
感覚が鈍い…手足のしびれや力が入らない原因は?
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感覚が鈍い…手足のしびれや力が入らない原因は?
手足のしびれや脱力感は、誰もが一度は経験したことのある不快な症状です。寝違えや長時間同じ姿勢でいることで一時的に起こることもありますが、時として深刻な病気のサインかもしれません。日常生活に支障をきたすこともあるこの症状について、どのような原因が考えられるのか、また、どんな場合に医師の診察を受けるべきなのか、詳しく見ていきましょう。
手足がしびれて感覚が鈍いときの原因
手足がしびれて感覚が鈍くなる、この不快な症状は、様々な原因が考えられます。原因を特定し、適切な治療を受けるために、まずはその原因について詳しく見ていきましょう。
頭部に原因がある場合
頭部に原因がある場合の手足のしびれは、脳やその周辺の血管に問題が生じている可能性が高いです。
脳血管障害
脳血管障害は、脳の血管が詰まったり破裂したりすることで起こる病気です。脳梗塞や脳出血などがこれにあたり、突然の手足のしびれや脱力が特徴的な症状として現れます。特に体の片側だけがしびれたり、力が入りにくくなったりする場合は要注意です。
また、しびれと同時に言葉が出にくい、ろれつが回らない、激しい頭痛といった症状を伴うこともあります。これらの症状が出た場合は、一刻も早い治療が必要となるため、すぐに救急車を呼ぶことが推奨されます。
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脳腫瘍
脳腫瘍は、脳内に異常な細胞が増殖する病気で、その発生場所や大きさによってさまざまな神経症状を引き起こします。腫瘍が神経を圧迫することで、徐々に進行する手足のしびれや脱力感が生じることがあります。
加えて、頭痛やめまい、吐き気、視力障害なども併発することが多く、症状は次第に悪化していく傾向があります。早期発見・早期治療が重要なため、持続するしびれや、その他の気になる症状がある場合は、神経内科や脳神経外科の受診が必要です。
脊椎に原因がある場合
脊椎に原因がある手足のしびれは、首(頸椎)や腰(腰椎)など、脊柱と呼ばれる背骨の部分に問題が生じていることが考えられます。脊柱の中には脊髄という神経が通っており、この脊髄やそこから枝分かれした神経根が圧迫されることで、しびれや痛み、運動機能の低下などの症状が現れます。
変形性頸椎症
加齢とともに頸椎(首の骨)が徐々に変形していく病気です。椎間板の変性や骨棘(こつきょく)の形成により、脊髄や神経根が圧迫されることで、手足のしびれや痛み、歩行障害などが現れます。特に朝方の首の痛みやこわばり、手のしびれを感じることが特徴的です。
頸椎椎間板ヘルニア
首の骨と骨の間にあるクッションの役割をする椎間板が突出し、神経を圧迫する状態です。首から肩、腕にかけてのしびれや痛み、脱力感が主な症状となります。デスクワークが多い30〜40代に多く見られ、スマートフォンの使用による首の前傾姿勢も原因の一つとされています。
頸椎後縦靭帯骨化症
脊椎の後ろにある後縦靭帯が骨化して厚くなり、脊髄を圧迫する病気です。手足のしびれや歩行障害が徐々に進行していくのが特徴です。両手両足がしびれる、歩きにくい、細かい作業がしづらいなどの症状が現れ、放置すると重度の麻痺に至る可能性もある深刻な疾患です。
腰椎椎間板ヘルニア
腰の椎間板が後方に飛び出し、神経根を圧迫することで起こる疾患です。下肢のしびれや痛み、特に足の付け根から太もも、ふくらはぎ、足先にかけての症状が特徴的です。若い世代でも発症することがあり、重い物を持ち上げる動作や前かがみの姿勢が続くことで悪化することがあります。
末梢神経に原因がある場合
末梢神経に原因がある手足のしびれは、脳や脊髄から手足に伸びている神経が直接損傷を受けることで起こります。
胸郭出口症候群
胸郭出口症候群は、首から腕にかけての神経や血管が、鎖骨と第一肋骨の間の狭い空間(胸郭出口)で圧迫されることで起こる症状です。デスクワークで猫背になりがちな方や、スマートフォンの長時間使用で首を前に曲げる姿勢が多い方に発症しやすい傾向があります。
特徴的な症状として、手のしびれや痛み、脱力感が現れ、腕を上げた状態や同じ姿勢を続けることで症状が悪化します。夜間に症状が強くなることも多く、睡眠の質に影響を与えることもあります。
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手根管症候群
