食後の胃痛はなぜ起きる?原因と対策|食事や食べ過ぎが原因?

  • クリニックブログ
2025/01/21

食後の胃痛はなぜ起きる?原因と対策|食事や食べ過ぎが原因?

食後に胃が痛くなる経験をしたことはありませんか?食べ過ぎや食事内容が原因だと思われがちですが、実際には自律神経の乱れやピロリ菌感染、さらには逆流性食道炎や胃潰瘍など、さまざまな要因が関係していることがあります。
 
本記事では、食後の胃痛の原因を詳しく解説し、胃痛が引き起こされる背景や関連する病気についても取り上げます。さらに、胃痛の原因を特定するための検査方法や、胃の負担を軽減するための日常生活の工夫についても紹介します。胃の健康を守るためのヒントをぜひ参考にしてください。

 
 

食べた後に胃が痛くなるのは なぜ?

おいしい食事を楽しんだ後に突然襲ってくる胃の痛みですが、この症状に悩まされている方は少なくありません。食後の胃痛が起こる仕組みについて理解を深めましょう。
 
通常、私たちが食べた物は胃の中に2~3時間とどまり、ドロドロの状態になるまで消化されてから十二指腸へと送られていきます。しかし、揚げ物やケーキなど脂肪分の多い食事をたくさん摂取すると、完全な消化には4~5時間もかかることがあります。
 
食べ過ぎて苦しい、胃がもたれるといった症状の多くは、食べ物が胃に長時間滞留することで引き起こされます。また、消化が不十分なまま腸に食べ物が送り出されると、十二指腸で処理しきれずに胃に戻されてしまい、結果として胃もたれの原因となります。
 
このような症状は「急性胃炎」である可能性が高く、以下のような食事の取り方をすると発症しやすくなります。
 

  • ●暴飲暴食
  • ●過度の飲酒
  • ●高脂肪の食事
  • ●香辛料や熱い物の過剰摂取
  • ●コーヒーの飲み過ぎ
  • ●深夜の食事

 
 

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食後に胃痛が起こる原因とは

食後の胃痛には、さまざまな要因が複雑に関係しています。自律神経の乱れ、食生活の乱れ、ピロリ菌感染、そして血糖値の急激な変動など、複数の原因が考えられます。
 
それぞれの要因について解説します。
 

胃痛の原因となる自律神経の乱れ

多忙な毎日やプレッシャーの中で感じるストレスは、自律神経のバランスを崩す大きな要因となります。自律神経は胃や腸の働きをコントロールする重要な役割を担っているため、この乱れは胃の機能に直接的な影響を及ぼします。ストレスにより自律神経が乱れると、胃酸の分泌が過剰になったり、消化機能が低下したりすることで胃痛を引き起こすことがあります。
 

食生活の乱れが引き起こす胃痛

脂っこい食事や刺激物の過剰摂取は、胃への大きな負担となります。特に揚げ物やケーキなどの高脂肪食を多く摂取すると、胃での消化に通常の2倍以上の時間がかかることがあります。
 
また、暴飲暴食や不規則な食事時間、深夜の食事なども胃を刺激する要因となります。こうした食習慣の乱れは胃酸の過剰分泌を促し、胃粘膜を傷つけることで胃痛を引き起こします。
 

胃の痛みをもたらすピロリ菌感染

ピロリ菌は胃の粘膜に感染する細菌で、胃痛の重要な原因の一つです。この菌はさまざまな分解酵素を出して胃粘膜を傷つけ、その結果として胃痛などの症状を引き起こします。
 
さらに、ピロリ菌感染は慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因にもなります。これらの疾患になると、胃痛に加えて胃もたれやむかつき、食欲不振といった症状も現れることがあります。
 

血糖値スパイクと隠れた糖尿病

食後に短時間で血糖値が急上昇し、その後急激に低下することを血糖値スパイクと呼びます。この現象は胃痛の原因となることがあり、特に糖分を多く含む食事を一度に摂取した際に起こりやすい傾向があります。
 
こうした症状が頻繁に現れる場合、隠れ糖尿病の可能性も考えられます。血糖値の急激な変動は胃の機能に影響を与え、不快な症状を引き起こす原因となります。
 
 

食後の激しい胃痛がある場合は食中毒の可能性も

突然襲ってくる激しい胃の痛みには要注意です。食事の後に激しい胃痛が現れる場合、食中毒の可能性を疑う必要があります。食中毒が疑われる際は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
 
