子宮内膜症とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/05/23

子宮内膜症とは?原因、症状、治療法について解説

子宮内膜症とは

子宮内膜またはそれに似た組織が、何らかの原因で本来あるべき子宮の内側以外の場所(腹膜・卵巣・卵管・腸・肺など)で発生し、痛みや不妊の原因となる疾患です。
子宮内膜とは子宮内膜を覆う組織で、妊娠の準備をするために、女性ホルモンの働きを受けて分厚くなり、妊娠しなかった場合は剥がれ落ちて血液と共に体の外に出ます(月経)。子宮内膜症は、子宮以外の場所で子宮内膜やそれに似た組織が発生し、女性ホルモンの影響を受けて月経周期に合わせて増殖したり出血をしますが、その血液を外に出すことができないため、たまった血液が周囲の組織と癒着や炎症を引き起こし、痛みや不妊症の原因になったりします。
20〜30代で発症することが多く、そのピークは30〜34歳にあるといわれています。好発部位は卵巣、腹膜(ダグラス窩・膀胱子宮窩)、仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支える靭帯)、卵管や膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)などです。稀ではありますが、肺や腸にできることもあります。卵巣にできたものを「卵巣チョコレート嚢胞」といいます。


 

子宮内膜症の症状って?

子宮内膜症の主な症状は痛みと不妊です。痛みの中でも月経痛は子宮内膜症の患者さんの約9割にみられます。月経痛は、月経を繰り返すたびに強くなることが特徴で、子宮内膜症は子宮収縮が強くなる傾向があるため痛みの原因となります。出血による腹膜への刺激により痛みが出ることもあります。
月経時以外にも、癒着した臓器同士や臓器と腹膜が癒着することで、引っ張られたり炎症が起こったりすることで腰痛や下腹痛、排便痛や性交痛などがみられます。こうした症状は20〜30歳代の女性に多く、加齢による女性ホルモン分泌の減少とともに収まります。また、内膜症患者さんの約30〜50%に不妊があると考えられています。卵巣や卵管の近くでの癒着や、卵巣チョコレート嚢胞により卵巣や卵管の機能が低下して卵子の発育や排卵、卵管での移動が妨げられ妊娠しにくくなることがあります。炎症による影響で卵子や受精卵、精子などに悪影響を受け不妊につながることもあります。妊娠中はエストロゲン分泌量が増加しますが、黄体ホルモン分泌量も増加して子宮内膜組織の増殖を抑制するため、妊娠・分娩回数が多いほど発症リスクは低下します。閉経後は症状が落ち着くことが大半ですが、卵巣チョコレート嚢胞はまれに卵巣がんになることがあります。年齢が高かったり嚢胞が大きかったりすると発症率が上がるので、定期的な通院が必要となります。

 

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検査方法と検査ができる時期/潜伏期間

問診

エストロゲンの分泌量や月経出血量の増加により内膜症の発生リスクは上昇します。そのため、早い初経・月経周期の短縮・過長・過多月経がリスク因子となるので問診で確認します。
また、月経痛の有無、慢性骨盤痛、性交通、排便痛などの症状や不妊の状況なども確認していきます。
 
問診の風景

内診・直腸診

子宮内膜症の進行によりダグラス窩腹膜や子宮広間膜に病変が広がると、骨盤内の他臓器と癒着していくため、子宮の可動性が悪くなります。そのため、内診や直腸診により子宮後屈や子宮の可動性の制限の有無を確認します。ダグラス窩に硬結を触れ、痛みを伴うこともあるので、硬さや痛みの有無も確認します。
 

超音波検査(経腟・経直腸・経腹)

子宮や卵巣癒着の状況を確認します。直腸と子宮の間が癒着して子宮後屈意位になると、ダグラス窩に血性成分が貯留することがあります。卵巣が腫れており、血液がたまっている場合チョコレート嚢胞の可能性があります。
 
経膣超音波

MRI

経腟超音波より内部の詳しい状況がわかります。卵巣が腫れていた場合、内容物が血液なのか、水なのか、脂肪成分なのか等中身が何かを確認できます。当院では設備がないため、画像検査ができる施設で検査をしてきていただくか、設備のある病院へ紹介させていただきます。
 

血液検査

腫瘍マーカー検査に用いられるCA-125が上昇することがあるので採血で調べます。ただし、初期段階や軽症例では正常範囲になることもあり、肺がんやすい臓がんなどで高値になったり、ホルモンの影響を受けたりするので、様々な条件を考慮して評価する必要があります。
 
