脂質異常症とは?症状や使用される薬についてご紹介

  • クリニックブログ
2023/10/24

脂質異常症とは?症状や使用される薬についてご紹介

昨今では在宅で仕事をする職業も増えたため、健康によりいっそう気を使っているという方もいらっしゃるでしょう。
運動不足や食事がおろそかになっていると、気づかないうちに病気になっているかもしれません。
 
今回は脂質異常症とはどのような病気なのかをご紹介いたします。
脂質異常症を放置しているとどんな病気になるのかということや使用される薬についても解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
採血中の看護師

  

脂質異常症とは

まずは脂質異常症がどのような病気なのかを説明いたします。

脂質が異常な状態である病気

脂質異常症とは、血液の中にある脂質が増えて、別のものにうまく変換できないという異常な状態になってしまっている症状のことを言います。
血液の中には酸素とともにさまざまな栄養素が含まれており、脂質はそのなかの一つです。
 
脂質は遊離脂肪酸、リン脂質、中性脂肪、そしてコレステロールという4種類に分けられます。
そして、血液の中の脂質が増えることで、中性脂肪とコレステロールのバランスが崩れてしまうのです。
 
脂質のバランスが崩れてしまうと、別の成分に変化するといったコントロールがうまくできず、さまざまな病気を発症するリスクを抱える状態になってしまいます。
脂質異常症には種類があり、状態や種類によって3つに分けられています。
  

高LDLコレステロール血症

高LDLコレステロール血症は、その名のとおりLDLコレステロールが血液の中で高い濃度になってしまっている状態のことです。LDLコレステロールが多いと血管を硬くし、血管の壁に塊を作って血の流れを阻害してしまうといった動脈硬化症を進行させてしまいます。
動脈硬化症については別記事に詳細があるため、ぜひそちらも併せてご覧ください。
  

動脈硬化について詳しくはこちら

詳しくはこちら

低HDLコレステロール血症

HDLコレステロールは血管から出ていくコレステロールのことで、かつては善玉コレステロールと呼ばれていました。
低HDLコレステロール血症は、この出ていくコレステロールが異常に少ない状態のことで高LDLコレステロール血症と併せて脂質異常症とされることもあります。

血管内に留まるLDLコレステロールよりも、出ていくHDLコレステロールが多いほど脂質はバランスが取れているのです。
   

高中性脂肪血症

コレステロールと同じく脂質である中性脂肪は、人が活動するために必要なエネルギーを保管したり、体温の維持や内蔵を守ったり位置を固定したりする役割を担っています。
 
高中性脂肪血症は、この中性脂肪が血液内で高い濃度になってしまっている状態のことです。
高中性脂肪血症はHDLコレステロールを減らす作用があるため、結果としてLDLコレステロールを増やしてしまう原因の一端となってしまいます。
  

無症状のため自覚しにくい

脂質異常症は主だった症状が体外に出ないため、なかなか自覚することができません。
静かに緩やかに進行していき、大きな病気になってから発症していたことがわかることも少なくありません。
 
早期に症状を見つけるためには、定期的に健康診断などを受けることが大切です。


 

脂質異常症を放置しておくことによるリスク

では、脂質異常症を放置しておくとどのようなリスクがあるのでしょうか。
脂質異常症が引き起こす病気について解説します。

動脈硬化を引き起こす

動脈硬化とは、酸素と栄養素が乗った血液を運ぶ動脈と呼ばれる血管が硬くなり、血の流れを滞らせてしまう病気です。
 
血液の中にある脂質が多いためLDLコレステロールがHDLコレステロールとして排出されず、留まったLDLコレステロールが血管の壁にこびりつきます。
こびりついたコレステロールはだんだんと盛り上がり、プラークと呼ばれる塊となって血管の中を狭くしてしまうのです。
  

脳梗塞

脳梗塞は動脈硬化によって脳にある繊細な血管がつまり、脳細胞が壊死してしまう病気です。
脳に大きなダメージを与えるうえ、治療後も脳細胞が再生することがないため、さまざまな障害を抱えてしまいます。
突発的に発症することもあり、一般的に3〜6時間以内に治療を行わなければ死亡する可能性があります。
また再発する恐れも高く、長期の治療が必要です。
  

