メタボリックシンドロームの診断基準と予防・改善方法を解説
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メタボリックシンドロームの診断基準と予防・改善方法を解説
「メタボリックシンドロームはどのくらいの数値から診断されるの?」
「メタボリックシンドロームを予防したい」
「メタボリックシンドロームを何としてでも改善したい」
このような、メタボリックシンドロームに関する疑問や悩みはありませんか?
以前からメタボリックシンドロームはコマーシャルや番組などでも取り上げられているため「知っている」または「名前くらいは聞いたことがある」という方も少なくないでしょう。
しかし、実際の詳しいリスクや診断基準は知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、メタボリックシンドロームの原因や診断基準、治療方法について解説していきます。
予防方法や検診、メタボリックシンドロームを放置することのリスクについても併せて解説していくので、是非最後までご覧ください。
メタボリックシンドロームとは
ここでは、以下の内容について解説していきます。
- ●メタボリックシンドロームとは
- ●メタボリックシンドロームになる方の特徴となる原因
- ●メタボリックシンドロームの疫学
- ●生活習慣病との違い
メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームとは、簡単にいうと内臓肥満に脂質異常や高血糖、高血圧が合併し、心臓病や脳卒中などになりやすい状態のことです。
腹囲が大きくても診断項目に該当しない場合は、メタボリックシンドロームとは診断されません。
メタボリックシンドロームになる方の特徴となる原因
メタボリックシンドロームになる原因は、下記のような「乱れた生活習慣」です。
- ● 不健康な食生活
- ● アルコールの摂りすぎ
- ● 喫煙
- ● 運動不足
- ● 睡眠不足
これらの要素は内臓脂肪を溜まりやすくさせ、メタボリックシンドロームの発症リスクを高めてしまいます。
不健康な食生活
不健康な食生活は脂肪の蓄積を促す要因になります。
具体的には、お腹いっぱいに食べる、甘いものをたくさん食べるといった食生活です。
食事量の取りすぎはカロリー摂取の過多につながり、脂肪を蓄積しやすくします。
また、甘いものを摂りすぎると余分な糖質の量が多くなり、その分脂肪への変換を促します。
アルコールの摂りすぎ
たしなむ程度であればそれほど問題はありませんが、アルコールの取りすぎはメタボリックシンドローム発症の要因です。
アルコールは、内臓脂肪をつけやすくする作用のある「ステロイド」というホルモンを分泌させると言われています。
そのため、アルコールを摂りすぎると内臓脂肪の量が徐々に増え、ビール腹の要因になります。
喫煙
喫煙もメタボリックシンドロームのリスクを高める習慣のひとつです。
喫煙は血管内皮にダメージを与えるため、中性脂肪の上昇や善玉コレステロールの低下を起こし、メタボリックシンドロームを引き起こしやすくします。
ほかにも、インスリン抵抗性や交感神経の緊張を高めて血圧を上昇しやすくすることも、喫煙でメタボリックシンドロームのリスクを高める理由です。
運動不足
運動不足は、内臓脂肪の蓄積を促しメタボリックシンドロームを発症させる要因のひとつです。
運動量の減少に伴いカロリー消費量や基礎代謝も低下するため、摂取エネルギーが消費しきれず体に蓄積されやすい体質になってしまいます。
太りやすい体質になると、内臓脂肪や皮下脂肪を溜め込みやすくなるため、メタボリックシンドロームを引き起こすリスクを高めます。
睡眠不足
睡眠不足が続く状態は、喫煙習慣と同様にインスリン抵抗性や交感神経の緊張を高めるため、メタボリックシンドロームのリスクを高めます。
加えて、睡眠不足は食欲を刺激するホルモンの分泌を促進させ、食欲を抑制するホルモンの分泌を低下させます。
その結果、日中の食欲が増進されて食べ過ぎにつながり、摂取カロリーの過多で太りやすくなるのです。
メタボリックシンドロームの疫学
男女の世代別にメタボリックシンドロームが強く疑われる方の割合を示します。
男性 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代以上 | 全体 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0.0 | 6.5 | 15.7 | 31.5 | 20.4 | 37.4 | 28.2 |
女性 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代以上 | 全体 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
0.0 | 0.9 | 2.4 | 6.4 | 12.9 | 16.8 | 10.3 |
メタボリックシンドロームは、男性が女性よりも多く、男性では40代以降、女性では50代以降に多く見られます。
生活習慣病との違い
