命の危険につながる不整脈「心室細動」を救うAED
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命の危険につながる不整脈「心室細動」を救うAED
不整脈にはいくつかの種類があり、中には特に治療する必要がないものもあります。しかし、心室細動は不整脈の中でも危険度が非常に高いものです。心室細動が起きると全身への血液の供給がストップしてしまうため、数十秒のうちに意識を失い、適切な治療がなされなければ死に至る可能性もあります。
AEDは、心室細動によって心停止をした場合に、電気ショックを与えることで命を救う医療機器です。
今回は、不整脈の1つである心室細動の症状やAEDの重要性についてご紹介します。
不整脈とは
心室細動は、不整脈の一種です。心室細動についてご説明する前に、まずは不整脈の概要をご説明します。
不整脈とは、脈がゆっくりであったり、急に早くなったり、脈のリズムが不規則になる状態を言います。全く自覚症状が出ない不整脈もありますが、動機や息切れなどの自覚症状が出るケースや失神・心不全を引き起こすケースもあります。運動したときや興奮したとき、風邪などにより発熱した場合にも脈は速くなりますが、これは生理的な頻脈であり、問題はありません。
不整脈の3つの種類
不整脈は大きく分けて「期外収縮」「頻脈」「徐脈」の3つに分けることができます。
期外収縮
期外収縮とは急に脈が飛ぶタイプの不整脈で、ドキドキしたり、胸が詰まったりするような症状が現れます。期外収縮は健康な人でも起きるもので、とくに症状がなければ治療の必要がない場合がほとんどです。ただ、中には心筋梗塞や心不全、心臓弁膜症などの心臓の病気で起きる場合もあり、このような場合は適切な治療が必要です。
頻脈
不整脈のうち、正常よりも脈が速くなることを頻脈と言います。脈が速くなることで動悸や息切れを感じる場合、めまいや失神などを引き起こすことがあります。また、頻脈の中には、命の危険につながる恐れがあるものもあり、心室細動は頻脈に該当します。
徐脈
徐脈とは、脈が遅くなるタイプの不整脈です。脈を打つ回数が減ることで倦怠感があったり、脳に流れる血流が少なくなって失神する恐れなどがあります。何らかの病気や薬の副作用などで起こるケースもありますが、老化現象によって発生するケースも少なくありません。
不整脈について詳しくはこちら
心室細動とその症状
心室細動は、心停止の原因として最も多いものです。心筋梗塞や心筋症、心不全など、心臓の病気を持っている人は発症するリスクが高いとされています。心室細動は致死性不整脈とも呼ばれ、直ちに治療をしなければ死に至る極めて危険な不整脈です。
心室細動とは
心臓の内部は、4つに分かれており、左右に1つずつ心室と心房があります。心房は血液を受け取り、心室は血液を送り出すポンプの役割を果たしています。心室細動は、ポンプの役割を果たす心室が不規則に震え、正常に収縮ができない状態を指します。心室が痙攣して収縮できなければ、心臓から全身に向かって血液を送り出すことができなくなります。
心室細動の症状
心室細動が起きると、脳はもちろん、全身への血液の供給が止まり、脈拍や心拍、血圧を測定できない心停止の状態となります。そのため、心室細動が起きると数十秒のうちに意識を失い、呼吸も止まってしまいます。
脳への血液供給がストップすれば、数分後には脳にダメージが与えられ、数十分もすれば死に至る可能性があります。
心室細動を救うAED
心室細動を起こし、心停止の状態になった場合は、できるだけ早い救命処置が必要です。心停止の時間が短ければ短いほど、救命できる確率は高くなります。AEDは心室細動によって心停止状態となった人の救命をする医療機器です。
AEDとは
AEDは「Automated External Defibrillator」の頭文字を取った言葉で、日本語では自動体外式除細動器と呼ばれる医療機器です。2004年7月から、AEDは医師などの資格がない一般の人も使用できる機器となりました。そのため、駅や公共の場などでAEDを目にした経験がある方も多いのではないでしょうか。
心臓は、電気信号によって動き、血液を全身に送り出しています。しかし、心室細動を起こすと電気振動が乱れて心室が痙攣し、正常に収縮できない状態となります。AEDは心臓の状態を確認し、心室細動を起こしていると判断すれば、心臓に電気ショックを与えます。そうすることで電気信号を整え、痙攣している心臓を正常な状態に戻す機能を持っています。
AEDは誰でも使える医療機器
AEDは、誰でも使用できる医療機器です。心室細動が起きた場合、できるだけ早く救命活動を行う必要があります。救急車の到着を待つ間に胸骨圧迫などの心肺蘇生とAEDによる救命活動を行った場合は、何もしなかった場合に比べて救命できる確率を高めることができるのです。
AEDは電源を入れると音声ガイダンスが流れます。AEDの使い方は、電極の付いたパッドを倒れた人の胸の上に貼り、電気ショックのボタンを押すだけです。電極パッドを貼る位置はイラストで示されているため、迷うことはないでしょう。
また、AEDには心電図を解析する機能が搭載されており、電気ショックが必要かどうかを自動的に判断し、電気ショックが必要な場合だけ音声で指示を出します。電気ショックが不要と判断した場合には電気ショックが不要である旨の音声が流れ、電気ショックのボタンが誤って押された場合でも作動しないようになっています。そのため、目の前で急に人が倒れたりした場合には、躊躇することなくAEDを使用した救命活動を行うようにしましょう。
まとめ
心室細動は、死に至る可能性もある非常に危険な不整脈の1つです。心室細動が起きると、心臓から血液が送り出されなくなるため心停止の状態となり、すぐに意識を失い、呼吸も停止します。心停止のほとんどは、心室細動が原因だとも言われています。
心室細動が起きた場合、どれだけ早く救命措置を行えるかによって命を救えるかどうかが変わってきます。AEDは心室細動を起こした人の命を救う医療機器であり、誰でも簡単に使用することができるものです。
目の前で意識を失い、倒れた人がいた場合には、周囲の人と協力しながら救急車を呼び、AEDによる救命活動を行うようにしましょう。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師