心タンポナーデとは?その原因・症状と治療法・治療後について解説

  • クリニックブログ
2024/05/01

心タンポナーデとは?その原因・症状と治療法・治療後について解説

心タンポナーデとは、心臓を覆う心嚢という袋状の部分に、大量の液体が溜まってしまう病気のことです。心タンポナーデになると心臓の機能が低下するため、生命に関わります。多くの人にとって聞き慣れない病名であり、「心タンポナーデになったら助からない?」「治療で治せる?」「初期症状はある?」など、不安や疑問を持つ方は多いことでしょう。
 
今回は、心タンポナーデの原因や症状、心タンポナーデの治療や治療後について解説します。

 

心タンポナーデとは

心臓は心内膜と心外膜によって包まれ、袋状の空間には心嚢液という液体があります。心嚢液は、心臓が拡張・収縮する際の潤滑油、外部からの衝撃を和らげるためのクッション、ウイルス・細菌から心筋を守るなどの役割を持つ重要な液体です。
 
しかし、何らかの原因により心嚢液が大量に溜まってしまい、心臓が圧迫されて正常な機能を果たせなくなります。このように、心嚢液の異常貯留によって心臓機能を低下させる病気を、心タンポナーデといいます。

 
 

心タンポナーデの原因

心タンポナーデは胸部外傷やウイルス・細菌、疾患の影響、検査・手術の影響などで引き起こされます。

胸部の外傷

交通事故で胸部打撲し、心膜が鈍的損傷を受けることが原因で心タンポナーデになることがあります。また、刺傷や銃創といった胸部外傷が原因となることもありますが、このケースでは心タンポナーデの治療を受ける前に亡くなることがほとんどです。

 

ウイルス・細菌

ウイルスや細菌感染によって心膜炎になり、それが原因で心タンポナーデになることもあります。心臓に炎症が起きることで、心嚢内に心膜内に滲出液が貯留してしまうためです。
 

 心膜炎について詳しくはこちら

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他の疾患の影響

心臓に関わる疾患が原因で心タンポナーデになることもあります。たとえば、食道がんや肺がんなどの悪性腫瘍も原因の一つです。こうした病気の進行や転移の状況に合わせ、徐々に滲出液が貯留してしまい、心タンポナーデになります。
 
また、大動脈解離や心筋梗塞などにより心臓壁が損傷することで血液が心嚢に流出し、急性的に心タンポナーデが引き起こされることもあります。
 

 大動脈解離について詳しくはこちら

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検査・手術の影響

心臓カテーテルなど心臓の検査・外科手術を行った際、心臓壁に物理的な損傷が生じると、血液が心膜に溜まって心タンポナーデが引き起こされます。

 
 

心タンポナーデの症状

心タンポナーデの主な症状は以下の通りです。
 

  • ● だるくなる
  • ● 胸が苦しい・痛い
  • ● 呼吸困難
  • ● 意識障害
  • ● 血圧の低下
  • ● チアノーゼ

 

また、胸部外傷や心筋梗塞・大動脈解離などにより急に心タンポナーデになってしまった場合、以下のような症状があります。
 

  • ● 強い胸の痛み
  • ● 血圧低下
  • ● 意識障害
  • ● 心停止

 
ただし、心嚢液が時間をかけてゆっくり貯留する場合、初期の自覚症状がない、またはほとんど感じないことも少なくありません。


 
 

心タンポナーデの受診目安と診療科

心タンポナーデは生命に関わる危険な病気であり、疑いがあればすぐに病院を受診すべきです。もし、急な強い胸の痛みや呼吸困難、意識障害といった症状があれば、すぐに救急車を手配しましょう。意識のあるうちに家族に知らせて救急要請をお願いするのでもかまいません。
 
症状はそこまで強くない、歩行・会話ができるといった場合でも病院を受診しましょう。たとえば、胸の痛み・だるさ・呼吸困難・チアノーゼといった症状があるならば、悪性腫瘍や心臓の炎症といった慢性疾患の影響で心タンポナーデになっている可能性があります。速やかに循環器科を受診し、検査・治療を行いましょう。


 
 

心タンポナーデの検査・診断

心タンポナーデは血圧の低下や心停止といった重篤な症状が出て死に至るケースが少なくありません。そのため、検査・診断は迅速に行われます。患者の状態や症状を診ることはもちろん、心エコー検査も実施します。超音波により心嚢液がどれくらい溜まっているのか、心臓をどの程度圧迫しているか、心臓機能への障害がどの程度あるのかを確認します。


 
 

タンポナーデの治療法

心タンポナーデは生命に関わる病気です。そのためまずは、速やかに心嚢液を除去して心臓への圧力をなくし、救命することが何よりも大切です。

心嚢穿刺による心嚢液の除去

心嚢穿刺とは、心嚢に針を刺して管を入れ、心嚢内に貯留した液体を除去する処置です。安全性を高めるために、心エコーにて心嚢液の貯留部位を確認しながら処置を行うのが基本です。ただし、緊急性の高い状況の場合は心エコーを用いないケースもあり得ます。

 

外科手術

大動脈解離、心破裂などによる出血性の心タンポナーデである場合、心嚢穿刺では改善しないことも少なくありません。その場合開胸して心膜を切開し、貯留した血液を除去します。

 

原因疾患の治療

心嚢液を除去したら、大動脈解離や悪性腫瘍、心膜炎など心タンポナーデの原因となった疾患の治療を行います。治癒するまでの期間や行う治療内容については、それぞれの疾患によって異なります。疾患が原因で心タンポナーデになる場合、その疾患の症状はかなり進行していることが多いです。

 

薬物療法は行わない

心タンポナーデでは基本的に薬物療法を行うことはありません。心タンポナーデそのものを治療する場合は、外科処置を行います。薬を使用するケースとしては、心タンポナーデの原因となった疾患の治療に対してのみです。
 

治療後について

急性の疾患が原因である場合、治療により適切に心嚢液が除去できれば、治療後に生命に関わる問題が発生することはほぼないとされます。しかし、慢性的な疾患が原因である場合、その治療を続けていかなければなりません。また、退院後は定期的な検査を受け、原因によっては投薬治療を長期的に続ける必要があります。


 
 

まとめ

心タンポナーデは何らかの理由によって心嚢内に液体が貯留することで、心臓機能を大きく低下させる病気です。生命に関わるケースがほとんどであり、特に急性的な原因である場合は速やかに治療する必要があります。腫瘍などの疾患が原因となる慢性的なケースでは、初期症状がほとんどないことが少なくありません。放っておくと進行して生命を落とすリスクがありますので、疑いがあれば病院を受診して検査・治療を行いましょう。


 

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MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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