喘息とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/06/28

喘息とは?原因、症状、治療法について解説

喘息とは

喘息は、気道の慢性炎症を基本的な病態とし、臨床症状として変動性*を持った気道狭窄に伴う喘鳴(呼気時に聞こえるゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)、呼吸困難(とくに呼出時に強く胸苦しさから動けないあるいは喋れない状態まで種々の強さで、発作とも表現される)や咳で特徴付けられる疾患で、時には死に至ることもある病気です。

疾患としての歴史は古く、紀元前4世紀のヒポクラテスの時代までさか上り、我が国では平安町時代や室町時代の文学書に喘息という言葉が出てくると言われています。喘息の病態に気道の狭窄と種々の刺激に対する気道の過敏性があることは以前から認識されていましたが、その背景に慢性の炎症があることが明らかになったのは50年くらい前で、その結果、診断や治療が進歩して、喘息死の減少を含む予後が大幅に改善しています。
 
小児から高齢者まで発症する可能性がありますが、小児では乳児期発症、成人ではとくに中高年発症が多い傾向にあります。これまでの疫学調査では小児で11〜14%、成人(15歳以上)で6〜10%が有症率(調査日以前の1年間に喘鳴や呼吸困難感などの症状があるものの調査対象全体に対する比率)として報告されています。
*変動性とは無症状で正常な状態と症状の出現した状態とが時間を変えて現れる状態


喘息の症状は

軽症なものから適切な処置が行われないと命に関わるような非常に重いものまで様々です。
発作的に咳や痰が出て、ゼーゼーやヒューヒューという音を伴い息苦しくなります(喘息発作)。特に夜間や早朝に出やすくなるのが特徴です。
重症例では気道が狭くなり、気道に喀痰が詰まるため十分な酸素を取り込むことができず、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色に変化した状態)や意識障害が起きることもあります。

 

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喘息の原因は

一般にはアレルギーの原因が特定できるアトピー型と、それ以外の非アトピー型の2つに分けられています。アトピー型はほとんどが5歳未満に発症すると考えられており、成人でも若年者に多いとされています。成人発症喘息では小児期発症喘息に比べて非アトピー型が増加します。

以下のような原因が挙げられます。

・アレルギー

チリダニやハウスダスト、ペットのフケ、カビなどの特定のアレルゲン吸入によるアレルギー反応の症状として、気管支喘息を発症することがあります。

  

・気道の刺激

刺激性のガスや粉塵などアレルゲンではない物質を吸入することでも、気道が過剰に刺激されて交感神経が緊張し気道の収縮が起こることがあります。例として線香の煙が挙げられます。

  

・薬物

アスピリンを代表とする酸性の消炎鎮痛薬が原因となるアスピリン喘息のほかに、高血圧の治療などに使用されるβ遮断薬、ヨード造影剤、アルコールなどが発作の誘因となることもあります。アスピリン以外の例えばロキソニンやボルタレンなどでも起こすことに注意が必要です。さらに添加物の色素や防腐剤も誘因となる場合もあります。

  

・遺伝的要素

アトピー性素因、気道の粘膜がさまざまな刺激に対して敏感に反応しやすいこと(気道過敏性)など、いくつかの遺伝的素因が重なって発症すると考えられています。

  

  

検査方法

主に以下のような検査を行います。

・血液検査

気道の炎症やアレルギー反応の程度を評価できます。喘息では多くの場合気道がアレルギーによる炎症を起こして白血球のなかの好酸球という赤い顆粒を持つ細胞が増加します。また、アレルギーを原因とする喘息では、総IgE抗体の増加と特定のアレルゲンに対して反応する特異的IgE抗体が検出されます。これらの値を検査することで、アレルギーになりやすい体質(アトピー素因)や原因となるアレルゲンを調べることができます。

  

・呼吸機能検査

息を吸ったり吐いたりする検査です。肺活量や1秒間に吐き出せる息の量(1秒量)を測定します。気道が狭くなっている状態かどうかの評価には1秒率(努力性に呼出して得られた肺活量に対する1秒量の比率)を用います。喘息は状態が変動するので正常な検査結果でも喘息は否定されません。いずれにしても、常に1秒率が70%未満を示すCOPDとの鑑別や喘息の状態の良否の評価ができます。

  

・呼気ガス検査

呼気中の一酸化窒素に着目した検査です。喘息は気道に慢性的な炎症が生じている状態で、その炎症を起こしている気道からは一酸化窒素が産生されています。吐いた息の中に含まれる一酸化窒素の量を調べることにより、気道の炎症の程度を評価する検査です。

  

