動脈硬化症とはどんな病気?検査と治療薬について解説

  • クリニックブログ
2024/03/11

動脈硬化症とはどんな病気?検査と治療薬について解説

仕事が忙しく、ついおろそかになりがちな食生活や運動不足は、多くの方にとって大きな悩みの一つでしょう。しかし、普段から不摂生な生活を送ってしまうと、動脈硬化症という恐ろしい病気を発症してしまうかもしれません。
 
今回は動脈硬化症とはどのような病気なのかをご紹介いたします。動脈硬化症にはどのような治療薬が使われるかなども併せて解説いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

動脈硬化症とは

まずは、動脈硬化症とはどのような症状なのかということについて解説いたします。

血管が硬くなっている状態のこと

動脈硬化症とは、動脈と呼ばれる血管が文字通り硬くなり、血流の流れを妨げる状態になってしまっている症状のことです。通常の動脈は張りと柔軟性があり、心臓から送られた栄養と酸素をスムーズに全身にくまなく流れるようになっています。
 
しかし、この血管は年を取ったり、さまざまな要因が原因となることで、血管が硬くなっていくのです。血管が硬くなってしまうと血の流れが滞りやすくなり、体中へ送る栄養や酸素を十分に運べなくなってしまいます。その結果、さまざまな病気を発症させてしまう危険性が高くなります。
 

動脈硬化症の種類

動脈硬化症には種類があり、動脈硬化症が起こっている場所や動脈の構造によって区分されています。動脈硬化症の種類は、主に以下の3種類です。
 

  • ● アテローム動脈硬化
  • ● メンケベルク型動脈硬化
  • ● 細動脈硬化

 

アテローム動脈硬化

アテローム動脈硬化は粥状硬化とも呼ばれており、動脈硬化症が通常よりも進行した状態の血管に、プラークという血の塊が盛り上がってきて、さらに血管を狭めている状態のことです。
 
プラークは糖質やコレステロールなどが乗ってドロドロとした血が流れていることで起こり、血管に傷がつくとそこに入り込んでおかゆ状の腫瘍を作ります。この腫瘍のせいで血管がさらに狭まって弱まり、また血管に傷を作ってプラークができてしまうという悪循環を生み出してしまうのです。
 
一般的な動脈硬化症とはこの症状のことをいい、症状がさらに進むと、腎梗塞や手足の壊死など大きな症状を引き起こしてしまいます。また、心臓近くの血管や手足の太い血管、腎臓付近といった体の中でも活発に働く大きい血管がアテローム動脈硬化になりやすくなっています。
 

メンケベルク型動脈硬化

動脈は内膜、中膜、外膜の3つの層から構成されており、メンケベルク型動脈硬化はこの中膜にカルシウムが異常に染み込むことで起こる動脈硬化です。喫煙やストレスなどの原因により、カルシウムをしっかりと別エネルギーに変換することができなかった場合に、中膜に溜まって血管に石灰がこびりついてしまうのです。
 
石灰の付いた血管は通常の血管と比べて脆くなり、血管が破れてしまうこともあります。動脈の中でも特に中膜に「平滑筋」という細胞が多いところで起きやすく、上肢や下肢の太い動脈や首の太い血管などで症状がみられるとされています。
 

細動脈硬化

細動脈硬化は脳や腎臓、目といった繊細な血管が集まる場所で起こる症状です。血管の壁がところどころで薄くなったり分厚くなったりして、動脈の3層全てが脆くなります。結果、突然血管が破裂して重篤な症状になってしまうことも少なくありません。これが脳梗塞や目の網膜に血栓を作る網膜静脈閉塞を発症させるのです。

 
 

動脈硬化症になる原因

動脈硬化症が発症する主な原因として、以下の5つが挙げられます。
 

  • ● 高血圧
  • ● 過食などによるコレステロールの増加
  • ● 喫煙
  • ● ストレス
  • ● 運動不足や寝不足といった生活習慣

 
血の流れが物理的に乱れる高血圧やタバコの喫煙によって免疫能力を下げるといった行為は、血管への与えるダメージが大きく、症状をさらに進行させてしまいます。
 
また日常のストレスや運動不足、過食といった生活習慣は、コレステロールを増やしたり高血糖となったりして、正しく別エネルギーなどへの変換や反応をうまく行うことができなくしてしまうのです。特にコレステロールなどの脂質と呼ばれる値が上昇してしまうと、薬などを使用した際に血液の濃度が上がり、副作用などが強く出てきてしまう場合があります。
 
これは脂質異常症といい、動脈硬化症を深刻化させてしまう一端を担っています。脂質異常症については別記事に詳細があるため、そちらも併せてご覧ください。
 

 脂質異常症について詳しくはこちら

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動脈硬化の自覚症状

動脈硬化症は別名「サイレント・キラー」と称されるほど症状を自覚することが難しく、症状に気づいたら深刻な状態になっている場合が多い傾向にあります。そのため、健康診断や血液検査などで血中の脂質などを調べ、その値で発症しているかを判断するのです。
 
ただ個人によっては初期の症状として異常に疲れやすい、頭痛や耳鳴りなどが起こりやすいなどということもあります。

 
 