メタボリックシンドロームは、生活習慣病の発症リスクが高まっている状態です。
一方で生活習慣病は、病気を発症してしまった状態です。
生活習慣病の代表的な例に、糖尿病や心臓病、脳卒中、がんなどが挙げられます。
生活習慣病はメタボリックシンドロームだけが要因ではなく、食生活や運動習慣、喫煙や飲酒などでも起こりえます。
高尿酸血症
よく見られる生活習慣病として高尿酸血症があります。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態です。
初期には何も自覚症状はありませんが、進行すると、尿酸の結晶が足の親指や耳たぶなどにたまり、炎症を起こして激痛が生じます(痛風発作)。
また膀胱や尿管に尿酸の結晶がたまると、膀胱結石や尿管結石を起こすほか、心臓病や脳卒中を引き起こすこともある病気です。
高尿酸血症は男性に多く見られます。
女性は女性ホルモンによって尿酸値がコントロールされており、閉経後に頻度がやや増すのが特徴です。
メタボリックシンドロームの診断基準
メタボリックシンドロームは、内臓肥満に脂質異常や高血糖、高血圧が合併した状態ですが、具体的に各種数値がどこまで高まるとメタボリックシンドロームに該当するのか気になる方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、以下の内容について解説していきます。
- ●メタボリックシンドロームと診断される基準とは
- ●肥満症との関係
- ●内臓脂肪量をどのように判定するか
- ●メタボリックシンドローム予備軍の診断基準
- ●痩せているのにメタボリックシンドロームの診断に?
メタボリックシンドロームと診断される基準とは
内蔵肥満と脂質異常・高血糖・血圧高値のうちどれか2項目が合併していると、メタボリックシンドロームと診断されます。
各項目の数値は、以下のとおりです。
【腹囲(内臓肥満)】
- ● 男性:85cm以上
- ● 女性:90cm以上
上記に加え、以下の3項目のうち2項目以上を満たすことが必要です。
【脂質異常】
下記のいずれか該当・もしくは両方該当すること
- ● 中性脂肪:150mg/dl以上
- ● 善玉(HDL)コレステロール:40mg/dl未満
【血圧高値】
下記のいずれか該当・もしくは両方該当すること
- ● 最低(収縮期)血圧:85mmHg以上
- ● 最高(拡張期)血圧:130mmHg以上
【高血糖】
- ● 空腹時血糖値:110mg/dl以上
腹囲や血圧は、メジャーや血圧計を持っていれば家でもチェックできますが、脂質異常や高血糖は医療機関で採血検査を受けなければチェックできません。
よって、きちんと結果を知りたい場合は、医療機関を受診する必要があります。
肥満症との関係
肥満症とは、BMI≧25の肥満のなかで、以下の①かつ / または②の基準を満たすものです。
- ①内臓脂肪蓄積
- ②肥満に伴う以下の健康障害のうち1つ以上を合併
- 耐糖能異常、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常、睡眠時無呼吸症候群、運動器疾患、肥満関連腎臓病
したがって肥満症と診断される方のなかには、メタボリックシンドロームの基準を満たさない方が含まれ、逆にメタボリックシンドロームと診断される方のなかには、肥満症の基準を満たさない方が含まれます。
たとえば月経異常のみを伴う肥満症の方はメタボリックシンドロームには含まれず、BMI<25のメタボリックシンドロームの方は肥満症に含まれません。
内臓脂肪量をどのように判定するか
内臓脂肪型肥満を判定するには、腹部CT検査を行うことが必要です。
日本の人間ドック学会で、男性10,080人、女性2,363人を対象に、おへそレベルの断面で内臓脂肪量を算定しました。
その結果、100cm²以上の場合と100cm²以下の場合を比較すると、前者の場合に合併する疾患数が2倍以上となることが分かっています。
ウエスト周囲径が基準になった理由
CT検査を行えない医療機関や検診などでメタボリックシンドロームを診断できるように、簡易マーカーとしてウエスト周囲径(いわゆる腹囲)が採用されました。
ウエスト周囲径は、立位で軽く息をはき、おへその周囲で測定した数値です。
ただしおへそが下方に偏位している場合、肋骨弓下縁と腸骨稜上縁の中点で測ると定められています。
メタボリックシンドロームの診断におけるウエスト周囲径の基準値は、男性85cm以上、女性90cm以上です。
この基準値は、内臓脂肪面積100cm²以上に対応する値として定められています。
メタボリックシンドローム予備軍の診断基準
メタボリックシンドローム予備軍は、内臓肥満と脂質異常・高血糖・高血圧の3つのうち一つでも当てはまると該当します。
「生活習慣が乱れている」「運動量が低下している」と感じている方は、改善せずにそのような状態を続けると、メタボリックシンドロームに進行するリスクがあります。
診断されていないとはいえ、メタボリックシンドローム一歩手前の状態なので、生活の改善につとめましょう。
痩せているのにメタボリックシンドロームの診断に?
