
腹部の圧迫感の原因は?お腹の張り(腹部膨満感)の症状がある病気
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腹部の圧迫感の原因は?お腹の張り(腹部膨満感)の症状がある病気
お腹の張りや圧迫感は、多くの人が経験する不快な症状です。時には単なる食べ過ぎや消化不良が原因となることもありますが、様々な病気のサインとなることもあります。
この記事では、腹部膨満感の主な原因と、この症状を引き起こす可能性のある疾患について詳しく解説していきます。お腹の張りに悩んでいる方は、この記事を参考に症状の原因を理解し、必要に応じて適切な医療機関への受診を検討してください。
腹部の圧迫感・膨満感の原因
腹部の圧迫感や膨満感には、様々な要因が関係しています。最も一般的な原因として、食生活の乱れや食べ過ぎ、消化不良などの生活習慣に関連するものが挙げられます。また、ストレスや不安などの精神的な要因も、胃腸の動きに影響を与え、腹部膨満感を引き起こすことがあります。
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消化器系の疾患では、胃炎や胃潰瘍、過敏性腸症候群、機能性ディスペプシアなども主な原因です。さらに、腸内細菌のバランスの乱れや食物アレルギー、乳糖不耐症などの食物不耐症によっても同様の症状が現れることがあります。
女性の場合は、月経前症候群や子宮内膜症などの婦人科系の疾患が原因となることもあります。また、便秘や腸内ガスの溜まりすぎ、腹水の貯留なども腹部膨満感の要因となり得ます。重要なのは、継続的な症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断を受けることです。
お腹の張り(腹部膨満感)を引き起こす症状
お腹の張り(腹部膨満感)は、多くの人が経験する不快な症状です。その原因は様々で、一時的なものであれば日常生活の見直しで改善できることもありますが、中には病気のサインである場合もあります。
便秘
便秘は腹部膨満感の主要な原因の一つとして知られています。腸内に便が長時間滞留することで、腸内細菌の発酵が進み、ガスが過剰に産生されることで、お腹の張りや不快感が生じます。また、便が腸内に溜まることで物理的な圧迫が起こり、これも腹部膨満感の原因となります。
便秘による腹部膨満感は、食事の内容や食べ方、運動不足、ストレス、水分摂取不足など、生活習慣と密接に関連しています。特に食物繊維の摂取不足や不規則な生活習慣は、腸の蠕動運動を低下させ、便秘を悪化させる要因となります。
慢性的な便秘が続く場合、腸内環境の悪化や腸内細菌叢の乱れを引き起こし、これにより腹部膨満感がさらに悪化するという悪循環に陥ることがあります。
腸閉塞
腸閉塞は消化管の通過障害により腸の内容物が通過できなくなる深刻な疾患です。主な症状として、激しい腹痛や吐き気、嘔吐に加え、著しい腹部膨満感が現れます。腸の動きが妨げられることで、腸内容物や空気が滞留し、お腹が徐々に膨らんでいきます。
原因としては、腸の癒着、腫瘍、腸重積、そけいヘルニアなどが挙げられます。特に開腹手術の既往がある方は、術後の癒着による腸閉塞のリスクが高まります。症状が進行すると、腹部全体の張りが強くなり、腸蠕動音の低下や消失、排便・排ガスの停止なども見られます。
腸閉塞は早期発見・治療が重要で、放置すると腸管壊死や腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。激しい腹痛や持続的な嘔吐、強い腹部膨満感がある場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。
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過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(IBS)は、腸の機能的な障害によって引き起こされる慢性的な消化器症状の総称です。主な症状として、腹痛や腹部膨満感に加え、下痢や便秘(あるいはその交代)が特徴的です。ストレスや食事、生活リズムの乱れなどが症状を悪化させる要因となることが知られています。
この症状は、腸の運動や知覚に対する過敏性が高まることで生じると考えられています。特に、腸の動きが通常よりも活発になったり、逆に緩慢になったりすることで、ガスが溜まりやすくなり、お腹の張りを感じやすくなります。また、腸内細菌叢のバランスの乱れも症状に影響を与える可能性があります。
治療には、生活習慣の改善や食事療法、ストレス管理が重要で、症状に応じて整腸剤や消化管運動調整薬などの薬物療法も行われます。
呑気症
呑気症は、過剰に空気を飲み込んでしまう習慣によって引き起こされる症状です。食事の際に早食いをしたり、会話をしながら食べたりすることで、無意識のうちに必要以上の空気を一緒に飲み込んでしまいます。また、ガムを頻繁に噛むことや炭酸飲料を多く摂取すること、不安やストレスによる過呼吸なども呑気症の原因となります。
飲み込まれた空気は胃に溜まり、お腹の張りや膨満感、げっぷの増加、腹痛などの不快な症状を引き起こします。特に食後に症状が強くなる傾向があり、日常生活に支障をきたすこともあります。
