
消化器感染症の症状と原因|ウイルス性胃腸炎など
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消化器感染症の症状と原因|ウイルス性胃腸炎など
消化器感染症は、病原体が口から体内に入り込み、腸管に感染することで引き起こされる疾患です。嘔吐や下痢、発熱などの症状が特徴的で、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。特に冬場に流行するウイルス性胃腸炎や、夏場に多い食中毒など、季節によって異なる特徴があります。
この記事では、消化器感染症の基礎知識から症状、予防法まで詳しく解説します。早期発見と適切な対処で重症化を防ぎ、健康な生活を送りましょう。
消化器感染症の基礎知識
消化器感染症は誰もが経験する可能性がある身近な感染症です。感染経路や季節性を理解することで、効果的な予防が可能になります。基本的な知識を身につけ、日常生活での予防対策に活かしましょう。
消化器感染症とは
消化器感染症は、ウイルスや細菌などの病原体が口から体内に入り、腸管で感染・増殖することで発症する病気です。主な症状として嘔吐や下痢、発熱、腹痛などが現れます。感染力が強く、家族内や施設内での集団発生も多く見られます。病原体の種類によって潜伏期間や症状の程度が異なるため、適切な対処には原因の特定が重要になります。
主な感染経路
感染経路は主に経口感染です。汚染された食品や水を摂取することで感染するほか、感染者の便や嘔吐物に含まれる病原体が手指を介して口に入ることでも感染します。特に二枚貝や生肉、加熱不十分な食品からの感染リスクが高くなっています。
また、感染者が触れたドアノブや手すりなどを介した接触感染も多く見られます。特に保育施設や高齢者施設では、集団感染のリスクが高まります。
感染しやすい季節と環境
消化器感染症は季節によって流行する病原体が異なります。冬季はノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性胃腸炎が多く発生します。一方、夏季は細菌性食中毒が増加する傾向にあります。
気温や湿度が病原体の増殖に適した環境となる季節には、特に注意が必要です。また、人が密集する環境や、衛生管理が不十分な場所でも感染リスクが高まります。
代表的な消化器感染症
消化器感染症にはさまざまな種類があり、原因となる病原体によって症状や治療法が異なります。代表的な種類を理解することで、適切な対処や予防が可能になります。
ウイルス性胃腸炎
ウイルス性胃腸炎の代表的な原因ウイルスは、ノロウイルスとロタウイルスです。
ノロウイルスは冬季に流行し、嘔吐や下痢が突発的に始まるのが特徴です。感染力が非常に強く、少量のウイルスでも発症する可能性があります。
ノロウイルスについてはこちら
ロタウイルスは主に乳幼児に感染し、白色便を伴う水様性の下痢や発熱が特徴的です。近年は予防接種が定期接種化され、発症予防に効果を発揮しています。
ウイルス性胃腸炎についてはこちら
細菌性胃腸炎
細菌性胃腸炎はカンピロバクターやサルモネラなどの細菌が原因で発症します。カンピロバクター感染症は鶏肉の生食や加熱不十分な調理が主な原因となり、高熱と激しい腹痛を伴います。
サルモネラ感染症は卵や食肉が感染源となることが多く、感染から数日後に発熱や下痢などの症状が現れます。細菌性胃腸炎は一般的にウイルス性胃腸炎よりも症状が重くなる傾向があります。
食中毒
食中毒は汚染された食品を摂取することで発症する消化器感染症です。原因となる病原体は細菌やウイルスのほか、寄生虫や自然毒など多岐にわたります。潜伏期間は数時間から数日と幅広く、原因物質によって大きく異なります。
二枚貝や生肉、調理済み食品の長時間常温放置など、特定の食品や取り扱いに注意が必要です。集団発生することも多く、公衆衛生上重要な問題となっています。
症状と診断
消化器感染症の症状は病原体によって異なりますが、早期発見と適切な対応が重要です。重症化を防ぐためにも、典型的な症状や危険信号を把握しておく必要があります。
一般的な症状
消化器感染症の初期症状は、多くの場合突然の吐き気や嘔吐から始まります。続いて腹痛や下痢が現れ、発熱を伴うことも多くあります。ウイルス性胃腸炎の場合は37度台の発熱が一般的ですが、細菌性胃腸炎では38度以上の高熱になることもあります。
下痢の性状も原因によって特徴があり、ウイルス性胃腸炎では水様性の下痢が多く見られます。一方、細菌性胃腸炎では粘液や血液が混じることもあります。症状は通常5~7日程度で自然に改善していきます。
重症化のサイン
重症化を示す危険な兆候として、激しい腹痛の持続や血便の出現があります。また、嘔吐や下痢が頻繁に起こり、水分補給が追いつかず脱水症状が進行することも懸念されます。特に乳幼児や高齢者は重症化しやすい傾向にあります。
意識障害や急激な体力の低下、持続する高熱なども要注意です。このような症状が見られた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
検査・診断方法
消化器感染症の診断では、まず問診で症状の経過や食事歴、周囲の感染状況などを確認します。必要に応じて血液検査や便検査を実施し、炎症反応や病原体の特定を行います。
超音波検査やCT検査で腹部の状態を確認することもあり、他の疾患との鑑別に役立ちます。特に腹痛が強い場合は、虫垂炎などの緊急性の高い疾患を除外することが重要です。乳幼児や高齢者では、ノロウイルスの迅速検査が保険適用となっています。
治療と対処法
消化器感染症の多くは対症療法が中心となりますが、症状や原因によって適切な治療法が異なります。医療機関での治療と自宅での対処法を適切に組み合わせることで、早期回復につながります。
医療機関での治療
医療機関では患者の症状や全身状態に応じて治療方針を決定します。多くの場合、整腸剤や制吐剤などの対症療法が行われます。脱水が進行している場合は点滴による水分補給が必要となります。
細菌性胃腸炎では、症状が重い場合や免疫力が低下している患者には抗生物質が処方されることがあります。一方、ウイルス性胃腸炎では抗生物質は効果がなく、むしろ症状を悪化させる可能性があるため使用しません。
自宅での対処法
自宅療養では安静を保ち、消化の良い食事を少量ずつ摂取することが基本となります。特に嘔吐時は数時間絶食し、その後経口補水液などで少しずつ水分を補給していきます。
感染拡大を防ぐため、手洗いの徹底や便・嘔吐物の適切な処理が重要です。特にノロウイルスの場合、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が効果的です。トイレやドアノブなど共用部分の消毒も忘れずに行います。
水分・栄養補給の重要性
消化器感染症では嘔吐や下痢により多くの水分が失われるため、適切な水分補給が重要です。経口補水液やスポーツドリンクを常温で少しずつ摂取することで、電解質バランスを整えながら脱水を防ぐことができます。
食事は胃腸への負担が少ない消化の良いものから始め、徐々に通常の食事に移行していきます。下痢が続く場合でも、体力維持のため可能な範囲で栄養摂取を続けることが推奨されています。
まとめ
消化器感染症は適切な予防と早期対応が重要な疾患です。手洗いの徹底や食品の適切な取り扱いなど、日常的な予防対策を心がけることで感染リスクを大きく減らすことができます。また、症状が出現した際は早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることで重症化を防ぐことができます。
特に乳幼児や高齢者は重症化しやすいため、より慎重な対応が必要です。正しい知識を持ち、適切な予防と対処を行うことで、健康的な生活を送ることができます。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師