狭心症とは?症状・原因・治療法について

  • クリニックブログ
2023/05/18

狭心症とは?症状・原因・治療法について

狭心症って何?

虚血性心疾患の1つで、動脈硬化などにより心筋(心臓の筋肉)に血液を送る冠状動脈が詰まりかけている、あるいは血管の痙攣によって一時的に狭窄(細くなって)して、血流の流れが悪くなった(虚血)状態です。
心筋障害は一過性で、心筋の壊死を残さないのが、同じ虚血性心疾患である心筋梗塞との大きな違いです。
狭心症は発作の条件によって①安定性狭心症(労作性狭心症)②冠攣縮性狭心症(異型)③不安定狭心症の3つに分けられ、緊急性は安定性狭心症<冠攣縮性狭心症< 不安定狭心症の順で高くなります。

1: 安定性狭心症

労作時のみ(一過性)に起きる心筋虚血であり、発作出現の仕方が安定しているという特徴があります。

2: 冠攣縮性狭心症

冠動脈の一過性の過剰収縮(攣縮)での心筋虚血であり、安静時(夜間〜早朝)に多くみられます。

3:不安定狭心症

狭心症発作が頻回に、労作時だけでなく安静時にもおこり、冠動脈が急速に狭窄していることが考えられ、心筋梗塞誘発の恐れがあるため早急な対処が必要です。
狭心症と言っても上記のように違いがあり、症状や原因によって、検査・治療も異なるため分類わけをしっかりすることが大切です。

狭心症の原因って?

狭心症の原因は、動脈硬化が多くを占めています。
動脈硬化とは、動脈の血管の弾力が失われて硬くなった状態で、内腔にプラークや血栓ができて血管が詰まりやすくなることを言います。

動脈は心臓から送り出される血液を全身に運ぶ役割を担っており、弾力がありしなやかです。
しかし、加齢やさまざまな危険因子によって、血管が硬く、厚くなってしまいます。
動脈硬化にはいくつか種類があり、大動脈など比較的太い動脈に粥腫ができる粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)、主に脳や腎臓の中の細い動脈が硬化してしまう細動脈硬化、動脈の中膜に石灰化を生じるメンケルベルグ型硬化があります。
危険因子として、喫煙、高コレステロール、高血圧、肥満、運動不足などがあり、これらが重なることにより発症リスクが高くなります。


 

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狭心症の症状って?

症状としては、主に胸痛が挙げられます。前胸部の絞扼感(胸にしめつれられたような圧迫感のある痛み)や、左肩や上腕、あご、歯、首、喉などへの痛みとして感じられる放散痛も認められます。
狭心症では心臓から離れた場所(左側上半身)にも症状が出ることが少なくないので、痛みを感じる場所をしっかり伝えることも診断の上で大切な情報となります。
これは実際にその部分が痛むのではなく、心臓の痛みが脳に伝わる際に、他の神経に痛みの刺激がうつってしまい起こる現象です。
痛みの継続時間は心筋梗塞に比べて短く5〜15分ほどで、安定性狭心症(労作性狭心症)の場合は安静にしてると症状が軽減します。
労作時、安静時を問わず20分以上続く強い胸痛や冷や汗、嘔気などを伴う場合は心臓の血管が詰まっているか、9割以上狭くなっている可能性があります。
そのままだと心筋が壊死してしまい、心筋梗塞となり日常生活に大きな影響を及ぼします。

狭心症の段階で治療をすることができれば、心臓の機能を維持することができます。早急に血流を改善させるための処置が必要となりますので、上記の症状が出た場合は医療機関をすぐ受診してください。
また糖尿病の方は、痛みを感じにくくなっている場合があるので、少しでも違和感を覚えたら早めの受診が大切です。


検査をする神山医師
  

狭心症の検査や診断について

1: 心電図検査

12誘導心電図・症状がある時に記録すると狭心症ではST波の低下、心筋梗塞ではST波の上昇が認められます。症状が落ち着いてしまった場合は、ST波の変化を正確に捉えることができないため、症状のある時の受診が非常に大切です。また過去の心電図と比較することで、変化があるかどうかも大切な判断材料になります。そのためかかりつけのクリニックを受診することがおすすめです。

 
心電図検査

2: 運動負荷心電図

2段ある階段を登り降りして心電図を記録するマスターの2階段昇降試験や、ベルトコンベアの上を歩くトレッドミル試験があります。運動負荷をかけることにより、狭心症の症状が起こりやすい環境を作り出し、症状が出現するか、心電図の変化があるかを確認します。

