前立腺肥大症とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/06/29

前立腺肥大症とは?原因、症状、治療法について解説

前立腺とは

前立腺は膀胱の下にあり、なかを尿道が通っています。栗の実ほどの大きさで、その重さは数グラムほどのものです。前立腺の機能などについては、まだ解明されていない部分もありますが、精液の構成成分となる前立腺液の分泌がおもな働き。さらに精子に栄養を与える、精子の運動能力を高めるといった働きや、射精における収縮、尿の排泄などの役割も担っています。

前立腺肥大症になりやすい人

前立腺肥大症の頻度は、年齢とともに多くなり、50歳から頻度が増加します。組織学的な前立腺肥大は、30歳代から始まり、50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%に見られますが、そのすべての方が治療を必要とする症状を伴うわけではありません。前立腺の肥大と排尿症状を伴い、治療を必要とする、いわゆる前立腺肥大症の頻度は、その1/4程度と言われています。
肥満、高血圧、高血糖および脂質異常症と前立腺肥大症の関係が指摘されており、メタボリック症候群との関係についても、検討されています。野菜、穀物、大豆などに多く含まれるイソフラボノイドは前立腺肥大症の発症抑制効果があることが指摘されていますが、喫煙やアルコール、性生活との関係は明らかではありません。

  

前立腺肥大症の症状は

排尿症状

排尿困難とは、尿が出にくい症状の総称ですが、「尿の勢いが弱い」、「尿が出始めるまでに時間がかかる(尿を出したくでもなかなか出ない)」、「尿が分かれる(尿線が分かれて出る)」、「排尿の途中で尿が途切れる」、「尿をするときに力まなければならない」などの症状があります。

  

蓄尿症状

頻尿については、一日に何回以上という定義はありませんが、昼間(朝起きてから就寝まで)については概ね8回より多い場合、夜間は就寝後1回以上排尿のために起きる場合、それぞれ「昼間頻尿」、「夜間頻尿」と考えられます。「尿意切迫感」は、急に我慢できないような強い尿意が起こる症状を言います。また、尿意切迫感があって、トイレまで間に合わずに尿が漏れてしまうような症状を、「切迫性尿失禁」と言います。尿意切迫感があり、頻尿を伴うものを過活動膀胱といいますが、前立腺肥大症の患者さんの50〜70%が過活動膀胱を合併します。過活動膀胱では、まだ膀胱に十分尿が貯まっていないのに、膀胱が勝手に収縮してしまうので、すぐに排尿したくなってトイレに行く、つまり頻尿になります。

  

排尿後症状

「残尿感」とは、排尿後に「どうもすっきりしない」、「尿が残っているような感じがする」といった感じのことです。また、尿が終わったと思って、下着をつけると尿がたらたらっともれて下着が汚れることがありますが、これを「排尿後尿滴下」と言います。

  

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前立腺肥大症の原因は

前立腺が肥大する原因はまだはっきりとは解明されていません。しかし、「男性ホルモンの働き」が関与していることは間違いなく、中高年になって男性ホルモンを含む性ホルモン環境の変化が起こることにより、前立腺が肥大すると考えられています。

  

前立腺肥大症の検査方法と診断

超音波(エコー)検査

腹部に超音波をあてて前立腺や膀胱の形、大きさ、残尿量を測定し、腫瘍や結石の有無を調べることができます。低侵襲で簡単に出来る検査です。


  

血液検査

前立腺の病気には、前立腺肥大の他に「前立腺癌」があります。血液中の前立腺特異抗原(PSA)を測定することで、早期に癌を発見することができます。


  

直腸内指診(直腸診)

肛門から指を入れて直腸越しの前立腺を触診し、前立腺の大きさや硬さを診断します。排尿障害の原因が、前立腺肥大によるものか、前立腺炎や前立腺癌などによるものかの判定を行います。

  

尿流量測定

機械を使って、おしっこの勢いや出ている時間を調べます。

  

X線検査

尿道から造影剤を注入し、膀胱や尿道の様子を撮影します。

  

前立腺肥大症の治療方法

薬物治療

前立腺肥大が尿の通過障害を引き起こす理由として、2つのメカニズムが考えられます。ひとつは、前立腺の平滑筋に対する交感神経の緊張が亢進して、前立腺(平滑筋)が収縮して、尿道を圧迫することによります。もうひとつは、前立腺の収縮とは関係なく、大きくなった前立腺が物理的に尿道を圧迫して、通りを悪くすることによります。こういったことから、大きく分けて2種類の薬剤が広く用いられます。
ひとつは、前立腺平滑筋を弛緩し(緩め)尿道の圧迫を解除して、尿を通りやすくする薬剤です。もうひとつは、前立腺を小さくして、前立腺肥大による尿道の物理的な圧迫を軽減する薬剤です。前立腺の肥大には男性ホルモンが関与していますが、この男性ホルモンの前立腺に対する作用を抑えることにより、前立腺は縮小します。

