逆流性食道炎とは?原因、症状、治療法について解説
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逆流性食道炎とは?原因、症状、治療法について解説
胸が焼ける感じがしたり、酸っぱいものが上がってきたり、食後にみぞおちあたりが痛いと感じたことはありませんか。
それは逆流性食道炎が原因かもしれません。食べ過ぎや早食い、食べてすぐ寝たりと日々の行動が原因で発生します。
今回はそんな「逆流性食道炎」についてMYメディカルクリニック大手町・常勤医師の高尾医師が消化器内科の専門医としてご説明します。
逆流性食道炎って何?
逆流性食道炎は胃から食道に胃酸が逆流することにより引き起こされる食道粘膜障害と、それに伴う症状のいずれかまたは両者を引き起こす病気です。食道粘膜障害を有する「びらん性逆流性食道炎(Gastroesophageal reflux disease;GERD)」と症状のみを認める「非びらん性逆流性食道炎(non-erosive reflux disease;NERD)」に分類されます。
日本人のびらん性逆流性食道炎の有病率は10%程度と推定されており、決して珍しい病気ではありません。
逆流性食道炎の原因
食道と胃のつなぎ目に下部食道括約筋(LES)という筋肉があり、食物が通過するとき以外は胃の入り口を締めて胃内容物が食道に逆流しないように働いています。この筋肉が一過性に緩むことで胃酸の食道への逆流が生じるようになります。
下部食道括約筋が緩む原因としては加齢による変化、高脂肪食、胃内圧の上昇(暴飲暴食)、腹圧の上昇(肥満、衣類による締付け、前かがみの姿勢、妊娠)などがあります
また食道裂孔ヘルニアも大きな原因です。横隔膜という胸部と腹部を隔てる境界となっている筋肉があり、横隔膜には血管や食道などが通る穴が空いています。このうち、食道が通る穴を食道裂孔と呼びます。
食道裂孔から腹部にあるはずの胃の一部が横隔膜の上に飛び出してしまうことが食道裂孔ヘルニアです。
食道裂孔ヘルニアがあることで、胃酸の逆流を防止する仕組みがうまく働かなくなり、食道への胃酸逆流が生じてしまいます。
また、非びらん性逆流性食道炎は胃酸の逆流以外にも
①十二指腸液や空気の逆流
②胃酸逆流に対する食道の知覚過敏
③胃酸逆流が関与しない食道の運動機能異常
が関与しているとされています。
逆流性食道炎の検査や診断について
症状から逆流性食道炎を疑った場合の検査として上部消化管内視鏡検査があります。
内視鏡検査はスコープという細い管を鼻や口から挿入し、食道・胃・十二指腸を観察する検査です。びらん性逆流性食道炎があるのか、食道裂孔ヘルニア、バレット食道の所見はあるのか、胃潰瘍など他の疾患の可能性についても鑑別が可能であり、非常に有用な検査です。
びらん性逆流性食道炎の食道粘膜障害の評価にはロサンゼルス分類が広く使用されています。グレードM,A,B,C,Dで評価され、胃酸の逆流の程度、治療の反応性と相関が示されています。しかし内視鏡上の重症度分類と症状は一致しないこともよくあるため注意が必要です。
また、食道への胃酸逆流の影響でバレット食道が生じることがあります。食道の粘膜は扁平上皮という粘膜で覆われていますが、胃や腸は円柱上皮という粘膜で覆われています。バレット食道は食道下部の粘膜が胃酸の逆流により炎症を繰り返すことで細胞が変性し、円柱上皮に置き換えられている状態をいいます。バレット食道は程度により全周性に3cm以上の円柱上皮を認めるlong segment Barrett’s esophagus(LSBE)と3cm未満または非全周性に円柱上皮を認めるshort segment Barrett’s esophagus(SSBE)に分類されます。バレット食道は食道腺癌の発生母地となることがあります。LSBEからの食道癌の発生率は年率0.5-1.2%程度と言われています。SSBEについては日本人のデータははっきりと示されたものはありませんが、非常に低いと予想されます。
<日本人の食道癌の多くは扁平上皮癌であり、腺癌は少ないものの、近年は増加傾向にあります。LSBEを指摘された方は、年1回の内視鏡検査でのフォローが推奨されます。
バレット食道について詳しくはこちら
逆流性食道炎の治療は?
逆流性食道炎の初期治療としてはプロトンポンプインヒビター(PPI)と言われる強力な胃酸分泌抑制薬が推奨されています。
また、ボノプラザンはイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)とも呼ばれ、既存のPPIとは異なる作用の仕組みをもつ薬剤です。より速やかで有用な胃酸分泌抑制作用を示すとされており、特に重症の逆流性食道炎で選択されます
内服治療とともに生活習慣の改善も大切です食べ過ぎ、早食いをしない。高脂肪食を控える。お腹を締め付けない、減量、食後2-3時間は横にならないなどの生活習慣の改善も大切です。
症状の改善が得られた場合には、治療の中止やPPIによる維持療法、症状がある時のみ薬を内服するオンデマンド療法で経過をみていきます。症状の改善が乏しい場合にはPPIの種類の変更や増量、投与時間の変更、消化管運動機能改善薬や漢方薬の追加を検討します。
非びらん性逆流性食道炎に対してもPPIを使用しますが、奏効率は50%程度と言われており、びらん性逆流性食道炎に対する奏効率70-80%と比較し、治療効果が得られにくいとされています。治療に反応しない場合には消化管運動改善薬や漢方薬を併用することもあります。
まとめ
胸焼けや呑酸の症状が続いている方は逆流性食道炎の可能性があります。
MYメディカルクリニック大手町では専門医が在籍しており、上部消化管内視鏡検査の結果をふまえて、適切な治療を行うことが可能です。
気になる症状がある方や内服治療しているが症状の改善が乏しい方はぜひお気軽にご相談ください。
逆流性食道炎の検査歩法についてはこちら
MYメディカルクリニック大手町 医師
高尾 公美 Dr. Kimi Takao
これまで消化器内科を専門とし、内視鏡検査・治療に従事してきました。患者さんに寄り添い、苦痛のない検査、病気の早期発見に尽力して参ります。また、外来診療も行っているので胸焼けや胃痛、便秘などの症状で心配なことがあればぜひご相談ください。
学歴
- 茨城県立水戸第一高等学校 卒業
- 北里大学医学部 卒業
職歴
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院
- がん・感染症センター 都立駒込病院
- 2022年 医療法人社団MYメディカル 医師
資格
専門
消化器内科