BMIの数値が18.5未満の痩せ型であっても、体内で生活習慣病発症やメタボリックシンドロームのリスクを高める条件が揃っている状態が「痩せメタボ」です。
BMIが肥満の数値でなくても、運動不足やカロリーの摂りすぎなどで脂質異常・高血糖・高血圧の数値が悪くなっていることがあります。
見た目が痩せていても、数値が悪ければ糖尿病や心疾患、血液疾患といった病気の発症リスクの高さはメタボリックシンドロームとあまり変わらないことが分かっています。
見た目が痩せているからといって油断するのは危険といえるでしょう。
メタボリックシンドロームにおける内臓脂肪蓄積の病態
ここでは以下の内容について解説していきます。
- ●腹部肥満について
- ●内臓脂肪蓄積の病態
腹部肥満について
腹部肥満は内臓脂肪型肥満とも呼ばれ、腹部内臓の周りに脂肪が蓄積するタイプの肥満です。
腹部肥満のほうが皮下脂肪型肥満よりも生活習慣病、冠動脈疾患を合併するリスクが高いことが分かっています。
一方、皮下脂肪面積は冠動脈疾患とは関連しません。
BMIの数値が<25の方でも、内臓脂肪が蓄積していると冠動脈疾患の発生リスクが高まります。
とりわけ日本においては、このタイプが多いと言われており、注目を集めています。
メタボリックシンドロームの診断において、ウエスト周囲径(腹囲)の評価が重要なわけです。
内臓脂肪蓄積の病態
内臓脂肪は、消化管から肝臓に向かう血管が通っている腸間膜や大網に蓄積している脂肪です。
絶食時や飢餓時には、内臓脂肪に蓄えられたトリグリセライドが分解され、遊離脂肪酸・グリセロールとして肝臓に送られて、エネルギー源として使われます。
しかし過剰に内臓脂肪が蓄積していると、余分な遊離脂肪酸・グリセロールが肝臓に送られるのがデメリットです。
過剰な遊離脂肪酸は、VLDLの合成を促し脂質異常症を引き起こします。
また過剰なグリセロールは、糖新生を介して高血糖に繋がります。
さらに脂肪組織は、増殖よりも肥大によって増えるため、低酸素、高酸化ストレス状態となるのが特徴です。
その結果炎症細胞の浸潤が生じて、アディポサイトカイン/アディポカインと呼ばれる生理活性物質を産生し、動脈硬化性心血管疾患や血栓形成を引き起こす原因になります。
メタボリックシンドロームを放置することのリスク
メタボリックシンドロームを放置すると、高血糖、脂質異常、血圧高値といった心血管疾患危険因子数は上昇し、心筋梗塞・脳卒中を引き起こすリスクが高まります。
メタボリックシンドロームによる疾患のなかには命に関わるものもあるため、発症させないことが大切です。
ここでは以下の内容について解説していきます。
- ●内臓脂肪面積とともに心血管疾患危険因子数は上昇する
- ●危険因子が重なるほど心筋梗塞・脳卒中のリスクが増す
- ●糖尿病
- ●脂質異常症・動脈硬化
- ●高血圧
- ●睡眠時無呼吸症候群
内臓脂肪面積とともに心血管疾患危険因子数は上昇する
メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪面積の増加とともに、高血糖、脂質異常、血圧高値が見られます。
その結果、糖尿病、脂質異常症、高血圧が引き起こされ、心血管危険因子数が上昇してしまいます。
危険因子が重なるほど心筋梗塞・脳卒中のリスクが増す
心血管危険因子数が重なるほど、心筋梗塞・脳卒中のリスクは増加します。
約951,083人を対象とした調査研究によると、メタボリックシンドローム群は対象群(メタボリックシンドロームでない集団)と比べると、心血管疾患の発症率が約2倍、全死亡率は約1.5倍でした。
またNIPPON DATA 80という循環器疾患危険因子に関する分析調査でも、危険因子が増加するほど、冠動脈疾患や脳卒中による死亡率が、それぞれ約8倍、約5倍に増加していました。
続いて心血管疾患の危険因子について解説していきます。
糖尿病
