
ヒトメタニューモウイルス感染症とは?症状・感染経路・予防法を徹底解説
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ヒトメタニューモウイルス感染症とは?症状・感染経路・予防法を徹底解説
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、急性呼吸器感染症を引き起こすウイルスで、特に乳幼児や高齢者において重症化する可能性があります。2001年にオランダで初めて発見されて以来、世界中で広がりを見せており、毎年季節性の流行が観察されています。
ヒトメタニューモウイルス感染症の概要、症状、感染経路、検査と治療方法について詳しく解説します。
ヒトメタニューモウイルスとは
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、パラミクソウイルス科に属するウイルスで、主に呼吸器系に影響を及ぼします。感染者の多くは軽度の上気道感染症を呈しますが、特に免疫力が低下している人や乳幼児、高齢者では重症化することがあります。hMPVは、風邪やインフルエンザと似た症状を引き起こすとされています。
感染経路は、主に飛沫感染と接触感染です。感染者の咳やくしゃみ、またはウイルスが付着した物に触れることで感染が広がるため、手洗いやマスクの着用が重要です。特に保育園や幼稚園などの集団生活の中で流行しやすい感染症です。
感染力が強いウイルスで、特に発症から1〜4日後に感染力が高まります。
症状
潜伏期間は通常3~6日で以下の症状があらわれます。感染しても症状があらわれるまで無症状であることが多いので注意が必要です。
小児の症状
- ●発熱:多くの場合、発熱が見られます。
- ●咳:持続的な咳が特徴で、特に夜間に悪化することがあります。
- ●鼻水・鼻づまり:風邪と同様に、鼻水や鼻づまりが見られます。
- ●喘鳴(ぜんめい):ヒューヒューという呼吸音が聞こえることがあり、これは気道の狭窄を示すサインです。
- ●呼吸困難:重症化すると、呼吸が苦しくなり、入院が必要になることもあります。
小児は特に重症化しやすく、気管支炎や肺炎を引き起こすことがあるため、注意が必要です。症状は通常、発症から1週間程度で改善しますが、咳や鼻水はその後も続くことがあります。
大人の症状
- ●発熱:発熱は見られることもありますが、小児に比べて頻度は低いです。
- ●咳:咳は一般的に見られますが、軽度で済むことが多いです。
- ●鼻水・鼻づまり:これも一般的な症状ですが、重症化することは少ないです。
- ●倦怠感や筋肉痛:これらの症状が見られることもありますが、頻度は低いです。
大人は通常、軽い風邪のような症状で済むことが多く、健康な成人の場合、数日から1週間程度で自然に回復することが多いです。ただし、高齢者や基礎疾患を持つ人は肺炎など重症化するリスクがあるため、注意が必要です。
検査と診断
迅速診断キットを使用して、鼻から採取したサンプルを検査する方法がありますが、6歳未満の場合に保険適用となる検査です。
そのため、すべての患者に対して検査が行われるわけではなく、特に重症化のリスクが高い場合や、症状が持続する場合に検査が推奨されます。
治療
ヒトメタニューモウイルス感染症には特効薬が存在しないため、治療は主に対症療法に基づいて行われます。具体的には、以下のような方法です。
安静と水分補給
感染症にかかった際は、十分な休息と水分補給が重要です。体力を回復させるために、安静に過ごすことが推奨されます。
症状緩和のための薬物療法
・解熱剤:発熱がある場合には、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱剤が使用されます。
・咳止めや去痰薬:咳がひどい場合には、咳止めや去痰薬が処方されることがあります。
・気管支拡張薬:喘鳴や呼吸困難が見られる場合には、気管支拡張薬が使用されることもあります。
再診の目安
ヒトメタニューモウイルス感染症の再診の目安について、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
呼吸困難の症状
呼吸が苦しそうで、特に夜間に眠れない場合や、顔色が悪い、呼吸が荒い(鎖骨の上や肋骨の間が呼吸に合わせてへこむ)などの症状が見られるときは、すぐに受診が必要です。
水分摂取ができない
水分を全く摂取できない、または非常に少ない場合は、脱水症状の可能性があるため、再診が必要です。
発熱が続く
発症後2〜3日経っても熱が下がらない場合や、熱が4日以上続く場合は、細菌感染の合併を考慮し、再診が必要です。
症状の悪化
咳がひどくなったり、喘鳴(呼吸時にゼーゼー音がする)が強くなった場合、または咳が続いて眠れない場合は、再診を検討してください。