改善には、ゆっくりと食事をすること、よく噛んで食べること、食事中の会話を控えめにすることなどの生活習慣の見直しが重要です。また、不安やストレスの軽減も症状の改善に効果的とされています。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸や消化液が食道に逆流することで引き起こされる消化器疾患です。この状態が続くと、食道の粘膜が炎症を起こし、腹部膨満感だけでなく、胸やけや喉の違和感、げっぷの増加などの不快な症状を引き起こします。
食後に横になることや、タイトな衣服の着用、肥満、過度の飲酒や喫煙、ストレスなどが症状を悪化させる要因となります。また、食道裂孔ヘルニアを伴う場合も多く、これにより横隔膜の一部が弱くなり、胃の内容物が食道に逆流しやすくなります。
腹部膨満感は、胃酸の逆流による食道の炎症や、それに伴う消化機能の低下によって生じます。また、無意識のうちに空気を飲み込んでしまう習慣(空気嚥下症)を併発することもあり、これも腹部膨満感を悪化させる原因となります。
急性胃腸炎
急性胃腸炎は、ウイルスや細菌による感染が主な原因で発症する消化器系の炎症性疾患です。主にノロウイルスやロタウイルス、食中毒菌などによって引き起こされ、腹部膨満感に加えて、吐き気や嘔吐、下痢、発熱などの症状を伴うことが特徴です。
症状が重い場合や改善が見られない場合は、医療機関での治療が必要となります。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、器質的な異常が見られないにもかかわらず、上腹部に不快な症状が慢性的に現れる機能性消化管障害です。主な症状として、食後のもたれ感、早期満腹感、上腹部の痛みや灼熱感などが特徴的です。
この症状は、胃の運動機能の低下や胃の適応性弛緩障害、内臓知覚過敏、自律神経系の乱れなどが複雑に関連して引き起こされると考えられています。ストレスや生活習慣の乱れ、精神的な要因なども症状を悪化させる原因となります。
診断は、内視鏡検査などで器質的疾患が除外された上で、特徴的な症状が3ヶ月以上続く場合になされます。治療には、生活習慣の改善や食事指導に加え、胃運動改善薬や制酸薬などの投薬治療が行われます。また、必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもあります。慢性的な症状であるため、医師と相談しながら長期的な管理が必要です。
腹部の腫瘍
腹部腫瘍は、腹部の膨満感や圧迫感を引き起こす重要な原因の一つとなります。腫瘍は良性と悪性に分類され、発生する場所によって症状や進行の仕方が異なります。消化管、肝臓、膵臓、卵巣などの臓器から発生する腫瘍は、その成長に伴って周囲の臓器を圧迫し、持続的な腹部膨満感を引き起こすことがあります。
特に初期段階では、腹部膨満感以外の明確な症状が現れないこともあり、定期的な健康診断での早期発見が重要です。腫瘍が大きくなるにつれて、食欲不振、体重減少、腹痛などの症状が現れることもあります。また、腫瘍による腹水の貯留が、さらなる腹部膨満感の原因となることもあります。
腹部膨満感が長期間続く場合や、他の気になる症状がある場合は、腫瘍の可能性も考慮して、速やかに医療機関を受診することが推奨されます。早期発見・早期治療が、予後を大きく左右する要因となります。
上腸間膜動脈症候群
上腸間膜動脈症候群は、十二指腸が上腸間膜動脈と大動脈の間で圧迫される比較的まれな疾患です。主に急激な体重減少や長期臥床によって発症することが多く、腹部の脂肪組織が減少することで、上腸間膜動脈と大動脈の間の角度が狭くなることが原因となります。
この症状では、食後の腹部膨満感や腹痛、嘔吐などが特徴的な症状として現れます。特に食後30分から1時間程度で症状が悪化することが多く、左側臥位になると症状が改善することもあります。また、慢性的な症状により、食事量が減少し、さらなる体重減少を引き起こすという悪循環に陥ることもあります。
診断には上部消化管造影検査やCT検査が有効で、保存的治療として食事指導や体位therapy、点滴による栄養管理などが行われます。症状が改善しない場合は、外科的治療が検討されることもあります。
膨満感が継続する場合の対処法
腹部膨満感が継続する場合、まずは食事の量や内容を見直すことが重要です。食事は一回の量を控えめにし、ゆっくりよく噛んで食べることを心がけましょう。また、規則正しい生活リズムを保ち、適度な運動を取り入れることで腸の動きを促進させることができます。
消化を助けるために、温かい飲み物を摂取したり、腹部をマッサージしたりすることも効果的です。ストレス管理も重要で、リラックスできる時間を確保することで症状の改善が期待できます。ただし、症状が2週間以上続く場合や、痛みを伴う場合は、重大な疾患の可能性もあるため、必ず医療機関を受診することをおすすめします。
まとめ
お腹の張りや腹部膨満感は、日常的な生活習慣から重大な疾患まで、様々な要因で引き起こされる可能性がある症状です。軽い症状であれば、食生活の改善や生活リズムの見直し、適度な運動など、生活習慣の改善で対処できることもあります。しかし、症状が長期間続く場合や、痛みなどの他の症状を伴う場合は、重大な病気のサインである可能性もあります。早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが、健康管理の面で重要となります。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師