
胆汁うっ滞 – 胆汁の流れが悪くなる原因と症状、治療法
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胆汁うっ滞 – 胆汁の流れが悪くなる原因と症状、治療法
「肌がかゆい」「目や肌が黄色くなってきた気がする」など、体の不調が気になることはありませんか?これらは胆汁うっ滞が原因となっている可能性があります。
胆汁うっ滞は、肝臓で生成される胆汁が正常に流れず、肝臓や体内に滞留してしまう状態を指します。この症状は肝臓や胆管に異常がある場合に発生し、放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。
この記事では、胆汁うっ滞の原因、症状、診断方法、治療法、そして予防策を詳しく解説します。早期の対応で健康を守りましょう。
胆汁うっ滞とは?
胆汁うっ滞は、胆汁が肝臓や胆管から十二指腸に正常に流れなくなる状態を指します。胆汁は脂肪の消化を助ける重要な役割を担っていますが、流れが滞ると、体内に毒素が蓄積し、さまざまな症状が現れます。
胆汁うっ滞は「肝内胆汁うっ滞」と「肝外胆汁うっ滞」に分けられ、それぞれ原因や治療法が異なります。
肝内胆汁うっ滞
肝内胆汁うっ滞とは、肝臓内で胆汁の流れが滞る状態を指します。肝臓で生成される胆汁は、脂肪の消化吸収を助ける役割を果たしていますが、何らかの異常により胆汁が肝細胞や小胆管に蓄積し、正常な流れが妨げられることがあります。
肝外胆汁うっ滞
肝外胆汁うっ滞とは、肝臓から十二指腸までの胆汁の流れが、肝臓外にある胆管系で物理的に妨げられる状態を指します。胆汁は脂肪の消化吸収に欠かせない消化液ですが、その流れが滞ると、肝臓や体全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
胆汁うっ滞の原因とその影響
胆汁うっ滞は、肝臓や胆管系で胆汁の流れが滞ることで発生します。原因は主に肝臓に関連するものと、それ以外の要因に分けられます。それぞれの原因によって影響も異なりますが、放置すると全身に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期対応が重要です。
肝臓に関連する原因
肝臓に関連する胆汁うっ滞の主な原因には以下のようなものがあります。
肝炎や肝硬変
肝細胞が炎症や繊維化を起こすと、胆汁を適切に生成・排出する能力が低下します。この状態は、慢性的な肝疾患の進行に伴い悪化します。
肝硬変についてはこちら
薬剤性肝障害
特定の薬剤(抗生物質、抗がん剤など)は、肝細胞や小胆管に影響を与え、胆汁うっ滞を引き起こすことがあります。これらの薬剤の使用中は定期的な肝機能検査が推奨されます。
妊娠肝内胆汁うっ滞症
妊娠中のホルモン変化により、肝細胞の胆汁分泌が妨げられることがあります。この状態は胎児にも影響を及ぼす可能性があるため、迅速な対応が必要です。
肝臓が原因の胆汁うっ滞は、早期の診断と治療が必要です。放置すると、肝臓のさらなる悪化や体内の脂溶性ビタミン不足を引き起こします。
肝臓関連の原因による胆汁うっ滞では、肝機能の低下や黄疸、皮膚のかゆみ、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の不足が見られることがあります。これにより免疫力の低下や骨密度の減少が起こる可能性があります。
肝機能障害についてはこちら
肝臓以外の原因
肝臓以外の要因で胆汁うっ滞を引き起こす主な原因は以下のとおりです:
胆管結石
胆管内に結石が形成されることで胆汁の流れが物理的に遮断されます。特に痛みや黄疸、発熱を伴う場合は、胆管炎を併発している可能性があります。
胆管腫瘍や狭窄
胆管に発生する腫瘍や炎症後の瘢痕形成による狭窄が原因となり、胆汁の流れが妨げられることがあります。
膵臓疾患
膵臓の腫瘍や炎症が周囲の胆管を圧迫し、胆汁うっ滞を引き起こす場合があります。
胆管閉鎖症(新生児期)
新生児に見られる先天的な胆管の閉塞が原因で胆汁が排出されない状態です。早期診断と手術が必要です。
肝臓以外の要因による胆汁うっ滞では、右上腹部の痛み、黄疸、便の白色化、尿の濃色化が主な症状です。腫瘍や結石が原因の場合、早期に治療しないと命に関わる可能性があります。
胆汁うっ滞は原因によって治療法が異なります。肝臓由来の原因の場合は薬物療法や生活習慣の改善、肝臓以外の原因の場合は内視鏡的処置や外科手術が必要になることがあります。いずれにせよ、早期診断が健康維持の鍵となります。
胆汁うっ滞の症状とその特徴
胆汁うっ滞の症状は、以下のような特徴があります。
- ●黄疸:肌や白目が黄色くなる。
- ●皮膚のかゆみ:体内の胆汁成分が増えることでかゆみが生じる。
- ●尿の濃色化:胆汁が血液に漏れ出し、尿が濃い色になる。
- ●便の色の変化:胆汁が便に混ざらないため、便が白っぽくなる。
