急に呂律が回らなくなったら病気の可能性も!考えられる原因や対処法を解説
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急に呂律が回らなくなったら病気の可能性も!考えられる原因や対処法を解説
突然しゃべりにくさを感じたり、言葉が思うように出てこなくなったりする場合、それは呂律が回っていないのが原因かもしれません。
呂律が回らなくなる原因はさまざまですが、脳梗塞など命に関わる病気が影響している可能性もあります。
本記事では、呂律が回らないとはどんな症状なのかを紹介し、考えられる原因や対処法を解説しています。
症状が気になる方は最後までご覧ください。
呂律が回らないとは?構音障害と失語症の違い
呂律が回らないとはどんな状態のことをいうのでしょうか。
異常をきたした部位により構音障害と失語症に分類されますが、その違いについても解説します。
呂律が回らないってどんな症状?
呂律が回らないとは、舌がもつれてうまく話せない、言葉が思うように出てこない状態のことを指します。
これまで普通に会話ができていた人が突然このような状態になったら、それは脳梗塞や脳出血などを発症した可能性があります。
呂律が回らない症状のほかに、
- ● 顔や舌が曲がっている
- ● 言っている単語がおかしい
- ● 会話が成立しない
などの様子が見られた場合は要注意です。
「何かおかしいな」と思ったら、すぐに病院を受診するようにしましょう。
構音障害とは
構音障害とは、頭では言葉の意味を理解できているにも関わらず、舌や口元、喉などが麻痺して言葉が発しづらくなる状態のことです。
口元の筋肉に異常が生じていたり、言葉を音声にする脳の機能が障害されることによって起こります。
構音障害が起こると、多くの場合は嚥下障害といった飲み込みにくさを伴います。
失語症とは
失語症とは、音を発する機能自体は問題ないものの、言葉の意味や文章の組み立てが理解できなくなる状態のことです。
言語に関わる脳の機能が障害されるために起こり、「話す」「聞く」「読む」「書く」などが困難になるほか、同時に右半身の麻痺や感覚障害が生じることもあります。
呂律が回らなくなる原因は?
呂律が回らない症状は、脳血管障害や口腔内の異常、神経疾患のほか、ストレスなどでも発症します。
それぞれの原因について解説をしていきます。
脳血管内障害
高齢者で突然言葉が出にくくなった場合は、脳梗塞や脳出血などの脳卒中が疑われます。
脳卒中を発症すると、呂律が回らないことのほかに、手足の麻痺や痺れ、平衡感覚がなくなる、めまいなどの症状が出現することもあります。
症状がみられた場合は様子をみず、早期に病院を受診しましょう。
脳梗塞について詳しくはこちら
口腔内疾患
呂律の回りにくさは、舌癌・咽頭癌・口唇の腫瘍など、脳ではなく舌などの器官そのものに異常がある場合もあります。
人間は、声帯で形成した音を舌や口唇の形を変化させることによって、言葉を発します。
これらの器官に障害が起こると、言葉が聞き取りづらくなるのです。
神経疾患
呂律が回らない症状の原因の一つとして、神経疾患も考えられます。
具体的には以下のような疾患です。
- ◯ 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- ◯ 多発性硬化症
- ◯ 脊髄小脳変性症
- ◯ 多系統委縮症
- ◯ パーキンソン病
これらは疾患の進行とともに唇や舌、喉の筋力が低下したり、筋肉が萎縮したりすることで構音障害を生じさせます。
精神的なストレス
過剰なストレスや不安感などから、適応障害やうつ病を発症した結果、呂律が回らず、言葉がうまく出なくなってしまう場合があります。
また、強い緊張によって舌や口周辺の筋肉が強張り、話しにくくなった経験がある人もいるかもしれません。
喉が詰まった感じがして言葉が出にくい場合は、咽喉頭異常感(ヒステリー球)の可能性も考えられるでしょう。
検査をしても異常は見つかりませんが、ストレスなどから発症しやすいといわれています。
うつ病について詳しくはこちら
病気以外
飲酒の影響や過度な疲労、脱水など日常生活に原因が潜んでいる場合もあります。
