体がだるい・疲れやすい原因と、考えられる疾患について

  • クリニックブログ
2025/01/09

体がだるい・疲れやすい原因と、考えられる疾患について

「体がだるい」「疲れがとれない」という症状、実は軽視できない重要なサインかもしれません。誰もが日常的に感じるこの不調は、単なる疲労だけでなく、貧血や糖尿病、甲状腺機能異常など、様々な疾患が隠れている可能性があります。
 
でも、そう聞くと不安になりますよね。大丈夫です。体のだるさには、生活習慣の乱れやストレスなど、改善可能な原因も多くあります。
 
このコラムでは、だるさの原因から考えられる病気、そして自分でできる対処法まで、医学的な視点から詳しく解説します。あなたの体調不良の原因を理解し、適切な対策を見つけるきっかけになるはずです。

 
 

身体がだるさ・疲れを感じるのはなぜ?その仕組みは?

体がだるい・疲れやすい状態は、実は私たちの体が発する重要な危険信号の一つです。この症状は医学的には「倦怠感」と呼ばれ、体が休息を必要としているサインとして現れます。
 
その仕組みは、体の状態を一定に保とうとする「恒常性(ホメオスタシス)」と深く関係しています。体内環境が乱れそうになったとき、それを防ぐために体が発する警告がだるさなのです。熱や痛みと同様、体を守るための重要な防衛反応と言えます。
 
だるさには大きく分けて2種類あります。1つは運動や労働による一時的な肉体的なだるさで、これは休息で回復します。もう1つは精神的なストレスから生じるだるさで、より慢性的になりやすい特徴があります。さらに、この2つが組み合わさった状態になることもあります。
 
漢方医学では、だるさを病気の有無に関係なく「気虚(ききょ)」という体内エネルギーの不足状態としてとらえています。これは現代医学における自律神経の乱れに近い概念です。
 
このように、だるさは単なる疲れではなく、体調の変化を知らせる大切なサインなのです。
 
 

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体がだるい・疲れやすい等の倦怠感の根本的な原因

体のだるさや疲れやすさには、様々な原因が潜んでいます。一時的な疲労から持病まで、その要因は多岐にわたります。ここでは、倦怠感の主な原因について詳しく解説していきましょう。
 

睡眠不足や休息不足による疲労の蓄積

日々の仕事や家事による疲労は、適切な休息をとることで回復するのが自然な流れです。しかし、十分な休息を取れないまま無理を重ねると、やがて慢性疲労の状態に陥ってしまいます。その結果、睡眠障害や食欲不振、集中力の低下などの症状が現れ、全身のだるさを引き起こします。
 
また、生活リズムの乱れも大きな影響を及ぼします。特に睡眠時間や食事の時間が不規則になると、体内時計が狂い、体調不良を引き起こします。昼夜逆転の生活は脳の疲労感を強め、自律神経の乱れを招く原因となるため注意が必要です。
 

精神的ストレスによる自律神経の乱れ

 

 
仕事上のプレッシャー、人間関係の悩み、引っ越しや転勤による環境の変化、結婚や出産による生活の変化など、私たちは日常的に様々なストレスにさらされています。このようなストレスが続くと、自律神経のバランスが崩れ、だるさを感じやすくなります。
 
環境や生活の変化が原因の場合は、新しい状況に慣れてくれば自然と改善することが期待できます。しかし、人間関係の悩みなど、解決が難しい原因の場合は、放置するとうつ病などの精神疾患につながる危険性もあります。
 

食生活の乱れや食べ過ぎによるだるさ

忙しさを理由に食事を抜いたり、栄養バランスの悪い食事が続いたりすると、体に必要な栄養が不足し、疲れやすくなったり気力が落ちたりします。特に、野菜や果物の摂取不足は要注意です。
 
