喘息とは?原因、症状、治療法について解説
- クリニックブログ
喘息とは?原因、症状、治療法について解説
喘息は古代から存在する病気ですが、原因が判明したのは50年くらい前です。
本記事では喘息の原因、症状、検査、治療、予防について解説します。
これを読めば喘息の概要が分かります。
喘息を治療する際に、ぜひ役立ててみてください。
喘息とは
喘息の定義、歴史、疫学、成人喘息の特徴について解説します。
喘息の定義
喘息は、気道の慢性炎症を基本的な病態とし、臨床症状として変動性*を持った気道狭窄に伴う喘鳴(呼気時に聞こえるゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)、呼吸困難(とくに呼出時に強く胸苦しさから動けないあるいは喋れない状態まで種々の強さで、発作とも表現される)や咳で特徴付けられる疾患で、時には死に至ることもある病気です。
※変動性とは、無症状で正常な状態と症状の出現した状態とが時間を変えて現れる状態
喘息の歴史
疾患としての歴史は古く、紀元前4世紀のヒポクラテスの時代までさか上り、我が国では平安町時代や室町時代の文学書に喘息という言葉が出てくると言われています。
喘息の病態に気道の狭窄と種々の刺激に対する気道の過敏性があることは以前から認識されていましたが、その背景に慢性の炎症があることが明らかになったのは50年くらい前で、その結果、診断や治療が進歩して、喘息死の減少を含む予後が大幅に改善しています。
喘息の疫学
小児から高齢者まで発症する可能性がありますが、小児では乳児期発症、成人ではとくに中高年発症が多い傾向にあります。
これまでの疫学調査では小児で11〜14%、成人(15歳以上)で6〜10%が有症率(調査日以前の1年間に喘鳴や呼吸困難感などの症状があるものの調査対象全体に対する比率)として報告されています。
厚生労働省の報告によると、喘息の総患者数は、2008年の調査で88万8千人とのことです。
また喘息死は、1995年の7253人をピークに減少を続け、2014年には1550人まで減少しました。
2013年の死亡者数では65歳以上の高齢者が89.6%を占めています。
参考:厚生労働省「喘息予防・管理ガイドライン(成人喘息)」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/65/2/65_97/_pdf
成人喘息の特徴
成人喘息の特徴は、非アトピー型が多い、成人になってから発症することが多い、なかなかよくならないといった点です。
非アトピー型が多い
喘息の病型は、環境アレルギーに対する特異的なIgE抗体が認められるものをアトピー型、IgE抗体が存在しないものを非アトピー型と呼びます。
9割以上の小児喘息はアトピー型喘息であり、アレルゲンはハウスダスト、ダニ、ペット、花粉、カビなどです。
それに対して成人喘息の約6割はアトピー型喘息ですが、残りの約4割は非アトピー型喘息です。
成人になってから発症することが多い
小児喘息の既往があって、成人喘息に移行する場合もありますが、成人喘息は成人になってから初めて発症する例が多く見られます。
中高齢の喘息の方の70~80%以上が成人になってから発症したという報告があります。
なかなかよくならない
成人喘息は、原因がさまざまであり、小児喘息のように治ることはまれです。
多くの成人喘息では、気道の炎症が続き、気道粘膜の線維化が進んで、気道の内腔が細くなって元に戻りにくくなります。
これをリモデリングといいますが、成人喘息が治りにくい原因の一つです。
成人喘息は糖尿病や高血圧と同じ慢性疾患といえるでしょう。
喘息について関連記事はこちら
喘息の症状は
軽症なものから適切な処置が行われないと命に関わるような非常に重いものまでさまざまです。
喘息発作とは
発作的に咳や痰が出て、前述したようにゼーゼーやヒューヒューという音を伴い息苦しくなります(喘息発作)。
特に夜間や早朝に出やすくなるのが特徴です。
重症例
重症例では気道が狭くなり、気道に喀痰が詰まるため十分な酸素を取り込むことができず、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色に変化した状態)や意識障害が起きることもあります。
喘息の原因・誘因
一般にはアレルギーの原因が特定できるアトピー型と、それ以外の非アトピー型の2つに分けられています。