糖尿病は、インスリンの分泌がうまく働かず、血糖値が上がる疾患です。
生活習慣病のひとつで、糖質を接種しすぎていることが主な原因で発症します。
また、メタボリックシンドロームと診断された項目に高血糖が見受けられる場合は、改善しないと糖尿病に進行することがあります。
初期の糖尿病はほとんど全く症状が現れません。しかし、高血糖が長く続くと以下のような症状が見られることがあります。
- ●疲労感
- ●皮膚の乾燥
- ●手足の感覚が低下
- ●感染症にかかりやすい
糖尿病を放置したり悪化したりすると、合併症を起こして失明や腎不全、壊死による足の切断につながります。
糖尿病について詳しくはこちら
脂質異常症・動脈硬化
脂質異常症は、善玉コレステロールが過剰に少ない、もしくは悪玉コレステロールや中性脂肪が過剰に多い状態となる病気です。
そして、動脈硬化は脂質異常症が原因で起こる病気です。
メタボリックシンドロームと診断を受けた項目の中で脂質異常がみられる場合は、脂質異常症を発症しています。
放置していると動脈硬化のリスクが高くなるため、食生活の見直しが必要です。
動脈硬化を起こした状態でさらに放置したり悪化したりすると、心筋梗塞や狭心症といった心疾患を起こすリスクが高くなります。
脂質異常症についてはこちら
高血圧
高血圧が続くと、血管はいつも張り詰めた状態となり、しだいに厚みが増して硬くなります。
これが高血圧性動脈硬化です。
動脈硬化は心臓や脳の血管にも起こり、心筋梗塞や脳出血または脳梗塞の原因になります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に無呼吸状態が何度かあったり、浅くなったりして低酸素状態が生まれる疾患です。
いびきを指摘されたり、睡眠中に何度も目が覚めたり、起床時がすっきりしなかったりといった症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
この病気は、肥満により気道が狭くなることが発症原因のひとつですので、メタボリックシンドロームと診断された方は注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群を放置していると、心筋梗塞、高血圧、脳卒中、糖尿病などの合併症を発症するリスクがあります。
睡眠時無呼吸症候群については詳しくはこちら
メタボリックシンドロームの治療
メタボリックシンドロームの治療は、生活習慣を改善することにより、体重および内臓脂肪を減少させることです。
ここでは以下の内容について解説していきます。
- ●生活習慣介入による体重・内臓脂肪減少のメリット
- ●減量の方法と治療目標
- ●適正体重
- ●1日に必要なカロリー
- ●脂質異常症の食事
生活習慣介入による体重・内臓脂肪減少のメリット
体重およびウエスト長が減少することで、高血糖、脂質異常、血圧高値が改善されます。
尼崎市の職員3,174人に対してメタボリックシンドロームに着目した検診と保健指導を行った調査研究があります。
メタボリックシンドロームが見られた職員のウエスト長は、保健指導の介入により、2003年から2005年にかけて男性で2.5cm、女性で3.9cm減少し、メタボリックシンドロームの該当者数が有意に減少しました。
また内臓脂肪が減少した方々の群では、4年間の追跡期間における心血管疾患の発症が抑制されました。
減量の方法と治療目標
メタボリックシンドロームの治療では、食事療法と運動療法により体重と内臓脂肪を減少させます。
減量治療の目標は現体重の3%以上の体重減少です。
皮下脂肪に比べると、減量により内臓脂肪は減少しやすい傾向が見られます。
特定保健指導対象者で積極的指導を行った3,480人を対象とした調査研究において、1%〜3%の体重を減らすことで、トリグリセライド、LDL-C、HDL-C、HbA1C、肝機能に有意な改善が認められました。
