胃痙攣(けいれん)の原因と症状|その痛み、改善できます

  • クリニックブログ
2025/02/04

胃痙攣(けいれん)の原因と症状|その痛み、改善できます

急に襲ってくる胃の痛み、締め付けられるような不快感で悩んでいませんか?胃痙攣(いけいれん)は、多くの人が経験する症状ですが、その原因や対処法についてよく分からないという方も少なくありません。
 
この記事では、胃痙攣の基本的なメカニズムから具体的な対処法まで、医学的な観点から詳しく解説します。適切な知識を身につけることで、症状の予防や改善に役立て、より快適な生活を送れるようになりましょう。

 
 

胃痙攣(けいれん)の基礎知識

胃痙攣は、様々な要因によって引き起こされる胃の不調です。症状や原因は人によって異なりますが、適切な対処により改善が期待できます。以下の3つの観点から、胃痙攣について詳しく見ていきましょう。
 

  • ●胃痙攣とは何か
  • ●発症のメカニズム
  • ●特徴的な症状

 

胃痙攣とは何か

胃痙攣は胃の筋肉が異常に収縮することで起こる症状です。一般的に「胃痙攣」という言葉は広く使われていますが、実際には医学的な病名ではありません。むしろ、様々な胃の不調を表す症状の総称として理解されています。
 
健康な状態では、胃は食べ物を消化するために規則正しく収縮と弛緩を繰り返しています。しかし、何らかの要因でこのリズムが乱れると、不規則な収縮が起こり、痛みや不快感として感じられます。この状態を私たちは「胃痙攣」と呼んでいます。
 
 

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発症のメカニズム

胃痙攣は、胃壁の筋肉が過度に収縮することで発生します。この収縮は自律神経系によってコントロールされており、私たちの意思で制御することはできません。通常、胃の筋肉は食べ物を消化するために穏やかに収縮と弛緩を繰り返していますが、様々な要因でこのバランスが崩れると痙攣が起こります。
 
特徴的なのは、この痙攣が実際には「ブルブル震えている」わけではないという点です。胃壁の筋肉が異常に緊張することで、私たちはその状態を「痙攣」として感じ取ります。この緊張は、胃の粘膜を保護する機能を低下させ、胃酸による刺激を感じやすくなる原因にもなります。
 

特徴的な症状

胃痙攣の症状は、主にみぞおちや上腹部に現れます。特徴的なのは、突然の強い痛みです。この痛みは、キリキリとした痛み、締め付けられるような痛み、ねじれるような痛みなど、人によって様々な形で感じられます。痛みの持続時間は数分から数時間と幅があり、日常生活に支障をきたすこともあります。
 
また、主な症状に加えて、以下のような随伴症状が現れることも多くあります。
 

  • ●冷や汗が出る
  • ●吐き気や嘔吐がある
  • ●食欲が低下する
  • ●めまいやふらつきを感じる
  • ●お腹が張った感じがする

 
 

胃痙攣が起こる原因

胃痙攣の原因は多岐にわたり、複数の要因が組み合わさって発症することも少なくありません。原因を正しく理解することは、効果的な予防や治療につながります。主な原因は以下の3つに分類されます。
 

  • ●ストレスによる影響
  • ●生活習慣の乱れ
  • ●病気が原因の場合

 

ストレスによる影響

ストレスは胃痙攣を引き起こす大きな要因の一つです。精神的なストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、胃の働きに大きな影響を与えます。具体的には、ストレスホルモンの分泌が増加し、胃酸の過剰分泌や胃の運動機能の異常をもたらします。
 
特に現代社会では、仕事や人間関係によるストレスを抱える人が多く、それが胃痙攣の発症リスクを高めています。また、ストレスによる不眠や食生活の乱れが、さらに症状を悪化させる要因となることも分かっています。
 