  

手術治療

薬物治療を行っても、症状の十分な改善が見られない場合や、肉眼的血尿、尿路感染、尿閉などを繰り返す場合や膀胱に結石ができたり、腎機能障害が発生した場合には手術による治療が行われます。重さが100gを超えるような巨大な前立腺肥大の場合は、開腹手術によって肥大した前立腺を摘出することがありますが、通常は、尿道から内視鏡を挿入し手術が行われます。最近では、レーザーを用いた、新しい内視鏡手術も行われております。

経尿道的前立腺切除術(TUR-P: Transurethral Resection of Prostate)

尿道から内視鏡を挿入し、内視鏡の先端に装着した切除ループに電流を流すことで、肥大した前立腺を尿道側から切除する方法です。前立腺切除は、少しずつ切除して、肥大した前立腺(内腺)を完全にくり抜くように切除します。こちらは前立腺肥大症に対する治療法で広く行われている方法です。

ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP: Holmiumu Laser Enucleation of Prostate)

尿道から内視鏡を挿入し、レーザーを照射しながら、肥大した前立腺と外腺の間を剥離し、内腺の部分を塊としてくり抜きます。くり抜いたものは、膀胱の中で細かく砕き、吸引して取り出します。こちらの手術は最近、広まりつつある手術方法であり、大きい前立腺肥大に対しても少ない出血で行うことができます。

光選択的レーザー前立腺蒸散術(PVP: photoselective vaporization of the Prostate by KTP laser)

尿道から挿入した内視鏡下に高出力のレーザーを照射して、肥大した内腺を蒸発させながら、切除する方法です。出血量が非常に少なく、大きくなった前立腺肥大にも行うことができ、術後の尿道へのカテーテル留置期間も短いというメリットがあります。

経尿道的マイクロ波高温度治療術(TUMT:Transurethral Microwave Thermotherapy)

手術治療の中でも低侵襲治療であり、尿道から挿入したカテーテルからマイクロ波を発射し、前立腺の組織を熱によって壊死させることにより前立腺を縮小させます。標準的手術方法であるTURPと同程度の治療効果があると言われていますが、再手術率を行う可能性が高いという報告もあります。

尿道ステント(urethral stent)

前立腺により圧迫された尿道にステントという筒状のものを留置する方法で、内視鏡で実施します。低侵襲であり、安全性も高いですが、合併症も多く、寝たきりや、全身状態が不良、手術が困難な場合のみに限られ行われます。

  

まとめ

現在、前立腺肥大症の原因ははっきりと解明されていませんが、男性ホルモンが減少していく50歳以降に、前立腺が肥大する人が多くなることから、加齢による性ホルモンのバランスが崩れることが関与しているとも考えられています。したがって、加齢を止める以外に根本的な予防法はありません。
ですが、食生活の欧米化が進んだ高度経済成長期以降、急激に前立腺肥大症の患者数が増えていることから、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった点が前立腺肥大症との関係があるとされています。そのため、食生活を意識することは、前立腺肥大症の予防につながると思われます。メタボリック症候群と同様に、食事では過剰摂取を控え、バランスのよい食生活を心がけましょう。具体的には、動物性食品である肉類や乳製品の過剰摂取を控え、魚や植物性食品をメインとした食事で、洋食中心の食生活から、和食中心の食生活にすることをおすすめします。なお、野菜、穀物、大豆などに多く含まれているイソフラボノイドは、前立腺肥大症の発症抑制効果があると報告されていますので、正しい知識で早期発見につなげましょう。

 

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MYメディカルクリニック顧問 北村 唯一医師

監修:MYメディカルクリニック 顧問

北村 唯一 Dr. Sasakura Wataru

略歴

  • 1973年 東京大学医学部医学科 卒業
  • 1998年 東京大学医学部附属病院泌尿器科 教授
  • 2006年 財団法人 性の健康医学財団 理事
  • 2008年 東京大学 名誉教授
  • 2008年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 院長
  • 2011年 財団法人 性の健康医学財団 理事長
  • 2013年 社会福祉法人あそか会 あそか病院 名誉院長
  • 2014年 自靖会親水クリニック 院長
  • 2014年 光靖会北村記念クリニック 名誉院長
  • 2018年 医療法人社団裕志会 理事長
  • 2022年 医療法人社団MYメディカル 顧問

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