逆に、食べ過ぎも問題です。体が必要とする以上のエネルギーを摂取すると、消化に余計なエネルギーを使うことになり、だるさの原因となります。また、糖質の多いお菓子や過度の飲酒は、血糖値の急激な変動を引き起こし、体内のエネルギーバランスを崩してしまいます。
 

風邪などの急性疾患によるだるさ

風邪の初期症状や回復期にだるさを感じるのは一般的な症状です。風邪の原因となるウイルスには様々な種類があり、アデノウイルスやRSウイルスなど、感染したウイルスの種類によってだるさの程度も異なります。
 
また、風邪以外にもインフルエンザや急性肝炎などの急性疾患でも、全身のだるさを感じることがあります。これらは体が病原体と戦うためにエネルギーを消費することで起こる症状です。
 

ホルモンバランスの乱れ

女性の場合、月経周期に関連してだるさを感じることがあります。これは月経前症候群(PMS)の症状の一つです。PMSでは、だるさの他に肌荒れ、乳房の張り、イライラなどの症状が現れます。
 
日本人女性の約70%がPMSに悩まされているというデータがあるほど、これは非常に一般的な症状です。月経の1週間位前に現れるだるさは、女性ホルモンのバランスの乱れが原因となっています。
 

病気が隠れている場合も

だるさは様々な病気の初期症状として現れることがあります。例えば、貧血、糖尿病、甲状腺機能障害、慢性疲労症候群、うつ病などが代表的です。特に注意が必要なのは、休養を取っても改善されないだるさが長期間続く場合です。
 
このような場合、体からの重要なサインとして捉え、医療機関での検査を検討する必要があります。また、だるさ以外にも頭痛や疲れやすさ、微熱、息切れなどの症状がある場合は、より慎重な対応が求められます。早めに医療機関を受診し、適切な診断を受けることをお勧めします。
 
 

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だるさや疲れ等の倦怠感に隠された病気

 

 
倦怠感は、生活習慣の乱れだけでなく、潜在的な疾患のサインである可能性もあります。以下では、急性肝炎や糖尿病など、だるさと関連する主な病気について解説します。早期に原因を特定することで、適切な治療を受け、健康な日常生活を取り戻す第一歩となります。
 

急性肝炎と倦怠感

急性肝炎は主に肝炎ウイルスへの感染が原因で発症します。感染後、数カ月の潜伏期間を経て、全身の倦怠感、発熱、黄疸などの症状が現れます。
 
特に肝臓の働きが低下することで、体内に毒素が溜まり、疲労感が増します。早期診断と治療が肝硬変や肝臓がんへの進行を防ぐ鍵となります。
 

糖尿病と倦怠感

糖尿病は、インスリンの働きが低下して血糖値が高くなる病気です。初期症状として、喉の渇きや頻尿とともに、全身のだるさを感じることがあります。
 
進行すると合併症を引き起こすリスクが高まります。定期的な血液検査で早期発見し、適切な管理を行うことが重要です。
 

睡眠時無呼吸症候群と倦怠感

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まる状態を繰り返す疾患です。これにより、睡眠の質が低下し、日中の強い倦怠感や眠気、集中力の低下を引き起こします。
 
専門的な診断を受け、治療機器の使用や生活習慣の改善を行うことで症状を軽減できます。
 

貧血と倦怠感

貧血は、体内で酸素を運ぶ赤血球やヘモグロビンが不足する状態です。その結果、酸素供給が不十分となり、だるさや息切れ、めまいが起こります。
 
鉄分を多く含む食事を摂取することで予防・改善が可能ですが、重症の場合は医療機関での治療が必要です。
 

腎不全と倦怠感

腎不全は、体内の老廃物が適切に排出されなくなる状態で、倦怠感を伴うことが多いです。特に末期腎不全では、尿毒症や電解質異常により症状が悪化します。
 
持続的な倦怠感を感じる場合は、腎臓内科での診断と治療を早急に行うべきです。
 

うつ病と倦怠感

うつ病は、精神的な落ち込みに加え、全身のだるさを伴うことが特徴です。特に食欲減退や睡眠障害などの身体的症状が見られる場合、早めに専門医の診断を受けることが重要です。
 
