胃酸過多の原因は?主な症状や改善のための対処法について

  • クリニックブログ
2025/02/06

胃酸過多の原因は?主な症状や改善のための対処法について

胃酸の過剰分泌に悩まされている方は少なくありません。むかつきや胸焼けといった不快な症状は、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
 
本記事では、胃酸過多がなぜ起こるのか、その原因から主な症状、そして自宅でできる改善方法まで解説していきます。ストレス社会と言われる現代において、この症状への理解を深め、適切な対処法を知ることは、健康的な生活を送るための重要なポイントと言えるでしょう。

 
 

胃酸過多とは

胃酸過多とは、胃酸が過剰に分泌される状態のことを指します。胃酸は、食物を消化するために必要なものですが、過剰になると胃粘膜を傷つけ、さまざまな不快な症状を引き起こすことがあります。
 

胃酸とは

胃酸は、胃の中で分泌される消化液の一種で、主成分は塩酸です。この胃酸には、体にとって重要な複数の役割があります。第一に、食べ物の消化を助け、タンパク質を分解するペプシンという酵素の活性化を促します。また、胃酸には殺菌作用があり、食べ物と共に体内に入ってくる有害な細菌やウイルスから私たちを守っています。
 
通常、胃酸は胃の粘膜細胞から分泌され、その濃度は食事や体調によって適切にコントロールされています。健康な状態では、胃酸は強い酸性を示しますが、胃の内側は特殊な粘液層で保護されているため、正常な状態では胃壁が傷つくことはありません。この精密なバランスが保たれることで、私たちは安全に食事を消化し、栄養を吸収することができるのです。
 

胃酸による影響

胃酸の過剰分泌は、まず胃の粘膜を直接的に刺激し、炎症を引き起こす可能性があります。この炎症により、胃痛や胸焼け、むかつきといった不快な症状が現れることがあります。さらに、長期的な胃酸過多は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となることもあり、重症化すると出血や穿孔などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
 
 

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また、過剰な胃酸は食道にも影響を及ぼします。胃から食道へ胃酸が逆流することで、食道粘膜が損傷を受け、逆流性食道炎を引き起こすことがあります。これにより、胸やけや喉の痛み、咳などの症状が現れ、放置すると慢性化する恐れがあります。さらに、夜間の胃酸逆流は睡眠の質を低下させ、日中の疲労感や集中力の低下にもつながります。このように、胃酸過多は消化器系の問題だけでなく、生活の質全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。
 
 

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胃酸過多の主な症状

胃酸過多は、胃酸が過剰に分泌される状態です。これにより、胃粘膜が傷つき、様々な不快な症状を引き起こします。

主な症状には以下のようなものが見られます。
 

  • ●胸やけ
  • ●胃痛
  • ●吐き気
  • ●げっぷ
  • ●みぞおちの痛み
  • ●喉の痛み
  • ●呑酸

 
もっとも一般的な症状は、胃のむかつきや胸焼けで、特に食後や空腹時に強く感じられることが多くなります。また、上腹部の痛みや圧迫感、不快感も特徴的な症状です。
 
 

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食事の際には、すぐにお腹が膨れた感じがしたり、少量の食事でも満腹感を覚えたりすることがあります。さらに、胃酸が食道に逆流することで、喉の奥に酸っぱい味がする、あるいは胸の奥に焼けるような痛みを感じることもあります。夜間に横たわった際に症状が悪化し、咳や呼吸の苦しさを伴うこともあります。
 
これらの症状に加えて、げっぷが頻繁に出る、食欲不振、吐き気、まれに嘔吐といった症状も現れることがあります。また、慢性的な胃酸過多では、疲労感や不眠といった全身症状を引き起こすこともあります。
 
 

胃酸過多の原因

胃酸過多の原因は、様々な要因が考えられます。
 

ストレス

ストレスは胃酸過多を引き起こす重要な要因の一つとして知られています。精神的なストレスを感じると、自律神経系のバランスが乱れ、特に交感神経が優位になることで、胃酸の分泌が促進されます。仕事や人間関係などによる慢性的なストレスは、持続的な胃酸過剰分泌につながる可能性があります。
 
また、ストレス下では胃の運動も低下し、胃内容物の停滞や消化不良を引き起こすことがあります。これにより、胃酸が胃内に長時間とどまることになり、胃粘膜への刺激が増加します。
 
