不整脈とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/04/04

不整脈とは?原因、症状、治療法について解説

MYメディカルクリニックみなとみらい 常勤医 神山医師

「急にドキドキする症状が出てくることがある」、「健診で不整脈を初めて指摘されたけど放っておいて大丈夫なのか」などの主訴で当院を受診される方が多くいらっしゃいますが、ひとえに「不整脈」と言っても様々な種類があります。人によってもその自覚症状が違い、同じ不整脈なのにある人には全く症状がない場合もあれば、動悸症状が辛く生活に支障が出る方もいらっしゃいます。この胸のドキドキはそもそも「不整脈」によるものか?(はたまた胸のトキメキか?)不整脈であってもそれはどの種類に分類されるのか?それは緊急性を要するものなのか?放っておいて良いのか?などをきちんと見極めて、それに応じた治療方針を決める必要があります。
ここでは当院で診断し治療できる不整脈を中心に解説していきたいと思います。

不整脈って何?

心臓は洞結節(一定のリズムで電気を発し続ける部位)が発する電気信号が心房・心室を順に伝わり、その電気信号を受けて心房・心室がそれぞれ一定のリズムで収縮を繰り返すことで全身に効率よく血流を送ることができるポンプの役割を果たしています。しかし何らかの原因でその正確に流れる電気信号が乱れたり、途切れたりすることで心房・心室の収縮リズムが狂ってしまいます。

リズムが狂うことでポンプとしての効率も低下し、全身へ送り出す血流が低下してしまって身体中の各臓器へ到達する血流が低下することで様々な不具合を起こしてしまう(心臓が各種臓器に必要な十分な血流を送り出せない状態=心不全)こともあります。不整脈にはいくつもの種類が存在しますが、大まかに分けると…
①「ドキッとする」単発的にでる不整脈
②いつもよりも脈がかなり遅くなってしまう徐脈性不整脈
③「ドキドキドキドキドキドキ…」と脈が速くなり動悸が辛い頻脈性不整脈
④命に関わる緊急的な治療を要する致死性不整脈
が存在します。

以下に簡単にそれぞれの代表的な不整脈を挙げていきます。

不整脈の症状とその原因

1: 単発的な不整脈

特に自覚症状はないにも関わらず健診の先生から「不整脈ですよ」と指摘されてまさに「ドキッ」とする不整脈です。中には敏感な方だと突然「ドキッ」とした胸の症状を訴えることもあります。上室性期外収縮や心室性期外収縮が代表的で、健診の場で我々がたまに指摘することがある言わば「健診の常連さん的不整脈」です。これは規則的な脈の中に異常な電気信号が突然出現して、心臓が予定されたタイミングよりも早く収縮してしまうことで生じます。

単発だけなら「ドキッ」で済みますが、中には連発することで「ドキドキドキドキッ」と動悸症状を訴えることもあります。心筋症や狭心症・心筋梗塞などの心疾患の有無や症状の強さ、頻度、その方の生活背景や年齢などにより治療すべきかどうか判断します。まさにケースバイケースであり、医師と相談の上で方針を決めます。
心電図

2: 徐脈性不整脈

普段正常範囲内の心拍数の方の脈が1分間に50回未満に低下する不整脈です。「脈が遅い」という状態は毎日血圧や脈拍数を測っていらっしゃる方は気づきやすいですが、「なんだかだるいなあ」とか「疲れやすいなあ」など特有の症状とは言えない主訴で受診されるケースも多いです。、代表的なものとしては、洞結節の働きが低下して電気信号の発生が極端に遅くなる洞不全症候群、心房から心室へ電気信号の流れがうまく伝わらなくなる房室ブロックなどがあります。

原因としては心筋梗塞などの虚血性心疾患に合併するものや加齢によるもの、中には甲状腺ホルモン値が低下する疾患(甲状腺機能低下症)に合併したり、普段内服している薬の副作用で生じることもあり、どの様な原因で起きてしまったのかを調べる事が外来精査の肝となります。

心電図

3: 頻脈性不整脈

1分間に100回以上心臓が脈を打つ状態を頻脈といいます。もちろんスポーツなど活発に体を動かしていると脈が早くなる(全身にたくさん血液を送るために早くなる)のは当たり前ですが、頻脈性不整脈が起きてしまうとじっと安静にしているのにも関わらず「ドキドキドキドキ…」と動悸が強くなります。動悸が強くてかなり精神的にも不安感が強く辛い症状となることもあり、しっかりと外来で治療を行いたいタイプの不整脈です。代表的な頻脈性不整脈は脈がバラバラで不揃いとなってしまう心房細動です(徐脈性心房細動の方も一部いらっしゃいますが)。

高齢者に多く我が国では80歳以上では男性4.4%,女性2.2%と比較的有病率が高い超有名な不整脈でありますが、正常な電気活動が乱されて心房で電気信号が絶えまなくぐるぐると回っている状態で脈が乱れてしまうことで起きてしまいます。
左心房にある左心耳という袋小路になっている部位に血栓症を起こしてしまうこともあり、脳梗塞の原因ともなりうる厄介な不整脈脈です。よって、血液をサラサラにする抗凝固薬を使用して経過を診ることもあり、医師としっかりと治療方針を話し合う必要がある不整脈です。他にも甲状腺機能亢進症や貧血、脱水、過度なストレス…様々な原因が挙げられます。心房細動のほか、発作性上室頻拍や心室頻拍などの重症度の高い不整脈もあります。