アトピー型はほとんどが5歳未満に発症すると考えられており、成人でも若年者に多いとされています。
成人発症喘息では小児期発症喘息に比べて非アトピー型が増加します。
喘息の原因は一つだけではなく、複数の要因が合わさって喘息発作が起こります。
以下のような原因・誘因が挙げられます。
気道の炎症
気管支喘息の主な原因は、気道の慢性炎症です。
炎症により気道の粘膜が腫れ、発作時には気管支周囲の平滑筋が収縮することで、空気の通り道が狭くなって喘鳴が出現します
アレルギー
チリダニやハウスダスト、ペットのフケ、カビなどの特定のアレルゲン吸入によるアレルギー反応の症状として、気管支喘息を発症することがあります。
体内でアレルギー反応を起こす際に、リンパ球、好酸球、好中球、マスト細胞、マクロファージといった細胞が関係するとともに、IL-4・IL-5などのサイトカインが影響します。
近年では喘息の治療に、IL-4・IL-5に対する抗体が利用されるようになりました。
気道の刺激
刺激性のガスや粉塵などアレルゲンではない物質を吸入することでも、気道が過剰に刺激されて交感神経が緊張し気道の収縮が起こることがあります。
例として線香の煙が挙げられます。
また汚染された大気には気道を刺激する物質が含まれているため喘息が悪化します。
とりわけPM2.5という微粒子は、直径が2.5μm以下のため気道の奥まで入りやすく、呼吸器系に影響しがちです。
薬物
アスピリンを代表とする酸性の消炎鎮痛薬が原因となるアスピリン喘息のほかに、高血圧の治療などに使用されるβ遮断薬、ヨード造影剤、アルコールなどが発作の誘因となることもあります。
アスピリン以外の例えばロキソニンやボルタレンなどでも起こすことに注意が必要です。
さらに添加物の色素や防腐剤も誘因となる場合もあります。
遺伝的要素
アトピー性素因、気道の粘膜がさまざまな刺激に対して敏感に反応しやすいこと(気道過敏性)など、いくつかの遺伝的素因が重なって発症すると考えられています。
呼吸器感染症
かぜのウイルス、インフルエンザ、気管支炎などの呼吸器感染症は喘息を悪化させる原因につながってしまいます。
呼吸器感染症が流行している時期は気を付けましょう。
喫煙
タバコの煙は気道を刺激するため、喘息発作を引き起こしてしまうでしょう。
喫煙は呼吸機能を低下させ、薬の効きも悪くするのもデメリットです。
また周囲の方が吐いたタバコの煙を吸い込む受動喫煙も、喘息を悪化させます。
肥満
肥満は喘息を悪化させる要因の一つです。
内臓脂肪に含まれる脂肪細胞から炎症を悪化させる物質が分泌され、気道の炎症が強くなり、喘息が悪化する恐れがあります。
また、気管支周囲の脂肪細胞の間に、炎症を引き起こすような細胞がたまることもデメリットです。
とりわけ女性の場合、BMIが高いほど喘息が悪化するといわれています。
ストレス
ストレスも喘息を悪化させる要因の一つです。
ストレスがかかることで、体内のマスト細胞から炎症を促す物質が分泌されるからと考えられています。
気候の変化
気候の変化も喘息の原因となり得るでしょう。
喘息の発作は、季節の変わり目に発症しやすく、特に秋や梅雨時期に起こりやすいです。
湿度が高くなることで、喘息の原因菌であるダニやカビが発生し、喘息につながってしまいます。
また、前日との寒暖差が激しいとき、台風で気圧が大きく変わるときなども喘息発作が起こりやすいといえるでしょう。
喘息の検査
主に以下のような検査を行います。
血液検査
気道の炎症やアレルギー反応の程度を評価できます。
喘息では多くの場合気道がアレルギーによる炎症を起こして白血球のなかの好酸球という赤い顆粒を持つ細胞が増加します。
また、アレルギーを原因とする喘息では、総IgE抗体の増加と特定のアレルゲンに対して反応する特異的IgE抗体が検出されます。
これらの値を検査することで、アレルギーになりやすい体質(アトピー素因)や原因となるアレルゲンを調べることができます。
呼吸機能検査
息を吸ったり吐いたりする検査です。
肺活量や1秒間に吐き出せる息の量(1秒量)を測定します。
気道が狭くなっている状態かどうかの評価には1秒率(努力性に呼出して得られた肺活量に対する1秒量の比率)を用います。
喘息は状態が変動するので正常な検査結果でも喘息は否定されません。
いずれにしても、常に1秒率が70%未満を示すCOPDとの鑑別や喘息の状態の良否の評価ができます。
呼気ガス検査
呼気中の一酸化窒素に着目した検査です。