さらに、ストレスによる不規則な生活習慣、例えば不規則な食事時間や早食い、過食などの食行動の乱れも、胃酸分泌のバランスを崩す原因です。
 

アルコールや刺激物の摂取

アルコールや刺激物の過剰摂取は、胃酸分泌を促進させる主要な原因となります。特にアルコールは胃の粘膜を直接的に刺激し、胃酸の分泌を増加させるだけでなく、胃粘膜の防御機能も低下させます。日常的な飲酒習慣は、この影響を慢性化させ、持続的な胃酸過多の状態を引き起こす可能性があります。
 

 
また、カフェインを多く含むコーヒーや紅茶、炭酸飲料なども胃酸分泌を促進します。特に空腹時にこれらの飲み物を摂取すると、その影響は顕著になります。辛い食べ物や酸味の強い食品、香辛料なども同様に胃を刺激し、胃酸の過剰分泌を引き起こす原因となります。
 
これらの刺激物を頻繁に摂取することで、胃の粘膜は持続的なダメージを受け、胃酸による症状がより深刻化する可能性があります。特に夜遅い時間帯での摂取は、症状を悪化させやすいため注意が必要です。
 

食べ過ぎ

食べ過ぎは胃酸過多を引き起こす主要な原因の一つです。過剰な食事摂取により、胃は通常以上の消化活動を強いられ、それに対応するため胃酸の分泌が増加します。特に脂肪分の多い食事や刺激物を大量に摂取した場合、胃酸の分泌が著しく促進されます。
 
また、食べ過ぎは胃を物理的に拡張させ、胃の内圧を上昇させます。この内圧の上昇により、胃と食道をつなぐ括約筋が緩み、胃酸が食道に逆流しやすくなるのです。さらに、一度に大量の食事をすることで、胃の消化能力を超えた負担がかかり、胃粘膜が刺激を受けやすくなります。
 
加えて、夜遅い時間の食事や横になる直前の食事は、重力の影響で胃酸が逆流しやすくなるため、特に注意が必要です。このように、食べ過ぎは単に胃酸分泌を増やすだけでなく、複数のメカニズムで胃酸過多の症状を悪化させる可能性があります。
 
 

胃酸過多を改善するための対処法

胃酸過多の改善には、生活習慣の改善と薬物療法が主な治療法です。
 

ストレスを軽減する

ストレスは胃酸の分泌を促進する大きな要因となります。仕事や人間関係などによる精神的なストレスは、自律神経系を介して胃酸の分泌を増加させます。
 

 
定期的な運動や趣味の時間を持つ、瞑想やヨガを取り入れる、十分な休息を取るなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが重要です。必要に応じて、専門家にカウンセリングを受けることも効果的な選択肢となります。
 

脂っこい食事を控える

脂肪分の多い食事は、胃酸の過剰分泌を促すだけでなく、胃の消化機能に大きな負担をかけます。揚げ物やファストフード、動物性脂肪の多い食品を控え、代わりに蒸し物や煮物など脂質の少ない調理法を選びましょう。
 
また、植物性タンパク質を積極的に取り入れ、消化に優しい食事を心がけることが重要です。
 

食事を腹八分目にする

胃を物理的に過度に膨らませないことが、胃酸過多の予防と改善に効果的です。一回の食事量を控えめにし、よく噛んでゆっくり食べることで、消化器系への負担を軽減できます。
 
また、食後すぐに横になることは避け、できるだけ食後2~3時間は起きている状態を保つことが推奨されます。
 

アルコール、カフェイン、濃い味を避ける

これらの刺激物は胃酸の分泌を促進し、胃粘膜を刺激します。特に空腹時のアルコールやコーヒーの摂取は避けるべきです。また、過度に塩分や香辛料の強い食事も控えめにしましょう。代わりに、お茶や水を適度に摂取し、薄味で消化の良い食事を心がけることが大切です。
 

生活リズムを整える

不規則な生活は胃酸の分泌バランスを崩す原因となります。決まった時間に起床・就寝し、規則正しい食事時間を守ることで、体内リズムが整い、消化機能も安定します。特に夜遅い食事は避け、就寝前3時間は食事を控えることで、夜間の胃酸逆流を防ぐことができます。
 
また、適度な運動を日課に取り入れることで、消化機能の改善も期待できます。
 
 

まとめ

胃酸過多は、適切な生活習慣の改善と対処法を実践することで、症状の緩和が期待できる症状です。本記事で解説した食事内容の見直し、ストレス管理、生活リズムの改善などを意識的に取り入れることで、胃の健康を取り戻すことができます。
 
ただし、症状が重症化している場合や、自己対処で改善が見られない場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。胃の健康は、毎日の生活の質に直結する重要な要素です。一人ひとりに合った対処法を見つけ、実践していくことで、快適な生活を送ることができるでしょう。
 
 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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