心電図

4: 致死性不整脈

上記②や③にも分類される不整脈の一部はそのまま放置してしまうと命を落としてしまう怖い不整脈も存在します。。失神や眩暈などのエピソードから外来を受診し、精密検査で発見されるケースもあり、原因が判明すると発作予防のために抗不整脈薬での治療やペースメーカー、ICD(植え込み型除細動器)等の植え込み型デバイスによる治療を受けることもできます。

しかし不運なことに、突然発症して一瞬にして心肺停止に至ってしまうこともあり、早急に胸骨圧迫やAEDによる除細動などの適切な処置がなされない場合には命を落としてしまう場合もあります。代表的な不整脈としては心室細動や無脈性心室頻拍などの頻脈性不整脈、洞不全症候群や完全房室ブロックなどの徐脈性不整脈が挙げられます。
原因としては心筋梗塞などの虚血性心疾患や薬剤性によるもの、遺伝性疾患もあり突然死の家族歴の有無の確認も重要です。

 

心電図
 

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不整脈の検査について

これらの不整脈が疑われた際に行う検査としては以下の様なものがあります。

1: 12誘導心電図

不整脈を見つけるための基本的かつ身体的な侵襲性も低い検査で、心筋梗塞などの虚血性疾患の合併の有無を調べる際にも必須となる検査です。毎年健診で心電図を施行してる方も多いと思いますが、症状のない時の心電図を取っておくとそれが基準となり、症状のある際の心電図と比較ができて良いです

2: 血液検査

心臓以外の内科的疾患により不整脈を起こしてしまうこともあります。貧血や、各種電解質異常、甲状腺ホルモン値異常、腎機能異常などの確認を行い、もしも何らかの疾患が見つかった場合にはそれを改善することで治る不整脈も存在します。

血液検査

3: 胸部レントゲン

心臓の拡大や肺炎、気胸などの肺疾患のスクリーニングに使用できます。

レントゲン検査

4: 心臓超音波検査

心臓のポンプとしての性能の評価ができます。動きが悪い部位が無いか、弁膜症の有無などを確認するほか、心房細動の患者様には見てわかる範囲での血栓の有無を調べることもできます(より詳しい血栓の有無は経食道心臓超音波検査となります)。

5: ホルター心電図

24時間取り続けられる心電図です。特に症状が頻繁に起きる方に勧められます。24時間の検査中に症状があった際にボタンを押すことでその時間帯に何らかの不整脈があったかどうかを解析できます。つけたままシャワーに入れるので、日常生活の中での不整脈の有無を確認できます。

また、当院では行えませんが、他にも下記の様な検査も存在します。

6: 植え込み型心電計

下胸部の皮下に植え込むことで数年間心電図を取り続けることができます。ホルター心電図よりも長期間根気強く調べ続けられます。原因不明の失神や脳梗塞に対して適応となります。

7: 冠動脈CT、心臓カテーテル検査

不整脈の原因として心筋梗塞などの虚血性心疾患が疑われる際に施行します。

また、不整脈と疑わしき所見を検知できる可能性があるウェアラブルデバイスとして最近注目されているのがApple Watchなどのスマートウォッチです。装着することで簡易的な心電図を取り続けられ、これにより初めて不整脈が見つかったケースを当院でも経験しました。今後更なる改良が期待される分野です。

不整脈の治療は?

診断された不整脈の種類により治療方針も様々に変わってきます。
経過観察で済ませる場合もありますが、単発的な不整脈であってもかなり自覚症状が辛い場合には脈拍数を抑えるβブロッカーという薬を使用することもあります。

そのほか、各種抗不整脈薬や上記の通り心房細動では血栓症予防にて抗凝固薬を使用するケースもあります。当院でも患者様の症状に合わせて内服治療のご相談させていただけますし、当院では対応することの出来ない治療であるペースメーカーやICD植え込み術、カテーテルアブレーション(心臓内に異常な電気を流す不整脈の元となる部位を心臓内部から焼灼して絶つカテーテル手術)の適応がある方には他院への紹介も行わせて頂きます。

 

検査をする神山医師

 

 

まとめ

こちらに記したのは不整脈のほんの一部であり、不整脈治療はまだまだ奥が深いです。同じ不整脈ながらも個々で症状が違うためお一人お一人に合った治療法を提案させて頂きます。「ドキドキッ」とした症状があり不整脈を疑った際にはぜひ当院へご相談をお願い申し上げます。

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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 常勤医 神山 崇医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 医師

神山 崇 Dr. Takashi Kamiyama

これまで総合病院循環器内科にて、心筋梗塞や狭心症に対する冠動脈カテーテル検査や心不全治療を含めた不整脈治療に従事して参りました。当院では生活習慣病の予防ならびに治療において、気軽に受診できるかかりつけ医になれるよう、日々努力を続けておりますので、ぜひご受診いただければと思います。

学歴

  • 北海道札幌月寒高等学校卒業
  • 早稲田大学理工学部機械工学科 卒業
  • 札幌医科大学医学部 卒業

職歴

  • 名古屋市立大学病院 初期研修
  • 伊勢赤十字病院 循環器内科
  • 江東病院 循環器内科 医長
  • 2022年 MYメディカルクリニック 医師

専門

循環器内科

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