喘息は気道に慢性的な炎症が生じている状態で、その炎症を起こしている気道からは一酸化窒素が産生されています。
吐いた息の中に含まれる一酸化窒素の量を調べることにより、気道の炎症の程度を評価する検査です。
画像検査
胸部X線検査やCT検査を行います。
呼吸困難や咳の原因となるような、器質的な肺疾患や心疾患の有無を調べることが目的です。
また通常の投薬では治療が困難な喘息(難治性喘息と呼びます)を伴う呼吸器疾患の診断にも役立ちます。
喀痰検査
痰を顕微鏡で調べる検査です。
喘息では痰に含まれる好酸球が増加していて、喘息に特異的な物質が観察されます。
結核などの除外をするうえでも重要な検査です。
当院での喘息の検査・治療方法はこちら
喘息に似たような症状の病気
喘息と症状が似ており、鑑別を要する病気を示します。
咳喘息
近年、咳のみが主症状である喘息が多くみられます。
咳は出ていても呼吸機能が正常で、呼吸困難も喘鳴もない軽い喘息と言えます。
治療方法は喘息と同様で、気管支拡張薬やステロイドを使用します。
咳喘息の特徴は以下のとおりです。
- ●かぜなどの後に、乾いた咳が8週間以上続く
- ●深夜から明け方に咳が出る
- ●運動時、冷たい空気を吸ったときなどに咳が出る
- ●咳止め薬を飲んでも、咳が止まらない
- ●気管支拡張薬で咳が改善する
咳喘息はしっかりと治療しないと、30~40%は喘息に移行するといわれています。
ACO(喘息とCOPDのオーバーラップ)
慢性の気流閉塞を示し、喘息とCOPDのそれぞれの特徴をあわせもつ疾患のことをいいます。
喘息患者にCOPDが合併するタイプとCOPD患者に喘息が合併するタイプがあります。
前者では喘息による気道のリモデリングが固定性気流閉塞の原因となり、喘息と喫煙との相互作用でACOが形成され、後者では妊婦中の母の喫煙など小児期の肺の成長障害が成人期のCOPDやACOの原因となることが知られています。
治療方法は、喘息とCOPDの両方に対して行うことが基本となります。
喘息にCOPDが合併することを明らかにするには、肺拡散能と高分解CT検査が有効です。
またCOPDに喘息が合併することを疑う目安は以下のとおりです。
- ●発作性の喘鳴、呼吸困難
- ●可逆性の気流制限
- ●気道過敏性の亢進
- ●アトピー素因
- ●気道炎症の存在
ACOの治療は、喘息の特徴が優位な場合はステロイド吸入薬を基本にし、COPDの特徴が優位な場合は気管支拡張薬を優先して用いるべきとされています。
ACOで喘息のコントロールが不十分だと、COPDの予後が悪化するため、喘息の治療を十分に行うことが必要です。
心臓喘息
心臓弁膜症や心筋梗塞に伴って、喘息のような喘鳴を起こすことがあり、これを心臓喘息と呼びます。
喘鳴とともに息切れ、動悸、むくみなどが現れるのが特徴です。
昼間に動きすぎたとき、夜になって心臓喘息が起こることがあります。
また、かぜをひいたり、急に寒くなったりするのも誘因の一つです。
その他
その他に喘鳴を起こす疾患として、喉頭炎による仮性クループ、急に肺が破れる気胸、肺の血管が詰まる肺血栓塞栓症などがあります。
どの疾患も喘息と同じように喘鳴を起こしますが、胸部X-P検査などを用いて鑑別が必要です。
喘息で引き起こす恐れのある合併症
喘息で引き起こされる恐れのある合併症についてご紹介します。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎が喘息に合併する頻度は67.3%と高いです。
鼻と気管支は一本の気道としてつながっているため、喘息と鼻の病気は合併しやすいと考えられます。
特にアレルギー体質がある方は、アトピー型喘息とアレルギー性鼻炎を合併することが多く見られます。
また花粉症もアレルギー性鼻炎の一種です。
副鼻腔炎
いわゆる「蓄膿症」です。
鼻の周囲にある副鼻腔(ふくびくう)という空洞に膿がたまり、鼻水、鼻づまり、鼻の周りの痛みなどを起こします。
厚生労働省の報告によれば、未治療の喘息の50~75%で副鼻腔単純X線像に異常が認められます。
好酸球が関係した好酸球性副鼻腔炎という病気もあり、特に再発しやすいのが特徴です。
鼻茸(はなたけ)というポリープが鼻の中にできることもあります。
好酸球性副鼻腔炎では、末梢血中に好酸球増加を認め、アスピリン喘息、薬剤アレルギーの合併が多いのが特徴です。
