便の色がおかしい!黒い便(タール便)の原因と対処法

  • クリニックブログ
2025/01/21

便の色がおかしい!黒い便(タール便)の原因と対処法

 

 

便の色が黒くなっているのを見つけて不安を感じている方は少なくありません。黒い便は時として深刻な病気のサインとなる可能性があり、早期発見・早期治療が重要となります。
 
一方で、食事や薬の影響による一時的な症状であることも多くあります。この記事では、黒い便が出た際の正しい判断基準や適切な対処法、受診のタイミングまでを詳しく解説します

 
 

黒い便の基礎知識

普段の便の色は茶色や黄土色が一般的ですが、突然黒い便が出ると誰もが不安を抱きます。しかし、黒い便には様々な原因があり、すべてが深刻な病気というわけではないのです。
 
便の色の変化は体調の変化を知る重要なサインとなるため、日頃から観察する習慣を持つことが大切です。早期発見により、深刻な事態を防ぐことも可能となります。
 

黒い便とは何か?正常な便との違い

健康な便は、バナナ状で茶色から黄土色をしており、スムーズに排出されるものです。一方、黒い便には様々な種類があり、特に注意が必要なのはドロドロとした真っ黒な便、いわゆるタール便となります。
 
タール便はコールタールに似た粘性の高い便で、消化管からの出血を示唆する重要なサインです。通常の便との最大の違いは、その色の濃さと質感にあたります。
 
正常な便には個人差があり、食事の内容によって多少の色の変化は自然な現象です。しかし、急激な変化や持続する変化には注意が必要となります。
 

タール便の特徴と見分け方

タール便は単なる黒っぽい便とは全く異なる性質を持ちます。粘り気が強く、独特の臭いを伴うことが特徴的です。また、便器の水に溶けにくく、トイレットペーパーにこびりつきやすい性質があります。
 
普通の黒い便との違いは、その粘性と光沢にあり、まるでイカ墨のような見た目となります。タール便の場合、便器の水があまり混ざらず、黒い塊として沈殿する傾向がみられます。
 
このような特徴的な性状は、上部消化管からの出血を示唆する重要な所見となります。さらに、タール便は通常の便と比べて悪臭が強く、これも出血の存在を示す重要な特徴として挙げられます。
 
排便時の痛みや不快感を伴うこともあり、このような症状がある場合は特に注意が必要です。また、タール便は複数回続くことがあり、その場合は継続的な出血の可能性も考えられます。便の様子を撮影しておくことも、医師の診断の参考になることがあります。
 
 

真っ黒な便が出る原因

黒い便の原因は大きく分けて病気によるものと、日常生活によるものが存在します。病気が原因の場合は早急な対応が求められます。
 

便が黒いのは病気が原因の場合

胃や十二指腸などの上部消化管で出血が起きると、血液が消化液と混ざり合って黒いタール便となって排出されます。消化管からの出血は、様々な病気が引き起こす可能性があります。
 
早急な治療が必要なケースもあり、特に腹痛やめまいなどの症状を伴う場合は要注意です。出血の量や場所によって症状の重症度も変化します。
 

消化管出血(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、粘膜が深く損傷を受けた状態です。ストレスやピロリ菌感染、特定の薬の服用などが主な原因となります。
 
潰瘍からの出血により黒いタール便が生じ、みぞおちの痛みや胸焼けなどの症状も現れます。空腹時や夜間に痛みが強くなる傾向があります。
 
 

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早期発見・早期治療により、多くの場合は改善が見込まれます。しかし、放置すると出血が深刻化する可能性があり、貧血やめまいなどの症状も出現します。
 
多くの場合、内視鏡検査による診断と治療が行われ、薬物療法と生活習慣の改善が必要となります。
 
 

