症状に応じた対症療法が中心です。発熱や関節痛がある場合は解熱鎮痛剤、かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬などを使用します。通常は自然に回復する病気であり、特別な治療を必要としないケースがほとんどです。
リンゴ病の予防ポイント
リンゴ病の予防において、最も大切なのは基本的な衛生管理です。このウイルスは外部環境に強く、一般的な消毒薬での不活化が難しいため、手洗いの徹底や咳エチケットなど、日常的な予防行動を心がけることが効果的です。
手洗いの徹底
予防の基本となるのが、手洗いです。ヒトパルボウイルスB19は、感染者が触れたドアノブやスイッチなどを介して、他の人に感染することがあります。特に注意が必要なのは、このウイルスが外部環境に対して強く、一般的な消毒薬での不活化が難しい点です。そのため、外出から帰った時や食事の前、トイレの後など、こまめに手を洗うことが大切です。
手洗いは、ただ水で流すだけでなく、石けんを使用して丁寧に洗い、ウイルスを物理的に除去することを心がけましょう。また、手を洗った後は清潔なタオルやペーパータオルでしっかりと水分を拭き取ることも大切です。家庭内での感染を防ぐためにも、家族全員で手洗いの習慣を身につけることが効果的な予防につながります。
咳エチケットを心がける
リンゴ病の感染経路の一つである飛沫感染を防ぐためには、咳エチケットが欠かせません。
感染者の唾液や痰、鼻水の中にウイルスが含まれており、それらが咳やくしゃみによって飛び散ることで周囲に感染が広がります。特に注意が必要なのは、発疹が出現する前の風邪のような症状がある時期で、この時期が最もウイルスの排出量が多くなります。
咳やくしゃみをする際は、マスクを着用するか、ティッシュやハンカチ、袖などで口や鼻を覆うようにします。使用したティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、その後は必ず手を洗います。また、家族内での感染を防ぐため、食器の共有は避け、特に流行期には家族間のキスなども控えめにすることが望ましいです。
感染したときの生活面での注意点
リンゴ病に感染した場合、発疹が出た時期には感染力がほとんどないものの、本人の体調と周囲への配慮が大切です。ここでは、具体的な生活上の注意点について説明します。
登園・登校
リンゴ病は、発疹が出現する前の風邪のような症状がある時期に最も感染力が強く、特徴的な発疹が現れた時期にはすでに感染力がほとんどありません。そのため、全身状態が良好で発熱などの症状がなければ、両頬の紅斑が出現した後でも登園・登校は可能です。
ただし、発疹が顕著な場合は、本人の体調や周囲への配慮から、2~3日程度は自宅で様子を見ることを推奨する医療機関もあります。判断に迷う場合は、主治医や保育園・学校側と相談することをお勧めします。
入浴や運動
リンゴ病に感染した場合、熱いお風呂に長時間入ることは避け、ぬるめのお湯で短時間の入浴にとどめましょう。これは、熱いお湯や長時間の入浴により、発疹が悪化したり、長引いたりする可能性があるためです。
また、激しい運動や長時間の日光浴も発疹を悪化させる要因となるため控えめにします。体に負担がかかる活動は避け、無理のない範囲で日常生活を送ることが大切です。
妊婦は注意が必要
妊婦がリンゴ病に感染した場合、特に胎児への影響が懸念されます。
妊娠初期の感染では、胎児水腫や流産のリスクが高まることが知られています。胎児水腫とは、胎児に重度の貧血が起こり、全身にむくみが生じる状態です。ただし、すべての感染が深刻な結果につながるわけではなく、多くの場合は正常な妊娠経過をたどります。
妊婦は、リンゴ病が流行している時期には風邪症状のある人との接触を避け、感染が疑われる場合は速やかに産婦人科医に相談しましょう。
まとめ
リンゴ病は、症状が特徴的で感染力も強い感染症ですが、正しい知識と対策で効果的に予防することができます。
特に保育園や幼稚園などの集団生活では、手洗いの徹底や咳エチケットなど、基本的な予防対策を日常的に実践することが大切です。感染した場合も、自然治癒が期待できる病気です。ただし、妊婦は胎児への影響があるため、注意が必要です。
リンゴ病に関連する記事はこちら

略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師