3: ホルター心電図

小型の心電計を用いて、24時間以上心電図を測定することができます。普段と同じ行動をし、行動記録表への記入内容と心電図を照合することで、日常生活のどのようなタイミングで症状が出たのか、また症状出現時にどのような心電図変化があったかを解析することができます。深夜〜早朝の病院受診が難しい時間帯の心臓の動きをみることができるので、 冠攣縮性狭心症(異型)の評価にも用いられます。

4: 心臓超音波検査

心臓の機能、心筋の動き、弁の状態など、心臓の動きをリアルタイムでみれる検査です。症状出現時にエコーを行うと、心筋機能の低下がみられ、原因となっている血管を推定することにも役立ちます。症状がおさまっていると、異常が見られないことも多いです。
心電図検査 

5: 血液検査

狭心症の確定診断は、血液検査だけではできません。しかし心筋梗塞になっているかどうかの大切な判断材料になり、狭心症のリスク因子である糖尿病や脂質異常の有無を調べることは、欠かせない重要な項目です。
血液検査

6: 冠動脈造影検査(カテーテル)

確定診断のために行われる検査で、足の付け根や手首から動脈にカテーテルという管を入れ、造影剤で動脈の狭窄、攣縮、血栓の有無を調べます。

狭心症の治療は?

狭心症の治療方法については大きく3つに分かれ、①薬物治療②カテーテル治療③冠動脈バイパス移植術があります。

1: 薬物治療

発作時にニトログリセリンを舌下錠またはスプレーで投与します。
入れるのは、薬を自然に溶かし口腔粘膜から吸収させ、早急に効果をもたらすために必須です。舌の下に入れずに飲み込むと思うような効果が発揮されないので、摂取方法に注意が必要です。ニトログリセリンを投与することで冠動脈の狭窄を一時的に緩和し、狭心症の症状は改善されますが、狭窄自体は残ったままです。そのまますぐに循環器内科の受診をするようにしましょう。
症状が安定している場合は、血液をさらさらにする薬や、狭窄の原因になる脂質異常や糖尿病の治療薬を合わせて内服することが重要です。

2: カテーテル治療

直径2mmほどの細い管を太ももの付け根や腕の血管から入れ、血管の細くなってる部分を広げる治療です。

3: 冠動脈バイパス移植術

冠動脈の狭くなった部分(狭窄)より先に穴を開け、自分の血管をとって縫い付ける移植術です。
狭心症の発生の原因や症状の程度によって治療方針が決まるため、できるだけ早い段階で病院を受診することが大切になります。

  

狭心症の予防方法は?

狭心症のリスクとして、①高血圧②脂質異常③糖尿病④喫煙⑤家族歴⑥肥満があります。

それらの効果的な予防策として、
① 高血圧予防のため、塩分を控えた食事や野菜や果物の意識的な摂取、節酒を行う。
②脂質異常予防のため、タンパク質は肉類より、魚類や大豆製品で摂取する。食物繊維を多く含む野菜を食べる。量は控え、質の良い油を摂取する。
③糖尿病の予防・改善は、自分の摂取カロリーを把握して、バランスの良い規則正しい食生活を実践しましょう。
④ 喫煙は量・ペースを減らしていき、できるだけ禁煙する。保険診療も行えるので、医療機関に相談しましょう。
⑤家族歴(近親者の健康情報)がわかると、どのような遺伝的疾患があるのか、同じような生活環境でどのような病気になっているかを把握できます。
⑥肥満改善のために、食事は腹八分目を意識し、継続した運動(有酸素運動)を行うことが大切です。

上記以外にも、睡眠時間の確保、朝食を食べ間食を控える、夜遅く寝る前に食べないなど、全部をすぐ行うのではなく、できることから少しずつ始めて、自分の生活習慣に無理なく取り入れていくことが大切です。
  

まとめ

狭心症について、少しでも知ることはできましたか?胸が痛い!!、、大人しくしてたら落ち着いた、良くなったから大丈夫!と自分で判断するのではなく、小さな事でも医師に相談することで早期発見につながります。違和感を感じたら放置することなく、行動していただけたらと思います。

MYメディカルクリニック渋谷では、2023年4月から最新のホルター心電図の機械を導入しました。従来の機械では、検査当日入浴ができず、普段の生活全てを観察することができませんでした。しかし、今回導入した機械は入浴も可能ですので、1日の心臓の動き方を確認することができます。
ドキッと痛むことがある、胸が締め付けられることがあるなど、心臓に何か違和感を感じたら、病気の可能性を1つずつ確実に確認していくために、一度検査してみるのもいいと思います。

また健康診断で異常が見つかったら放置するのではなく、原因をなるべく追求し、必要であれば治療することが大切です。

おや?と感じる違和感をほっておくと、取り返しがつかなくなることがありますが、健康診断をきっかけに自分の身体の変化に気づき、元気に楽しく過ごせるように身体のメンテナンスをしていくことが、狭心症の予防には不可欠です。


  

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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