手根管症候群は、手首の手根管と呼ばれるトンネル状の部分で正中神経が圧迫されることによって起こります。主に親指から中指にかけてのしびれや痛み、チクチクした感覚が特徴的です。パソコン作業やスマートフォンの使用など、手首を酷使する作業を続けることで発症リスクが高まります。
また、妊娠中のホルモンバランスの変化や、糖尿病などの基礎疾患がある方も発症しやすいとされています。症状は夜間に悪化することが多く、手を振ったり揉んだりすることで一時的に楽になることがあります。重症化すると親指の付け根の筋肉が痩せてくることもあるため、早期の適切な治療が重要です。
内科的疾患に原因がある場合
内科的疾患が原因で手足がしびれることがあります。これは、直接神経を圧迫するのではなく、体の内部のバランスが崩れることで神経に影響が出る状態です。
糖尿病性神経障害
糖尿病性神経障害は、長期間の高血糖状態により末梢神経が損傷を受けることで発症します。典型的には、手足の先端から徐々にしびれや痛み、感覚低下が始まり、特に夜間に症状が強くなる特徴があります。
靴下やストッキングをはいているような感覚や、チクチク・ピリピリとした痛みを伴うことも多く、進行すると温度感覚や痛覚も鈍くなっていきます。早期発見と血糖コントロールが重要で、適切な治療により症状の進行を抑えることができます。
ビタミン欠乏
ビタミン欠乏によるしびれは、特にビタミンB1、B6、B12の不足で起こりやすく、現代社会では偏った食生活や過度な飲酒習慣が原因となることがあります。例えば、ビタミンB12欠乏では手足のしびれに加えて、舌の痛み、歩行障害、記憶力低下などの症状が現れることがあります。
また、ビタミンB1欠乏では、下肢のしびれや脱力感、むくみなどが特徴的です。適切な食事管理やサプリメント摂取により、比較的早期に改善が期待できる場合が多いですが、重症化を防ぐためにも医師による適切な診断と治療が必要です。
感覚鈍麻とは
感覚鈍麻とは、触覚、痛覚、温度覚などの感覚が鈍くなり、周りの刺激をうまく感じられなくなる状態を指します。例えば、熱いものに触れても痛みを感じにくい、あるいは、物に触れてもその形や硬さがあまり分からないといった状態が挙げられます。
感覚鈍麻の特徴
感覚鈍麻は、皮膚や粘膜の感覚が通常より鈍くなった状態を指します。触覚、痛覚、温度覚などの感覚が低下し、手足に厚手の手袋や靴下を履いているような感覚として体験されることが多いのが特徴です。
症状は緩やかに進行することが多く、初期には気付きにくいこともあります。両側性に出現することが多いものの、脳梗塞などの場合は片側性に現れることもあります。重症化すると物を落としやすくなったり、やけどのリスクが高まったりするため、日常生活に支障をきたす可能性があります。
感覚鈍麻の原因
感覚鈍麻の原因は多岐にわたり、神経系の様々な部位の障害により引き起こされます。末梢神経障害では糖尿病性神経障害や腰椎椎間板ヘルニア、手根管症候群などが代表的です。
また、脳梗塞や多発性硬化症といった中枢神経系の疾患も重要な原因となります。生活習慣に関連するものとしては、ビタミンB12などの栄養素不足や過度のアルコール摂取による末梢神経障害があります。
さらに、不適切な姿勢や圧迫による一時的な症状から、重症筋無力症などの自己免疫疾患まで、原因は様々です。早期発見・治療のためにも、継続する症状がある場合は専門医への相談が推奨されます。
まとめ
手足のしびれや感覚鈍麻は、一時的な症状から重篤な疾患まで、実に様々な原因で引き起こされる可能性があります。脳血管障害のような緊急性の高い疾患から、頸椎・腰椎の障害、末梢神経の圧迫、さらには糖尿病やビタミン欠乏といった内科的疾患まで、その原因は多岐にわたります。症状が一時的なものであれば経過観察で改善することもありますが、継続する場合や日常生活に支障をきたす場合は、早めの受診が推奨されます。特に、突然の強いしびれや、体の片側だけの症状、他の神経症状を伴う場合は、重大な疾患のサインである可能性があるため、速やかな医療機関の受診が必要です。適切な診断と治療により、多くの場合で症状の改善や進行の予防が期待できます。ご自身の体調の変化に気づいたら、症状を軽視せず、専門医に相談することをお勧めします。
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略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師