近年特に注目されているのが、アニサキスによる食中毒です。アニサキスは寄生虫の一種で、サバやイワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマなどの魚介類に寄生していることがあります。生魚を食べてから数時間後に、みぞおちに激しい痛みが現れ、吐き気や嘔吐を伴うことが特徴です。治療には内視鏡でアニサキスを摘出する必要があり、じんましんやかゆみなどのアレルギー症状が出ることもあります。
 
また、サルモネラ菌による食中毒も要注意です。十分に加熱していない卵や肉類が原因となり、食後6~48時間で吐き気や腹痛、下痢、発熱、頭痛などの症状が現れます。
 
ブドウ球菌は人の皮膚や喉の中にいる菌で、傷やニキビに触れた手で直接食べ物を扱うことで感染します。食後30分~6時間で吐き気や腹痛などの症状が出現し、おにぎりや弁当、巻き寿司、調理パンなどが原因食品となることが多いです。
 
腸炎ビブリオやカンピロバクター、O157などの食中毒菌による感染も深刻な胃腸症状を引き起こす可能性があります。ノロウイルスも要注意で、カキなどの二枚貝類から感染し、12時間以内に激しい症状が現れることがあります。
 
このような食中毒は時に命にかかわる事態に発展する可能性もあるため、激しい胃痛を感じた際は医療機関での適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
 
 

病気による胃痛の主な要因

 

 
食後の胃痛が長引く場合、何らかの消化器疾患が隠れている可能性があります。症状を放置せずに医療機関で適切な検査を受けることが重要です。
 
ここでは、胃痛の原因となる主な疾患について説明します。
 

急性胃炎による胃の痛み

突発的に起こる急性胃炎は、キリキリとした胃の痛みが特徴的です。この症状には、胃の膨満感や胃が重く感じる不快感、胸焼けや吐き気といった症状が伴うことがあります。
 
主な原因として、暴飲暴食やストレス、またウイルスや細菌による感染などが挙げられます。急性胃炎は、生活環境の乱れによって自律神経バランスが崩れ、胃の機能が低下することでも引き起こされます。
 

慢性胃炎が引き起こす胃の痛み

長期間にわたって胃粘膜に炎症が繰り返し起こる状態を慢性胃炎と呼びます。主な症状は胃の不快感や胃もたれ、食後の腹痛、食欲不振や吐き気などです。
 
慢性胃炎の原因の多くはピロリ菌の感染で、除菌治療を行うことで症状が大きく改善するケースが多く見られます。ピロリ菌の除菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、ポリープ、胃がんの発症リスクを大幅に低下させる効果もあります。
 

胃がんによる胃の痛み

胃がんはある程度進行するまで明確な症状が現れにくい疾患です。進行すると、胃の痛みをはじめ、胸焼け、胃もたれ、吐き気、食欲不振、黒色便などの症状が出現します。
 
胃がんの早期発見には定期的な胃カメラ検査が重要となります。胃の不調を感じたら、がんの可能性も考慮して、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
 

逆流性食道炎と胃の痛み

胃酸が食道へと逆流することで食道に炎症が起こるのが逆流性食道炎です。主な症状として胸やけや胸の痛み、のどまで酸っぱいものが上がってくる呑酸、のどが焼けるような感覚などが現れます。また、咳や不眠などの症状を引き起こすこともあります。
 
以前は日本では珍しい病気でしたが、食事の欧米化などの影響により、現在では患者数が増加傾向にあります。特に中年の肥満気味の男性に多く見られます。
 

胃潰瘍・十二指腸潰瘍による胃の痛み

強酸性の胃酸によって胃の粘膜がただれて深く傷つくのが胃潰瘍です。腹痛や吐き気などの症状が現れ、重症化すると潰瘍からの出血や胃の穿孔などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
 
40~60代に多い疾患で、基本的には薬物療法で治療を行いますが、重症の場合は外科手術が必要になることもあります。一方、十二指腸潰瘍は20~40代の男性に多く見られ、主な症状は胃潰瘍と同様です。
 

ピロリ菌感染と胃の痛み

ピロリ菌の感染は慢性胃炎の最も多い原因とされています。ピロリ菌が胃の中に住み着くと、さまざまな分解酵素を出して胃粘膜を傷つけ、胃痛などの症状を引き起こします。
 
これが長期間続くと胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となることもあります。ピロリ菌の除菌治療に成功すると、胃炎や潰瘍の再発率が大幅に低下し、胃がんの発症リスクも抑えられます。
 