これらの症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
胆汁うっ滞の診断方法と検査
胆汁うっ滞の診断には、次のような検査が行われます。
- 1. 血液検査:肝機能や胆汁成分(ビリルビンなど)の値を測定。
- 2. 画像診断:エコーやMRIで胆管や肝臓の状態を確認。
- 3. 生検:必要に応じて肝臓の組織を採取し、詳細な検査を行う。
診断が確定したら、原因に応じた治療法が検討されます。
胆汁うっ滞の治療法と予防措置
胆汁うっ滞は、原因によって治療法が異なり、適切な対処を行うことで症状の緩和や進行の防止が可能です。また、予防措置を実践することで発症リスクを軽減することも重要です。
胆管の閉塞
胆管の閉塞は、物理的な障害が原因で胆汁の流れが遮られる状態です。原因に応じて以下の治療法が選択されます。
胆管結石の場合
胆管結石は、胆汁成分が固まり胆管を詰まらせることで発生します。内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)により結石を取り除く手術が行われます。結石が再発しないよう、脂肪分を控えたバランスの良い食事を心がけるなど、生活習慣を見直すことも推奨されます。
腫瘍や狭窄の場合
腫瘍が原因の場合、外科手術や放射線治療、化学療法が行われることがあります。狭窄の場合は、ステントを挿入して胆汁の流れを改善します。
肝臓内の閉塞
肝臓内の閉塞は、肝細胞や胆管の障害によるものです。以下の治療が行われます。
薬物療法
ウルソデオキシコール酸(ウルソ)などの薬剤を使用して、胆汁の流れを改善し、肝臓の負担を軽減します。
また、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の不足を補うことで全身の健康を維持します。
感染症への対応
胆管炎を伴う場合は、抗生物質を投与して炎症を抑えます。感染が重症化する前に治療を開始することが重要です。
症状の緩和
胆汁うっ滞に伴う不快な症状を緩和するための治療法です。
皮膚のかゆみへの対処
コレスチラミンなどの薬剤を使用して血液中の胆汁酸を低下させることで、かゆみを緩和します。また、スキンケアによって保湿剤を使用し、皮膚の乾燥を防ぎます。
栄養管理
脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の不足を補うためにサプリメントが処方されることがあります。
栄養バランスも考慮し、脂肪の摂取量を制限し、腸内環境を整えるための食物繊維を取り入れます。
予防措置
胆汁うっ滞のリスクを減らすためには、日常生活の中で以下の予防策を心がけることが重要です。
1. 健康的な生活習慣
胆汁うっ滞を予防するためには以下のような規則正しい生活習慣を心がけることも重要です。
- ●バランスの良い食事を心がけ、脂肪の摂取量をコントロールします。
- ●規則的な運動を行い、肥満やメタボリックシンドロームを防ぎます。
- ●アルコールを控えることで、肝臓への負担を減らします。
2. 適切な医療管理
また、胆汁うっ滞のリスクを減らすためには適切な医療管理を受けることも重要です。
- ●妊婦の注意:妊娠中は定期的に健診を受け、肝機能をモニタリングします。
- ●薬剤の管理:医師の指示を守り、肝機能に影響を与える薬剤の使用を慎重に行います。
- ●定期検診:胆石や胆管の異常を早期に発見するために、定期的な健康診断を受けましょう。
3. 水分と栄養の補給
胆汁うっ滞のリスクを減らすためには適切な水分と栄養の接種も重要なポイントとなります。
- ●十分な水分補給を行い、胆汁の流れをスムーズに保ちます。
- ●食物繊維を多く含む食品を摂取し、腸内環境を整えることで、胆汁の排泄を促進します。
胆汁うっ滞は、原因の特定と適切な治療により、多くの場合症状の改善が期待できます。また、予防措置を日常生活に取り入れることで、胆汁うっ滞の発症リスクを大幅に低減することが可能です。症状を感じた場合は、早めに医療機関を受診し、必要な対策を講じましょう。
まとめ
「肌のかゆみが続く」「白目や皮膚が黄色くなっている」といった症状は、胆汁うっ滞の可能性があります。胆汁うっ滞は、胆汁の流れが肝臓や胆管で滞る状態を指し、肝臓内の異常や胆管の閉塞が原因となることが多いです。この状態を放置すると、体内に毒素が蓄積し、重篤な健康被害を引き起こす可能性があります。
この記事では、胆汁うっ滞の原因や症状、診断方法、治療法、そして予防策を詳しく解説しました。胆汁うっ滞は、早期に適切な治療を行うことで症状を改善できる疾患です。また、健康的な生活習慣や定期検診を取り入れることで、発症リスクを軽減することが可能です。症状を感じたら速やかに医療機関を受診し、適切な対策を講じましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師