生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れは胃痙攣を引き起こす主要な原因となります。特に食生活の乱れが大きく影響します。不規則な食事時間、早食い、過食、食事の偏り、これらはすべて胃に負担をかけ、痙攣を誘発する要因となります。また、以下のような生活習慣も胃痙攣のリスクを高めます。
 

  • ●深夜までの仕事や夜更かしによる睡眠不足
  • ●過度の飲酒や喫煙
  • ●運動不足による体力の低下
  • ●冷たい飲み物の過剰摂取
  • ●刺激物の多い食事

 

病気が原因の場合

胃痙攣は、様々な疾患の症状として現れることがあります。主な疾患には以下のようなものがあります。
 

  • ●胃炎や胃潰瘍:胃の粘膜が炎症を起こしたり、傷ついたりすることで痙攣が起こります
  • ●十二指腸潰瘍:胃に近い十二指腸の潰瘍も胃痙攣の原因となります
  • ●胆石症:胆のうの結石が痛みや痙攣を引き起こすことがあります
  • ●膵炎:膵臓の炎症も上腹部の痛みや痙攣の原因となります
  • ●ピロリ菌感染:胃の粘膜を傷つけ、様々な症状を引き起こします

 
 

起こりやすい状況

胃痙攣は、特定の状況下で発生しやすい傾向があります。これらの状況を理解し、注意を払うことで、予防につなげることができます。特に注目すべき状況は以下の3つです。
 

  • ●食生活との関係
  • ●生活環境による影響
  • ●注意すべき生活習慣

 

食生活との関係

食生活は胃痙攣の発症に最も直接的な影響を与える要因です。特に注意が必要なのは食事のタイミングと内容です。空腹の状態が長く続いた後や、逆に食べ過ぎた直後に症状が現れやすくなります。
 
また、辛い食べ物や脂っこい食べ物、冷たい飲み物の過剰摂取も胃を刺激する原因です。食事の時間が不規則な場合や、仕事などで急いで食事を済ませる習慣がある場合も、胃への負担が大きくなり、痙攣を引き起こすリスクが高まります。
 

生活環境の影響

生活環境も胃痙攣の発症に大きく関わっています。特に、仕事や学業などによるストレスの多い環境では、自律神経のバランスが崩れやすく、胃痙攣を引き起こす原因となります。
 

 
また、温度差の大きい環境での生活も影響します。例えば、冷房の効いた室内と外気との急激な温度変化や、寒冷な環境での活動は、体を冷やし、胃の機能に悪影響を及ぼすことがあります。デスクワークが多く、運動不足になりやすい環境も、胃の働きを低下させる要因となるのです。
 

注意すべき生活習慣

日常的な生活習慣の中には、知らず知らずのうちに胃痙攣のリスクを高めているものがあります。例えば、夜遅くまでの仕事や睡眠不足、不規則な生活リズムは、胃の機能を低下させる大きな要因となります。
 
また、喫煙や過度の飲酒も胃の粘膜を刺激し、痙攣を誘発する可能性があります。運動不足や姿勢の悪さも、腹部への血流を悪くし、胃の健康に影響を与えます。特に、スマートフォンやパソコンの長時間使用による前かがみの姿勢は、胃への負担を増大させる原因となりやすいため、注意が必要です。
 
 

治療と対処法

胃痙攣の治療には、症状の緊急的な改善から長期的な予防まで、段階的なアプローチが必要です。適切な対処法を知っておくことで、突然の発症時にも落ち着いて対応することができます。治療と対処法は、以下の3つの観点から考えることが重要です。
 

  • ●即効性のある対処法
  • ●医療機関での治療
  • ●日常生活での予防策

 

即効性のある対処法

 

 
胃痙攣が起きた時は、まず体を楽な姿勢にすることが大切です。横になるか、前かがみの姿勢を取り、胃の周りの筋肉をリラックスさせます。この時、お腹を温めることも効果的です。湯たんぽや温めたタオルを当てることで、筋肉の緊張を和らげることができます。
 
