関節リウマチとは?原因、症状、治療法について解説
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関節リウマチとは?原因、症状、治療法について解説
関節リウマチって何?
関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis)とは、免疫の働きに異常が生じるため起こると考えられております。
通常、免疫は体内に異物が入ってきた際に攻撃して破壊し、排除する役割を担っています。
異常が生じると、誤って自分自身の組織や細胞を攻撃し、それにより炎症が起こり、関節の腫れや痛みとなって現れます。
関節の炎症が進行してしまうと、軟骨・靱帯・骨の破壊まで起こし関節機能の低下、ADL(activity of daily living:日常労作)の障害やQOL(quality of life:生活の質)の低下に繋がります。関節破壊(骨のびらん)は発症6か月以内に出現することが多く、特に最初の1年間の進行が最も顕著です。
関節リウマチでは関節の症状だけではなく、熱が出たり、体重が減ったり、倦怠感があったりなどの全身症状や骨粗鬆症、目が乾く、肺炎、胃腸の調子が悪くなるなど様々な合併症が起こることもあります。
ですが、これらの症状は関節リウマチに伴うものと治療薬の副作用によるものなど様々です。発症早期から適切な治療を行わなければ関節及び生命の予後を改善することはできません。そのため、早期診断・早期治療がとても重要です。もし発症してからかなりの期間が経過していても、適正な治療を行うことで症状を抑えることが期待できます。
発症としては女性が男性の約4倍多く、年齢としては40〜60代での発症が多いです。
最近では高齢者で発症する方も増えてきているそうです。
ちなみに、「リウマチ熱」という病気もありますが、これは溶連菌という細菌によっておこる病気で、関節リウマチとは異なります。
関節リウマチの原因って?
背景としては、遺伝的要因や環境的要因(喫煙・歯周病など)の関与が指摘されています。
発症には関節包(二重構造[外層:繊維膜、内層:滑膜]のコラーゲンでできた関節の保護膜)の滑膜部における自己免疫が関与しています。免疫異常が起こった滑膜部では、血管を通し全身からリンパ球・マクロファージなどの炎症細胞が集まってきます。
これらの細胞により、炎症を促進する様々な物質(炎症性サイトカイン)が分泌され、滑膜に炎症が起こり、関節の主張や変形に繋がります。この時に分泌される炎症性サイトカインについては、TNFα(ティーエヌエフアルファ)、IL-6(インターロイキンシックス)などいくつかの物質があることが明らかになっています。とはいえ、「どのような自己免疫の異常が」「なぜ起こるのか」などの詳しいメカニズムは原因不明です。
関節リウマチの患者さんは HLA-DR4(遺伝子第6染色体の短腕にある組織適合性抗原の中の1つ) という遺伝子型を持った人の割合が高いことが明らかになっています。
しかし、この遺伝子型は健康な人でも4割程度の方が持っています。また、この遺伝子型を持っていなくても発症する方も少なくありません。そのためHLA-DR4は、関節リウマチを発症しやすくする多くの要因の中の1つにすぎません。最近のゲノム研究を通して疾患感受性遺伝子の同定が行われています。
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関節リウマチの症状って?
〈全身症状〉
リウマチには活発に悪さをする時期(活動期)とそうでない時があります。活動期では、身体のいたる所に症状が出やすくなります。症状としては、微熱・体重減少・食欲低下・貧血・リンパ節の腫脹・口や目の渇き(シェーグレン症候群)・息切れ・倦怠感などが出ることがあります。
〈関節に起こる症状〉
◇朝のこわばり
リウマチの特徴的な症状です。
朝に身体や関節のこわばりが強く現れます。
◇関節炎(かんせつえん)
熱っぽくなって腫れ、動かすと痛みが強くなります。赤く腫れることは稀です。
部位としては、手首や手の指の付け根、第二関節、足の指の付け根などの小さな関節から、肩、肘、膝、股関節、足首など大きな関節に起きることもあります。 症状が左右対称に出たり、あちこち移動するのが特徴です。
◇関節水腫(かんせつすいしゅ)
関節が炎症を起こすと、関節の中にある液(関節液)が必要以上に増えてしまいます。
この状態を関節水腫といいます。これが膝に起こると、膝の皿の周りが腫れたり、膝の裏が袋状にふくらみます。
◇腱鞘炎(けんしょうえん)
腱鞘炎とは、骨と筋肉を繋いでいる[ 腱 ]と腱を包む[ 腱鞘 ]と呼ばれる組織に摩擦が生じることによって炎症が生じる病気のことです。これにより、指などの動きが悪くなります。
◇滑液包炎(かつえきほうえん)
滑液包とは、関節の周囲にある袋状の組織で、関節の摩擦を軽減するゼリー状の滑液が入っています。ここに炎症が起こると、さらに滑液が溜まって腫れ痛みます。 滑液包炎は肘、膝の前面、足関節によく見られます。
