便潜血検査で陽性になった場合はがん?原因や治療法などを解説
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便潜血検査で陽性になった場合はがん?原因や治療法などを解説
「便潜血検査で陽性になったらがんは確定?」
「血便は病気? どんな疾患が考えられる?」
検査で陽性になり、このような不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
血便は大腸がんの症状だといわれることもあるため、このような不安を覚えてしまうのは仕方ありません。そうではなかったとしても、出血している事実に不安を感じてしまうことでしょう。
本記事では、便潜血検査で陽性反応が出る原因、がんの可能性、治療法、血便で考えられる疾患について解説します。
便潜血検査とは?
便潜血検査とはどのような検査なのか、調べる内容や目的、検査方法、結果の見方について解説します。
便潜血検査とは?
便潜血検査とは、見逃してしまうくらいの微量の出血を検出するものです。微量であったとしても、便器内が赤く染まっていると出血していることは分かるでしょう。
しかし、消化器官内の出血は少量の場合もあり、目で見て気付かないこともあります。消化器官内の出血は、重大な病気が隠れているケースもあるため、少量の出血でも見逃さないことが大切です。
検査結果は陰性の場合(−)と表記されますが、2回検査のうちどちらかだけでも陽性(+)が検出されると精密検査を受ける必要があります。
実施する目的
便潜血検査は、大腸がんの有無を調べるために行います。
小腸からの出血というよりも、大腸からの出血をメインにチェックできる検査です。大腸がんは命を落とすリスクのある大病ですが、残念ながら初期症状は分かりづらいものです。そのため、知らないうちに進行し、見つかったときにはすでに手遅れであるケースもあります。
がん疾患は、早期発見が重要です。がんが見つかった時点で手遅れとなる前に、便潜血検査で可能性をいち早く見つけ対処することが大切です。
検査項目と結果
検査項目は「便中ヘモグロビン」と「便中トランスフェリン」があります。
それぞれの意味を解説します。
便中ヘモグロビン
ヘモグロビンとは、血液の主要成分です。つまり、便中ヘモグロビンは便に含まれる血液成分の有無を調べる検査です。
食事の影響も受けづらいため、食後に受けても問題ありません。もし陽性になった場合は、消化管からの出血、口腔内の出血などが疑われます。
便中トランスフェリン
トランスフェリンとは、血液中に含まれる鉄分の運搬に関わるタンパク質です。腸内細菌への耐性が強く影響を受けづらいため、出血の有無を調べるのに適しています。
ヘモグロビンは、大腸にとどまりすぎると腸内細菌の影響で変性し、検出できない場合があります。正確に出血の有無を見つけるためにも便中トランスフェリンは欠かせません。
便潜血検査で陽性になると疑われる疾患・原因
便潜血検査で陽性になると疑われる疾患や原因を解説します。
陽性はがんを表している?
検査結果で陽性反応があっても、必ずしもがんというわけではありません。がん以外でも血液が混ざることがあるためです。原因を絞るためにも、後日精密検査を行わなければなりません。
なお、ほとんどの方は良性のポリープであったり異常がなかったりといった良い結果で済みます。大腸がんと診断された方は、精密検査を受けた方の1%にも満たない程度です。
大腸ポリープについてはこちら
上部消化管が原因による潜血
腹部の上半分に該当する消化器官で出血していることが分かった場合、以下のような原因が考えられます。
- ●歯肉からの出血を飲み込んだ
- ●鼻血を飲み込んだ
- ●食道がんによる出血
- ●胃がんによる出血
- ●胃潰瘍による出血 など
食道がんや胃がん、胃潰瘍であれば、無症状ではなく血便以外の症状が出ていることがほとんどです。
下部消化管が原因による潜血
腹部の下半分に該当する消化器官で出血していることが分かった場合、以下のような原因が考えられます。
- ●大腸炎による出血
- ●大腸ポリープによる出血
- ●クローン病による出血
- ●大腸がんによる出血 など
クローン病は、指定難病の一つです。原因は不明であり、口腔から肛門まで広い範囲で潰瘍や炎症を起こす可能性があります。
なお、特に多いのは小腸と大腸からの出血です。
痔でも陽性になる?
痔は切れ痔やいぼ痔などがありますが、排便する際に出血することがあります。
そのため、検査中に出血した場合、血が混ざると思う方もいるでしょう。しかし、痔の出血は表面の付着であり便の中に含まれるわけではないため、検査結果に影響しないとの報告もあるので、痔があるからといって、必ずしも陽性になるとは限らないようです。
血便がある場合に考えられる原因とは?
血便がある場合に考えられる原因は以下があります。
- ●大腸がん
- ●大腸憩室出血
- ●虚血性腸炎
- ●胃潰瘍・胃十二指腸潰瘍
- ●痔
- ●感染性腸炎
では、症状や治療法について解説します。
大腸がん
大腸がんは、粘膜ががん化する疾患です。初期症状は分かりにくく、便に血や粘膜が混ざったものが出たり、おなかに膨満感があったり、下痢と便秘が繰り返されたりします。痔やよく見受けられるようなおなかの不調と間違うことが多いため、検査を受けるまでは気付かないでしょう。
治療法は、内視鏡治療、手術療法、薬物療法、放射線療法があります。
大腸がんについてはこちら
大腸憩室出血
大腸の壁に存在する、袋状に突出している部分を大腸憩室といいます。この中の血管が破れると出血するのですが、腹痛などの症状がないため気付かないことが多いでしょう。治療は、クリップ止血と呼ばれる方法で行います。
虚血性腸炎
虚血とは、臓器の血量が少なくなるあるいはなくなる状態です。虚血性腸炎は大腸の一部の血流が足りなくなり、炎症を起こした状態をいいます。
症状は、急激な腹痛です。
治療は、絶食で腸を休ませ、点滴で栄養を補う形で行います。
1〜2週間の入院が必要です。
胃潰瘍・胃十二指腸潰瘍
胃潰瘍・胃十二指腸潰瘍は、胃腸に潰瘍ができる病気です。
胃潰瘍は50代前後の男性がなりやすい傾向にあり、胃十二指腸潰瘍は30代前後に多い傾向にあります。胃潰瘍や胃十二指腸潰瘍の主な症状は、胃痛やタール便、空腹時の胃痛、胸やけなどです。
痔
痔には複数の種類がありますが、以下の種類がよく見受けられます。
- ●切れ痔
- ●いぼ痔
- ●あな痔
痔の症状は出血が共通していますが、タイプによって異なる症状があります。切れ痔は排便時に痛み、時には排便後に痛みがあります。
いぼ痔の症状は、肛門でクッションの役割をしている組織が肛門から脱出したり、疼痛を起こしたりすることです。
あな痔の症状は、肛門周辺が化膿し、痛みや腫れ、発熱などを起こすことです。
治療法としては、手術や薬物療法があります。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫に感染して起こる腸炎です。
症状として発熱や下痢がよく見受けられますが、下痢がひどい場合や寄生虫による炎症で血便が出ることもあります。治療には薬物療法や対症療法があり、原因によって異なりますが、自然治癒することが多い傾向があります。
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まとめ
便潜血検査で陽性が出ても、その時点でがんである可能性は少ないため、過度な心配は要りません。しかし、ポリープや潰瘍などさまざまな要因が考えられ、治療を必要とすることもあります。
もし、陽性が出た場合は必ず精密検査を行ってください。
略歴
- 藤田保健衛生大学医学部 卒業
- 公立昭和病院
- 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
- 北部地区医師会病院麻酔科 科長
- 2016年 MYメディカルクリニック 医師