乳児の場合、母乳やミルクの飲みが悪くなったり、食事が取れなくなった場合は再診が必要です。通常の様子と異なり、元気がない、機嫌が悪いなどの変化が見られる場合も受診を考慮してください。
予防法
現在、ヒトメタニューモウイルスに対する特効薬やワクチンは存在しないため、以下の基本的な対策が推奨されています。
- 【手洗い】
- 石鹸と水での手洗いは、ウイルスの拡散を防ぐ最も効果的な方法です。
特に、外出後や食事前には必ず手を洗うことが重要です。 - 【咳エチケット】
- 咳やくしゃみをする際には、ティッシュや肘で口と鼻を覆うことで、飛沫感染を防ぎます。
- 【人混みを避ける】
- 感染者との接触を避けるために、特に流行時には人混みを避けることが推奨されます。
- 【マスクの着用】
- 特に症状がある場合や人混みの中ではマスクを着用することが効果的です。
- 【環境の清掃】
- よく触れる表面を定期的に清掃し、消毒することで接触感染のリスクを減少させます。
症状が似ている感染症
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症は、風邪のような症状を引き起こしますが、他の感染症と似た症状を示すことが多く、特にRSウイルス感染症やインフルエンザウイルス感染症と混同されることがあります。以下に、これらの感染症の特徴と違いについて詳しく説明します。
1. RSウイルス感染症
【症状】
・hMPVと非常に似た症状を示し、咳、鼻水、発熱が主な症状です。
・特に乳幼児では、喘鳴や呼吸困難を伴う細気管支炎を引き起こすことが多いです。
・発熱は通常4〜5日続くことがあり、重症化することもあります。
【感染経路】
hMPVと同様に、飛沫感染や接触感染によって広がります。特に冬季に流行します。
RSウイルス感染症についてはこちら
2. インフルエンザウイルス感染症
【症状】
・突然の高熱(通常38℃以上)、全身の倦怠感、筋肉痛、関節痛が特徴です。
・咳や鼻水も見られますが、インフルエンザは全身症状が強く現れる点がhMPVやRSウイルス感染症と異なります。
【感染経路】
飛沫感染や接触感染によって広がります。インフルエンザは通常、冬季に流行しますが、流行の規模は年によって異なります。
3. 風邪(普通感冒)
【症状】
・咳、鼻水、喉の痛み、くしゃみ、軽度の発熱などが見られますが、一般的には軽症で済むことが多いです。
・hMPVやRSウイルス感染症と比較すると、重症化することは少ないです。
【感染経路】
hMPVやRSウイルスと同様に、飛沫感染や接触感染によって広がります。風邪は年間を通じて発生しますが、特に冬季に多く見られます。
症状が似ている感染症との違いのまとめ
重症度
hMPVとRSウイルスは、特に小児や高齢者において重症化するリスクが高いですが、インフルエンザは全身症状が強く、急激に症状が悪化することがあります。風邪は通常、軽症で済むことが多いです。
発熱のパターン
インフルエンザは高熱が特徴で、急に発症しますが、hMPVやRSウイルスは発熱が数日続くことが多いです。風邪は軽度の発熱が見られることがありますが、通常は短期間で解熱します。
流行時期
hMPVとRSウイルスは冬から春にかけて流行しますが、インフルエンザは冬季に特に流行します。風邪は年間を通じて発生します。
これらの感染症は症状が似ているため、正確な診断が重要です。特に重症化のリスクがある場合は、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
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ヒトメタニューモウイルス感染症に関するよくある質問
流行シーズンはいつですか?
主に冬から春にかけて流行しますが、通年みられます。
何度も感染しますか?
はい、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は一度感染しても再感染することがあります。
重症化のサインは?
発熱や咳が1週間以上続いたり、呼吸困難になったりすることがあります。
感染者が登園・登校できる条件は?
症状が落ち着いたら可能ですが、保育園や学校に相談してください。
無症状の場合もありますか?
あります。特に成人の場合、無症状で終わることがあります。
ワクチンはありますか?
現在特定のワクチンはありません。
感染を予防するには?
手洗いやマスク着用、消毒や適切な換気が効果的です。特に体調が優れない場合は、外出を控えることが重要です。
ヒトメタニューモウイルス感染症にかかると、どのような合併症が考えられますか?
気管支炎や肺炎などの重篤な呼吸器感染症が合併症として考えられます。特にリスクの高い人々では注意が必要です。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師