
悪心・嘔吐が続くなら要注意!どんな病気が考えられる?
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悪心・嘔吐が続くなら要注意!どんな病気が考えられる?
悪心(吐き気)や嘔吐は誰もが経験する症状ですが、その原因は食べ過ぎなどの一時的なものから、緊急治療が必要な重篤な病気まで多岐にわたります。特に、激しい頭痛や胸痛を伴う場合や、症状が長引く場合は要注意です。
この記事では、考えられる疾患から受診の目安まで、詳しく解説します。日々の体調管理や、もしものときの判断基準として、ぜひ参考にしてください。
悪心とは
悪心とは、胃の内容物を吐き出したくなる不快な感覚を指します。「吐き気」や「むかつき」と表現され、嘔吐の前触れとして現れるのが一般的です。
実際に嘔吐に至らないこともありますが、嘔吐する直前には必ずと言っていいほど悪心を感じます。ただし、脳の病気などが原因で、突然嘔吐が起こり悪心を伴わないケースもあります。
悪心(吐き気)・嘔吐に注意が必要な理由
悪心や嘔吐の症状は、単なる体調不良だけでなく、命に関わる深刻な病気のサインである可能性があるため、注意が必要です。
例えば、脳出血やくも膜下出血といった脳血管疾患では、嘔吐が初期症状として現れることがあり、早期発見・治療が遅れると重篤な状態に陥る危険性があります。また、腸閉塞などの消化器系の緊急疾患でも、吐き気や嘔吐が起こることがあり、放置すると腹膜炎などの合併症を引き起こす可能性があります。
さらに、嘔吐を繰り返すことで脱水症状を引き起こし、特に高齢者や乳幼児では急速に全身状態が悪化することもあります。
悪心(吐き気)・嘔吐を引き起こす主な疾患
悪心や嘔吐を引き起こす病気は、消化器系の疾患から脳や心臓の病気まで、実に様々です。
誰もが経験したことがある吐き気や嘔吐ですが、激しい頭痛や胸痛、腹痛などを伴う場合は、緊急性の高い病気の可能性があります。悪心や嘔吐は、体が危険な状態にあることを知らせる重要なサインのひとつでもあるのです。
以下で、代表的な疾患について詳しく見ていきましょう。
胃腸炎・逆流性食道炎・十二指腸潰瘍
これらの消化器系の疾患は、悪心や嘔吐の代表的な原因です。
胃腸炎
ウイルスや細菌による感染で起こることが多く、特に冬場はノロウイルス、夏場は食中毒菌による感染が増加する傾向があります。
症状は突然の吐き気から始まり、嘔吐や下痢を伴うことが一般的です。
感染性胃腸炎についてはこちら
逆流性食道炎
胃酸が食道に逆流することで起こり、胸やけや吐き気などの症状が出ます。
十二指腸潰瘍
空腹時に吐き気が強くなることが多く、みぞおちの痛みを伴うこともあります。
薬物療法と生活習慣の改善が基本的な治療方針で、症状の程度によっては定期的な検査による経過観察が必要な場合もあります。
腸閉塞(イレウス)
腸閉塞は、腸管が何らかの原因で詰まったり閉じたりして、腸の内容物が通過できなくなる状態を指します。
主な症状はお腹の張りや腹痛、吐き気や嘔吐で、特徴的なのは胆汁が混じった茶褐色の嘔吐物や、便の臭いのする嘔吐物が見られることです。おなかの痛みが波のように繰り返し起こったりするのも特徴です。
放置すると腸管が壊死して穴が開き、腹膜炎という命に関わる状態に発展する可能性があるため、早急な治療が必要です。
虫垂炎・急性すい炎・急性肝炎・胆のう炎
虫垂炎・急性すい炎・急性肝炎・胆のう炎は消化器系の炎症性疾患で、いずれも悪心や嘔吐を伴うことがあります。
- ●虫垂炎:最初にみぞおちあたりの痛みと吐き気が現れ、その後右下腹部に痛みが移動する
- ●急性すい炎:みぞおちから背中にかけての激しい痛みと共に吐き気が現れ、多くは嘔吐を伴う
- ●急性肝炎:全身のだるさや食欲不振と共に吐き気が現れ、黄疸を伴うこともある
- ●胆のう炎:右上腹部の痛みと共に吐き気が出現し、発熱を伴うこともある
これらの疾患は早期発見・治療が大切で、放置すると重症化する可能性があります。
急性胆のう炎や胆石
急性胆のう炎や胆石による症状は、右上腹部の激しい痛みと共に吐き気や嘔吐が起きるのが特徴的です。
胆石が胆管を詰まらせることで起こる胆石発作では、突然の激しい痛みと共に吐き気が現れ、脂っこい食事の後に症状が悪化することがあります。発熱を伴うことも多く、黄疸が出現することもあります。数時間程度で自然に軽快することもありますが、胆嚢炎に進展すると継続的な痛みと発熱が続きます。
これらの症状が出現した場合は速やかに医療機関を受診する必要があり、緊急手術が必要となる場合もあります。
うつ病・自律神経失調症