そのほか、以下のような服用している薬が関係している可能性もあります。
- ● てんかん薬
- ● 向精神薬
- ● 睡眠導入剤
- ● 抗うつ薬
- ● 抗がん剤
などは、呂律が回らなくなったり、手足が動かしづらくなったりする場合があるのです。
気になった方は、医師や薬剤師に相談するとよいでしょう。
呂律が回らない症状が出たらすぐに受診しよう
高齢者などは、呂律が回っていないのかわかりにくいこともあるでしょう。
また、症状が一瞬だった場合は受診を躊躇してしまうかもしれません。
そこで、本項では受診に必要な症状の判別方法を解説します。
呂律が回っているかどうかの判別方法
呂律が回っているかどうかは、以下の方法で判別できます。
ガ行・ラ行・パ行を発音してもらう
発音する際に口周りの筋肉を使う音を言ってもらうことで、呂律が回っているかどうかがわかります。
たとえば、「がぎぐげご」は喉の奥を使って発音するため、うまく発音できない場合は喉の奥に異常が起こっていると判断できます。
「らりるれろ」は舌を使って発音するため、うまく発せられない場合は舌の動きに障害が起こっていると判断できます。
「ぱぴぷぺぽ」は発音の際に唇を使用するため、うまく発音できない場合は口唇の動きに異常があると判断できます。
発音する様子や言葉を観察する
音を発声してもらうだけでなく、話す様子や特定の言葉を言ってもらうことでも見分けられます。
たとえば、声の出し方や大きさ、話すときのリズムに違和感がある場合は、構音障害が示唆されます。
挨拶ができない、医師の言った言葉を復唱できない場合は、失語症の可能性が考えられるのです。
ただし、高齢者の場合は入れ歯をしていることにより、言葉が聞き取りづらい場面もあるかもしれません。
脳疾患を早期発見するためにも、日頃から話し方に注目し、意識しておくとよいでしょう。
一時的な症状でも受診は必要?
一時的に呂律が回らなくなったものの、その後改善した。
そんなとき、治ったからと様子をみてもよいか迷ってしまうかもしれませんが、一時的な症状こそ危険信号です。
なぜなら、一過性脳虚血発作の可能性が高いためです。
一過性脳虚血発作とは、一時的に脳血管が詰まったのちに再び流れることにより、一時的に症状が出現して改善するものです。
通常、数分〜24時間以内には治まることが多く、脳梗塞の前触れであり危険な状態といえます。
脳卒中は早めに対処することが予後をよくする鍵となりますので、症状が一過性であっても迷わず受診することが大切です。
呂律が回らない症状の治療法
呂律が回らない症状で病院を受診した際、どんな検査や治療法があるのかを解説します。
検査内容
呂律が回らなくなったら、まずは脳神経外科を受診しましょう。
頭部MRIや頭部CTを行い、脳梗塞や脳出血がないか確認が必要です。
万が一見つかった場合は緊急入院し、点滴治療などを早急に開始します。
病変が見つからなかった場合は、症状に準じて適切な診療科を受診することとなるでしょう。
場合によっては、歯科医師が発音に関わる器官を観察したり、言語聴覚士が発音の様子を確認して診断につなげる場合もあります。
治療法
脳卒中の後遺症であれば、言語聴覚士による言語療法、つまりリハビリテーションで改善を図ることが一般的です。
口腔がんの術後では必要に応じて発音補助装置などを作製したり、その後言語聴覚士による舌や嚥下の訓練を行ったりします。
脳卒中後遺症や術後の構音障害は、時間が経ってからリハビリテーションを行っても発症前と同様に発音できるまでに完治するのは難しいと言われています。
しかし、早期に継続して行うことで徐々に改善に近づけますので、根気強く続けましょう。
まとめ
呂律が回らないとは、舌が引っかかり思うように言葉が話せなくなる症状です。
脳梗塞などの脳血管障害や神経疾患、過度なストレスなどによって発症します。
たとえ一時的な症状でその後改善したとしても、脳梗塞の前触れの可能性があるため早急に医療機関を受診しましょう。
高齢者に限らず働き盛りの世代でも起こりうるので、異変を感じた場合は検査することをお勧めします。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師