参考:喘息予防・管理ガイドライン(成人喘息)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/65/2/65_97/_pdf
好酸球性中耳炎
鼻だけでなく耳にも合併症が見られます。
この疾患も好酸球が関係しており、耳が詰まったような感じがする、耳が聞こえにくいといった症状が見られます。
適切に治療しないと難聴が進行し、超高度難聴になることがあるとされています。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
喘息、好酸球性副鼻腔炎とともに全身の血管炎を起こす病気です。
発熱、筋肉痛、手足のしびれや麻痺、腹痛、皮疹などの症状が現れます。
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
アスペルギルスというカビを吸い込むことで、気管支や肺にアレルギー性の炎症を起こす病気です。
咳、痰、喘鳴が見られますが、治療してもなかなか治らず、呼吸不全に陥ることがあります。
喘息の治療法について解説
長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)の2つがあります。
発作が強いため苦しくて横になれないときには、特に担当医から指示を受けておらず、その場合の投薬も受けていない場合には医療機関を受診することを強く勧めます。
通常の治療で喘息がコントロールできない場合には、最近では生物製剤として分類されている注射製剤が複数あり、専門家の判断で治療が開始されます。
当クリニックでも専門医による対応を行っています。
喘息の治療ステップ
喘息の治療は重症度により治療法を選択し、発作が起こらない状態を目指します。
基本となる治療ステップをご紹介します。
- 1. 症状が毎週は出ていない軽症間欠型は、治療ステップ1へ
- 2. 症状が毎日ではないが、毎週出ている軽症持続型は、治療ステップ2へ
- 3. 症状が毎日出ているが、生活に支障はない中等症持続型は、治療ステップ3へ
- 4. 症状が毎日で、生活に支障がある最重症持続型は、治療ステップ4へ
治療してコントロールが良好になれば、ステップダウンすることも可能です。
治療ステップ1
第一選択は、低用量の吸入ステロイド薬です。
これを使用できない場合、以下のいずれかを用います。
- ●ロイコトリエン受容体拮抗薬
- ●テオフィリン徐放製剤
追加治療として、ロイコトリエン受容体拮抗薬以外の抗アレルギー薬を用いることがあります。
発作時の治療薬は、吸入型の短時間作用型β2刺激薬です。
治療ステップ2
第一選択は、低~中用量の吸入ステロイド薬です。
これで不十分な場合、以下のいずれか1剤を使用します。
- ●長時間作用性β2刺激薬
- ●長時間作用性抗コリン薬
- ●ロイコトリエン受容体拮抗薬
- ●テオフィリン徐放製剤
追加治療として、ロイコトリエン受容体拮抗薬以外の抗アレルギー薬を用いることがあります。
発作時の治療薬は、吸入型の短時間作用型β2刺激薬です。
治療ステップ3
第一選択は、中~高用量の吸入ステロイド薬です。
これで不十分な場合、以下のいずれか1剤、あるいは複数を併用します。
- ●長時間作用性β2刺激薬
- ●長時間作用性抗コリン薬
- ●ロイコトリエン受容体拮抗薬
- ●テオフィリン徐放製剤
※さらに不十分な場合、以下を追加します。
- ●抗IL-4Rα抗体
追加治療として、ロイコトリエン受容体拮抗薬以外の抗アレルギー薬を用いることがあります。
発作時の治療薬は吸入型の短時間作用型β2刺激薬です。
治療ステップ4
第一選択は、高用量の吸入ステロイド薬です。
上記に下記の複数を併用します。
- ●長時間作用性β2刺激薬
- ●長時間作用性抗コリン薬
- ●ロイコトリエン受容体拮抗薬
- ●テオフィリン徐放製剤
それでも不十分な場合、以下を追加します。
- ●抗IgE抗体
- ●抗IL-5抗体
- ●抗IL-5Rα抗体
- ●抗IL-4Rα抗体
さらに不十分な場合、以下を短期間だけ使用します。
- ●経口ステロイド薬
また気管支熱形成術を行うこともあります。
追加治療として、ロイコトリエン受容体拮抗薬以外の抗アレルギー薬を用いることがあります。
発作時の治療薬は、吸入型の短時間作用型β2刺激薬です。
難治例への対応
治療しても良好なコントロールが得られない場合に検討すべきポイントを示します。
- ●喘息の診断は正しいか?