採血

腹腔鏡検査

内膜症のほとんどは内診、経腟超音波検査、採血検査で診断がつきます。確定診断は腹腔鏡検査(基本的には全身麻酔下でお臍の下から内視鏡を入れて骨盤内の観察や内膜症の部分を切り取る検査)をします。赤色病変、黒色病変、白色病変などを認めることがあります。侵襲のある検査となるため、総合的に判断して必要な場合実施となります。


 

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子宮内膜症の症状とは

薬物療法

■痛みに対する対症療法

痛みに対しては、痛みの原因となる物質の分泌を抑制させ、痛みを軽減する鎮痛剤を使用します。また、症状に応じた漢方薬を内服する方法もあります。
 

■ホルモン療法

対症療法で効果が得られない時や子宮内膜症の進行を抑制したい時、手術の再発予防にホルモン療法を行います。子宮内膜症に対するホルモン療法は、エストロゲン作用を抑制して病変の増殖を抑えるものになります。
子宮内膜の変化は次のようにして起こります。脳の視床下部から放出される性腺刺激ホルモン放出ホルモン/ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の刺激により脳下垂体から黄体ホルモン(LH)と卵巣刺激ホルモン(FSH)が放出され、その作用により卵巣で卵胞が発育して排卵がおこりエストラジオール(卵胞ホルモン作用をもつ物質)が分泌されます。エストラジオールにより子宮内膜が増殖していきます。
 
ホルモン療法の第一選択として低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピル)とプロゲスチン製剤(ジェノゲスト)があります。低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピル)の作用は、内服により外からエストロゲン(E)・プロゲスチン(P)を取り入れることで性腺刺激ホルモン放出ホルモン/ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌を抑え黄体ホルモン(LH)と卵巣刺激ホルモン(FSH)が減少することで卵胞が発育せず排卵を抑制します。そのため自身のエストラジオールの分泌が減少するというものです。プロゲスチン(P)は子宮内膜の増殖を抑制します。月経量を減少させることで効果が得られます。副作用としては血栓症、吐き気・嘔吐などの消化器症状、頭痛、乳房痛などがあります。長期投与には適しており低エストロゲン症状(更年期様症状)は少なく不正性器出血は起きにくいとされています。
プロゲスチン(ジェノゲスト)の作用は子宮内膜組織に対して強い黄体ホルモン作用を示し、子宮内膜の増殖を抑制します。通常月経は止まり、月経痛や子宮内膜症の進行を抑制します。中枢に対して卵巣発育・排卵抑制作用も有しますが、ある程度の卵巣刺激ホルモン(FSH)分泌、エストラジオール分泌は保たれます。長期投与には適しており、低エストロゲン症状は中等度、不正性器出血は多いとされています。12時間おきに内服することで不正出血は減らすことができます。
 
第二選択として、手術前や閉経が近い方はGnRHアゴニスト・アンタゴニストによる偽閉経療法や、男性ホルモンに近いホルモン剤であるダナゾールでの治療があります。エストロゲンの分泌が減少し閉経に近いホルモン状態にして、子宮内膜の増殖を抑えます。副作用としては更年期障害の症状や骨量の低下があります。不正性器出血は少ないですが長期投与には不適応とされています。ダナゾールは黄体ホルモン作用を有するテストステロン誘導体です。子宮内膜組織への直接作用により増殖抑制、エストロゲン分泌抑制作用により治療効果を発揮します。副作用としては、男性化作用によりにきび、声のかすれ、肝機能障害があります。
 

■手術

卵巣チョコレート嚢胞などの病巣部がはっきりしている場合は、手術が適応になる場合があります。また卵巣チョコレート嚢胞の癌化が疑われる場合は手術の適応になります。妊娠を望んでいる場合は、病巣部のみを切除して子宮や卵巣の正常部分を残す保存手術を選択します。妊娠を望まない場合には、病巣のみの摘出に加えて、子宮、卵巣および卵管などを摘出する根治手術や卵巣の一部、または全部を残し、子宮や卵管などを摘出す卵巣機能温存手術を行うこともあります。

 

まとめ

子宮内膜症は、どの治療法を選択しても再発する頻度が高い病気で長期にわたる治療や経過観察が必要です。強い痛みや不妊、長年の歳月を経て卵巣チョコレート嚢胞は癌化することもあるので、早期発見・早期治療が大切です。子宮内膜症になると月経痛・腰痛・慢性骨盤痛・性交痛・排便痛・排尿時痛などの何らかの痛みを訴えることが多くなります。動けないほど痛い、薬を飲んでも効かない、痛みがどんどん増悪しているといったような症状があったら、我慢しないで是非婦人科を受診してください。

 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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