また3%〜5%の体重減少では、血圧、空腹時血糖、尿酸値に有意な改善が認められています。
適正体重
3%以上の体重減少を達成した後は、さらに日にちをかけて適正体重を目指すのが理想です。
適正体重は身長から求められます。
- 身長(m)× 身長(m)× 22 = 適正体重
たとえば身長が1m60cmの方なら、
1.6 × 1.6 × 22 = 56.32
より、56.32kgが適正体重となります。
また体重と身長からBMI(Body Mass Index)を計算します。
- 体重(kg)÷ { 身長(m)× 身長(m)} = BMI
たとえば身長1m60cmで体重60kgの方なら、
60(kg)÷ { 1.6(m)× 1.6(m)} = 23.43
より、BMIは23.43となります。
適正体重の方のBMIは22であり、体重が増えるとBMIは上がり、体重が減るとBMIは下がります。
BMIの標準値は18.5〜25です。
この範囲より高すぎても低すぎてもよくありません。
1日に必要なカロリー
適正体重が分かれば、それを元に1日に必要なカロリーを計算します。
まずは必要最小限のカロリーである基礎代謝量を求めましょう。
- 基礎代謝基準値(kcal / kg体重 / 日) × 標準体重(kg)= 基礎代謝量
基礎代謝基準値は、体重1kgあたりの基礎代謝量の代表値で、年齢・性別により異なります。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18歳〜29歳 | 23.7 | 22.1 |
30歳〜49歳 | 22.5 | 21.9 |
50歳〜64歳 | 21.8 | 20.7 |
65歳〜74歳 | 21.6 | 20.7 |
75歳以上 | 21.5 | 20.7 |
たとえば60歳の女性なら、基礎代謝基準値は20.7です。
身長が1m60cmの方で適正体重が56kgならば、
20.7 × 56 = 1159.2
より、基礎代謝量は約1160kcalとなります。
つぎに身体活動レベルによって生活活動強度と指数を決めます。
生活活動強度 | 指数 | 日常生活における運動量 |
---|---|---|
1.3 | ||
1.5 | 通勤、仕事などで2時間程度の歩行 | |
1.7 | 1日1時間程度は速歩やサイクリングなどの運動 | |
1.9 | 激しいトレーニングや重労働 |
- 基礎代謝量 × 指数 = 1日に必要なカロリー
たとえば基礎代謝量1160kcal、指数1.5の場合
1160 × 1.5 = 1740
より1日に必要なカロリーは1740kcalです。
この1日に必要なカロリーを摂取すればよいわけですが、適正体重を目標とした減量のため、指数をワンランク下げる場合もあります。
指数の設定は専門医と相談しながら行ってください。
脂質異常症の食事
脂質異常症のタイプによって食事療法の内容が異なります。
脂質異常症の食事 | 中性脂肪が高い | LDLコレステロールが高い |
---|---|---|
摂取エネルギーの適正化 | 摂取エネルギーの適正化 | |
栄養素配分の適正化 | 栄養素配分の適正化 | |
脂質制限 | 脂質制限の強化 エネルギー比20%以下 |
|
炭水化物制限の強化 エネルギー比50%以下 |
炭水化物制限 | |
1日300mg以下 |
コレステロール制限 1日300mg以下 |
コレステロール制限 1日200mg以下 |
アルコール制限 | アルコール制限 |
メタボリックシンドロームの予防方法
メタボリックシンドロームの予防方法は、大きく分けると「適度な運動」と「食習慣の改善」の2つです。
健康的な数値を目指し予防することは、重大な疾患の発症を予防することにもつながるため、できることから生活に取り入れてみましょう。
ここでは以下の内容について解説していきます。
- ●適度な運動
