肝機能障害の原因となる5つの疾患とは?症状や治療法についても解説

  • クリニックブログ
2024/03/11

肝機能障害の原因となる5つの疾患とは?症状や治療法についても解説

「健康診断を受けたら、肝機能の数値が高くて、再検査が必要といわれた」
「体調は悪くないのになぜだろう?」
このような場合、肝機能障害の可能性も否定できません。
 
今回は、肝臓の働きから、肝機能障害の原因や症状について徹底解説します。肝臓について不安な思いを抱えている方はぜひ参考にしてみてください。

 

肝臓の働き

血管が硬くなっている状態のこと

肝臓は1.2㎏〜1.5kgほどの重さがある、人体最大の臓器です。
予備能力や再生力が高いことが特徴であり、生体肝移植で肝臓を切除しても生命維持が可能とされています。

 

たんぱく質の合成

食事をすると、その栄養分は胃腸で消化吸収されてから、血液を通じて肝臓に入ります。たんぱく質はアミノ酸となって肝臓に入り、肝臓がそのアミノ酸を使ってアルブミンや血液凝固たんぱくなどのたんぱく質を作り出すのです。

 

エネルギー貯蔵

吸収された栄養素のうち、糖質は、ブドウ糖という形で肝臓に入ります。肝臓は、血液中のブドウ糖からグリコーゲンを作り出し、エネルギーとして貯め込む働きも持っているのです。身体がエネルギーを必要とする場合は、グリコーゲンを分解して糖分を血液中に放出します。

 

解毒

身体にたまった老廃物、及び飲食物や薬剤から入った有毒物質(アルコールやアンモニアなど)を解毒する働きをするのも肝臓です。肝臓で毒素を抜かれた有毒物質は、主に尿として身体から外に排出されます。肝機能障害が発生すると、身体の中で有毒物質が蓄積されるため、肝臓をはじめあらゆる臓器に悪影響を与えるのです。

 

胆汁の分泌

胆汁を分泌するのも、肝臓の重要な役割の1つです。胆汁は、主に脂肪やたんぱく質の吸収を助ける消化液で、コレステロールや胆汁酸、ビリルビンという色素から作られます。
 
肝機能障害により、胆汁の分泌がスムーズにいかなくなると、ビリルビンが使われずにたまり、その結果生じるのが黄疸です。黄疸が生じると、皮膚や白目部分の色が黄色くなります。

 
 

肝機能障害とは

肝機能障害は、何らかの原因で肝細胞が炎症を起こしたり、脂肪が付着したりすることにより、肝臓の機能障害が起きている状態です。多くの場合、健康診断や人間ドックなどで受ける血液検査の異常値で発見されます。
 
ここでは、肝臓の数字を示す血液検査の指標と一般的な正常値を、表を用いてご紹介します。

 

血液検査指標 説明 正常値
1.AST(GOT) アミノ酸の代謝に関わる酵素
何らかの原因で肝細胞が破壊されることで上昇する
13IU/L〜30IU/L
2.ALT(GPT) アミノ酸の代謝に関わる酵素
何らかの原因で肝細胞が破壊されることで上昇する
10IU/L〜42IU/L
3.γ-GTP 肝臓や胆管に多く含まれる酵素 13IU/L〜64U/L
4.総ビリルビン 役割を終えた赤血球が分解されたときに出る黄色い色素 0.4mg/dL〜1.5mg/dL
5.ALP 主に肝臓に多く含まれる酵素 38IU/L〜113U/L

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肝機能障害の原因

肝機能障害の主な原因は、ウイルス性肝炎といわれています。
そのほかに原因として挙げられるものは以下のとおりです。
 

  • ● 脂肪肝(アルコール性、非アルコール性)
  • ● 薬剤性肝障害
  • ● 自己免疫性肝炎
  • ● 原発性胆汁性胆管炎(PBC)

 
また、ストレスも肝機能に悪影響を及ぼすといわれています。肝機能障害が進行すると、肝硬変や肝臓がんに進行する危険性があるため、肝機能障害があると分かったら、すぐに治療を始めることが重要です。
 

ウイルス性肝炎

肝炎ウイルスにはA型〜E型の5種類があります。日本人に多いのは、B型肝炎とC型肝炎で、この2つは、主に血液や体液による感染です。
 
感染経路としてよく挙げられるのは、以下のとおりです。
 

  • ● 感染している方の血液を用いた血液製剤を使用する
  • ● 輸血を受ける
  • ● 使用済み注射器の針に指を刺してしまう
  • ● 消毒されていない器具でピアスの穴をあける
  • ● 入れ墨を彫る

 
また、ウイルスを持った方から生まれた赤ちゃんが感染する「母子感染」も感染率は低いもののゼロではありません。
 

 B型肝炎について詳しくはこちら

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脂肪肝

脂肪肝とは、肝臓に脂肪(中性脂肪)がたまっている状態のことで、肝細胞の30%に脂肪がつくと、脂肪肝と診断されます。脂肪肝は、アルコール性と非アルコール性の2種類です。
 

 脂肪肝について詳しくはこちら

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アルコール性

アルコール性肝障害は、5年以上過剰な飲酒を続けたことで起こる、肝臓の障害です。過剰な飲酒の定義としては、アルコール量を純エタノール量に換算した量が用いられています。男性では1日60g以上、女性で40g以上です。純エタノール換算60gは、日本酒では3合、ビールでは500ml×3缶といわれています。
 