適切な治療により、症状の軽減が期待できます。
 

慢性疲労症候群と倦怠感

慢性疲労症候群は、6カ月以上続く強い倦怠感が特徴で、日常生活に深刻な影響を及ぼします。ストレスや感染症が誘因となることが多く、症状の緩和には生活習慣の改善や専門的な治療が必要です。
 

更年期障害と倦怠感

更年期障害は、女性ホルモンの減少が原因で起こり、だるさや倦怠感に加えて、のぼせや抑うつ気分などが現れます。ホルモン療法や適切な生活改善が効果的です。専門医との相談により、症状を緩和できます。
 
 

倦怠感に対処する方法とは

倦怠感の改善には、日常生活での適切なケアが重要です。ここでは、だるさを軽減するための具体的な対処法をご紹介します。
 

質の良い睡眠が倦怠感に効果的

 

 
良質な睡眠は、自律神経のバランスを整え、倦怠感の改善に効果的です。寝る3時間前までには食事を済ませ、就寝前はリラックスした状態を保つことが大切です。
 
入浴は40度程度のぬるめのお湯に浸かり、寝る1時間半前には済ませましょう。これにより、体温が自然と下がり、良質な睡眠を促します。また、寝る直前のスマートフォンやパソコンの使用は避け、間接照明を使うなど、睡眠環境も整えることをおすすめします。
 

栄養バランスの取れた食事が倦怠感を軽減

栄養バランスのよい食事は、倦怠感の改善に不可欠です。1日の目安として、主食4杯程度、主菜(肉・魚・卵・大豆料理)3皿程度、副菜(野菜料理)5皿程度を基本とし、乳製品や果物も適量摂取しましょう。
 
特に、疲労回復に効果的なビタミンやイミダペプチドを含む食材がおすすめです。例えば、鶏むね肉、カツオなどを1日100g程度摂取すると効果的です。必要に応じて、サプリメントでの栄養補給も検討してください。
 

適度な運動が倦怠感を改善

適度な運動は、血液循環を促進し、疲労物質の代謝を助けます。特にジョギングなどの有酸素運動は、乳酸などの疲労物質を効率的に処理する効果があります。
 
運動の種類は、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、スイミングなど、自分の体力に合わせて選びましょう。運動には、ストレス耐性を高める効果も期待できます。まずは軽い運動から始め、徐々に活動量を増やしていくことをおすすめします。
 

ストレスを和らげることで倦怠感を緩和

ストレス解消は倦怠感の軽減に重要です。入浴は副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせる効果があります。また、趣味の時間を持つことや、家族や友人との会話も効果的です。
 
大切なのは、自分にとって心地よいと感じる時間の過ごし方を見つけることです。ヨガやストレッチ、深呼吸などのリラックス法も、ストレス解消に役立ちます。
 

倦怠感の症状が続く場合は医療機関を受診

生活習慣の改善を試みても倦怠感が続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。特に、だるさ以外にも頭痛や微熱、息切れなどの症状がある場合は要注意です。
 
早めの受診で病気の可能性を確認し、必要に応じて適切な治療を受けることが重要です。持病がある方の場合は、症状の悪化のサインかもしれませんので、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
 
 

まとめ

体のだるさや倦怠感は、私たちの体が発する重要な警告サインです。原因は、単なる疲労から様々な疾患まで多岐にわたります。まずは、良質な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動など、基本的な生活習慣の改善を心がけましょう。
 
しかし、これらの対策を試みても改善が見られない場合は、うつ病や貧血、糖尿病などの病気が隠れている可能性があります。そのような場合は、早めに医療機関を受診し、専門家に相談することをおすすめします。倦怠感を軽視せず、適切なケアと対策を行うことで、健康的な毎日を送ることができます。
 
 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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