へバーデン結節とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/30

へバーデン結節とは?原因、症状、治療法について解説

へバーデン結節とは

へバーデン結節とは、手指の第1関節(DIP関節)が変形し、曲がってしまう病気です。
この病気を発見した医師『ウィリアム・へバーデン(英)』の名にちなんで、ヘバーデン結節と呼ばれています。
 
へバーデン結節は、第1関節のうしろ(手背)側の中央付近に、2つのコブのような結節所見を認めるのが特徴で、特に40歳以上の女性に多く発症する傾向があります。
40歳以上の女性には、手の指が腫れてきた、曲がってきたという症状がみられる病気がいくつかありますが、そのうち、第1関節だけに腫れや痛みが出るのがヘバーデン結節です。
母指の付け根(CM関節)に生じると「母指CM関節症」、人差し指から小指までの第2関節 (PIP関節)に生じると「ブシャール結節」と呼びます。
男性も発症しますが、女性と比べると罹患率は少なく、60歳以上での発症が多いといわれています。


 

へバーデン結節の原因

発症の仕方は2通りあります。
ひとつは外傷に引き続いて起こる場合、もうひとつは特発性(原因が不明のもの)に発症する場合です。
外傷によるものを除外すると、裁縫や刺しゅう、農業など、普段から生活面や仕事内容により、よく手仕事をしていた人に多いといわれています。
またへバーデン結節は、「更年期以降の女性に多く発生」し、特に「女性は男性の約2倍以上の確率で発症」することが分かっていることから、本疾患の背景には女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量の減少が関与している可能性が推測されています。
遺伝性は証明されていませんが、これまでに母娘、姉妹間など、家族内で多発する例が散見されていることも事実です。

  

へバーデン結節の症状

ヘバーデン結節の初期症状として、第1関節の痛み、腫れ、皮膚の赤み、熱感、起床時の手指の違和感やこわばりなどが挙げられます。
症状が進行すると、痛みが強くなり指を曲げる動きも制限され、ものをつかみにくくなります。
症状が出ては治まるという波が繰り返され、放置しておくと、10年ほどの期間をかけて関節や骨の変形に至ります。
 
最後は側方変異(横に広がる)や、屈曲した状態で関節が固まってしまいます。
固まると痛みは落ち着いてくることが多いのですが、手指の変形により指の動きがさらに悪化し、日常生活に支障をきたすことも考えられます。
 
稀に、第1関節の近くに水ぶくれのような透き通ったでっぱりができることがあります。これはミューカスシスト(粘液嚢腫)と呼ばれ、第1関節の変形に伴い、関節液が外に膨らんできているものです。
また、爪の根本部分が第1関節の近傍に位置しているため、影響を受けて、爪が変形し凸凹になることがあります。

 
 

へバーデン結節の検査方法

視診・触診

第1関節の腫れや熱感、変形、動きの悪さ、痛みの有無を確認します。
同時に手のひら側の指の付け根に押さえると痛みを感じる場合は、指の腱鞘炎やばね指が生じている可能性があります。中でも鑑別する病気として、最も重要なのは関節リウマチです。
  

レントゲン検査

骨と関節の状態を確認します。軟骨のすり減り状況を確認できる正面図と、骨の一部がとげ状になった骨棘(こっきょく)の有無が確認できる側面図を撮影します。
レントゲン検査によって、視診、触診ではわからない軽度の変化も確認することができます。
レントゲン写真で関節の隙間が狭くなったり、関節が壊れたり、骨棘が突出するなどの所見があれば、ヘバーデン結節と診断されます。
 

 

血液検査

関節リウマチが疑われる場合には、血液検査を行います。
 

 

関節リウマチとの判別

関節リウマチの症状として、両側性におこる関節痛や腫れ、炎症による体のだるさなどが挙げられます。
手指の場合の発症部位は手関節(手首)、指ではPIP関節(指先から2番目の関節)、MP関節(指先から3番目)が多く、DIP関節に起こることはほとんどありません。
また、発症によって骨が溶けてゆく関節リウマチに対して、ヘバーデン結節では、骨が負担などにより増殖している(骨棘など)像が診られるため、レントゲン検査でも区別することができます。
  

 
 

へバーデン結節の治療方法

ヘバーデン結節の治療は、保存療法、薬物療法、手術療法といった3種類の方法から検討することになります。
 

  • 保存療法:テーピング、サポーター、アイシング、外固定(金属のリング等)で関節を固定(安定)
  • 薬物療法:関節内へステロイド注射
  • 手術療法:関節形成術、関節固定術

 
ヘバーデン結節は、個人差があるものの、数か月〜数年のうちに痛みが落ち着くことが多いので、保存療法が中心となります。
痛みがあるときには、関節が必要以上に動かないようテーピングで固定します。
 
進行予防として、炎症を早期に沈静化させることも重要です。更年期障害などのホルモンバランス変化に対するサプリメントや、体調や循環改善目的の漢方なども一緒に検討します。
さらに痛みや腫れが強い場合には、ステロイド薬を第1関節内に注射します。
 
しかし、これらの保存的療法で痛みが改善しない場合や、変形がひどくなり日常生活に支障をきたす場合には手術を考慮します。
手術法としては、でっぱってしまった骨(結節部、骨棘)や、水ぶくれ(嚢胞)を切除する関節形成術や、スクリューネジを挿入して、第1関節の前後の骨を固定する関節固定術が一般的に行われています。固定した関節は曲げられなくなるため、動作が若干制限されますが痛みはなくなります。

 
 

へバーデン結節の予防方法

関節に負担をかけないよう固定をすることや、負担のかかる仕事を避けることで予防につながります。
本疾患の発症リスクを上昇させる要素のひとつとして「女性ホルモン」がありますが、そこで現在注目されているのが「エクオールサプリメント」です。
エクオールは、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)と非常に構造が似ています。エストロゲンには、関節軟骨、腱や腱鞘の保護作用があり、骨の新陳代謝にも関与しているため、減少したエストロゲンの代わりにエクオールが効果的なのです。今までヘバーデン結節など、手の変形性関節症の予防につながるものはありませんでした。まだ長期成績は出ていませんが、このエクオールサプリメントは、予防効果も含めて期待されています。
 
また現代社会では日常生活において、特に小指でスマートフォンを持つ動作が小指のヘバーデン結節を誘発させることも考えられますので、スマホの画面操作はできる限り両手で行うよう意識しましょう。

 
 

まとめ

指にこわばりや違和感を感じても、しばらくすると治まり、なかなか受診に至らないのが現状です。
1度変形してしまった骨は元には戻りません。将来、指の変形や強い痛みを防ぐためにも、気になることがあれば、早めの受診をおすすめいたします。

 

  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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