マラリア感染者は世界で毎年約2億人超!マラリアの感染対策や治療を解説
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マラリア感染者は世界で毎年約2億人超!マラリアの感染対策や治療を解説
世界では2021年の1年間に約2億人超のマラリアの感染者が報告され、62万人の死亡者数の報告がされています。
本記事では、海外へ渡航する方へマラリアの流行地域・感染対策と万が一感染してしまった場合の治療法などについて解説します。
マラリアとは
マラリア原虫を持った蚊(ハマダラカ)が、人を刺すことにより感染する世界3大感染症の一つで、中南米の熱帯雨林で流行が確認されています。
またマラリアは5種類に分かれ、24時間以内に治療を行わなければ重症化し死に至ることもある感染症です。
世界3大感染症の一つ
マラリアは、エイズや結核に並ぶ世界3大感染症の一つとされています。
2021年の1年間には世界累計約2億4700万人が感染しました。
またマラリアに伝染した患者の推計61万9000人が死亡したと報告されています。
マラリアの感染経路
マラリアの感染経路は、マラリア原虫を持った蚊(ハマダラカ種)に人が刺されることで感染します。とくに、ハマダラカの雌からの感染が多いとされる点が特徴の一つで、人から人への感染はありません。
感染媒体の蚊というと1種類と思われがちですが、実はハマダラカ種には400種類もあり、うちマラリアを人へ伝染させる蚊(ハマダラカ)は30種類ほどと言われていますが、
現在の日本に、マラリアを媒介する蚊は存在せず感染報告があるのは輸入感染によるものになります。
マラリアは5つに分類される
マラリアは、以下の5つの種類に分類されます。
- ● 三日熱マラリア
- ● 熱帯熱マラリア
- ● 四日熱マラリア
- ● 二日熱マラリア
- ● 卵型マラリア
この中でとくに、重症化しやすいのが熱帯熱マラリアです。
発症後、24時間以内の治療が最も重要とされています。
致死率にいたっては、発熱から10日を過ぎると100%ほどになり、非常に恐ろしい感染症であることが分かります。
世界でみるマラリアの流行地域
- ● オセアニア
- ● アフリカ
- ● アジア
- ● 中南米の熱帯及び亜熱帯地域
とくにアフリカは、蚊の寿命が長いため世界マラリア患者の90%近くがアフリカでの感染との報告があります。
またマラリアが流行する地域の特徴は高温多湿で、感染流行時期は雨期や雨期の後です。
マラリアの潜伏期間と症状
マラリアに伝染してから発症までの期間は、種類によって異なり、長いものでは40日間ほどとなります。
症状は風邪症状に似ているため、専門医でない限り初期症状ではマラリアと診断することは難しいこともあります。
マラリアの診断に必要なのは、3大症状の所見に加え血液検査やPCR検査などです。
マラリアの種類で潜伏期間が異なる
マラリアの種類 | 潜伏期間 |
---|---|
熱帯熱マラリア | 7日から30日 |
三日熱マラリア | 8日から30日 ※平均2週間 |
四日熱マラリア | 28日から37日 ※平均1ヵ月 |
卵形マラリア | 11日から16日 ※平均2週間 |
二日熱マラリア | 9日から12日 |
マラリアは5種類に分類され、更にそれぞれ潜伏期間が違います。
上記の表に、マラリアに伝染してから発症するまでの数をまとめました。
マラリアは風邪のように、潜伏期間は短くありません。
そのため、海外で蚊に刺されたことを忘れたころに発症するケースもあります。
マラリアの三大症状
マラリアには同じような症状が現れるのも特徴で、三大症状や三大主徴とも言われています。
- ● 熱発作
- ● 貧血
- ● 脾腫
またマラリアに感染した多くの場合は、悪寒→灼熱期→無熱期といった経過をたどることが多いとされています。
マラリアの症状と合併症
マラリアの症状や併発して起こる合併症を下記の表にまとめました。
症状 | 39℃以上の高熱、悪寒、頭痛、嘔吐、関節痛、筋肉痛など |
---|---|
危険な合併症 | 脳症、腎症、肺水腫/ARDS、DIC様出血傾向、重症貧血、代謝性アシドーシス、低血糖、黒水熱など |
マラリアにかかり、平熱になっても座れないような倦怠感が続く場合もあります。
蚊に刺されていなくても渡航歴のある方は、1ヶ月程体調の変化に注意しましょう。
マラリア予防薬についてはこちら
マラリアの治療方法
マラリアに感染した場合は早急に治療を受けることが重要です。
ここではマラリアに感染した時の治療法について解説します。
非重症マラリアは内服治療が有効
発症から直ぐに、診断がついた非重症化マラリアの場合は
- ● アトバコン・プログアニル合剤やメフロキン
- ● アルテメテル・ルメファントリン合剤
での内服治療が行われます
重症化したマラリアは注射での治療が有効
マラリアの症状が重症化へ移行すると、
- ● 意識障害
- ● 経口摂取不良
- ● 24時間に2回以上の痙攣
- ● ショック など
さまざまな症状が出現し、手遅れになると死に至ることもあります。
一刻も早く治療が必要な場合にはキニーネ注射薬での治療が必要です。
三日熱マラリア・卵形マラリアは根治治療が必要
伝染から発症までの期間が、約9日から16日の三日熱マラリア・卵形マラリアには、プリマキンによる根治治療が必要となります。
三日熱マラリア・卵形マラリアは、潜伏期間を超えて数ヶ月以上経ってから再発するケースも考えられます。
初期の治療で治癒したと思わず、体調の変化に充分注意する必要があります。
マラリアの予防法
予防法は、基本的に蚊に刺されないような服装であることです。
また、マラリアからの感染を防ぐ薬の内服期間を説明します。
肌の露出の少ない服装
マラリア蚊のいる地域は、高温多湿です。
つい、涼しい格好をしがちですが肌の露出の少ない服装を選ぶことが大切です。
長袖や長ズボンに加え、頭や顔などを帽子やスカーフなどで保護することをおすすめします。また、虫よけスプレーも有効とされていますので、どうしても露出が避けられない場合は虫よけスプレーやローションを利用しましょう。
抗マラリア薬を内服する
マラリアには、下記の予防薬があり医師による処方が必要になります。
- ●マラロン配合錠R
- ● メファキン錠275R
前述した予防法とプラスして感染を防ぎましょう。
マラリア予防薬は、医師の処方が必要となり、医療保険適用外です。
まとめ
マラリアは、現在も中南米などで流行しており国内における輸入感染の報告もあります。
前もって感染を防ぐ薬があるため、予防ができる感染症です。
また伝染から発症までの期間がマラリアの種類によって違うため、発症したと疑われた場合は相談機関へ速やかに連絡し医療機関への受診が必須になります。
マラリア予防薬についてはこちら
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師