鼠径ヘルニアとは?原因、症状、治療法について解説
- クリニックブログ
鼠径ヘルニアとは?原因、症状、治療法について解説
鼠径ヘルニアって何?
鼠径ヘルニアとは、鼠径部(足の付け根部分)にできるヘルニアの総称で、一般的には脱腸と呼ばれている病気です。
腹部にできるヘルニアの80%程度は鼠径ヘルニアといわれています。ヘルニアは体の組織や臓器が本来あるべき位置から飛び出した状態のことをいいます。
この場合は腹部の激痛や嘔吐、発熱等の症状があり、緊急手術となります。危険な状態になる前に、鼠径ヘルニアの疑いがある場合は、まずは医師の診察を受けるようにして下さい。
鼠径ヘルニアの原因って?
鼠径ヘルニアの原因は、先天性(生まれつき)のものと、後天性(生まれたあとに起こる)ものとがあります。
子供に生じる鼠径ヘルニアのほとんどが先天性のもので、大人で生じるものは加齢や生活習慣などが原因の後天性のものです。また両方の原因が絡み合っておこる場合もあります。後天性では一般的に女性よりも男性に多く、あらゆる年齢の方が発症しますが、若い人よりも高齢者に多い病気とされています。
先天性の鼠径ヘルニアの原因は、胎児期に腹膜鞘状突起というものが出生後に自然閉鎖するものですが、まれに出生後も閉鎖せずに残っていることがあり、それがヘルニア嚢となり、鼠径ヘルニアの原因となります。
後天性の鼠径ヘルニアの原因は、主に加齢による腹壁の脆弱化です。
鼠径部の腹壁は元々薄く、腹壁が脆弱になると、咳やいきむ、重い物を持つことなどによって腹圧が上昇したときに、その強い腹圧に負けてヘルニア門という孔から腹腔内容物が飛び出すことがあります。また肥満や妊娠なども誘因の一つとされています。
鼠径ヘルニアの症状って?
腹腔内容物の脱出に伴い、鼠径部に膨らみができ、違和感や不快感、痛みを伴うことがあります。
膨らみが大きくなったり、小さくなったりすることが鼠径ヘルニアの典型的な症状です。
腹部に力を入れることで飛び出し、逆に力を抜いたり、仰向けで寝たり、手で押し込むと分からなくなり、違和感がなくなります。
放置すると次第に大きくなり、腹腔内容物がはまり込み、元に戻らない状態になることがあります。
そうなると、先ほどあげたように嵌頓や腸閉塞といった危険な状態になるので、鼠径ヘルニアの疑いがある場合は、まずは医師の診察を受けるようにして下さい。痛みや違和感がある場合は早期の受診をお勧めします。
鼠径ヘルニアは鼠径部の、どの部位からヘルニアが発生するかによって分類され、大きくは外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアの3つに分類されます。
① 外鼠径ヘルニア
幼児と成人が発症するほとんどのヘルニアが外鼠径ヘルニアです。鼠径部のやや外側の辺りが膨らんでいます。鼠経管といわれる内鼠経輪(睾丸につながる血管や精管の通り道の入り口部分)から腹腔内容物がヘルニアとして飛び出します。これが少しずつ大きくなると最終的には陰嚢にまで脱出してくることがあります。男女問わず幼児から中高年までのヘルニアのほとんどがこの外鼠径ヘルニアです。中高年に多く、一般的な脱腸と呼ばれるものにあたります。
② 内鼠径ヘルニア
鼠径部の内側辺りが膨らんでいます。内鼠経輪を通らず腹腔内容物が押し出され押し出す形になっています。中年以降の加齢、生活習慣による内鼠径輪(睾丸につながる血管や精管の通り道の入り口部分)の内側の腹壁が弱くなることによりヘルニアが発症します。中高年の男性に多いのが特徴です。
③ 大腿ヘルニア
鼠径部の下の太腿が膨らみます。女性に多いヘルニアです。特に経産婦の高齢の女性に多く、腹腔内容物が大腿管という管を(大腿輪を)通って飛び出します。
鼠径ヘルニアの検査や診断について
鼠径ヘルニアは一般的に問診、視触診で診断することが可能ですが、より詳しく診断するため、CT検査や超音波検査が行われます。
当院では超音波装置は全院に、CT装置は大手町院にのみ設置しております。検査は可能ですが、治療、手術となると外科領域になるため、それに対応できる医療施設へのご紹介となります。
鼠径ヘルニアの治療は?
飛び出した腹腔内容物が腹の中に戻ると表面上は平らになり、一見、治ったようにも見えますが、飛び出していた部分(ヘルニア門)には腹腔の通り道(ヘルニア嚢)ができているので、自然に治ることはありません。鼠径ヘルニア自体が少しずつ大きくなることがあります。程度や症状によって、しばらく経過観察になる場合もありますが、治療は手術が原則となります。
手術では飛び出した腹腔内容物をお腹の中へ戻し、その孔を何らかの方法で人工的に塞がないとまた飛び出してきてしまいます。現在はメッシュ(人工の膜にあたる)で孔を塞ぎ、脆弱な腹壁の補強を行って腹腔内容物が脱出しないようにしています。一昔前は鼠径ヘルニアの根本を糸で直接縛るような術式がとられていましたが、メッシュで孔を防ぐことにより、より安全で術後も再発率が少なくなっています。
またヘルニアバント(脱腸帯)を使用していた時期もありましたが、これはヘルニアを直接、外から抑えることで一時的に鼠径ヘルニアの症状を軽くする対処療法であり、圧迫による皮膚の障害や睾丸の萎縮を招くといったこともあり、現在では治療ガイドラインでは推奨されていません。
鼠径ヘルニアの予防方法は?
鼠径ヘルニアは構造的な問題で生じる病気のため、予防方法は一切ありません。
一見、腹筋と関係しそうですが、腹筋は鼠径ヘルニアの発症と全く関係ないため、腹筋を鍛えても改善・予防することはできません。
鼠径ヘルニアの疑いがある場合は、まずは早期に医療機関を受診することをお勧めします。
まとめ
鼠径ヘルニアは構造的な問題で生じる病気のため、予防方法はありません。
また、CT装置はMYメディカルクリニックでは大手町院に設置しており、判定することは可能ですが治療、手術は対応できかねますので対応可能医療機関へのご紹介となります。
また治療方法、手術方法等は日々進化しているものなので、専門の医療機関においてきちんと説明を受けるようにしましょう。
当院では腹部造影CT検査や腹部超音波検査といった画像検査や血液検査などをうけることができますので、ご心配な方は一度ご相談ください。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師