動脈硬化症のリスク

動脈硬化症は深刻な症状になると、以下の病気を発症する場合があります。突然死を招く突発的なものもあるため、動脈硬化症を発症したらより一層の注意が必要です。
 

  • ● 脳梗塞
  • ● 心筋梗塞
  • ● 脳出血
  • ● 狭心症

 

脳梗塞

脳梗塞は脳を巡る繊細な血管の中がつまったり、血管の壁が異常に圧迫したりすることで脳へ血が回らなくなり、脳細胞が壊死してしまうことで発症します。
 
脳の一部に大きなダメージを与えるため、さまざまな障害が残ることが多く、手足の麻痺や体の半分が動かなくなることもあります。目に見える障害だけでなく、ものを考えたり、記憶したりすることが難しくなる可能性もあり、障害の余波がどこまで及ぶかわからないという恐ろしい病気です。
 

 脳梗塞について詳しくはこちら

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脳出血

脳出血とは、脳の血管が脳梗塞の時と同様につまったり、圧迫したりすることで血管が破れて出血することです。血が脳へ漏れ出すと血腫と呼ばれる腫瘍になって脳を圧迫するため、意識に障害が出たり、顔がおかしな表情になってしまったりとさまざまな症状を起こしてしまいます。
 
脳細胞は破壊されても再生することができないため、発症後は程度の差はありますが障害が残りやすい病気です。
 

心筋梗塞

心臓には心筋と呼ばれる、心臓を動かすための筋肉があります。これに続くための太く丈夫な血管の内部がつまることで、十分に栄養と酸素が運ばれなくなり、心筋が壊死してしまう病気が心筋梗塞です。心筋が壊死してしまうと心臓を動かす力が無くなってしまうため、突然死に至るケースも少なくありません。
 

 心筋梗塞について詳しくはこちら

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狭心症

狭心症は、心筋に続く血管の内部が狭くなり、血の流れが阻害されてしまうという、心筋梗塞とよく似た病気です。完全に血の流れが途絶えていないものの激しい運動や温度差の激しい場所を移動するなどの行為をすると、一時的に心臓に強い圧迫感や痛みなどの発作が出てくる場合があります。
 
狭心症が深刻化すると心筋梗塞へと繋がるケースがあり、発症すると強い制限が患者に課せられてしまいます。
 

 狭心症について詳しくはこちら

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動脈硬化症を防ぐために

恐ろしい病気が発症するリスクを回避するための予防や検査はなにがあるのでしょうか。
動脈硬化症の予防法とともにご紹介します。

動脈硬化症かを調べられる5つの検査

動脈硬化症は症状の自覚が難しいため、多くは検査で判明します。
主に以下5つの検査で判断することが可能です。
 

  • ● ABI検査
  • ● 下肢動脈エコー検査
  • ● 造影CT検査
  • ● MRA検査
  • ● カテーテル検査

 
ABI検査は両方の手足に血圧計を巻いて同時に測ることで、動脈硬化の進み具合や血管の壁の厚さなどを検査する方法です。動脈硬化症は手足に影響が出ることも多く、特にふくらはぎや太ももといった下半身に痛みや足の肌色がおかしい場合は、下肢動脈エコー(超音波検査)で血管につまりがないかを確認します。
 
造影CT検査は、通常のCT検査とは少々異なり、造影剤というCTで体をスキャンした際に画像に色をつける薬品を患者に投与して行う検査方法です。脳出血や脳梗塞を起こした患者に主に用いられます。
 
MRA検査とは、血管の状態を詳細に確認することができる方法で、MRI検査とほとんど検査方法は変わりません。脳や下肢の血管状態を調べて、動脈硬化症によりできたプラークや腫瘍を見ます。
 
カテーテル検査は主に心臓の血管状態をみる検査で、腕や足などの太い血管からチューブを入れて心臓の動きや血管の幅、心臓の圧力などを確認することが方法です。カテーテル検査は主に狭心症などの心臓に異常が見られる方に用いられます。
 

予防は生活習慣の見直しから

動脈硬化症の予防と治療は、まず生活習慣の見直しが優先されます。食生活と運動、規則正しい生活を心がけることで、動脈硬化症の進行を遅らせることが可能です。

 

動脈硬化症の予防におすすめの食事

普段の食生活は、日本食を中心に行うと良いでしょう。動物性脂質やごはんなどの炭水化物を摂りすぎないようコントロールすることが大切です。時間にゆとりをもってゆっくりと食事をすることを意識し、夕飯を控えめにすることで肥満防止にも繋がります。噛む回数を増やすようにすると、少食にしてもより満腹感を得られるでしょう。

 

ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめ

運動は20~30分程度のウォーキングなどの有酸素運動を行いましょう。有酸素運動を行うことでコレステロールなどが血の中で正常に別エネルギーへ変換したり、反応が行われたりします。また適度な運動はストレスの発散にも有効です。狭心症など心臓に疾患を持つ場合は、医師と相談し、ゆっくりと行動するようにして発作が出ない範囲を見極めてください。


 
 

まとめ

ここまで動脈硬化症についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。動脈硬化症の主な予防や改善は、生活習慣の見直しが中心となります。症状がひどい場合は、薬や手術によって血管を広げるといったことを行いますが、その後の生活に大変な制限が設けられてしまいます。
 
動脈硬化症によって脳梗塞などの恐ろしい病気を招くこともあるため、食事や運動の見直しを心がけるようにしましょう。


 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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