・画像検査

胸部X線検査やCT検査を行います。呼吸困難や咳の原因となるような、器質的な肺疾患や心疾患の有無を調べることが目的です。また通常の投薬では治療が困難な喘息(難治性喘息と呼びます)を伴う呼吸器疾患の診断にも役立ちます。

  

・喀痰検査

痰を顕微鏡で調べる検査です。喘息では痰に含まれる好酸球が増加していて、喘息に特異的な物質が観察されます。喀痰検査は、結核などの除外をするうえでも重要な検査です。

  

喘息の治療方法

長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)の2つがあります。
長期管理薬は、喘息の基本病態である気道の炎症を抑え、喘息症状のない状態で毎日が過ごせる状態を維持するための治療薬です。炎症の抑制には副腎皮質ステロイドの吸入薬(ICS)が使用されます。それに併用する薬剤として長時間作用性のβ刺激薬(LABA)、長時間作用性の抗コリン薬(LAMA)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤などが併用されます。現時点ではICSとLABAの配合剤が汎用され、そこにLAMAを組み合わせたトリプル製剤も出現しています。発作治療薬は発作を含めた症状が出現した時に用いる即効性のある薬剤で気管支拡張薬の吸入が一般的です。

比較的新しいものではICSとLABAの配合剤でLABAが即効性で製剤もリリーバーとしての役割を果たしています。発作が強いため苦しくて横になれないときには、とくに担当医から指示を受けておらずその場合の投薬も受けていない場合には医療機関を受診することを強く勧めます。
通常の治療で喘息がコントロールできない場合には最近では生物製剤として分類さている注射製剤が複数あり、専門家の判断で治療が開始されます。当クリニックでも専門医による対応を行っています。

  

喘息の予防方法

喫煙していれば禁煙するようにしましょう。
喫煙は喘息を発症させる大きな要因で、症状を悪化させ発作を誘発します。喫煙者は非喫煙者に比べて咳・痰・喘鳴・息切れなどの症状が多く見られます。また、非喫煙者への影響は大きく、小児期や学童期はもちろん、母親の胎内にいる期間の受動喫煙はさらに喘息の発症リスクを高めるとされています。大人の場合でも、職場や公共の場所などでわずかな受動喫煙にさらされたことが引き金となり発作が起こる場合があります。

また、アレルギーの原因が分かっている場合にはそれらを避けることが効果的です。
室内飼育動物がアレルゲンとなるものは主にイヌ、ネコ、ハムスターなどです。特にネコに感作されている方が多くみられます。室内では絶対に飼わないこと、週に1~2回は洗うこと、できれば手放すこと、などに注意が必要です。

  

まとめ

喘息は子どもから大人まで幅広い年齢層の方に発症します。
アレルゲンや喫煙などの原因物質を避けることによって、喘息の発症・増悪を防ぐことができます。喘息を放置すると日常生活に支障をきたし、症状も悪化してしまう可能性があります。症状がある場合は速やかに病院を受診するようにしましょう。また、薬によって症状がおさまってくると治ったかのように思われますが、気道の炎症は続いています。炎症が続くと気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため、治療によって症状をおさえることが難しくなります。症状が治まっていてもしっかり治療を継続し、日頃から発作が起きないような状態にコントロールしていくことが大切です。

 

追記

また喘息には下記のようなものもございます。
 

・咳喘息

近年、咳のみが主症状である喘息が多くみられます 。咳は出ていても呼吸機能が正常で、呼吸困難も喘鳴もない軽い喘息と言えます。しかし、咳喘息の方が気管支喘息になってしまう場合やその逆が起こる場合もあります。
治療方法は喘息と同様で、気管支拡張薬やステロイドを使用します。

  

・ACO(喘息とCOPDのオーバーラップ)

慢性の気流閉塞を示し、喘息とCOPDのそれぞれの特徴をあわせもつ疾患のことをいいます。喘息患者にCOPDが合併するタイプとCOPD患者に喘息が合併するタイプがあります。前者では喘息による気道のリモデリングが固定性気流閉塞の原因となり、喘息と喫煙との相互作用でACOが形成され、後者では妊婦中の母の喫煙など小児期の肺の成長障害が成人期のCOPDやACOの原因となることが知られています。
治療方法は、喘息とCOPDの両方に対して行うことが基本となります。

 

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MYメディカルクリニック 顧問 大田健

監修:MYメディカルクリニック 顧問

大田 健 Dr. Sasakura Wataru

略歴

  • 1975年 東京大学医学部医学科卒業
  • 1992年 帝京大学医学部第二内科学教室 助教授
  • 1997年 帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学 教授
  • 2012年 独立行政法人国立病院機構東京病院 院長
  • 2018年 公益社団法人結核予防会 複十字病院 院長

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