◇関節の変形
リウマチが進行してしまうと、関節の破壊・筋肉の萎縮 などが起こり、関節の変形に繋がります。外反母趾のような形になってしまったり、手足の指が反り返って
しまったりなど独特な形状がみられます。 これを総じて、リウマチ変形と呼びます。
〈関節以外に起こる症状〉
◇リウマトイド結節
約20〜30%の患者様にみられます。
好発部位としては、肘の伸側(骨の出っ張っている側の周辺)や尺骨(前腕にある二本の骨の小指側の骨)の手首のあたりなど、外部から物理的刺激を受けやすい部位にできやすい傾向があります。一般的に痛みはありません。
◇悪性関節リウマチ
稀に血管に炎症が起こり症状が重症化する場合があり、この状態を悪性関節リウマチと呼びます。
太い血管が炎症を起こしてしまうと、心筋梗塞・間質性肺炎・腸間膜動脈血栓症などを引き起こします。手足などの細い血管が炎症を起こすと、皮膚の潰瘍や神経炎などを引き起こします。
◇肺障害
肺に障害が出ることがあります。
間質性肺炎や肺線維症が起こり、症状としては息切れや空咳などがみられます。また、肺を包む膜である胸膜が炎症を起こし水が溜まる胸膜炎を起こす場合もあります。しかし、リウマチの治療薬などでも肺障害を起こす可能性もあるので、その原因をしっかりと調べることが重要となります。
◇二次性アミロイドーシス
関節リウマチによる強い炎症が長期間継続すると、アミロイドという物質が消化管・腎臓・心臓などに沈着し、それらの臓器に障害を起こすことがあります。 消化管では吸収不良や便秘・下痢などの症状、腎臓では腎機能障害(腎不全・蛋白尿など)、心臓では心不全や不整脈が現れることがあります。
関節リウマチの検査や診断について
1: 血液検査項目
〘免疫に関する項目〙
・RF(リウマトイド因子)
・抗CCP抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体)
・MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ-3)
・免疫グロブリン
〘炎症系〙
・CRP(C反応性タンパク)
・ESR(赤血球沈降速度)
〘肺の状態〙
・KL-6(シアル化糖鎖抗原)
・SP-A(肺サーファクタントプロテインA)
・SP-D(肺サーファクタントプロテインD)
〘肝臓の状態〙
・AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ) …以前はGOTと呼ばれていた
・ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ) …以前はGPTと呼ばれていた
〘腎臓の状態〙
・カリウム
・BUN(血中尿素窒素)
・血中クレアチニン
2: 尿検査項目
・尿蛋白
・尿沈渣
3: 画像検査項目
・レントゲン(一般撮影)
・エコー(超音波)
・MRI
関節リウマチの治療は?
関節リウマチの治療は [薬物治療] [手術療法] [リハビリテーション] の3つからなります。以前までのリウマチの治療は薬で炎症や痛みを抑えたり、悪くなった関節部位を手術で取り除くくらいしか方法がありませんでした。
しかし、生物学的製剤などの薬剤の進歩により、関節リウマチと診断されてから手術が必要になるまでの期間が明らかに延びていると疫学調査からも明らかにされています。ですが、関節障害により手術が必要とされる方もまだ多くいらっしゃいます。薬剤の進歩に加え、手術療法も同様に進歩してきています。以前は10年程と言われていた人工関節(膝・股関節)の寿命も、今では20年以上と長くなってきています。
また、手術に使われる器具や手術の方法の改良等により、これまで困難とされていた関節に対しても手術が可能になってきています。
関節リウマチの予防方法は?
関節リウマチはいまだに根本的な原因が判明していないため、予防方法はありません。しかし、【 原因 】にて記載の通り、遺伝的要因と環境的要因が関与すると言われています。遺伝的要因についてですが、祖父母や父母がリウマチを患っているからといって必ず遺伝するという訳ではありません。環境的要因についてですが、喫煙・歯周病が関節リウマチの発症に関連することがわかってきたため、定期的な口腔ケアや禁煙が重要と考えられるようになりました。
まとめ
関節リウマチは原因が不明であり、さらに完治するということはありません。
ですが、骨の破壊が進む前の早い段階から治療を開始することで、半数以上の患者様が
寛解(病気が落ち着いて安定している状態)へと至っています。
悪化してしまった先には、関節の破壊・他の病気の併発、手術に繋がります。
繰り返しとはなりますが、早期に治療を行うことで安定した予後に繋がりますので、気になりましたら早めに病院を受診することを強くお勧めします。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師