- ●食習慣の改善
- ●適度な飲酒
- ●禁煙
適度な運動
適度な運動はエネルギー消費を増加させ、内臓脂肪量を減らします。
また、筋力トレーニングは代謝を向上させる効果があるため、適度な運動と併せて行うと太りにくい体質を目指せるでしょう。
軽いウォーキングなどの強度が低い有酸素運動もよいですが、中程度の早歩きウォーキングは脂肪燃焼に効果的です。
脂肪燃焼を効率的にできる運動の強度は「ややきついけれど楽しく運動できるレベル」ですので、これに当てはまる早歩きウォーキングはゆっくりのウォーキングよりも脂肪燃焼効果が期待できます。
食習慣の改善
自身の一日のエネルギー消費量に見合った食事にすることで、脂肪の蓄積を予防できます。
また、食べ方も工夫することで、カロリー摂取の減少や食後血糖値急上昇の抑制も可能です。
具体的な方法は下記のとおりです。
- ● よく噛んで食べる
- ● 食物繊維(野菜や藻類)をしっかりとる
- ● おかしは低GI値のものを選ぶ
- ● 食物繊維が豊富なものから食べ、炭水化物は最後に食べる
適度な飲酒
メタボリックシンドロームには、お酒の飲み過ぎが関係している場合があります。
生活習慣病のリスクが高い飲酒量は、アルコールに換算して男性で1日平均40g以上、女性で20g以上とされています。
メタボリックシンドロームの方は、これ以下の飲酒量に制限してください。
また一般的に週2日程度の休肝日を設けると良いとされます。
禁煙
喫煙は動脈硬化疾患の原因の1つです。メタボリックシンドロームの発症リスクを高めることから、禁煙が必要です。
メタボ検診について
メタボリックシンドロームを含めた生活習慣病の予防のため、特定健診と特定保健指導が行われています。
ここでは以下の内容について解説していきます。
- ●特定健診
- ●特定保健指導
特定健診
生活習慣病の予防のために、40歳〜74歳の方を対象に、メタボリックシンドロームを中心とした検診を行っています。
問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などを行います。
特定保健指導
生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善により発症リスクの低下が期待できる方を対象に、保健師、管理栄養士などが生活習慣を見直すサポートをします。
内臓脂肪蓄積の程度、危険因子の数、リスクの高さ、年齢に応じて階層化され、レベル別の指導が行われるのが特徴です。
メタボリックシンドロームの方には積極的支援、予備軍には動機づけ支援、それ以外の方には情報提供が行われます。
まとめ
メタボリックシンドロームとは、内蔵肥満に脂質異常、高血糖、血圧高値が合併し、心臓病や脳卒中などになりやすい状態のことです。
原因は乱れた生活習慣です。
メタボリックシンドロームは、生活習慣病の発症リスクが高まっている状態ですが、生活習慣病は、病気を発症してしまった状態を指します。
メタボリックシンドロームの診断基準は、内蔵肥満と脂質異常・高血糖・血圧高値のうちどれか2項目が合併していることです。
内臓脂肪が蓄積すると、心血管疾患危険因子数が上昇し、虚血性心疾患や脳卒中を起こしやすくなるため、メタボリックシンドロームの治療は生活習慣を改善し、体重および内臓脂肪を減らすことを中心に進められます。
予防方法は、適度な運動と食習慣の改善です。
また特定健診と特定保健指導を受けると良いでしょう。
メタボリックシンドロームの原因は生活習慣であるため、誰にでも発症リスクはあります。
摂取カロリーをオーバーしすぎない、適度に体を動かすといった生活の積み重ねは、メタボリックシンドローム発症の予防につながるため、少し意識して食事や運動をしてはいかがでしょうか。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師