心筋梗塞

心筋と呼ばれる心臓を動かすための筋肉に血液を送る太くて丈夫な動脈がつまり、心臓を十分に動かせなくなってしまうのが心筋梗塞です。
激しい運動などを行った際に、強い胸の痛みなどの発作を起こします。
心筋梗塞は日本人の死因でトップに並び、発症すれば1時間以内に治療しなければならない重篤な病気です。
  

心筋梗塞について詳しくはこちら

詳しくはこちら

肥満などによる弊害も起こる

脂質異常症は主だった症状が体外に出ないため、なかなか自覚することができません。
静かに緩やかに進行していき、大きな病気になってから発症していたことがわかることも少なくありません。
 
早期に症状を見つけるためには、定期的に健康診断などを受けることが大切です。

  

脂質異常症の改善方法

それでは、脂質異常症と診断された場合、改善方法についてご紹介します。
主な改善方法は、以下の2つです。
 

  • ・食事や運動などの生活習慣を見直す
  • ・食事は過食をしないことが前提

 

食事や運動などの生活習慣を見直す

脂質異常症と診断された場合、多くの改善策と今後の予防策として生活習慣の見直しが重要となります。
喫煙やアルコールなどは極力減らし、ストレスと寝不足を改善するために規則正しい生活を心がけてください。
 
特に食事はコレステロールや中性脂肪などの脂質を抑えたものを中心にしましょう。
魚や野菜を中心とした日本食がおすすめです。
 
HDLコレステロールを増やすためには、20〜30分程度の適度な運動が推奨されています。
しかし、多忙な方はなかなか時間が取れないということもあるでしょう。
その場合は、通勤や家事などで意識的に体を動かすようにすることが大切です。
 

食事は過食をしないことが前提

食生活の見直しの際、食事はバランスを意識して、食べすぎないようにすることが前提となります。
過食を抑える方法としては、食物繊維の多い食事にしたり、よく噛んで食べることを意識すると良いでしょう。
ただし脂質を全く摂らないことも問題です。
脂質が不足すると、免疫力の低下などを招く可能性があるため注意する必要があります。

 
 

脂質異常症の薬

脂質異常症が深刻な状態であると診断された場合、生活習慣の見直しだけでなく薬による治療が行われることもあります。
脂質異常症の進行を抑える薬は、主に以下のとおりです。
 

  • ・コレステロール値を下げるスタチン系製剤
  • ・コレステロール値と中性脂肪を下げるニコチン酸誘導体製剤
  • ・中性脂肪を下げるフィブラート系製剤

 

コレステロール値を下げるスタチン系製剤

コレステロールは肝臓で生成されますが、その働きを抑えてくれるスタチン系製剤と呼ばれる薬があります。
肝臓にあるコレステロールを少なくさせて、血液の中にある余分なLDLコレステロールをHDLコレステロールとして肝臓に呼び戻せるのです。
結果、血液中のコレステロールの値を低くすることができます。
 

コレステロール値と中性脂肪を下げるニコチン酸誘導体製剤

ニコチン酸とは、体内のアルコールなどを分解したり、脂質などをエネルギーに変換するための酵素を助けるビタミンの一種です。
中性脂肪やLDLコレステロールを肝臓で生成するのを抑え、HDLコレステロールを増やしてくれます。
ビタミンのため大きな副作用も起きにくく、服用を続ければ次第に体が薬に慣れていきます。
 

中性脂肪を下げるフィブラート系製剤

フィブラート系製剤は、ニコチン酸誘導体製剤と同じく中性脂肪とLDLコレステロールを生成する働きを抑え、HDLコレステロールを増やす作用を持つ薬です。
しかし、それほど大きな効果を持つ薬でないうえ、糖尿病の薬や前述のスタチン系製剤と相性が悪い場合があるといった特徴があります。
服用の際は医師とよく相談し、経過をよく観察する必要があるでしょう。

 
 

まとめ

ここまで脂質異常症についてご紹介いたしましたが、いかがだったでしょうか。
脂質異常症は自覚症状こそありませんが、恐ろしい突然死を招く脳梗塞や心筋梗塞といった病気を誘発しかねません。
 
また薬は副作用もあるため、できる限り脂質異常症にならないよう予防することが大切です。
普段からの生活習慣を見直すことで改善と予防が行なえるため、この機会にぜひ見直しを行ってみてください。

 

  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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