また、深いゆっくりとした呼吸を心がけ、体全体をリラックスさせることも重要です。水分補給は常温か少し温めの白湯が適しており、冷たい飲み物は避けるようにしましょう。市販の胃薬を服用する場合は、胃痛や胃けいれんに効果のある成分が含まれているものを選びます。
 

医療機関での治療

医療機関では、まず問診と検査によって胃痙攣の原因を特定します。血液検査、胃カメラ検査、超音波検査などが行われ、その結果に基づいて適切な治療法が選択されます。治療には主に薬物療法が用いられ、胃酸の分泌を抑える薬、胃の動きを整える薬、粘膜を保護する薬などが処方されます。
 
また、ストレスが原因の場合は、自律神経を整える薬が使用されることもあるでしょう。胃炎や胃潰瘍などの基礎疾患が見つかった場合は、その治療も並行して行われます。
 

日常生活での予防策

胃痙攣の予防には、日常生活での継続的な取り組みが重要です。食事面では、規則正しい時間に適量を摂取し、よく噛んで食べることを心がけます。刺激物や脂っこい食べ物を控え、バランスの取れた食事を心がけましょう。
 
また、十分な睡眠時間の確保やストレス管理も大切です。適度な運動は胃腸の働きを活発にし、ストレス解消にも効果的です。特に、軽いウォーキングやストレッチは、胃の血行を改善し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。喫煙や過度の飲酒は控え、冷たい飲み物の摂取も適度にとどめることで、胃への負担を軽減することができます。
 
 

受診の目安

胃痙攣の症状は、軽度のものから緊急の治療を要するものまでさまざまです。自己判断で様子を見るべきか、医療機関を受診すべきかの判断が、その後の治療効果に大きく影響します。ここでは、以下の2つの観点から、受診の目安を考えていきましょう。
 

  • ●すぐに受診すべき症状
  • ●検査の種類と内容

 

すぐに受診すべき症状

次のような症状がある場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。特に、夜間や休日であっても、我慢せずに救急外来を受診することをお勧めします。
 
まず、激しい腹痛が持続する場合や、痛みが時間とともに増強する場合は要注意です。また、吐き気や嘔吐が激しく、水分さえも摂取できない状態も危険信号です。特に注意が必要なのは、吐血や黒色便が見られる場合で、これは消化管出血の可能性を示唆します。さらに、38度以上の発熱を伴う場合や、冷や汗が止まらない、顔色が悪いなどの全身症状がある場合も、すぐに受診が必要です。
 

検査の種類と内容

医療機関では、症状や状態に応じて適切な検査が行われます。最も基本的なのは問診で、症状の経過や生活習慣、既往歴などを詳しく確認します。その後、血液検査が行われ、炎症反応や貧血の有無、肝機能や膵機能などが調べられます。より詳しい検査として胃カメラ検査があり、これにより胃の粘膜の状態や炎症、潰瘍の有無を直接確認することができます。
 
また、超音波検査やCT検査により、胃以外の臓器の状態も確認します。これらの検査結果を総合的に判断することで、適切な治療方針が決定されます。
 
 

まとめ

胃痙攣は、日常生活の中で誰もが経験する可能性のある症状です。その原因は、ストレスや生活習慣の乱れ、重大な疾患まで多岐にわたります。症状が出た時は、まず楽な姿勢を取り、体を温めるなどの応急処置を行いましょう。ただし、激しい痛みや吐血、発熱などの危険信号がある場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
 
また、予防のためには、規則正しい食生活やストレス管理、適度な運動など、日常的な生活習慣の改善が欠かせません。特に、食事の内容や摂取時間、食べ方には注意を払い、胃に負担をかけない工夫が必要です。症状が気になる場合は、早めに専門医に相談し、適切な検査と治療を受けることをおすすめします。適切な知識と対処法を身につけることで、胃痙攣による苦痛を最小限に抑え、快適な生活を送ることができます。
 
 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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