
便が油っぽい!それは脂肪便かも!原因と改善策について
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便が油っぽい!それは脂肪便かも!原因と改善策について
食後に気になる便の状態、特に便器に浮く、また油っぽい便が出たりすることはありませんか?実はこれは「脂肪便」かもしれません。脂肪便は単なる食べ過ぎだけでなく、膵臓や胆道系の病気のサインとなることもあり、早めの対処が大切です。
このコラムでは、脂肪便が起こるメカニズムから考えられる病気、そして日常生活での予防法まで、医学的な視点からわかりやすく解説します。読み終わる頃には、自分の便の状態をチェックする目安がわかり、病院を受診すべきタイミングも判断できるようになるはずです。健康管理の第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
脂肪便とは?
便器に浮かぶ油っぽい便、特有の臭い、白っぽい色……。このような症状が気になったことはありませんか?これらは脂肪便の特徴かもしれません。脂肪便は単なる食べ過ぎだけでなく、重要な病気のサインとなることもあります。ここでは、脂肪便の定義から症状、そして医学的な意味まで詳しく解説していきます。
脂肪便とは?どんな色や臭いの便?
脂肪便とは、便中に過剰な脂肪が含まれている状態を指します。健康な人の便は通常、黄褐色や茶褐色をしていますが、脂肪便は乳白色~薄黄色を呈することが特徴です。また、便の比重が軽いため水に浮き、油っぽい外観で特有の悪臭を放ちます。時には肛門から脂肪が漏出したり、便漏れを伴ったりすることもあります。
健康な成人の場合、1日の便中脂肪排泄量は6g未満が正常とされています。これは1日の脂肪摂取量が100~125gの場合でも維持される量です。もし便中の脂肪量が6g以上になる場合は、何らかの消化吸収障害が疑われます。
「脂肪便」の一般的なイメージと医療的な意味の違い
一般的に「脂肪便」というと、腸内に大量の脂肪が溜まっているイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。特にダイエット関連の広告などでは「お腹の中に5kgも脂肪便があるので取り除きましょう」といった表現を目にすることがありますが、これは医学的には全くの誤りです。
医学的な脂肪便とは、消化や吸収の過程で問題が生じた結果として便中に過剰な脂肪が排出される状態を指します。これは主に以下の3つの原因により起こります。
- ●脂肪の過剰摂取による一時的な消化不良
- ●膵臓の機能低下による脂肪分解酵素の不足
- ●腸管での脂肪吸収障害
つまり、脂肪便は体重とは直接関係なく、むしろ消化器系の健康状態を反映する重要なサインとして捉える必要があります。
便が油(脂)っぽい!脂肪便が出る人は要注意!
トイレで気づく油っぽい便に対して、「昨日の食事が原因かな?」と軽く考えがちですが、実は体からの重要なサインかもしれません。
特に症状が続く場合は、腸内環境の乱れや消化器系の不調を示している可能性があります。ここでは、脂肪便が表すサインとその意味について、詳しく解説していきます。
便が脂っぽい時は腸内環境が乱れている可能性がある
腸内環境の乱れは、脂肪便として現れることがあります。その主な原因として、多量のアルコール摂取、辛い物や脂っぽい食事などの刺激物の過剰摂取、精神的ストレス、睡眠不足などの生活習慣の乱れが挙げられます。
これらは善玉菌を減少させ、悪玉菌が優勢な状態を引き起こします。その結果、消化を助ける善玉菌が減少することで、さらに消化不良を引き起こす悪循環に陥ります。脂肪便以外にも、下痢、便秘、肌荒れ、免疫力の低下といった症状が現れることがあります。
便に油が浮いているときは消化不良の可能性がある
便に油が浮いている状態は、消化器系に負担がかかり、消化不良を起こしていることを示唆します。これは食事の内容から引き起こされることもありますが、膵臓の機能低下が原因となっていることもあります。