- ●吸入方法や服薬の仕方は正しいか?
- ●合併症の管理はできているか?
- ●増悪因子を排除できているか?
長期管理薬(コントローラー)
長期管理薬は、喘息の基本病態である気道の炎症を抑え、喘息症状のない状態で毎日が過ごせる状態を維持するための治療薬です。
炎症の抑制には副腎皮質ステロイドの吸入薬(ICS)が使用されます。
それに併用する薬剤として長時間作用性のβ刺激薬(LABA)、長時間作用性の抗コリン薬(LAMA)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤などが併用されます。
現時点ではICSとLABAの配合剤が汎用され、そこにLAMAを組み合わせたトリプル製剤も出現しています。
吸入ステロイド薬(ICS)
喘息治療の中心的役割を担う薬です。
ステロイド薬を吸入することにより、直接気道に届け、気道の炎症を抑えます。
経口ステロイド薬とは異なり、ほとんどまったく副作用は見られません。
まれに声が枯れる(嗄声)が見られる程度です。
長時間作用性β2刺激薬(LABA)
交感神経を刺激して気管支を広げる作用があります。
吸入ステロイドと併用するのが原則です。
吸入ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬配合剤
吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬の配合剤です。
これ1剤で気管支の炎症を抑え、気管支を広げます。
長時間作用性抗コリン薬(LAMA)
アセチルコリンをブロックして気管支の収縮を抑える吸入薬です。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
ロイコトリエンという化学伝達物質をブロックして気管支の収縮を抑える経口薬です。
テオフィリン徐放製剤
ゆっくりと溶ける経口薬で、気管支の緊張を和らげて気管支を広げます。
抗IgE抗体・抗IL-5抗体・抗IL-5Rα抗体・抗IL-4Rα抗体
アレルギー炎症の鍵となるIgEやIL-5・IL-5Rα・IL-4Rαなどのサイトカインが受容体に結合するのを防ぐことで、アレルギー反応を抑制する抗体です。
発作治療薬(リリーバー)
発作治療薬は発作を含めた症状が出現したときに用いる即効性のある薬剤で、気管支拡張薬の吸入が一般的です。
比較的新しいものではICSとLABAの配合剤もあり、リリーバーとしての役割を果たしています。
短時間作用型β2刺激薬
交感神経を刺激して気管支を広げる薬です。
吸入薬と経口薬があります。
テオフィリン薬
気管支の緊張を和らげて気管支を広げます。
喘息発作時の治療
喘息発作が起こったときの治療法を解説します。
症状の強度により治療のステップが選択されます。
さらに症状が増悪すれば、ステップアップが必要です。
- 1. 苦しいが横になれる場合(軽度):ステップ1
- 2. 苦しくて横になれないが動ける(中等度):ステップ2
- 3. 苦しくて動けない(重度):ステップ3
- 4. 呼吸機能が悪化:ステップ4
ステップ1
自宅で治療可能
- ●短時間作用型β2刺激薬吸入
- ●ブデソニド/ホルモテロール配合剤吸入
- ●吸入は発作時に1吸入し、数分間経過しても発作が持続する場合、さらに1吸入する
- ●ただし1回の発作で最大6吸入までとする
- ●それでも改善しない場合、救急外来を受診する
ステップ2
救急外来を受診
- ●短時間作用型β2刺激薬をネブライザーで吸入
- ●アミノフィリン点滴静注
- ●酸素吸入
- ●ステロイド薬の全身投与
- ●抗コリン薬吸入
- ●0.1%アドレナリン皮下注射
※1時間で症状が回復すれば帰宅
※回復しなければ入院して治療
ステップ3
救急外来を受診
- ●短時間作用型β2刺激薬をネブライザーで吸入