機能性ディスペプシアによる胃の痛み

胃もたれや胃痛など、胃の不調があるにもかかわらず、検査では異常が見つからない状態を機能性ディスペプシアと呼びます。以前は「気のせい」として片付けられることもありましたが、現在では胃の病気の一つとして認識され、健康保険による治療が可能になっています。
 
胃の膨らみが悪く、胃酸に反応して痛みを感じやすいことが主な原因とされていますが、ストレスも重要な要因の一つです。
 
 

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胃痛の原因を検査する方法

胃痛の原因を特定するためには、適切な検査が必要です。医療機関では、症状の詳しい聞き取りから始まり、血液検査、超音波検査、胃カメラ検査など、段階的な診断を行っていきます。
 
それぞれの検査の目的と特徴について見ていきましょう。
 

胃痛の問診方法

医師による詳しい症状の聞き取りは、診断の重要な第一歩となります。問診では、いつ頃から症状が現れ始めたのか、どの程度の痛みが続いているのか、食事との関連性はあるのかなど、細かな状況を確認していきます。
 
また、体重の変化や服用中の薬についても確認が行われます。患者さんの症状や状態を正確に把握することで、必要な検査を見極め、適切な治療方針を立てることができます。
 

血液検査による胃痛の検査

血液検査では、ウイルスや細菌による感染の有無、そして炎症の程度を調べることができます。採取した血液サンプルを分析することで、体内で起きている異常を数値として把握することが可能です。
 
また、貧血の状態なども確認できるため、胃からの出血の有無を判断する手がかりにもなります。血液検査は体への負担が少なく、多くの情報が得られる基本的な検査方法です。
 

超音波検査での胃痛の診断

超音波検査(腹部エコー検査)は、胃カメラでは確認できない肝臓や膵臓、胆のうなどの状態を調べるために実施されます。この検査では、お腹の表面から超音波を当てることで、内臓の状態を画像として確認することができます。
 
痛みのない非侵襲的な検査方法であり、患者さんの負担も少なく済みます。検査の際は、よりクリアな画像を得るために、食事を控えていただく必要があります。
 

胃カメラ検査による胃痛の検査

胃カメラ検査(胃内視鏡検査)は、口もしくは鼻から内視鏡を挿入し、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察する検査方法です。粘膜の状態を詳しく確認でき、疑わしい部分があれば組織を採取して病理組織検査を行うことも可能です。また、ピロリ菌の感染の有無を調べることもできます。さらに、出血している場合には、検査中に止血処置を行うこともできる有用な検査方法です。
 
 

日常生活で胃の負担を軽減する方法

 

 
胃に負担をかけない生活習慣を身につけることで、胃痛の予防や改善が期待できます。まずは食事内容を見直し、胃に優しい食生活を心がけましょう。
 
脂っこい食事や消化の悪い食べ物は控えめにすることが大切です。消化にかかる時間は食べ物の種類や量によって異なり、胃内での滞留時間が最も短いのは脂肪分の少ないタンパク質です。例えば、肉を選ぶ際は、ロースより脂肪分の少ないヒレを、魚は脂の多いトロより赤身や白身を選ぶことで、胃への負担を軽減できます。
 
調理法も工夫が必要です。油で揚げる料理は避け、焼く、煮る、ゆでるなどの調理法を選択すると消化を助けることができます。また、カフェインを多く含むコーヒーやアルコール、香辛料も胃を刺激するため、できるだけ控えめにしましょう。
 
食事の時間帯にも注意が必要です。深夜の食事は胃に大きな負担をかけるため、就寝前3時間は食事を控えることをお勧めします。規則正しい食生活を送ることで、胃の調子を整えることができます。
 
市販の胃薬の使用も一つの方法です。胃薬にはさまざまなタイプがあり、症状に合わせて選択することが重要です。総合胃腸薬は多くの症状に対応できますが、胸やけには胃酸の分泌を抑える「H2ブロッカー」、胃の働きを改善したい場合は「健胃薬」を選ぶなど、症状に合った薬を選びましょう。迷った際は薬剤師に相談して、適切な薬を選択することをお勧めします。
 
 

まとめ

食後の胃痛は、日常生活の質を大きく低下させる要因となります。胃痛の背景には、食生活の乱れやストレス、ピロリ菌感染、さらにはさまざまな消化器疾患が潜んでいる可能性があります。早期発見・早期治療が可能な疾患も多いため、症状が続く場合は適切な検査を受けることが重要です。生活習慣の改善と定期的な健康チェックを心がけることで、胃の健康を保ち、快適な毎日を送ることができます。
 
 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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