精神疾患や自律神経の乱れによっても、悪心や嘔吐が引き起こされることがあります。
- ●うつ病:気分の落ち込みや意欲の低下といった精神症状だけでなく、吐き気や食欲不振などの身体症状が現れることがある
- ●自律神経失調症:めまいや頭痛、胃部不快感などと共に吐き気が出現することが多く、特にストレスがかかった時期に症状が強くなる傾向がある
これらの症状は日常生活に大きな支障をきたす恐れがあり、心身両面からのアプローチが必要です。休養や生活リズムの改善に加え、必要に応じて薬物療法や心理療法も行われます。
緑内障発作
緑内障発作は、急激な眼圧上昇により起こる、深刻な眼の疾患です。目の痛みや頭痛と共に激しい吐き気や嘔吐が起こり、頭痛を伴うことから脳の病気と間違われることもあります。症状は通常片方の目に現れ、多くは夕方から夜間にかけて発作が起きます。
眼圧を下げる点眼薬や内服薬で治療しますが、場合によってはレーザー治療や手術が必要となることもあります。放置すると視神経が障害されて失明する危険性があり、視力を守るために早期発見・治療が非常に大切です。
狭心症・心筋梗塞
狭心症や心筋梗塞では、胸の痛みや圧迫感と共に、吐き気や冷や汗といった症状が現れることがあります。特に心筋梗塞では、胸の激しい痛みだけでなく、みぞおちの痛みや吐き気が主な症状となるため、消化器の病気と間違われることがあります。痛みは左腕や背中、顎にまで広がることがあり、冷や汗や息切れを伴います。
これらの症状は、命に関わる危険な状態を示すサインの恐れがあり、速やかな救急搬送が必要です。
脳卒中・くも膜下出血・脳腫瘍
脳の病気では、突然の激しい頭痛と共に吐き気や嘔吐が現れることがあります。
- ●くも膜下出血:「今までに経験したことがないような激しい頭痛」と表現される痛みと共に、突然の嘔吐が起こる
- ●脳卒中:手足の麻痺やしびれ、言葉の障害などと共に吐き気が現れることがある
- ●脳腫瘍:頭蓋内圧の上昇により徐々に頭痛や吐き気、めまいなどの症状が悪化する
- ●朝方に症状が強くなる傾向がある
これらの疾患は早期発見・治療が予後を左右するため、疑わしい症状がある場合は直ちに救急搬送が必要です。
悪心(吐き気)・嘔吐の検査と診断方法
悪心や嘔吐の原因を特定するためには、まず詳しい問診から始まります。症状がいつから始まったのか、どのような状況で悪化するのか、食事との関係、他の症状の有無などを確認します。
次に血液検査を行い、炎症反応や肝機能、腎機能、電解質バランスなどをチェックします。
内臓の状態や腫瘍の有無、腸閉塞の可能性などを調べるには、腹部の超音波検査やCTスキャンを実施します。必要に応じて胃カメラ検査も行い、胃や食道の粘膜の状態を直接観察します。
また、頭痛や神経症状を伴う場合は、頭部CT検査やMRI検査で脳の状態を確認し、心臓の病気が疑われる場合は、心電図検査や心臓超音波検査などが行われます。
悪心(吐き気)・嘔吐が続く場合の適切な受診時期
悪心や嘔吐が出現した際、すぐに受診が必要なケースと、様子を見ても構わないケースがあります。
受診の緊急度 | 症状・状態 |
---|---|
激しい頭痛を伴う 胸痛がある 手足の麻痺やしびれがある 激しい腹痛がある 吐血や血が混ざった嘔吐物がある 意識がもうろうとする |
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嘔吐が頻繁に起こり、水分さえ飲めない 38度以上の発熱を伴う 乳幼児や高齢者で、激しい下痢を伴い脱水の症状がある |
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食べ過ぎ・飲み過ぎが原因と考えられる 水分が摂取できる 症状が軽く、徐々に改善傾向にある 嘔吐の回数が少なく、全身状態が良好 |
ただし、様子を見ても良い場合でも、以下の場合は受診を検討してください。
- ●24時間以上嘔吐が続く
- ●症状が徐々に悪化する
- ●原因が特定できない
- ●不安が強い
まとめ
悪心・嘔吐は日常的に経験する症状ですが、その背後に重大な病気が隠れている可能性があることを忘れてはいけません。特に、頭痛や胸痛、激しい腹痛を伴う場合や、症状が長引く場合は要注意です。早期発見・早期治療が予後を大きく左右することもあるため、適切なタイミングで医療機関を受診することが大切です。体調の変化に敏感になり、気になる症状があれば、ためらわずに医療機関を受診するようにしましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師