特に注意が必要なのは、白っぽい色で油が浮いている便が1週間以上続く場合です。これは慢性膵炎や膵臓がんの可能性があります。膵臓は消化酵素を分泌する重要な臓器で、その機能が低下すると脂肪の消化吸収が十分に行われず、脂肪便となって現れます。また、水様性の下痢が続く場合も要注意です。
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腸内環境を改善するために善玉菌を増やす方法
脂肪便の改善には、腸内環境を整えることが重要です。健康な腸内には約100兆個もの菌が存在し、その中で善玉菌は約20%、悪玉菌は約10%、そして残りの70%は日和見菌と呼ばれる菌で構成されています。ここでは、善玉菌を増やすための具体的な方法をご紹介します。
善玉菌を増やす食材を取り入れる
善玉菌を増やすために効果的な食材には、発酵食品が代表的です。具体的には以下のような食品がおすすめです。
- ●麹菌を含む食品:甘酒、味噌、醤油
- ●乳酸菌・ビフィズス菌を含む食品:ヨーグルト
- ●その他の発酵食品:キムチ、納豆
これらの食品に含まれる善玉菌は、腸内で直接働いてくれます。善玉菌が増えることで、相対的に悪玉菌が減少し、健康的な腸内環境の構築につながります。
善玉菌のエサになる食材も一緒に摂る
善玉菌を効果的に増やすためには、善玉菌のエサとなる食材を一緒に摂取することが重要です。特に水溶性食物繊維やオリゴ糖が善玉菌の栄養源となります。水溶性食物繊維を多く含む食材は主に以下のものがあります。
- ●昆布
- ●果物
- ●里芋
- ●大麦
- ●オーツ麦
ただし、不溶性食物繊維の摂りすぎは逆に便秘の原因となる可能性があるので注意が必要です。
ストレスを溜めない
腸内環境の悪化の原因の一つに、ストレスがあります。ストレスを軽減するためには、以下のような取り組みが効果的です。
- ●十分な睡眠をとる
- ●適度な運動を行う(ウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめ)
- ●趣味の時間を持つ
- ●友人や家族との交流を大切にする
激しすぎる運動は逆に体へのストレスとなるため避けましょう。自分に合ったストレス解消法を見つけ、継続的に実践することが、健康的な腸内環境の維持につながります。
脂肪便が続く場合に可能性のある疾患
脂肪便は、体内の消化吸収機能が正常に働いていないことを示す重要なサインです。この状態が続く場合、膵臓の問題が背景にある可能性が高いです。以下では、脂肪便の原因となり得る膵臓の異常や予防策について詳しく解説します。
膵臓が弱っている可能性
脂肪便は、膵臓が正常に働かなくなることで発生することが多いです。膵臓は、脂肪を分解する消化酵素を分泌する役割を担っていますが、慢性膵炎や膵臓がんなどの疾患によりこの機能が低下すると、脂肪が十分に分解されず便中に残ることがあります。
この結果、便が油っぽく浮いたり、白っぽくなったりすることがあります。特にアルコール摂取が多い方や脂肪分の多い食事を頻繁に摂る方は、膵臓が弱っている可能性が高いため注意が必要です。
膵臓の病気を予防するためにできること
膵臓の病気を予防するためには、健康的な生活習慣を心がけることが重要です。まず、アルコールや脂肪分の多い食事を控えることが効果的です。また、適切な水分補給や便秘を避けるための食物繊維の摂取も推奨されます。
さらに、定期的な健康診断を受けることで、膵臓の健康状態を把握することができます。特に、脂肪便の症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診し、専門医の診察を受けることが重要です。
まとめ
脂肪便は腸内環境の乱れや消化機能の低下を示す警告サインです。この記事では、脂肪便の原因や膵臓の健康維持のための対策について解説しました。脂肪便が続く場合は、慢性膵炎や膵臓がんなどの重大な疾患が隠れている可能性があります。
日々の生活で腸内環境を整えることや、適切な医療を受けることが、健康な体を維持するための重要なステップです。便の状態を定期的に確認し、異常があれば速やかに専門医を訪れることをおすすめします。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師