非アルコール性

アルコールを飲んでいない、もしくは少ししか飲まないにもかかわらず発症する脂肪性肝炎もあります。非アルコール性脂肪肝の方の1~2割は「NASH」とも呼ばれる非アルコール脂肪性肝炎へと進行するといわれています。
 
日本人の食生活が欧米化したことで急激に増加したといわれており、過食、運動不足、内臓脂肪型肥満、糖尿病、脂質異常症などが原因として挙げられます。
 

 NASHについて詳しくはこちら

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薬剤性肝障害

薬の副作用により、肝機能障害を発症する場合もゼロではありません。特に多いのが、抗生物質、解熱鎮痛剤、精神神経系の薬剤、抗がん剤などによるものです。しかし、病院処方の薬だけが原因とは限りません。市販の漢方薬やサプリメント、健康食品の服用でも発症することがあるので、注意しましょう。

 

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎は、何らかの原因で、自分の体内にある免疫が肝細胞を壊してしまうことで発症する肝炎です。明確な原因はハッキリしていませんが、妊娠・出産や薬の内服、ウイルスが関連ではないかと考えられています。
 
中年以降の女性に多く、肝炎が中等症程度であるか肝硬変になると、医療費の助成を受けられる疾患です。他の肝機能障害同様、自覚症状はほとんどありません。

 

原発性胆汁性胆管炎

原発性胆汁性胆管炎は、体内にある免疫が自分の胆管細胞を壊してしまうという自己免疫疾患の一種です。胆管に炎症が起きてしまい、その結果、肝臓に胆汁がたまる状況(うっ滞)になってしまいます。たまった胆汁の影響で、肝細胞が破壊され、肝硬変、肝不全へと進行しますが、多くの場合、進行は極めてゆっくりです。

 

ストレスが肝臓に及ぼす悪影響

愛知医科大学消化器内科が2013年に発表した論文において、「ストレスの影響で分泌される脳内の神経伝達物質(CRF)が、交感神経を刺激することで、肝臓の血流が減少して、肝機能が悪化する」と報告されています。肝機能障害は無症状のことが多いことなどから、直接関係を認めるのは難しいようですが、ストレスが多い状況は、さまざまな心身の不調や病気を引き起こす原因になります。
 
過度なストレスは、肝臓だけではなく身体そのものに悪影響だと知っておきましょう。


 
 

肝機能障害の症状

肝機能障害の場合、進行した状態では体のだるさや吐き気、黄疸、むくみなどの症状があらわれますが、初期は自覚症状が少ないことが特徴です。血液検査で肝機能の異常があった場合、症状がないからといって放置しないことが大切です。

初期症状

肝機能障害の場合、初期はほとんど症状がありません。そのため、進行してからの症状で気づく方も少なくないのです。急性肝炎では、発熱、食欲不振、倦怠感など風邪に似た症状がみられることもあります。しかし、症状だけではわかりにくいため、診断には血液検査が必要です。

 

進行してからの症状

肝機能障害が進行してからの症状としては、黄疸、皮膚のかゆみ、食欲低下、吐き気、倦怠感、むくみなどがあります。より深刻な症状として挙げられるのは、腹水や肝性脳症(アンモニアなどが脳内にたまる)などです。


 
 

肝機能障害の治療方法

肝機能障害の治療は原因によって異なります。
脂肪肝や肝炎から、肝硬変、肝臓がんに進行しないためにも、きちんと治療しましょう。

 

インターフェロン治療

ウイルス性肝炎では、インターフェロンなどによる抗ウイルス治療が中心になります。インターフェロンとは、肝炎患者の身体に直接働きかけて、ウイルスを排出する物質を作らせたり、免疫の反応を強くしたりする注射薬のことです。インターフェロン単独の場合もあれば、ほかの内服薬と併用する場合もあります。

 

禁酒

アルコール性脂肪肝の場合は、禁酒が必要です。少なくとも週に2回程度の休肝日を設けましょう。アルコールを摂取しない日を作り、肝臓を休ませることが大切です。脂肪肝が肝炎、そして肝硬変まで進行すると、治療も難しくなってしまいます。

 

生活習慣改善

生活習慣改善も肝機能障害治療の1つです。
食事面において重要となることは以下のとおりです。

 

  • ● 野菜を多く食べる
  • ● 脂肪の多いものを減らす
  • ● 良質なたんぱく質をとる
  • ● 主食・主菜・副菜のバランスをとった献立にする

 
1日30分程度のウォーキングなど、適度な運動も大切です。運動することで、脂肪の代謝による減量効果が期待できます。
 
また、筋肉がアンモニアの代謝を助けるという効果もあるため、運動で筋肉量を維持・増加させるのもプラスになるでしょう。


 
 

まとめ

肝臓は丈夫な臓器でありますが、それゆえに、機能障害があってもすぐに症状が出にくい臓器でもあります。そのため、症状がみられるようになった際には既にある程度病気が進行した状態となっているのです。
 
肝機能障害が進行すると肝硬変から肝臓がんになる危険性があるため、症状が出ていない場合でも、血液検査データが正常範囲を超えた場合は早めに医療機関を受診してください。肝機能障害の治療は原因によってさまざまなので、原因を知るためにも早い受診が大切です。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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