- ●ステロイド薬の全身投与の反復
- ●酸素吸入
- ●アミノフィリン点滴静注
- ●抗コリン薬吸入
- ●0.1%アドレナリン皮下注
※1時間以内で回復しなければ入院して治療
ステップ4
ただちに入院して集中治療室で管理
上記の治療を続けながら、呼吸機能が悪化した場合、挿管して人工呼吸、気管支洗浄、全身麻酔を考慮する。
喘息の予防
喘息発作を予防するための注意点を解説します。
タバコを控える
喫煙していれば禁煙するようにしましょう。
喫煙は喘息を発症させる大きな要因で、症状を悪化させ発作を誘発します。
喫煙者は非喫煙者に比べて咳・痰・喘鳴・息切れなどの症状が多く見られます。
また、非喫煙者への影響は大きく、小児期や学童期はもちろん、母親の胎内にいる期間の受動喫煙はさらに喘息の発症リスクを高めるとされています。
大人の場合でも、職場や公共の場所などでわずかな受動喫煙にさらされたことが引き金となり、発作が起こる場合があります。
アレルゲンを避ける
また、アレルギーの原因が分かっている場合にはそれらを避けることが効果的です。
室内飼育動物がアレルゲンとなるものは主にイヌ、ネコ、ハムスターなどです。
特にネコに感作されている方が多くみられます。
室内では絶対に飼わないこと、週に1~2回は洗うこと、できれば手放すこと、などに注意が必要です。
体調が悪いときは無理をしない
かぜをひいたりして体調が悪いときは、無理をすると喘息が悪化します。
ゆっくり休んで、体調を整えましょう。
部屋を定期的に掃除する
日本人の喘息を引き起こすアレルゲンでもっとも多いといわれるのはダニです。
ダニはじゅうたん、布製のソファ、ふとん、ぬいぐるみなどに生息しています。
ダニの唾液、フン、死がいなどにアレルゲンが含まれます。
喘息発作を防ぐため、ダニ対策が重要です。
部屋を定期的に掃除し、じゅうたんに掃除機を掛け、ソファを拭き、布団カバーやぬいぐるみを洗いましょう。
生活習慣の見直し
喘息発作の誘因を避けるため、生活習慣の見直しが必要です。
- ●飲酒を避ける
- ●バランスよく食べる
- ●ストレスを解消する
- ●ゆっくり入浴する
- ●太りすぎないようにする
- ●適度に運動する
医師の指示どおりに薬を使用する
前章で解説したように、喘息の治療は複数の薬を使います。
喘息のコントロール状態に応じて、薬を変更したり、用量を増減したりします。
薬の使い分けが難しく、医師の指示どおりに薬を使うのが原則です。
自分の判断だけで薬を使うと、状態が悪化するばかりか、副作用が見られることもあります。
まとめ
喘息は子どもから大人まで幅広い年齢層の方に発症します。
アレルゲンや喫煙などの原因物質を避けることによって、喘息の発症・増悪を防ぐことができます。
喘息を放置すると日常生活に支障をきたし、症状も悪化してしまう可能性があります。症状がある場合は速やかに病院を受診するようにしましょう。
また、薬によって症状がおさまってくると治ったかのように思われますが、気道の炎症は続いています。
炎症が続くと気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため、治療によって症状をおさえることが難しくなります。
症状が治まっていてもしっかり治療を継続し、日頃から発作が起きないような状態にコントロールしていくことが大切です。
当院での喘息の検査・治療方法はこちら
監修:MYメディカルクリニック 顧問
大田 健
略歴
- 1975年 東京大学医学部医学科卒業
- 1992年 帝京大学医学部第二内科学教室 助教授
- 1997年 帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学 教授
- 2012年 独立行政法人国立病院機構東京病院 院長
- 2018年 公益社団法人結核予防会 複十字病院 院長
大田顧問の詳しい紹介はこちら