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食道静脈瘤

食道静脈瘤は、食道の血管が瘤状に膨らんだ状態です。主に肝硬変などの肝臓病が背景にあり、門脈圧が上昇することで発生します。
 
破裂すると大量出血を起こし、吐血や黒いタール便として現れます。出血量が多いため、急激な貧血や意識障害を引き起こす危険性があります。
 
定期的な検査による早期発見が重要で、破裂する前に予防的な治療を行うことが推奨されます。破裂時は緊急の内視鏡治療や手術が必要となります。
 
普段は自覚症状に乏しいため、リスクのある方は定期的な検査が欠かせません。また、アルコールの制限など、生活習慣の管理も重要です。
 

胃がんなどの消化器系腫瘍

消化器系の腫瘍は、初期には明確な症状が現れにくいことが特徴です。進行すると、腫瘍からの出血により黒いタール便が生じることがあります。
 
食欲不振や体重減少、みぞおちの不快感なども徐々に現れ始めます。胃がんの場合、食事の際の違和感や胸焼けなども特徴的な症状となります。
 
早期発見が治療成績を大きく左右するため、定期的な検診が重要です。また、40歳以上の方は特に注意が必要となります。
 
治療法は腫瘍の種類や進行度によって異なり、内視鏡治療や手術、抗がん剤治療など、様々な選択肢があります。生活の質を維持しながら、最適な治療法が選択されます。
 

便が黒いのは日常生活が原因の場合

食生活や服用している薬によって便が黒くなることは珍しくありません。イカ墨や海藻類などの食材、鉄剤などの薬剤が主な原因となります。
 

食べ物や飲み物の影響

イカ墨や海藻類など、黒や濃い色素を含む食品を摂取すると便が黒くなることがあります。これらは体に害を及ぼすものではなく、一時的な変化となります。
 
肉類やチョコレートを大量に摂取した際も、便が濃い茶色や黒っぽくなる可能性があります。また、赤ワインの飲みすぎでも便の色が変化します。
 
通常、これらの影響による黒い便は、食事内容を変更することで自然と改善します。ただし、変化が長期間続く場合は、他の原因の可能性も考慮する必要があります。
 

サプリメントや薬の副作用

 

 

鉄剤の服用は便を黒くする代表的な要因です。特に貧血の治療で処方される鉄剤では、この変化が顕著に現れます。
 
ビスマス系の胃薬や一部の漢方薬でも、便が黒くなることがあります。これらは正常な反応であり、薬の効果に影響するものではありません。
 
服用中の薬の影響が気になる場合は、自己判断で中止せず、処方した医師に相談することが望ましい対応となります。
 

生活習慣との関連性

便秘傾向にある場合、腸内での滞留時間が長くなり便が黒ずむことがあります。これは腸内細菌の働きにより、便が酸化することが原因です。
 
不規則な食事や運動不足、ストレスなども便の色や性状に影響を与えます。特に食物繊維の摂取不足は、腸内環境の悪化を招く要因となります。
 
規則正しい生活リズムと適切な食事管理により、多くの場合は改善が見込まれます。水分摂取も便の性状を整える重要な要素となります。
 
 

検査・診断について

黒い便の原因を特定するために、医療機関では複数の検査が実施されます。主な検査には血液検査や内視鏡検査があり、症状や状態に応じて必要な検査が選択されます。
 

必要な検査の種類

消化管からの出血が疑われる場合、まず血液検査で貧血の有無を確認します。その後、胃カメラ検査で上部消化管の状態を詳しく調べます。
 
必要に応じて大腸カメラ検査も実施され、これらの検査により出血の場所や原因を特定していきます。早期発見のため、症状に応じた適切な検査が選択されます。
 

受診の目安とタイミング

腹痛や吐き気、めまいなどの症状を伴う場合は、緊急性が高まります。食事や薬の影響が考えられる場合でも、症状が続く場合は専門医への相談が推奨されます。早期発見が治療の成功率を高める重要な要素となります。
 
夜間や休日でも、激しい症状がある場合は救急外来を受診することをお勧めします。
 
 

治療と対処法

 

 
黒い便の治療は、原因となっている病気や状態によって大きく異なります。医療機関での適切な治療と、日常生活における自己管理の両方が求められます。
 
多くの場合、早期発見・早期治療により改善が期待できます。治療方針は患者の状態や生活環境に合わせて個別に決定されます。
 

医療機関での治療

消化管出血が原因の場合、内視鏡検査による止血処置や、薬物療法などが実施されます。必要に応じて入院治療も検討されます。
 
病気の種類や重症度によって最適な治療法が選択され、継続的な経過観察も欠かせません。治療効果は定期的に評価され、必要に応じて治療内容の見直しも行われます。
 
 

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自己管理と予防

病気の予防や再発防止のためには、日常生活における細やかな自己管理が重要となります。バランスの良い食事と適度な運動、十分な休息が基本です。
 
定期的な健康診断の受診も推奨され、早期発見のチャンスとなります。また、ストレス管理も重要な要素として挙げられます。
 
 

まとめ

黒い便は時として深刻な病気のサインとなる可能性があり、早期発見・早期治療が大切です。特にタール便の場合は、すぐに医療機関への受診が推奨されます。
 
一方で、食事や薬の影響による一時的な症状であることも多く、冷静な判断も必要です。様々な検査や治療法が確立されており、適切な対応により多くの場合は改善が見込まれます。
 
不安な症状があれば、ためらわずに医療機関に相談することが賢明な選択となります。日頃からの健康管理と定期的な検診も、予防には欠かせません。
 
 
 

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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