高カリウム血症とは?知っておくべき症状の特徴と治療、予防方法

  • クリニックブログ
2024/02/27

高カリウム血症とは?知っておくべき症状の特徴と治療、予防方法

血液中にはカリウムと呼ばれるミネラルが含まれています。身体に何らかの不調が発生した場合、血中に含まれるカリウム量が増えてバランスが崩れ、さまざまな症状を引き起こします。重症化するケースもあるため注意が必要です。
 
本記事では、高カリウム血症について病気の概要と特徴、発症する原因とその症状、治療や予防の方法に関して解説していきます。

 
 

高カリウム血症とは

高カリウム血症とは、通常は尿で排泄されるはずのカリウムが、腎機能低下や脱水などが原因となって体内に蓄積することで起こります。不整脈や筋力低下、感覚障害などの自覚症状から、検査して発見されることが一般的ですが、無症状の場合もあります。重症化すると血液透析になることもあるため、早期に適切な治療を受けることが必要です。
 
血液中のカリウム濃度の正常値は3.5mmol/Lから5.0mmol/Lです。この基準値を超えた場合に高カリウム血症と診断されます。カリウムは生体内で、通常は細胞の浸透圧の維持や神経刺激の伝達、心機能・筋肉機能の調節を行っています。尿中へナトリウムイオンを排泄するため、高血圧を予防する効果もあります。

 

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高カリウム血症の原因

高カリウム血症は、カリウムの摂取量過多と排泄障害が主な原因となります。以下ではそれぞれについて解説します。

■ 摂取量過多

・食べ物や服用薬剤の副作用

ほうれん草、にんじん、バナナなどの野菜や果物、生魚の一部はカリウムを多く含むものがあり、その過量摂取によって高カリウム血症となることがあります。
 

・薬剤の副作用

一部の血圧の薬(ACE阻害薬・ARB阻害薬)や非ステロイド性抗炎症薬、または一部の漢方薬の服用量過多などでカリウム濃度が上昇することがあります。
 

■ 排泄障害

・腎不全

高カリウム血症の原因として多いのが腎不全です。カリウムの排泄を行う腎機能が低下した状態だと、しばしばカリウム値が上昇します。腎不全の場合、カリウム値によって血液透析の導入を検討します。
 

■ その他の要因

・脱水

カリウム値は血中濃度で定義されるため、適切な量を摂取していても脱水などで血液が濃縮する状況では値が高くなります。水分が失われる環境下や水分の摂取不足が原因となってカリウム値が高くなることがあります。
 

・クラッシュシンドローム(圧挫症候群)

筋組織を含む体内の細胞はカリウムを多く含んでいます。災害や事故でガレキの下敷きになり細胞が破壊された場合、救助などによってその圧迫が解除されることでカリウムが血中に過剰放出され、カリウム値が上昇することが知られています。
 

・不適切な採血操作

採血が上手くいかず、強い吸引圧をかけて採取された場合に、採取した検体のカリウム値が高く出ることがあります。ただし、この場合では病的意義はなく、再度検査することで解決します。

 
 

高カリウム血症の症状

軽症の場合は無症状となることも多いですが、カリウム値が高いまま持続することで吐き気・四肢が重くだるい感じ・脱力感・しびれ・動悸・不整脈・全身倦怠感などの症状が現れることがあります。
 
さらに症状が進行すると、心停止など生命に危険が及ぶ場合もあるため経過には注意が必要です。


 

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高カリウム血症の治療方法

高カリウム血症の治療にあたっては、まず問診を行い、糖尿病のように腎機能障害をきたす疾患の有無や生活習慣、直近の健康状態を確認してから検査に進むことが一般的です。検査は採血検査・心電図検査・レントゲンなどが実施されます。
 
高カリウム血症の治療の目標は、カリウム値を基準値内に戻すことです。そのため、一次的にはカリウムを多く含む食べ物を食べ過ぎないよう調整していきます。それでも改善が不十分であれば、尿中にカリウムを排泄させるための利尿薬や細胞に吸収させる炭酸水素ナトリウム、腸管にカリウムイオンを吸着させないようにするイオン交換樹脂などを服用する処置となります。
 
なお、血中濃度が7.0mmol/Lを超えるケースにおいては、大量輸液やインスリン加ブドウ糖液の静脈内投与、さらに重症の場合では血液透析を行うこともあります。


 
 

高カリウム血症の予防と生活習慣

高カリウム血症にならないためには、日常生活においてカリウムを多く含有する食事の食べ過ぎないよう注意しましょう。カリウムを多く含むものでも、茹でる、煮るなど調理方法を変えることでカリウムの摂取量が制限できます。
 
特に、心臓や腎臓に持病がある方は食べ物に含まれるカリウム量を意識し、食事をコントロールする必要があります。


 
 

胃もたれに関するよくある質問

Q.高カリウム血症の疑いがある場合は、何科を受診したらよいですか?

A.循環器内科や腎臓内科にかかるのがよいと思います。まずは一般内科を受診し、必要に応じて専門性が高い病院を紹介してもらう形でもよいでしょう。
 

Q.カリウムの摂取量はどれくらいが適切ですか?

A.日本人の食事摂取基準(2020年版)では、生活習慣病の予防を目的とした1日当たりの摂取の目標量として18歳以上の男性では3,000mg、女性では2,600mgと設定されています。目標量については、基礎疾患の有無や対象となる年齢によって設定値が異なります。不足も過量摂取もよくないものとされているため、適度な摂取量を目指しましょう。
 

Q.カリウムは体に良いと聞きましたがどうなのでしょうか?

A.カリウムは、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果があります。そのため、一般的に身体に良いものという理解で間違っていませんが、カリウム値が高い状態が続くと全身状態に変調をきたすことがあります。
 
基礎疾患などがあって食習慣で悩まれている方は、まずは栄養士に相談してみることをおすすめします。


 
 

まとめ

高カリウム血症は軽症では無症状であることも多い一方で、重症化すると生命の危険に至る場合もあります。健康状態に不安があり、高カリウム血症の可能性が少しでもあると感じる方は早めに医療機関を受診し、相談してみることが大切です。
 
また、一般的にカリウムは体に良い成分とされていますが、高カリウム血症を防ぐためにはカリウムの含有量を意識した食生活を送ることが必要です。持病があるなどの理由で毎日の食事に気を遣いたい場合には、栄養士に相談してみましょう。


 

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吉川 博昭医師

執筆

吉川 博昭 Dr. Yoshikawa Hiroaki

自己紹介

  • 大阪府出身。
    都内医学部を卒業し、医師免許取得後は麻酔科やペインクリニックを専攻し、医療機関で臨床業務に携わっている。
    近年は内科診療・予防医学・心療内科などの生活に密着した御相談にも診療幅を広げ、「健康を通じたハッピーな生活をお手伝いしたい」ことをテーマとしている。
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