大動脈解離とは?原因、症状、治療法について解説

  • クリニックブログ
2023/07/30

大動脈解離とは?原因、症状、治療法について解説

大動脈解離とは

大動脈は、外膜、中膜、内膜の3層構造となっています。なんらかの原因で内側にある内膜に裂け目ができ、その外側の中膜の中に血液が流れこむことで大動脈内に二つの通り道ができる状態を大動脈解離といいます。外側には外膜一枚しかないため、破裂の危険性を伴います。
 
動脈硬化、高血圧、喫煙、ストレス、高脂血症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、遺伝などのさまざまな要因が関係すると考えられています。
大動脈解離の発症が多い年齢は男女とも70代とされていますが、40代や50代で発症することも稀ではありません。


 
 

大動脈解離の症状

大動脈解離は、ほとんどの場合、何の前触れもなく、突然、胸や背中の激痛とともに起こります。
病状の進展につれて痛みが胸から腹、さらに脚へと下向きに移っていくのが特徴です。いきなり意識消失状態やショック状態となる方も少なくありません。

裂けた箇所によって、また病状の進展によって、大動脈弁閉鎖不全や脳虚血症状(意識消失、麻痺)、腸管虚血症状(腹痛、下血)、腎不全、下肢虚血症状などの併発症状を引き起こすこともあります。
新たな血液の流れ道(解離腔または偽腔)を通して、血液が薄くなった外膜から染み出したり破裂すると、血胸をおこします。また主要な臓器への分枝血管にまで裂け目が進展すると、血流障害によって各種臓器が虚血壊死を起こし、死に至ることもあります。

突然、胸や背中に激痛が生じれば、とにかく一刻も早く救急車を呼んで医療機関を受診し、治療を受ける必要があります。
診断が遅れないように、大動脈解離の可能性を疑うことが重要ですので、些細な症状であっても救急救命士や医師に伝えてください。また、ご本人から伝えるのが困難なときには、家族が知り得る情報を詳しく伝えてください。

 
 

大動脈解離の検査方法

解離性大動脈瘤を疑った場合、CT検査を行います。それにより画像として大動脈の裂け目が確認でき、新たな血液の流れ道の大きさを測定することができます。
超音波(エコー)法は、ベッドサイドで緊急に実施することができ、新たな血液の流れ道の大きさ、内膜片の、大動脈弁や弁輪部の病変、心嚢内血液などを確認することができます。
 
その他に、症状のところで挙げた各種併発症状が起こっていないかを診断するために、胸部や腹部のレントゲン、心電図、造影検査やMRI検査などを加えていきます。
 


 
 

大動脈解離の治療方法

まずは痛みを和らげ、収縮期血圧を100~120mmHg以下に保つことを目標に、薬物療法が行なわれます。
解離性大動脈瘤(大動脈解離)の治療では、できるだけ早く治療方針を決めることが重要です。裂け目が心臓に近い箇所にまでおよんでいる場合には手術が必要となります。手術では、裂け目がある部分の血管が人工血管に置き換えられますが、病状によって人工血管に交換する範囲は異なります。

手術中は、手術の補助のため、超低体温循環法あるいは脳分離循環法という専門的な人工心肺操作が行われます。
裂け目のある大動脈の範囲が背中側の下行大動脈以下に限られている場合は、手術を行わずに、日常生活を送っていただきながら経過をみることもあります。その際、安静とともに最も重要となるのが血圧の管理です。裂け目が残存していることを念頭においていただき、禁煙、減塩食を徹底し、血圧を下げるお薬を服用していただきながら、定期的に通院が必要になります。それでも血圧が安定せず、裂け目が大きくなっていく場合には、手術が必要となります。

 
 

大動脈解離の予防方法

日常生活での高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などが大動脈瘤の発症に大きくかかわっています。
その予防には、こうした危険因子を避けることが極めて重要です。また、大動脈瘤と診断された場合、「こぶ」を完全に治すことは内科治療では難しく、破裂する危険性が高くなるまで大きくならないように「こぶ」とうまくつきあっていくことが肝心です。
 

  • ・毎日、血圧を測定し、かかりつけ医によく相談すること
  • ・暴飲暴食をしないこと
  • ・禁煙すること

 

・便秘に注意すること

息むと血圧が上がってしまいます。日本式の便器にしゃがむよりも、洋式便器に腰掛けて用を足すほうが急激な血圧の変動を避けられます。
  

・入浴の際には熱すぎる湯にはつからないようにすること

風呂に入るときは、脱衣所や洗い場を暖かくしてから入浴しましょう。
熱いお湯は、心臓に負担がかかり血圧も上がりますから、40度位のややぬるめのお湯に入り長湯をしないようにしましょう。入浴の30分前から浴槽のふたを開けておくと湯気で風呂全体を暖めるので良いです。
 

・冬季の防寒、夏季の過冷房に留意すること

急激な温度変化は避けるようにしましょう。
冬に外出するときは、温度差をなるべく少なくするようにマスク、マフラー、手袋などで肌の露出部分を少なくし、屋内でも居間と浴室や便所の温度差が少ないよう暖房や着衣に気を付けましょう。
夏は、冷房が効き過ぎた部屋への出入りの時に血圧が上昇するので、外気との温度差が5度以上にならないよう気を付けましょう。
 

・十分な睡眠と休養をとる、ストレスを避け、イライラしないこと

毎日、仕事や家事、育児など社会生活を営んでいれば、必ず過労や緊張、精神的ストレスがありますがなるべくとり除きたいものです。
そのためにも、毎日規則正しい生活を送り休養を十分にとり疲れを残さないようにしましょう。
 

・運動や労作について

軽い運動(散歩・自分のペースでのジョギング・ラジオ体操・自転車にのる)は、血液の流れを良くし、全身に良いだけでなく、肥満防止にもつながりますが、運動や労作の許される程度は、個人差があります。
息切れ、動機、ふらつきなどの症状に注意し、どの程度、運動しても良いかを医師に相談して下さい。
 

・お酒は飲み過ぎないようにしましょう

 
なお、大動脈解離で急性期を脱した場合も同じように注意してください。

 
 

まとめ

急性大動脈解離の発症を予測することはできませんが、破裂の可能性がある大きさの大動脈瘤が見つかれば、破裂する前に治療を受けるのが最も大切です。

 

  

MYメディカルクリニック渋谷 笹倉 渉医師

監修:MYメディカルクリニック渋谷 非常勤医

笹倉 渉 Dr. Sasakura Wataru

資格

略歴

  • 藤田保健衛生大学医学部 卒業
  • 公立昭和病院
  • 東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科 助教
  • 北部地区医師会病院麻酔科 科長
  • 2016年 MYメディカルクリニック 医師
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