脳腫瘍とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/31

脳腫瘍とは?原因、症状、治療法について解説

脳腫瘍とは

脳腫瘍とは、脳内に異常な細胞増殖が発生し頭蓋骨内に出現する腫瘍の総称です。種類は100種類以上と多く、発生部位や細胞の種類の違い、小児と成人によっても性質が異なります。日本における脳腫瘍の発症率は、成人は人口10万人当たり約12人、小児は10万人に1人と推定されています。成人では、このうちの半数が悪性、小児では、75%が悪性と言われています。脳や神経系に影響を及ぼす為、日常生活に大きなダメージを与えます。また、命を落とすこともあります。


 
 

脳腫瘍の原因

成人と小児では腫瘍の発生場所や腫瘍の種類が異なります。成人と比べ小児性脳腫瘍は稀で、乳幼児期から思春期にかけて発生します。成人性腫瘍は中年以降に発生するとされています。成人性脳腫瘍は大きく分けて2つあります。1つ目は、脳が起源の原発性腫瘍、2つ目が転移性の腫瘍(肺がん、乳がん等から脳へ)です。原発性腫瘍の原因ははっきりしていませんが、遺伝的な要因(遺伝子異常)や環境的な要因(放射線・科学物質・タバコ・食品添加物等)、免疫異常(免疫の過剰反応・免疫低下)、年齢・肥満・ストレス等が脳に影響を与え腫瘍発生に関与しているのではないかと言われています。
 
小児性脳腫瘍も原因は明確にされていませんが、成人性と同様に遺伝的要因(染色体異常・家族性等)、環境的な要因(放射線や有害物質・妊娠中の薬剤服用)、免疫異常、年齢(若いほど発生率高い)等が関与しているのではないかと言われています。

  

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脳腫瘍の症状

小児の腫瘍は、脳幹や後頭葉、視床下部等の部位に発生することが多く、成人では前頭葉、側頭葉等の大脳皮質に発生することが多いです。
腫瘍の大きさ、位置や場所によって脳に与える影響や症状は異なっていきます。
 
最も多い症状は頭痛です。腫瘍が脳内に圧力をかけていることが原因です。それに伴って、吐き気や嘔吐を引き起こすこともあります。また、知覚や感覚の変化(例えば、言語を司る場所に発生=言語障害)、麻痺、認知機能障害(思考力・記憶力低下)、性格や行動の変化も症状の1つです。

 
 

脳腫瘍の検査方法

脳腫瘍が小さい場合や症状が軽微な時は発見に時間を要す可能性はありますが、一般的に初期症状(頭痛、めまい、嘔吐、視力変化、言語障害等)が現れた時点で検査可能です。早期検査が大事です。検査方法はいくつかあり、成人と小児では検査方法が少し異なるものがあります。
 
神経学的検査は目・耳・手足の感覚や運動機能を確認し、神経障害の程度や範囲がわかります。脳の機能を評価している検査です。
画像検査にはMRI(磁気共鳴画像)やCT(X線コンピューター断層撮影)等があります。腫瘍の大きさ・位置・形状・周囲脳組織との関係が詳しくわかります。また、造影剤を用いる事で腫瘤内の血流状況も確認出来ます。小児は長時間静止が難しいため麻酔や鎮静剤を使用して画像検査を行う事があります。
 
生検は、画像検査では分からない腫瘍の性質や種類を確定するために行います。局部麻酔を行い、取り出した腫瘍の一部を顕微鏡で細胞学的・組織学的に評価を行う検査です。
脳脊髄液検査は脳脊髄液に脳腫瘍が転移している可能性がある場合に行います。脳脊髄液を採取し、脳脊髄液内のがん細胞の有無を細胞学的・化学的検査を用いて確認します。この他に小児は、脳波検査やPET検査を行う事も多いです。

 
 

脳腫瘍の潜伏期間

脳腫瘍の種類や原因によって異なります。一部腫瘍の潜伏期間を紹介しますが、潜伏期間は正確に予想することは難しく個人差もあります。
成人では、非腫瘍性脳腫大症:数年~十数年、良性腫瘍(脳膜腫、脊髄腫等):数年から十数年、悪性腫瘍(グリオーマ等):数ヶ月~数年です。
 
小児では、髄芽腫:数ヶ月~数年、小脳母細胞腫:数ヶ月~数年、脳幹腫瘍:数ヶ月~数年です。脳腫瘍は早期発見、早期治療が大事なので何か異変を感じたらすぐに医師に相談してください。

 
 

脳腫瘍の治療方法

小児も成人も腫瘍の種類、大きさ、位置、患者さんの年齢や健康状態によって治療方法は異なります。
 
手術は腫瘍の種類、大きさ、位置に応じて行われます。腫瘍を取り除き、症状の改善や、再発リスクの低下等の効果がみられます。小児は手術で完全に腫瘍を取り除けることが多く、成人は一部残存の可能性が高いと言われています。放射線治療は術後に残っている腫瘍の縮小や手術で取り除けない腫瘍に対して行います。高エネルギーの放射線で腫瘍細胞を破壊します。
 
化学療法は放射線療法との併用や放射線療法が難しい方に行います。抗がん剤を使用して腫瘍細胞を破壊します。小児では副作用を考慮し低用量の抗がん剤を使用することが多く、成人の場合では、高用量の抗がん剤を使用することがあります。
 
対症療法は、脳腫瘍によって引き起こされる症状を軽減するために行います。例えば、てんかん発作を起こす方に対して抗てんかん薬を使用し抑制する等。治療法に伴って副作用管理やフォローアップも大事になっていきます。
 
小児では、成長になるべく影響を与える副作用がないように治療計画立て、治療後も成長や発達に影響を与えていないか定期的なフォローアップを行います。
成人の副作用管理は生活の質を維持しながら治療を行い、治療後は再発に踏まえ長期的なフォローアップを行います。

 
 

脳腫瘍の予防方法

脳腫瘍の予防法ははっきり解明されていませんが、リスクを軽減できる可能性はあります。
健康的な生活習慣、適度な運動、禁煙(小児も煙吸ったりするとリスク高くなる)、」紫外線からの保護、定期的な健康診断(家族に過去脳腫瘍の方がいた場合はかなり大事)などが予防に関係する可能性があります。

 
 

まとめ

脳腫瘍は異常細胞が脳に蓄積して腫瘍を発生させる病気です。脳腫瘍には転移性のものや脳由来のものがあります。
脳由来のものは悪性、良性の二種類に分類されます。小児では発症率は成人より低いですが、腫瘍の75%が悪性と推察されています。症状には、頭痛、吐き気、嘔吐、痙攣、バランス障害、視力障害等があります。腫瘍が発生する部位や位置で症状も変わってきます。潜伏期間は腫瘍によって様々です。診断には、MRI、CT等の画像検査や神経学的検査、脳波等が行われます。
 
治療法は、手術や放射線療法、化学療法等があります。小児や成人でも影響について考慮する事が違うので年齢やその時の健康状態、副作用についてなど、その人に合わせた治療法を医師は考え慎重に治療計画を立てていきます。脳腫瘍の予防策や原因は明確にまだ分かっていませんが、健康的な生活習慣や適切な栄養摂取、小児の前では禁煙等が重要です。脳腫瘍は遺伝性の可能性もあるので、家族に該当者がいる場合は定期的な健康診断がとても大事です。
 
早期発見、早期治療がとても重要なので、少しでも異変を感じたらすぐにお医者さんに相談しましょう。腫瘍が小さい場合や症状が軽微な時は発見に時間がかかる可能性がありますが、一度の検査で終わらせずに、定期的な検査を必ず行ないましょう。

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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